5食目 森の神様
現在、俺は森を出るため、ある場所に向かっている。
それは食材を求め、フラフラと森を彷徨っていた時のことだった。
森の中央辺りなのだろうか?
木々が人工的に、取り除かれた痕跡がある場所にデッカイ竜の石像が鎮座していた。
最初見た時はビビったものだ。
「ふひょあぁぁぁぁん!!?」
奇妙な悲鳴を上げた後……腰が抜けた。
石像でなければ「オマエマルカジリ」されていたことだろう。
……が、一向に動かないので、よく見てみると石像だったわけだ。
「ふぅ……ビビらせやがって、俺が本気だったら、お前死んでるぞ?」
と、尻餅を搗きつつ……虚勢を張るのを忘れない、俺ステキ。
でもまあ、ようやく人工物らしき物を発見できたので、この世にまさかの俺一人説、が覆ったわけで……いや覆ってないか。
いまだ、俺以外の生物を発見できてないのだから。
でもこれ幸いにと、結構な頻度で今日の出来事をこの石像に報告していた。
ぶっちゃけ一人で寂しかったから、憂さ晴らし的なものだったのかもしれない。
勝手にこの森の神様として、一人で彼を祀り上げていた。
故に、今日この森を出ることを、報告しに向かっているわけだ。
行き慣れた道を進む、とそこに静かに佇む竜の神様がおられた。
相変わらず貫禄半端ねぇな。
六枚の大きな翼、六つに分かれた太い角。
尖った竜鱗に覆われた逞しい尻尾。
何より精悍で威厳のある顔。びっちり牙生えてて超怖い。
そして、超デカイ……どんだけデカいんだ? 十八メートルくらいか?
某機動戦士くらいあるんじゃねえかな?
周りの木が、それ以上あるから目立たんが。
俺は、神様の足元に歩み寄り報告をする。
「神様……今日、俺はこの森を出ます。色々あったけど、やっぱり外の世界が見たいんです」
今まであった事を思い出す……碌なことがねぇぇぇぇぇぇっ!?
なんだよ!? 全裸幼女って!?
桃以外、副作用食材って殺しにかかってるだろ!!?
ちょっと、この森にいるメリットを考えたが……あんまりなかった。
桃あれば、どこでも生きていけるし……流石、桃先生マジパネぇ。
「ま……まあ、今まで生きてこれたのは神様のお陰です。本当に有難う御座いました」
深々と頭を下げる。
こういうのは、しっかりしないとな。
一に礼、二に礼、三四がなくて、五に礼だ。
「では、行ってきます」
再度礼をして、森を出るため、その場を立ち去ろうとする。
カチャン。
何やら金属の音がした。なんだか懐かしい音だ。
音がした辺りを見ると……そこにペンダントがあった。
持って行け、とのことだろうか?
ここはファンタジー世界……こういうことも、あるのだろう。
要は世界救いに行け! 50Gと魔王を撲殺できる棒をやるから、って流れで。
俺は、そんなことしないがな!
まあ、くれるなら貰っておく。
「ありがとうございます……では、これで」
俺は、その八つの濁った石が付いた、丸い豪華な紋章付きペンダントを首に下げ森を後にした。
そして今……俺は森の出口にいる。
そこには広大な草原、青い空、吹き渡る風……まさに、ファンタジー世界というものだった。
なんと、空気が美味しいことか。
なんと空が青いことか!
俺は感動のあまり、暫くそこを動けなかった。
「すげぇ……」
思わず口に出る、ありきたりな言葉。
でも、それは素直な感想であった。
そして気づく重大な事実。
「俺全裸のままだわ……」
俺の明日はどっちだっ!?