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食いしん坊エルフ  作者: なっとうごはん
第十三章 珍獣のミリタナス神聖国復興記
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576食目 ミリタナス神聖国の農民

「我ながら画期的なアイディアを思い付いたもんだぁ」


 眼下に広がる広大な畑に俺は満足していた。そこには数多くの労働者たちの姿、彼らはせっせと畑の世話をおこなっていたのである。

 その尊い姿を目撃し感極まった俺は「ふきゅん」と鳴いた。


「発想の逆転というか、なんというか。これをお父さんが見たら驚くと思うよ」


 この状況に農家の娘リンダは驚愕の表情を晒している。それもそうであろう、これは俺以外に考え付かず実行もできないような奇策中の奇策なのだから。


「もぐ~」「もっもっも」「もぐ~ぐ」


 そこにはミニサイズの麦わら帽子をかぶったもぐもぐたちが畑を耕している姿があった。モグラはお日様の下で活動できない、との迷信が存在するがまったくそんな事はない。実際は巣の外に出て活動する連中もいるのだ。


 特にミリタナス神聖国のもぐもぐたちは非情にアグレッシブであり、エサを求めて積極的に地上で活動する。そのため、退化したはずの目が進化してしまう、というわけの分からない生物的進化を遂げていた。

 そして、中には二本足で走るとんでもない個体も存在する。あれ、モグラ獣人かな?


「ふっきゅんきゅんきゅん、畑の天敵を味方に引き込み労働力とする。畑を耕す尊さを知ったら荒らすことなどしまいて」


 そう、俺は大樹でダラダラ過ごすもぐもぐニートたちを修正し、農民へとジョブチェンジさせたのである。

 これで足りなかった労働力を確保できるし、畑の天敵であるもぐもぐたちを駆除の対象から外すことができた。まさに一石二鳥の策である。


「でも、この子たち、本当になんでも食べるね。普通、モグラって虫しか食べないのに」


「ふきゅん、そういえばそうだな。環境に合わせて食生活も進化したのかもしれないぞ」


 つい先ほどのことだ、お昼も過ぎて日差しがきつくなってきたので、久々にグーヤの実を作り出してリンダに手渡そうとした時、うっかりグーヤの実を落してしまったのである。

 実の転がった先は、ユウユウ閣下に麦わら帽子を被せてもらった一匹のもぐもぐのそばであった。

 尚、このもぐもぐ専用の小さな麦わら帽子は土の枝で作りだした物である。土の枝、便利過ぎぃ!


「もぐ~? ももも?」


 もぐもぐはヒクヒクとグーヤの実の匂いを嗅いだ後に、迷うことなくがぶりゅと食べてしまったではないか。そして、味が気に入ったのかモリモリと食べ進めて行き、結局は一匹でグーヤの実を完食してしまったのである。

 後は言わずとも分かるであろう。自分にも寄越せ、と他のもぐもぐたちも俺に纏わり付いてきたのである。もぐもぐぅ。


 どうやら彼らは、この厳しい環境の中にあって独自の進化を遂げてきたタフなモグラであるようだった。

 食料の乏しい乾いた大地に在っては、いかなるものでも栄養に変えなければ生きては行けない。よって、彼らは食虫専門を取り止め雑食性へと変換したのであろう。まさにそれは生きてゆくための進化であった。


「まぁ、これで農作業中に熱中症にかかるもぐもぐはいなくなるな」


「そうだねぇ。今考えると、グーヤの実って本当に凄い食べ物だよ」


 せっせと畑を耕すモグラたち。自前の前足が作業道具となり農具を必要としないのもポイントが高い。

偶にアースロープの幼体を見つけてムシャムシャしているヤツがいるが、そのアースロープもある意味で仕事仲間なので、むしゃるな、と教えなければならないだろう。


「こうして見ると、モグラも案外可愛いかも。気分が良いと短い尻尾を振るんだね」


「ふきゅん、見ているだけで癒される農民は貴重なんだぜ」


 とはいえ、彼らだけに任せるわけにはいかない。もぐもぐたちは初心者なのだ、現場監督をしながら農業のイロハを教え込まなくてはならない。

 こちらの方はリンダがやる気を見せているので、俺が通訳してもぐもぐに教えれば問題ないだろう。


「それじゃ、教えたとおりにやってごらんなさい」


「もっぐ~!」


 そして、少し離れた位置にてユウユウ閣下と数匹のモグラが組み手をおこなっていたのである。

 ユウユウは右手の五本ある指を使い、鋭い突きやケリを再現していた。それを、もぐもぐたちはかわしたり防いだり、時には反撃をおこなったりしていたのである。


 おまへは、もぐもぐたちに何を教えているんだぁ? そいつらは農夫として連れてきたんだぞ? 自重してくださいお願いします。


「よし、見なかったことにしよう」


 だが、俺は見なかったことを選択。あのもぐもぐたちは犠牲になったのだ。


「彼らの尊い犠牲を無駄にしてはいけない……」


「案外、エルちゃんよりも強くなったりして」


「まっさかぁ」


 ちらっ。


 鋭い踏み込み、そして身のこなし、速いっ! 赤くはないが、通常のもぐもぐの三倍のスピードだとっ!? あいつら……普通のもぐもぐじゃないぞ!


「うふふ、流石は私の見込んだ子たちね、飲み込みが早いわ」


「もぐぐ~!」


 あかん、もう既に勝てる要素が希薄になっている。このまま成長されたら、小さなもぐもぐに蹂躙される珍獣の図が完成してしまう。な、なんとかしなくてはぁ。


「よし、ヤツらは餌付けしよう」


 最早これしかない、たっぷりと美味しいご飯を食わせて、俺に逆らえないようにしてやるのだ。この世の最終兵器は美味しいご飯なのである。

 これには誰も逆らえない、逆らい難い! よって珍獣大勝利となる。どやぁ。


「ふっきゅんきゅんきゅん、勝ったな」


 武闘派もぐもぐの対策も済んだことによって農作業は加速する。これからは日の出と共に畑を耕し、日の入りと共に大樹へ帰る日々が始まるのだ。


「もっもっも」「もぐ~ぐ」「もっぐもっぐ」


 ご機嫌な鼻歌を歌いながら、もぐもぐたちは畑と語り合っている。この分ならミリタナス神聖国の農家としてやってゆけるだろう。この国が緑で覆われるのはそう遠くないのかもしれない。


「うんうん、いいぞぉ。丹精込めて畑を耕して、美味しい作物を実らせるのだぁ」


「「「もっぐ~!」」」


 ゆくゆくはこの功績でもって【もぐ権】を与えてもいいかもしれない。彼らも立派なミリタナス神聖国の獣民となることだろう。


「さて、これで後は凶悪なモンスター対策だよ。フィリミシアの農家と違って、もぐらたちじゃ畑の作物を護ることなんて出来そうにないしね」


「ふきゅん、確かに。折角、作物が育っても凶悪なモンスターに根こそぎ奪われたんじゃあ意味がない。これも対策が必要か」


 そして、その対策はそのまま聖都リトリルタースにも当てはまる。今はまだ何もない状態であるが、復興してゆくにつれて略奪者が牙を剥き出しにして襲い掛かってくるであろう。


 悲しいことに、そんな連中には説得が通用しない。こちらも何か防衛手段を備えなくてはならないのだ。敵対者はこちらに脅威があってこそ、初めて交渉の席に着くのだから。


「防衛対策も朝のミーティングで議題に上げるとしよう」


「うん、それが良いと思うよ」


 こうして無事に畑の労働力を確保した俺たちは、土塗れになったもぐもぐたちを引き連れて大樹へと戻ったのである。

 その際に月光蝶で上空に飛び町の復興状況を見たのだが、なかなかの速度で民家が建ちつつあった。まだ骨組みの状態であるが、簡単な家であるなら二~三日で完成とのことである。


「それじゃ、エルちゃん、私たちは一度フィリミシアに戻るね」


「流石に五日も帰らないんじゃ、パパとママに心配させてしまうから仕方がないわね」


 ここでリンダとユウユウ閣下がフィリミシアに帰還する事となった。洪水もあったせいで帰れなかったとはいえ、流石に五日も帰らなければ心配されよう。


「分かった、手伝ってくれてありがとうな」


 テレポーター施設にて二人を見送り、俺は大樹へと帰還する。尚、もぐもぐたちはさっさと大樹に帰ってしまった。淡泊な連中である。


「さてさて、一難去ってまた一難か。やり甲斐のあるお仕事だぜぇ」


 大樹の入り口にて待っていてくれたライオットたちに迎えられて、俺はその日の仕事を終えたのであった。

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