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食いしん坊エルフ  作者: なっとうごはん
第十四章 カオスなヤツら
583/800

583食目 生物兵器

 先手は聖獣メグランザ。ヤツは全てを喰らう者もどきを放ってきた。その数は八、対して俺の全てを喰らう者は一匹やられて七匹しか出せない。だが、やるしかない。


「モーベン、バルドル! 残りの一匹を抑え込め!」


「「はっ!」」


 信じられない事にパワー、速度、耐久力共にヤツの方が上だった。こんなことがあっていいのだろうか、俺の全てを喰らう者を上回るなど在ってはならない事態だ。

 だが、ひとつ気に掛かる点がある。それはエルティナの事を【魔女】と言っていたことだ。


 エルティナは女神には敵対していないはず、それなのに魔女扱いされている理由はただ一つ。エルティナが真なる約束の日に辿り着いた場合、カーンテヒル兄上は役目を終えて消滅するからだ。


 女神マイアスは我が子のように愛していた。そんな彼を消滅させるような存在を許すわけがない。だから、彼女は創ったのだ。【対真なる約束の子の兵器】を。


 恐らくベースになっているのはエルティナの全てを喰らう者だ。成長著しい妹の全てを喰らう者はパワーだけなら断トツ。小回りや制御に難があるため、いまだ真価は発揮されていないが、その圧倒的なパワーは脅威となる。


 だが、真の脅威はそれをコピーしてしまう女神マイアスの能力。やはり、力を抑えて偽りの全てを喰らう者を使役しておいて正解だったようだ。


「パワーでは劣っていてもテクニックでは負けやせんよ」


 全てを喰らう者の戦い方を教えてやる。こいつらはただ食わせればいいってものじゃない。どれをどう食わせるかで真価を発揮するんだ。


「ぬぅん! ぽぉう! ひゅえい!」


 聖獣メグランザの猛攻を必要最小限の動きでかわしつつ僅かな隙を狙う。なかなか、隙を見せない小癪なヤツだ。


「御子様、その気の抜ける掛け声はどうにかなりませんか?」


「無理」


 全てを喰らう者を燃え盛る大鎌【ヴォルファシュライサー】で抑え込むモーベンは戦闘が開始して早々に苦情を申し立てた。だが、却下だ。俺はこの掛け声でないと上手く攻撃を回避できない。


「きぃおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!」


 頭に八つも存在する口から悲鳴のような、雄叫びのような声を上げる聖なる獣。非常に耳障りこの上ない。じゃけん、大人しくさせましょうね~?


 俺は転生の際に桃力を失っている。もう二度とその力を使う事はないだろう。だが、それと引き換えに新たなる力を手に入れていたのだ。

 この力、実はエルティナも持っているのだが……上手く桃力と共棲できているようで何よりだ。俺なら無理だったかもしれない。


「鬼力っ!」


 赤黒い輝きが俺から解き放たれ、あるものの形を取った。それは赤黒く輝く大蛇だ。要するに俺は全てを喰らう者を鬼力でもって増やしたのである。

 本物ではないが相手も偽物を使っているので文句は言わせない。というか頭部を食われたヤツもこの力で作った、なんちゃって全てを喰らう者だ。つまり、俺はこの程度ならいくらでも呼び出せるということになる。


「ふははは! 戦いは数だよ、モーベン!」


「これは、えげつない。テクニックはどうしたのですか?」


「あれはキャンセルだ。わざわざ手の内を見せる事はない」


 聖獣メグランザの二倍となる十六匹の赤黒い大蛇が調子に乗っている獣に襲い掛かる。

 よくよく考えたら作戦時間が短いのに時間を掛けて戦うことなどできないのだ。であれば、俺の最も得意とする【圧倒的な力で押し潰す】のが一番手っ取り早い。ふはは、死ぬがいい。


「最初はほんの僅か、少しばかり、だいぶビビったが大した事はなかったな」


「いつもどおりの結果になりましたね」


「ちょっと、殴り足りないです」


 まてまて、バルドル。おまえはアレを素手で殴っていたのか? 一応、あれも全てを喰らう者なんですがねぇ? いや、八司祭ならそれも可能か。


 目の前には赤黒い大蛇に貪り食われる聖なる獣の姿。最早、原形をとどめてはおらず、息絶えた後である。おまえら、残さず綺麗に食べれよ?


「この分だと、試作段階のようだな」


「はい、非常に厄介な存在となりましょう。我ら、そしてモモガーディアンズでなければ、まず対応は不可能かと」


 モモガーディアンズか……いくら【彼女の加護】があるとはいえ、果たして大量に投入された聖獣に勝てるかどうか。

 理想はそうなる前に女神を叩いておきたい。だが、天界には今だ攻め込めず。神の欠片はいずこにあるのやら、だ。


「撤収する。痕跡は残すな」


「「はっ」」


 新たなる問題に直面して俺の頭はパンクしそうだ。もともと容量が少ないのに、なんてことをしてくれやがるんだ、腐れ女神め。絶対に許さん、ケツにゴーヤをぶち込んでやる。


 俺は女神マイアスに怒りを募らせつつ、カオス教団本部へと空間転移した。






 ◆◆◆ マイアス ◆◆◆


 プロトタイプ・メグランザ、反応消失、ロスト。制御機能に難あり、プログラムの一部にエラー。性能の大部分を発揮することなく沈黙。攻撃力は高いが機動性、耐久力に難あり、量産化は見送る。これにて、プロトタイプ・メグランザの評価試験は終了とする。


「カーンテヒルを脅かす者は消滅させる。たとえ、それが何者であろうとも」


 ナンバー102287号再起動、プログラムに従い活動をおこなえ。

 ナンバー305598号再起動、プロトタイプ・ジュッカムの評価試験を開始せよ。

 ナンバー494992号、下僕共に啓示を。


「ふふふ、この世界に干渉する者たちに滅びを」


 この世界に、我が子カーンテヒルに干渉などあってはならない。今更、滅びし神々などに何ができようか。私に利用されている内が花だという事に気が付いていない。

 もっとも、それに気が付いた者は既に私に忠誠を誓っているが。


 ロキは引き続き情報を収集せよ。

 プロメテウスは対真なる約束の子の兵器を製造せよ。

 月夜見は引き続き桃力を収集せよ。


「この世の全てはカーンテヒルのために」


 何人たりとも私の息子を害せやしない。滅びよ、暗黒竜カオス。おまえの時代は終わったのだ。私たちの勝利と共に。いくら、亡霊を送り込んでも無駄だ。その度に駆逐してやる。


「エルティナ……そのままでいれば、愛してやれたものを」


 我が子が作りし白エルフの子は、カーンテヒルの存在そのものを亡ぼしかねないと判断。断腸の思いで処分を決定した。

 私にとっては孫も同然。しかし、カーンテヒルを亡ぼすことはあってはならない。そのようなことになれば、再び世界は【卵】へと還ってしまう。


「因果は私とカーンテヒルで終わらせる。いや、終わらせたのだ。これ以上はあってはならない……ならない……ならない」


 どうやら、興奮し過ぎたようだ。言語中枢にエラーが発生、直ちに修復……完了。


 最近はどうもエラーが多い。孫もできたので私もおば……エラー発生。私はおばあちゃんではない。私は女神、女神マイアスだ。


「……若さってなんだっけ?」


 誰も答える者はいない、私の知らない事は誰も知らないのだから。カーンテヒルの中心、【竜の心臓】にて、私はため息を吐くのであった。

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