434食目 ミュラム最深部へ向けて
◆◆◆ ロフト ◆◆◆
諸君、俺はおっぱいが好きだ。
巨乳が好きだ。爆乳が好きだ。超乳だっていける。
俺は美乳が好きだ。ちっぱいが好きだ。微乳も好きだ。ぺたんこだって愛でる。
圧倒的な質量を誇るおっぱいが好きだ。あの柔らかくて温かい肉に顔を埋めたい。
圧倒的な乳肉に蹂躙されるちっぱいが好きだ。大きくなれよ、と慰めてあげたい。
ちっぱいにすら嘲笑される大平原が好きだ。優しく撫でてあげたい。
俺はおっぱいが好きだ。
町で、平原で、川で、山で、海で、ふるふると、または不動で、その存在感を誇示するおっぱいが大好きだ。
諸君、俺は大小さまざまな、おっぱいを望んでいる。
俺に付き従う乳房崇拝者諸君、きみ達は何を望む?
おっぱい! おっぱい! おっぱい! おっぱい! おっぱい!
よろしい、ならば……おっぱいだ!!
我々は全身全霊で、おっぱいの感触を堪能せんとわきわきする手だ。
だが、この欲望を抑え続けてきた我々に、最早普通のお触りでは満足できない!
パフパフを!
一心不乱のパフパフを!!
あの柔らかな肉に顔を埋め、完全制服するのだ!
我々が大人しくなったと勘違いしている連中の目を覚まさせてやろう!
たわわに実った乳房をわし掴み卑猥な形へと変形させてやるのだ!
待っているがいい、おっぱいよ! 我らは汝を征服しに来た!!
「起きるさね~。いつまで寝てるさね、ロフト」
「おっぱい、おっぱい、おっぱい」
「おっぱいじゃないさね。うりゃ」
頬に衝撃を感じ俺は目を覚ました。何かとても壮大な夢物語を見ていた気がするが、よく思い出せない。
ぼやける視界には友人のネズミ獣人の少女、アカネ・グランドロンが最近成長の兆しを見せている、ちっぱいを覗かせていた。
彼女はベッドで寝ている俺にまたがり、俺の両頬を手で押し付けているのだ。お陰で俺の顔は不細工になっていることだろう。そのため彼女は前屈みになり、シャツからちっぱいがこんにちはしたのだ。
「おふぁひょふ、あふぁふぇ」
「おはよう、じゃないさね。スラックはもう準備を終えて弓の練習にいったさね」
アカネは俺の頬から手を離し頬を膨らませた。最近は中性だった顔も女性らしくなってきていて、ちょっとした仕草にもドキッとすることがある。亜人や獣人族は成長が早いと言われているが、実際にその比較対象がいると、なるほどなと納得してしまう。
現にアカネは俺の上にまたがっているため、その柔らかな尻の感触を堪能できているのだ。
うむ、去年よりも更にできるようになったな。
「わかった、わかった。すぐに支度するよ。取り敢えず重いから降りてくれ」
「わちき、そんなに太ってないさね~」
「ケツがでかくなったんだよ」
「うぐっ、否定できないのが悔しいさね」
素直にアカネが降りてくれたので、俺は寝汗で湿った衣服を全て脱ぎ捨てた。
うむ、夏とはいえ朝はまだ涼しい。この解放感はなんとも言えない快感だ……と考えていたところでエルティナの能力を思い出した。
なんと彼女は全裸になることによって飛躍的に肉体の能力が向上するらしい。今はまだ無残な体形であるが将来に期待してしまう。そして全裸になってほしい。
そのような想いに馳せていると少女の悲鳴が上がった。それも極めて近くでだ。
「ぎゃぁぁぁぁぁぁっ!? わちきがいるのに、なんでパンツを脱ぐさねっ!?」
悲鳴の主はアカネであった。何故か俺のぞうさんを見て慌てふためいている。
「あ? 去年まで三人で着替えてたじゃねぇか。何を今更……おぶっふ!?」
アカネが顔に何かを投げ付けてきた。それが顔に命中した直後にドアが閉まる音と足音が聞こえたので、彼女がこの部屋から脱兎のごとく逃げていったことが理解できた。
顔に投げ付けられたのはタオルだ。俺はそれで寝汗を拭き身支度を整えることにする。
ううむ、なんとなくだが違和感を覚える。特に俺とアカネが二人だけでいると、どこかアカネの様子がおかしい。どことなく、そわそわしているというか……妙に落ち着きがなのである。
何か悩み事でもあるのだろうか? 最近は見事な尻にありつけていない、とのことでストレスが溜まっているのかもしれない。機会を見て『尻狩り』でもおこなうとしよう。
なんてことを言っている場合ではない。俺もおっぱい不足が危険領域に突入しようとしている。
このレンジャー駐屯所に着けば一人くらいは女性隊員がいるものだと予想していたのだが、見事にむさいおっさんしかいなかったのである。
つまり、現在ここにいる女性はクラスメイトである、ヒュリティア、ユウユウ、プリエナ、アカネのみであるのだ。
その内、おっぱい成分を補給できるのはユウユウ、そしてなんとかヒュリティアが候補に入る。
プリエナはおっぱいとしては未熟であるため候補には入らない。アカネもプリエナよりはマシだが……どうも手が伸びない。不思議なものである。
最もおっぱい成分を補給できるユウユウであるが、触ると洩れなくこの世からバイバイできる。
であるならヒュリティアであるのだが……彼女はガードが恐ろしく堅い。過去に何度か仕掛けてみたのだが、ことごとく回避、あるいは迎撃されて失敗に終わった。
このままいくと俺はおっぱい不足に陥り、世界の中心で『おっぱい!』と叫んで絶命してしまうだろう。このままではいけない、早く対策を練らなくては。
◆◆◆
とは言ったものの対策なんて思い付くはずもなく、無情にも神級食材探索開始の時間となった。
集まった面子は昨日のまま、俺達とルバール傭兵団だ。グレーさんはどうしても外せない仕事があるそうなので俺達にはついて来てくれないが、代わりに最深部までの道のりを特別に教えてくれた。
話だけを聞いていても、その道のりが困難であると容易に想像できて帰りたくなってくる。しかし、この話を聞いて妙にユウユウがやる気を出しているので無理だろう。
それにヒュリティアの顔付きも昨日までとは打って変わって引き締まっていた。なんというか彼女が纏う雰囲気からして違っている。いったい何があったのだろうか?
「……ありがとう、グレー師匠。行ってきます」
「あぁ、気を付けてな。大丈夫、おまえさんならできるさ」
「……はい」
グレーさんのごつごつした手がヒュリティアの頭に優しく載せられた。そして彼女は俺達に今まで見せたことがない喜びの表情を覗かせたのである。
正直、彼女がこんな顔を見せる日がこようとは思ってもみなかった。しかも、その対象がむっさいおっさんである。何かの間違いではないのだろうか、と疑ってしまうのも無理のない話であろう。
「……出発!」
ヒュリティアの凛とした号令を以って捜索隊は出発を果たした。
◆◆◆ ヒュリティア ◆◆◆
総勢四十七名の捜索隊は順調にミョラムの森の最深部へと向かっていた。
当初は進行が難航するものだと思われていたのだが、ルバール傭兵団の中に森での活動が得意な者がおり、彼らの助力もあって思ったよりも早いペースで最深部までの道のりを歩んでいた。
「……ムシカさん、ここら辺一帯に毒草が生えているわ。迂回しましょう」
「ん……いや、渡れないことはないさ。こいつらには少し悪いが蔓をこうやって……と。よし、いいぞ」
少し幸が薄そうな傭兵団員ムシカさんは大木に巻き付いていた蔓を使い、毒草を引き抜くことなく束ねて人が通れるほどの道を作り出してしまった。
「昔っから毒に対する抵抗力が高くてね。これでも昔は王宮で毒味役をしていたことがあるんだ。この程度の毒草なら問題ないよ」
「……そうだったんですか。ありがとうございます」
「この位、なんてことはないさ。全ては女神プリエナのために」
彼の登場からルバール傭兵団がただの傭兵団ではないことが明らかになってゆく。
朽ちて崩れ落ちた橋を簡単に修繕して使えるようにする者。私も知らないような野草を収集し食べれるように調理してしまう者。同じような景色が続く山道であっても正確に方角を認識できる者。獣の足跡を見て、それが何の足跡であるかを正確にいい当てる者など、一人一人ではレンジャーには敵わないものの、協力すればレンジャーたちに引けを取らない者たちばかりであったのだ。
「昔は山賊をやってたからなぁ……ルバールの兄貴に出会わなければ、こうして傭兵をやっていなかったぜ」
「おめぇ、山賊かよぉ? おれぁ、海賊さぁ!」
「えぇ~、マジかよ!? 俺はコソ泥やってたぜ」
「……暗殺者」
「「「マジで!? やっべ~!」」」
なんなのだろうか? この種類豊かな犯罪者たちは。それを纏め上げて真っ当とは言い難いが、一応堅気の仕事に導いたルバールという男はなかなかに気骨のある者なのかもしれない。
「あぁ~、プリエナたんのほっぺ、ぷにぷにしたいんじゃ~」
やっぱり気のせいかもしれない。
喋らなければ整った顔立ちにサラサラのロングヘアーの美男子。だが口を開けば残念な親父と化す。ルバールという男はそんな感じの男であった。
年齢はよくわからない。顔にはしわがなくパッと見は二十代のようにも見えるが、これほどの屈強な男達を従えるからには相当な経験と年月を経てきたに違いない。
「しまった! その手があったか! プリエナのほっぺなら、おっぱいの代わりになる!」
「ふえ~? ろふとくん、どうしたの~?」
ルバールの独り言を聞き付けたロフトが、突然プリエナのふっくらとした頬をふにふにと触りだした。
確かに彼女の頬は柔らかいが、エルティナと比べれば少々弾力が残る。本当におっぱいの代わりにしたいのであれば、エルティナの頬が最適であろう。無論、触らせはしないが。
「おお……この感触いける、いけるぞ! これで俺は後三時間は戦える!」
「ふに~」
「な、なんという暴挙!? 我らが女神になんということを! うらやまけしからん!」
「女神をお助けしろっ!」
ロフトの行為を目撃したルバール傭兵団は一斉にロフトに襲い掛かる……振りをしてプリエナに殺到していった。彼女を護るという名目を盾に、彼女にお触りするつもりだということは明白である。
「……ユウユウ。頼めるかしら」
「クスクス……お任せあれ」
ユウユウは腰に備え付けていた赤い鞭を手に取り、一切の容赦なく男達を叩き付けた。
「ほぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!?」
「うふふふふふふふふふ、そらそらそら。あはっ、これだけいると楽しいわね」
総勢四十一名の男共が洩れなくユウユウの鞭の餌食となってゆく。
この鞭はティアリ王国で発見された魔鞭だ。元はモグラ獣人のモルティーナが発掘した物であるが、彼女には扱えなかったのでユウユウに進呈したらしい。
よりにもよって、と思うがこれは運命だったのかもしれない。
確かに壮絶な痛みを与える鞭ではあるが、この鞭には対象の命を奪えない魔法が掛かっており、一定のダメージを与えると、そこからは快感を与えるように変化するらしい。
ユウユウも引き際を弁えているので過度な使用はしていないようだ。それにしても彼女には鞭が良く似合う。
「「「「ありがとうございます! ありがとうございます!」」」」
やがて瞳から光が消えた男達が「ありがとうございます」と連呼するようになって制裁は終了した。折角、いい感じに進んでいたというのに、この騒動で台無しになってしまって悔しい。ロフトには後で厳重に注意しておかなくては。
◆◆◆
紆余曲折あったものの、私たちは遂にミョラムの森の最深部付近まで辿り着いた。最深部と中層部の境目が分かるほど生えている植物が違っていたのだ。
「うは、こりゃすげぇな」
「……スラック、迂闊に触れないで。魔力を吸い取られたら大変よ」
「うおっと、忘れてた! あっぶねぇ」
彼が触れてみたくなる気持ちも理解できる。最深部の植物たちは私達が視たこともないような姿形をしていたからだ。エルティナなら、真っ先に引き抜いて口に放り込んでいることだろう。
「みんな、ここから先にはいかない方がいい。魔力を徐々にだけど吸い取られている」
クウヤが木の枝で地面に線を引いた。どうやらそこからが魔力を奪われる場所だというのだ。さて、ここからが正念場だ。早朝に出発して、現在はだいたい昼頃だと思われる。
サトウキビを捜索するにしても残された時間はあまりに少ない。精々、二~三時間程度といったところだろうか。あくまで、その日に帰還するのであれば……だが。
「……皆、話を聞いてほしい」
私は一日での調査は初めから不可能だと判断し、グレー師匠に数日間の調査を提案していた。
食料や水はスラックの〈フリースペース〉に詰めれるだけ詰めてもらい三日程度なら滞在できる。
問題はルバール傭兵団の食料だ。子供の私たちとは違い、彼らは男性の大人だ。食べる量も違うので、持ってきた食料を渡すと一日程度しか滞在できないのだ。
「なぁに、俺達のことなら気にすんな。寧ろ、分けてやるさ」
「そうそう、要は最深部に行かなけりゃあいいんだろ? だったら、中層部の獣を狩ってきて食べりゃいいのさ」
「俺達ルバール傭兵団の半分はベースキャンプの防衛に当たるから探索に集中しな」
「魔力の高い者達が護衛に参加するけどよ、だいたい十人いれば良い方か?」
どうやら、計画どおりいきそうである。彼らの逞しさに感謝し、私は最深部探索メンバーを集め、探索においての最終確認をおこなう。
「……探索には制限時間があるわ。それは時間ではなく私たちの魔力。誰か一人でも魔力が半分を切ったら帰還するわ。その際に『まだいける』はダメよ。少しでも半分を切ったら報告すること、いいわね?」
私の言葉にメンバーが頷いた。探索メンバーは私たちとクウヤ、ルバール傭兵団からはムシカさんと元山賊のマジカさん、元海賊のロダスさん、元暗殺者のキルソさんの他、六名が随行する。
「……それじゃ、出発!」
こうして、私たちは未知なる領域に足を踏み入れたのだった。