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食いしん坊エルフ  作者: なっとうごはん
第九章 神級食材を求めて
440/800

440食目 魂

 ふきゅんふきゅんと走ること三十分ほど、途中で休憩を挟むも無事に目的地へと到着した。

 途中で休憩した場所では、かつてここで暮らしていたであろう人々の名残を確認できた。といっても、それらはかなりの年月を経ており、正確な情報を得るには難しかったので、だいたい百年以上前のものでいいんじゃね? という結論にとどめる。俺は学者じゃないから多少はね?


「あれが、あの女のハウスねっ!?……げふっ」


「……エル、また血を吐いたの?」


 ネタを使っただけだというのに吐血した。女喋りに過剰反応する俺の身体は不治の病に違いない。

 恐らくは男に戻りたいという自分と、女で生きるしかないという自分が激しくせめぎ合っているのだろう。その結果、現在のところ男派が優勢であるようだ。吐血はその戦いの余波で胃が傷付いたものだと思われる。

 このままでは生活が不便になるので、なんとか和解してもらいたいものだ。


 チユーズ達に損傷した胃を速やかに治療してもらう。最近のチユーズ達は大仕事がないので、非常にだらけ気味であるが、これから見る少女を見れば、その態度を一変することであろう。


 ただ、チユーズ達でも少女の症状を回復させれるかどうかは不明だ。治癒魔法は確かに便利ではあるが、万能ではない。それはプルルの『魔力過多症』を治せなかったことで理解している。

 だが、俺は治癒魔法の、そして治癒の精霊達の可能性を信じている。今日がダメでも明日、明日がダメでも明後日がある。肝心な事は諦めないという事だ。諦めなかった者のみに、奇跡を起こす権利が与えられるのだから。


 ヒュリティアがドアをノックして家の中へと入った。家自体はボロボロなのに何故かドアだけは真新しいことに違和感を覚える。誰か壊してしまって修繕したのだろうか?


「……アルウィーネさん。この子が可能性の子、エルティナよ」


「この子が……って、白エルフじゃないの。しかも、貴重な女の子。とうの昔に白エルフは絶滅したものだと思っていたわ」


「ふきゅん、そう言えば、俺は絶滅危惧種だったのを忘れていたんだぜ」


 家の中に入ると全裸ボインさんが出迎えてくれた。確かにヒュリティアが教えてくれたように、植物と人間が合わさったような容姿だ。比率的には人間の部分が多いと思われる。頭の上に咲いている大きな赤い花が特徴的だ。

 後、巨乳。たぶんロフトが見たらヤヴァイ、間違いなくヤヴァイ。

 全体的に極めて優れた容姿であるので、全裸というイャンパクトは致命的な破壊力を持つに違いない。やはり時代は裸族なのである。俺も彼女を見習わねばなるまい。


「……アルウィーネさんは服を着ないの?」


 なんということをっ!? 彼女に服を着させるだなんて、とんでもない!


「服を着ると葉を傷めちゃうから着ることはないわ」


 そう言った彼女の身体を観察すると、確かに所々に小さな可愛らしい葉っぱが生えている。一見して無駄なようにも見えるが、彼女はこの葉がないと上手く歩けなくなるのだと説明した。

 恐らくは、この葉が彼女のセンサー的な役割を果たしているのだろう。にゃんこの髭みたいなものだな。


 互いに軽く自己紹介をすることになった。ヒュリティアとアルウィーネさんは既に面識があるので、俺と彼女の自己紹介となる。


「俺の名はエルティナ・ランフォーリ・エティル。ラングステンの聖女で桃使いもやっている白エルフだがまったく問題ない。その俺の活躍に近所のガキンチョ共はわーすごいなーあこがれちゃうなーと賛辞を送ってくるが俺は極めて冷静にそれほどでもないと返す。その姿勢にガキンチョ共はすごいなーあこがれちゃうなーと……」


「……この子はエルティナ。ヒーラーよ」


「おいぃ……自己紹介に乱入するとか反則でしょ? インターセプトは危険行為だってそれ一番言われてっから!」


 なんということであろうか。これからが一番盛り上がるところだというのに、ヒュリティアに自己紹介を強制終了させられてしまったのである! これは間違いなく訴訟問題となるだろう!


「私はアルウィーネ。植物をベースに人の……なんだかを混ぜ合わせて作られた存在よ。自分でも自分のことがよく分からないから、詳しく聞くのは勘弁してね?」


 胸を抱きかかえるようにして話すのは彼女の癖なのだろうか? より一層に乳房が強調されて、もしも免疫のないチェリーボーイが見てしまったら鼻血ぶーしてぶっ倒れることは確定だ。

 エレノアさんやミランダさんの超一流のおっぱいを経験していなかったら、俺も危なかっただろう。


「あら、気になった? ごめんなさいね……こうすると肩が楽になるの。もう長い事、こうしていたから無意識に胸を抱えてしまうのよ」


「ふきゅん、お気になさらずに。寧ろ、ありがとうございますなんだぜ」


「……エルはおっぱい好きだものね」


「おっぱいはママンのシンボルなんだぜ」


 おっぱいで思い出した、こんなところで時間を費やしている場合ではない。今尚、水槽の中で一人ぼっちでいる少女がいるのだ。早急に容体を確認し治療をおこなわなければ。


 俺たちはアルウィーネさんに案内をされて少女が収容されているという水槽の場所まで移動した。


 うむ、見事なくびれとおヒップだ。後ろからこう眺めると、その圧倒的な存在感がこうして確認できるわけだ。


 これはロフト達に連絡を入れたのは間違いだったのではないだろうか? こんな姿のアルウィーネさんを連中が見たら確実に襲い掛かってくるだろう。


 これは……別の意味で時間との戦いになってきた可能性が!?


「ん? おまえらか。案外早かったな」


「ふきゅん、グレー兄貴! 早い、もうついていたのか!」


 水槽の近くで大量の資料を手に抱えていたのはグレー兄貴であった。その表情は険しい。何かあったのだろうか? いやな予感が脳裏を過る。


「お待ちしていましたメカ。姫の容体は安定しているメカ」


「エルティナか? こいつを喋れるようにしたのは。こいつが、いちいち話しかけてくるから作業が進まねぇ」


「ようやく、会話に魔力を注げるようになったメカ。ずっと、喋りたくて、うずうずしていたメカ」


「なんか……すまんのぜ」


 どうやら、キャリード・エスがグレー兄貴の邪魔をしていたようだ。きっと俺の魔力を補充したことにより、他の機能に十分な魔力が行き届くようになったのだろう。


「ま、特に害はないだろうし気にしない方向で。ところで凄い量の資料だな。見せてもらってもいい?」


「あぁ、おまえさんは難しい本でも、すらすらと読み解いちまうってヒュリティアから聞いてるぜ。こちらからお願いしますってもんさ」


「任されたんだぜ。俺が資料を読んでいる間に、チユーズもこの子の問題点を中から調べてくれ」


『まかせろー』『ばりばり』『でばんだー』『ひさびさの』『えものだー』『ひゃっはー』


 わらわらと俺の中から元気よく飛び出してゆく五十体の治癒の精霊達。久々の大仕事とあって大張り切りである。もはや重症患者では彼らの治癒欲求を満足させることはできない。

 喜んでいいものかどうかは判断に困るところではあるが、彼らの苦しんでいる者を助けたいという意思は一度たりとも変わることはない。だから大丈夫だろう。

 良い意味でも悪い意味でも、彼らはぶれることがないのだ。


 その間に俺はグレー兄貴が持参した資料を読み頭の中へ叩き込む。俺の頭の中は食べ物のことと、医療関係の情報でいっぱいだ。だから、その他のことを忘れるのは勘弁な?


 グレー兄貴が集めた資料はかなりの量に及んだが、どれもこれも俺が既に知っている情報ばかりであった。おさらいになったり思い出したりで、なかなかに有益であったが、真新しい情報は一向に出くわさない。更には魔法の技術が中心であるため、機械の方に異常がある場合は俺達では対処のしようがないのだ。


 せめて機械に詳しいぽっちゃり眼鏡少女ウルジェがいてくれればよかったのだが……現在、彼女はライオットと共にミリタナス神聖国へと神級食材を探しに遠征中である。

 男ばかりのむっさいパーティーにしたのはヒュリティアのナイス判断だ。ウルジェはあの歳にしてレズビアンの気がある。これを機会に漢の良さを知ってもらえば改善するかもしれない。


 ライオット、ガンズロック、クラーク、ガイリンクード、キュウトという多種多様の少年で固めたパーティーだ。ガンズロックはともかく、容姿に優れた男で固めたパーティーであるので期待が持てるだろう。


 ……あ、キュウト、ヤヴァくね?


 バランスを取ってヒーラーを一人組み込むって決まりだったのだが、キュウトは魔力に触れると性別が女性になる奇病を患っている。最近はチユーズが暇つぶしに彼の体内を調査しているが、命に別条がないとあって本気に取り組んでいないので、相も変わらず原因は不明のままだ。

 もしも誰かが負傷してキュウトが治癒魔法を使用したりでもしたら……。


 俺の脳裏に銀色の毛並みを持つ狐獣人の美少女が、ぽっちゃり眼鏡少女に襲われるイメージが鮮明に映った。

 ビリビリと服を剥かれる狐少女は必死の抵抗を試みるも、狂気に染まった眼鏡少女には敵わない。何故なら、眼鏡少女は激烈サディステック美少女ユウユウの相棒を務められる超怪力、超タフネスを持ち合わせる狂戦士の一面を持っているからだ。


 遂には全裸にされた挙句、とんでもないポーズにされ顔を赤く染め上げる狐獣人の少女。長いまつげがふるふると震え、大きな目から溢れる涙が眼鏡少女に許しを請う。

 だが、それは悪手であった。その表情に興奮が限界を突破した眼鏡少女は危険な領域へと不法侵入を……!!


「……エル、どうしたの? 震えているようだけど」


「ふきゅん、一人の美少女が悪女の犠牲になったイメージが脳裏に流れ込んできたんだぜ。俺は見ているしかなかった……無力さに身体が震えてしまったんだ」


「……それも桃使いの能力なのかしら?」


「う~ん、たぶん違う。ま、あれこれ考えても手遅れだし、今はこの子を救うことに集中しよう」


 俺は可能性のひとつであるイメージを脳内からぽいっちょした。

 願わくば、キュウトが無事に帰ってきてくれることを。


 グッド・ラック、キュウト!


 といったところでチユーズが少女の身体からぞろぞろと出てきた。どうやら一通りの調査が完了したもようである。だがその表情はやはり浮かないものであった。


「どうだった? チユーズ」


『どこも』『おかしくない』『いたって』『せいじょう』『わけ』『わかめ』


「異常なしか。そいつは厄介だな」


 これはいよいよ以って謎が深まってしまった。チユーズがそう言うからには、間違いなく身体に異常はないのだろう。

 だとするのであれば、精神的なもの、あるいは……魂になんらかの異常があるとしか言いようがない。カーンテヒルはファンタジー世界なので、魂という概念が日常的に扱われるのである。


 こういう時は調べる項目が増えてしまうので困りものだ……とはいっても、それを調べて治すのが俺達ヒーラーのお仕事なのであ~る。つべこべ言わずに治療開始だ。


「アルウィーネさん、娘さんは生まれた時からこうだったのか?」


「いえ、生まれて暫くは私たちに反応してました。元気よく泣いたりもしていました。でも、生まれてから二年経ったある日、突然倒れてしまい、それっきり……」


「ふきゅん、二歳で精神的な問題というのは可能性が低いな。だとしたら、魂の損傷の可能性が高いか」


 彼女の供述が事実であれば精神的な要因は除外してもいいだろう。そもそも精神的なものは専門外だ。

 ヒーラー協会前ギルドマスターのレイエンさんはカウンセリングもできたのだが、俺は専門外である。スラストさんも顔が怖いので論外だったりする。

 尚、今の俺の発言には箝口令を敷くので、そのつもりでいるように。


 お説教怖いんです足を痺れさせたくないんですたまに桃師匠が増援としてやって来て絶望が半端ないんですマジ勘弁してくださいデスペナもういりません。


「……エル、魂が傷付くことがあるの?」


「はっ!? 助かった、もうダメかと思ったよ」


「……?」


 ヒュリティアに声を掛けられなければ、俺は勢い余って三途の川を渡ってしまうところであった。例によって、川の向こう側ではデイモンド爺さんが来るなと叫んでいた。いつか行くことがあれば、彼に謝らなければならないなぁ。


「結論から言えば魂は傷付くんだぜ」


「それは本当か? 魂が傷付いたらどんな症状が出るんだ?」


 俺の答えを聞いた皆が驚愕した。特にグレー兄貴の反応が強い。過去に何かあったのだろうか?


「基本的に多少の傷なら時間を掛ければ自然に治るよ。ただ、手足に痺れなどの後遺症が出てくるかな。基本的に軽傷であれば一ヶ月くらいで痺れは収まる。でも、魂が酷く傷つくと耐えがたい痛みを感じるようになるそうなんだ。肉体はまったく異常がないのに激痛が身体を蝕む。見た目は正常だから、普通のヒーラーでは手の施しようがない。最悪の状態になると目を覚まさなくなる」


「なんてこった。じゃあ、あいつも……」


 この魂の損傷の情報源はもちろん桃先輩だ。桃使いとなった時に基本的なことを叩き込まれたのである。

 彼には鬼との戦いにおいて最優先で守るべきは肉体ではなく魂であると教えられたのだ。


 魂には三つの層が存在していることが判明している。

 一つは肉体を支配する『支配層』。肉体と魂を接続する役割を果たしている層であり、頭脳を動かしあらゆる感覚を制御する層だ。また生存中に得た情報も蓄えられている。

 こちらは脳に蓄えられている一時的な情報とは違い全てを記録しているそうだ。ド忘れしても何かの切っ掛けで思い出すのはこのためである。

 また記憶容量も違う。例えるのであれば、脳ミソは外付けハードディスク的な感じであり、メインハードディスクは魂であるといえばいいだろうか。


 転生する際は、魂を一度フォーマットする感じで綺麗さっぱりさせてからの転生となる。たまーにフォーマットされないで転生することもあるそうだが、そいつらは大抵、大騒動に巻き込まれて有名になる。いわゆる、異世界転生ものの基本となるケースだ。


 後は偉い神様の気紛れとからしいが、そうするには輪廻の輪に帰る前の魂をゲッツしなければならないので、意外と大変な労力を要するらしい。

 閻魔様も目を光らせているから、見つかった場合は苦情の手紙が山のように送られてくるそうだ。


 もう一つは『意志層』。これこそが魂の本質とも言えるそうであり、これが白く輝くか黒く染まるかで善人、悪人と分かれることとなる。また、行動の理念を司る層でもある。

 尚、生まれたての赤ん坊の意思層は無色透明であるそうだ。

 また、その魂の力を量る際は、この層を基本的に調べるらしい。この『意思層』に愛、勇気、努力が蓄えられ、有事の際に放出されるそうなのだ。やはり、愛と勇気と努力は、魂の力そのものであるのだろう。


 最後に『核』。この部分だけは不変であり、どのようなことがあっても能力が変わることがない、とのことだ。

 つまりは愛と勇気と努力の基本数値がこの核に詰まっているらしい。

 この部分は『支配層』『意思層』を繋ぎ止める重要な部分であり、魂の本体とも言える最重要ヶ所である。この部分が破壊されると未来永劫に転生できなくなる。

 つまり……この『核』を破壊されることは『真の死』に他ならない。


「鬼との戦いにおいては魂を傷付けられる可能性がある。あいつらは別名『魂の破壊者』だからな。俺の〈ヒール〉は桃力を組み込んだ特別製だから魂も癒すことができる。全ては鬼との戦いのために魂が〈ヒール〉を独自に進化させていたんだろうな」


「……それじゃあ、この子も鬼に襲われた可能性があるってこと?」


 ヒュリティアが顎に手を当てて目を細める。鋭い指摘だが、鬼であれば生かして帰すことなどない。よって、別の存在である可能性が高い。これに当てはまる存在は限られてくる。


「ふきゅん、そうだな……それに類似した存在に襲われたってことかな」


「……鬼以外にそんなことができる存在って……」


「ソウルイーター」


「!?」


 そう、魂だけを喰らうという、とんでもない化け物だ。連中はゴーストのようでゴーストではなく、かといって実態を持たない厄介な存在だ。

 とはいえ、我らが桃アカデミーの学者様は、連中がどのような存在であるかを既に解明している。


 ソウルイーターは肉体を持たない魂そのものである。

 輪廻の輪に還ることを拒否した魂が時を経て歪み、怪物化したのがソウルイーターである。存在を維持するために他の魂を捕食しなければならないのだ。肉体を持たない彼らは物質などには興味がなく、魂の維持のために魂を喰らう。

 肉体を持たないがために物理攻撃は一切通用しない。また、魔法攻撃も効果が薄い。基本的に魂は魔力を支配するからだ。魔力に悲鳴を上げるのは肉体だけである。

 それ故にソウルイーターは遭遇するとほぼ助からない、という恐るべき化け物として伝えられてきた。

 でも、魂のスペシャリストである桃使いに掛かれば、連中はくそ雑魚ナメクジと化す。


 桃使いの対〈黄泉の光〉に開発された〈桃源光〉で瞬殺できるのである。陽の輝きに焼き尽くされ、輪廻の輪に強制連行されるのだ。まさに〈煮富螺無〉をぶっぱなされたスライムといったところか。

 陽の力は魔力ではないので抵抗は無意味なのだ。抵抗するには陰の力が必要になるが……連中ではその域に到達することはできない。ソウルイーターはただ単に飢えを癒すために魂を捕食しているに過ぎないのだから。

 陰の力は憎悪、妬み、殺意が極まらないと発現しないのだ。本能で活動する連中が到達できるはずがない。むしろ、憎悪の塊であるワイト辺りが、まだ可能性はあるだろう。


「なんにせよ、治療の糸口が見えてきたな。たぶん俺の領域の仕事になる」


「それじゃあ、私たちは邪魔になるかしら?」


 アルウィーネさんが、すまなさそうにそう申し出てきた。だから、俺は答えた。


「いや、この子のために祈ってくれ。祈りは力。力とは愛。愛とは奇跡なんだ。あなた方がこの子のために祈ってくれれば、きっと奇跡は起こるよ」


「はい……はい! 祈ります、この子が救われるのであれば、いくらでも!」


 そういうとアルウィーネさんは、目を覚まさぬ我が子のために祈りを捧げた。きっと、今までも祈り続けたに違いない。諦めなかったからこそ、彼女はヒュリティアと出会い、表示されなかった第三の選択肢を選ぶことができたのだ。

 それを提示できた我が親友ヒュリティアも経験が活きたな、と称賛したい。


「あぁ、奇跡は起こるよ。いや……俺が起こしてみせる!」


 俺は水槽に眠る少女に対し溢れんばかりの桃力を注ぎ込んだ。桃力は万能なる可能性の塊だ。奇跡だって呼び込んでみせる。


 俺はあらん限りの愛と勇気と努力の力を少女に分け与えた。

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