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食いしん坊エルフ  作者: なっとうごはん
第十五章 成人
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597食目 恐怖の尋問 中編

「ふっきゅんきゅんきゅん、まさか俺だけに言わせて、おまいらは言わない、なんてことはないだろうなぁ? さぁさぁ、ゲロってもらおうかぁ」


 ビキビキと血管を浮き上がらせる、という俺の怒りの表情を見た女子たちは、あまりの恐怖でチビる寸前であるに違いなかった。よって、ここは畳みかけるのが得策。


「んじゃ、出席番号順にな。拒否るヤツは、【ウイグるんるん監獄フィリミシア出張所】にぶち込むから覚悟するように」


 このエルティナ・ランフォーリ・エティル、おまいらの悪行を決して許しはしない。桃使いの名に懸けてお仕置きしてくれるわっ!


「えっと、それって何?」


 アマンダがおずおずとウイグるんるん監獄について訊ねてきたので、俺は超簡潔に答えてやることにした。


「男の娘版、ユウユウ閣下がしばき倒してくれる場所だ。確実に【良い子】になれるぞ。抵抗する気ならテレパスですぐにバルドルきゅんを呼ぶ。きっとウキウキしながらやってくることだろう」


 そう言って、ふっきゅんきゅんきゅん、と笑う俺を見た彼女らは、俺が本気であることを悟ったのだろう。一人ずつ席に就き、俺の尋問を受けることになったのである。


 一応のところ個別面談ではあるが、周囲には当然の権利、といわんばかりに女子たちがによによしながら立っている。もちろん、中には青い顔をしているヤツもいるが。



 ◆ 出席番号 21番 アカネ・グランドロン ◆



「うぐぐ、とんだ藪蛇さね」


「ふっきゅんきゅんきゅん、さっさと白状しろぉ」


 アカネが顔を赤らめてもじもじしている。相当に恥ずかしい様子が見受けられるが容赦はしない。当然だなぁ?


 とはいえ、このネズミ少女の本命など既に皆周知している。昨日の宴の際も露骨だったしな。それでも問い質すのは彼女の反応を見て楽しむためだ。


「ロ……ロフトさね」


「知ってた」


「な、なら、ど、どどどうして言わせたさねっ!?」


 顔を真っ赤にして恥じらう乙女はとっても可愛い。単純明快な答えだな。


「その表情が見たかったからだぁ!」


「~~~~~~~~~~~~~っ!」


 その旨を説明するとアカネは遂に頭から煙を出して悶絶した。これで一人撃沈である。


 ふっきゅんきゅんきゅん、可愛いなぁ、アカネ。普段は変態あり攻める方であるが、守りに回ると極端に脆くか弱いとか。王道を行く乙女であるな。

 早く変態稼業を引退してどうぞ。



 ◆ 出席番号 22番 アマンダ・ロロリエ ◆



「私が答える必要があるの? あるなら、フォクベルト君との馴れ初めから初体験まで、時間を掛けてねっとりしっぽりと聞かせてあげるけど」


「それもそうだな、既婚者は除外で」


 フォクベルトとの経緯は興味深いが、今はその時ではない。また酒宴が催された際の酒の肴に取っておこう。

 というか、既婚者に振る話題ではないな。



 ◆ 出席番号 23番 アルア・クゥ・ルフト ◆



「あはは! おかゆっゆ! おっかか! あははは!」


「人ですらねぇ!」


 分かっていた事であるが、万が一のこともあり、アルアにも一応聞いてみたが、見事に予想どおりの答えが返ってきた。

 お粥は食べ物であって人ではありません、あしからず。



 ◆ 出席番号 24番 ウルジェ・ルレイズ・クラリマット ◆



 ここで、予測不能のウルジェが登場した。果たして彼女は誰の名を告げるのであろうか。


「う~ふ~ふ~、私は~、クラーク君ですね~」


「おおっと、意外な名前が飛び出してきたな」


 ここで、まさかのゴーレノイド・クラークの名が出てきたではないか。確かにクラークは男前で熱血漢であり、実直な性格から女性陣からの評価は高い。


 しかし、今はゴーレム化しているので、恋愛対象からは除外している者が多数というのが現実である。女性はシビアな面を持っているのだ。

 やはり、自分の子は欲しいのだろう。


「んで、クラークのどこがいいんだ?」


「そりゃあもう~、彼の~、身体を~、バラバラにして~、私色に~、染めたいからですよ~?」


「クラーク、逃げてぇぇぇぇぇぇぇぇっ!」


 ろくでもない答えが返ってきた俺たちは、白目痙攣しながらクラークに避難勧告を出すのであった。これは酷い。



 ◆ 出席番号 26番 風間 景虎 ◆



「エルティナ殿も人が悪い。私は咲爛様一筋だというに」


「役目柄、仕方がないもんな。それでも、いいなぁ、と思ったヤツはいないか?」


 虎の獣人少女、景虎は咲爛の従者なので、恋愛する時間もないことは良く理解している。それでも、少しくらいはいいな、と思う異性はいるはずだ。


「ザインは気になっておりましたが……それも、最早叶わぬ想いでございます」


「ごめんなしあ」


 これには最早ケツプリ土下座する他になかった。悲し気な表情の景虎の顔が心に突き刺さり、俺はふきゅんと鳴く他になかったのである。おぉ、じ~ざす。



 ◆ 出席番号 27番 グリシーヌ・リリシム・ディランクス ◆



「ブルトン」


「な、なんで、し、知っているんだな、だなっ!?」


 オーク族の少女グリシーヌの想い人など彼女とクラスメイトになった時点で周知である。よって、時間削減と相成った。のろけ話はまたの機会に。



 ◆ 出席番号 28番 クリューテル・トロン・ババル ◆



「そうですわねぇ……一時期はエドワード殿下でしたが、何か違うと感じて、それ以来は……」


「ふきゅん、クー様も露骨だったしな」


「えぇ、お家のためにと、肩を張っておりましたもの。でも、エル様と共に行動を共にするようになってからは肩の力も抜けて、それ以来は自分を見つめ直すための時間に費やしたので。というわけで、今のところは吟味中ですわね」


 銀色ドリル嬢クリューテルは父親を亡くしてババル家の当主となり、今までのようにお気軽に恋愛できなくなっているのが現状だ。彼女は当主であるがゆえに御家柄にも気を払う必要性が出てきているのである。


 ん、俺? 気にするな!


「なら、いいなぁ、と思った人でもいいぞぉ」


「ん~それなら、ミカエル様でしょうか。彼、お父様を亡くして落ち込んでいたわたくしに、親身になってくれましたのよ」


「なら、ミカエルで決定じゃないか。クー様に告白するように【命令】してしんぜよう。これでミカエルもクー様も安泰だぁ」


「ちょ~っ!? エル様! そ、そそそそそ、それはいけませんわっ!」


 いやんいやんとドリルを振り回すクリューテルであるが、俺は知っているぞぉ。その顔が嬉しさのあまりにふやけていることを!


「もぐ~」


 あ、もぐもぐがドリルから飛び出てきた。ちゃっかり定住していたのかぁ……?


 そんなことよりも、ミカエルは意外と奥手だから背中を押す者がいない限り独身で通す可能性が高い。そのことはメルトもサンフォも危惧しているところだ。これで二人も安心してくれるはずである。


 ちなみに、既にメルトとサンフォの二人には許嫁がいるので安心してほしい。

 二人とも良家のお嬢様でしっかりとした性格をしている。特にサンフォの許嫁は度量が広いので良き妻となることだろう。



 ◆ 出席番号 29番 織田 咲爛 ◆



「わらわには、国に許嫁がおる」


「あ~、姫様だもんな」


 イズルヒの尾張国の姫である彼女には生まれる前からの許嫁がいるそうだ。その名も【前田 利益】。もう嫌な予感しかしない名前である。

 ちなみに、彼のまたの名は【前田 慶次】であることを伝えておく。


 この二人の間に子供ができたら、ユウユウ閣下に匹敵するような存在になるのではないだろうか。

俺たちにできる事は、大人しい子になるように祈る事だけだ。



 ◆ 出席番号 30番 シーマ・ダ・フェイ ◆



「貴様、失恋したばかりの私に対する嫌がらせか」


「そんなわけではないけど……いないのかぁ?」


「エドワード殿下以上に良い男がいるわけなかろう。私は生涯独身で通す」


 なんという、未練たらたらな決意表明であろうか。この時点でいまだにエドワードを想っていることは明白。これでは新しい恋を始めることができない、できにくい!


「独身だと、お家再興は難しいぞぉ」


「確かにな……時期が来れば折り合いも付くだろう。それまでは放っておいてくれ。頼む」


 そう言うとシーマは席を立った。いまだに彼女が葛藤していることは明白であり、他の女性陣たちもそのことに触れていなかったようだ。正直、これは誤った判断であったことを自覚する。


 後でちゃんと謝罪をしておくことにしよう。ごめんな、シーマ。



 これで、前半戦は終了だ。残った連中もしっかりと白状してもらう。覚悟するがいい、ふっきゅんきゅんきゅん。

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