431食目 道、二つ
「……というわけなんだ」
次の日の朝、学校の教室にてエルティナが神気習得に集中するため、神級食材の捜索の指揮を私に託す旨を皆に伝えた。一部の者は不安げな表情を浮かべているが、これも仕方のないことだろう。
何故なら、私は今まで皆の指揮をおこなった事など、一度たりともないのだから。
「期間は……一週間程度に抑えるつもりだ。それまでに神気を習得して、お米と醤油を無限に作れるようにしておく。皆はヒーちゃんに従って神級食材を捜索しておいてくれ。まぁ、見つからなくても、責任を問うような事はしないんだぜ。もともとが在るかどうかも分からないような物だしな」
彼女がそう説明するとクラスの皆は理解を示した。誰しもがエルティナの案を否定することなく受け入れたのだ。
こうして考えると、彼女の持つ仁徳や信頼は計り知れない。クラスの皆と出会った当初は魔法がろくに使えなく、しかも身体能力で劣るエルティナはバカにされていたのだが、次第にその明るい性格と何事にもめげず諦めないという根性が認められ、次第にクラスの中心人物へと上り詰めていった。
クラス一の問題児、ユウユウ・カサラが彼女のことを認めているという点も大きい。彼女に認められるかどうかで、このクラスを指揮できるかどうかの資質を量られるのだ。
私には縁がないと高を括っていたのだが、どうやら甘い考えであったことを認識させられた。
「……皆、取り敢えず、エルが神気を習得するまでよろしく」
皆に協力をしてくれるように胸の内を伝えようとするも、口から出てくるのはありきたりな言葉だけだ。自身でも理解しているが、私は口下手であり会話も上手ではない上に顔に感情が現れない。よって、周りからはクールなヤツと認識されているが実はそうではないのだ。
私は人一倍に周りの反応を気にする小心者であり、なるべく自分に被害が及ばぬように気を配ってきた姑息な黒エルフなのである。
エルティナのように、自身が傷付くことも躊躇わず相手のことだけを考えて行動するだなんて、私には到底できない行動だと思う。でも、それこそがクラスの皆の信頼を勝ち得た要因だ、ということは頭の中で理解はしていた。
「ま、一週間程度なら、誰がやっても変わらないだろうからな」
「メルシェ委員長よりはマシなんじゃないの?」
「そうそう、冷静沈着だしな」
「何より、ケツが大きくても鈍臭くない」
「ふえぇぇぇぇぇっ!? どういうことですかっ!?」
メルシェが私との引き合いに出されて笑いが生まれた。だけどもメルシェはこの異様な能力を持つ者ばかりが集まったクラスにあって、よく皆を纏めていると思う。
確かにエルティナが皆を纏めている感があるのは否めないが、普段の何事もない日常では彼女の誘導に従って皆が動くのだ。後、彼女の想い人、フォルテの支えも大きい。
「ヒュリティアがリーダーか。へっへっへ、やる気が出てきたぜ」
「あ、ダナンは引き続き、ララァとコンビを組んで露店街で調査な」
「……!?」
「……ききき……大事なお仕事……だから……」
妙なやる気を見せていた赤髪のっぽのダナンが、エルティナに引き続き露店街を調査する役目を頼まれた。その頼みを聞き届けて、彼は口を大きく開いて放心してしまったのである。
そんな彼の腕を歳不相応な乳房に挟み、ニヤニヤと少しばかり淫らな笑みを浮かべながら、ダナンを私から遠ざけてゆくのはカラスの鳥人少女ララァ・クレストだ。どうやら彼女はダナンに気があるようで、露骨にダナンに近付く同年代の少女を牽制していた。
別に私はダナンに気があるわけではないので、素直にララァとダナンの行く末を応援している。というか、このクラスではほぼ全員が彼らの仲を『恋人同士』として認識しているのだ。
それに気が付いていないのは恋に盲目になっている彼女と、鈍感なのか気付いていない振りをしているのか判断に困る彼くらいなものだ。
「んで、リーダーさんよ。早速だけど予定を聞かせてくれないか」
鷲の鳥人オフォールが早速予定を聞いてきたので、私は彼に簡潔に答えた。
「……えぇ、以前、展望台で得た神級食材と思われる情報がいくつかあったと思うのだけど、それらを同時に捜索するわ。捜索場所の土地勘がある者が現場の指揮に当たるの。いちいち大人数で固まって捜索するよりも効率は良いはずよ。……上手くいけば同時に複数の神級食材が入手できるかもしれないから」
私はこのような質問が来ることを予め想定していたので、昨日の晩からある程度シミュレーションを繰り返しておいたのだ。
全てをアドリブでこなすエルティナとは違い、私は想定外の事態には柔軟に対処できるかは怪しいからだ。その地味な努力の甲斐あってか、私の案に皆は互いの顔を見合わせて妙な納得をしていた。
「言われてみればそうよね? 何も捜索が、ひとパーティーだけって決まりなんてないのだから」
「うはぁ、こりゃ盲点だった。誰も気が付かなかったのかよ?」
「やっぱ、リーダーが変わると、こうも違うんだなぁ?」
「おいおい、なんだよ? エル。その『ヒュリティアは俺が育てた』的な顔は」
「ふっきゅんきゅんきゅん、流石は俺の親友だぁ……」
どうやら私の案を受け入れてくれるようである。ただ単に効率だけを考えれば、この計画に行き着くことになる。しかし、どうも我がクラスは一塊になって行動する傾向があって、なかなかこの考えに行き着かない。仲が良い、とも取れるのだが……。
その分、安全性が若干失われるが仕方がない。私達……いや、プルルに残された時間はそれほど多くはないのだ。私達の探索の成否によって、彼女の肉体の神化が失敗する可能性も大いにあり得るのだから。
◆◆◆
放課後、アルフォンス先生に複数のパーティーによる同時探索の案を伝え、それを承認された私は食材の情報を持つ者をリーダーとし複数のパーティーを結成することにした。
なるべくバランス良くパーティーを組ませるため、戦闘能力の高い者を必ず一名ほどパーティー内に編入する趣旨を伝えた。その結果、なかなかにバランスの取れたパーティーができあがったと思う。
……私のパーティー以外は。
「うは、余った面子がこれかよ」
「……みたいね、エル」
正直な話、頭が痛くなってきた。
私は弓術の師であるグレー師匠から、とある森で妙なサトウキビを食べたことがあるとの情報を仕入れていた。よって、私をリーダーとして、その森に赴くことになったのである。
自慢ではないが森の知識に関してはクラス内の誰よりも豊富だと言えよう。その気になれば独りでの探索も不可能ではない。でも私は仮にもリーダーを任された身であるので単独行動を取るわけにはいかないのだ。従って今回はクラスのメンバーを引き連れての訪問となる。
だが、問題なのはその面子だ。他のパーティーのバランスなどを調整し自身のパーティーを後回しにした結果、とんでもない連中が私のパーティーメンバーに決まったのである。
まずはクラス一の変態少年少女、ロフト、スラック、アカネ。そして、戦闘力皆無の狸少女のプリエナ。まぁ、彼女は治癒魔法の使い手であるので、そこまで問題ではない。問題なのは……。
「クスクス、貴女の活躍を見せてもらおうかしら?」
「……善処するわ」
最後のメンバーは、このクラス最大の問題児ユウユウ・カサラだ。
まさか彼女が残ってしまうとは思ってもみなかった。よくよく考えれば他のパーティーのバランスを整えれば、突き抜けた能力の彼女が残ってしまうのは当然だったというのに。
済んでしまったことは仕方がない。今更、面子を変更することなんて、できるわけがないからだ。
しかも、ユウユウ・カサラはどういう理由かはわからないが妙に探索に乗り気である。いやな予感が脳裏を過ぎ去ったもののどうすることもできない。杞憂であることを祈るばかりだ。
◆◆◆
探索は明日の早朝に出発することが決まった。エドワード殿下の計らいでフィリミシア城の〈テレポーター〉を使用させてもらうことになったのだ。
目指す場所はラングステン王国エルタニア領の南西にあるミョラムの森。ここは人の手が入っているものの、希少な野草やキノコなどの自然の恵みが多く残っている場所である。また、グレー師匠の主な活動拠点であり、数多くのレンジャー隊員たちが日々、豊かな森の見回りをしているのだ。
そんな秩序が保たれている森にあって、人の手が届かない場所がある。その場所こそ、私達が目指す場所であるのだ。
そこは森の最深部。かつてグレー師匠が一度だけ到達したことがある、という場所には疲れ果てた身体を瞬く間に癒すというサトウキビが群生しているのだという。
一部を持ち帰り植えてみたものの、生えてきたのはごく普通のサトウキビであったことから、その場所でしか育たない特殊な食材だということが判明した。
この事により、ミョラムのサトウキビは神級食材である可能性が期待できる。
「……水筒、非常食、ナイフ、薬に包帯……」
私はくたびれたリュックサックに必要と思われる道具を厳選して詰め込んでゆく。魔法が使えない私は〈フリースペース〉を使うことができないからだ。
「……ええっと、後は……ラングステンゼリー」
「ぷるぷる」
「……じゃないわ、また来たの? あなた」
道具を手に取りながらじっくりと吟味していた私が手に取ったのは、半透明の緑色が綺麗な軟体生物、ラングステンゼリーであった。
軟体生物である彼らは、小さな隙間さえあればどこにでも侵入可能だ。
だが、彼らには帰るべき住処があり日が暮れると住処である洞窟へと帰ってゆく習性があった。にもかかわらず、この小さなラングステンゼリーは洞窟へと帰らず、どういうわけか我が家へと戻ってきてしまうのである。
幼い個体であるため迷子になった挙句に洞窟に戻るという習性が、私の家に戻るという習性に上書きされてしまった可能性もあるが……定かではない。
とはいえ、別に迷惑というわけではない。彼らラングステンゼリーの主食は『水』であり、たまに道端の雑草を取り込んで消化する程度なので餌を与える必要性はまったくない。そして性格は穏やかで人懐っこく、戦闘能力は皆無という人畜無害な存在だ。
ただ、基本的にラングステンゼリーはモンスターに分類されているので、公に飼うわけにはいかないのである。よって、基本的に放置、または好きにさせているのが現状だ。
「ぷるぷる」
「……まったく、こんな、おんぼろな家のどこがいいのかしら?」
軟体生物はその身をふるふると震わせ、嬉しそうに珍妙な踊りを披露した後、ひび割れて土間に放置しておいた、どんぶりの中に納まり寝息を立て始めた。彼、または彼女の定位置である。
「……変なのに好かれちゃったわ」
「きっと、ヒュリティアのファンなのよ」
「……おかえり、姉さん」
姉のフォリティアが仕事から帰ってきた。ということは、もう午後九時を回っている頃だ。我が家には時計がないので、月の高さや自身の眠気などでおおよその時間を計っている。
町の中心部に大きな時計塔が建っているのだが、いちいち見に行くのは面倒だ。いつの日か、我が家にも時計を導入したいものである。
「……私のファン?」
「そうよ~? だって、この子……貴女のダンスの練習を見て以来、ここに来るようになったんですもの」
ニコニコと笑いながら荷物を降ろす姉の言葉に、私はハッとなった。どんぶりの中ですやすやと眠るラングステンゼリーは私の踊りを見たくて毎晩ここに来ていたということに気付いたからだ。
眠りに落ちる前に見せた、あの珍妙な踊りは私に踊ってくれとの催促だったのかもしれない。
「……ファンか」
冒険から帰ってきたら、きちんとした踊りを見せてあげてもいいかもしれない。今だ未熟な踊り手である私だが、それを応援し支持してくれる者がいる限り、私は踊ることができるのだろうから。
◆◆◆
夜が明け、再び小鳥たちのさえずりで目が覚める。ねぼすけのラングステンゼリーはいつものように放置しておく。目が覚めたら子供達と遊びに外に向かうだろう事は把握していた。
暫くの間、私は留守にするが姉が構ってくれるだろうから寂しくはないはずだ。
姉の見送りを受けて私はフィリミシア城へと赴いた。もう顔馴染みである門を護る衛兵と挨拶を交わし〈テレポーター〉装置に向かうと、やはり想像どおり誰も来ていなかった。
まだ朝が早いということもあるが、我がクラスの者達はとてものんびり屋が多いのである。
仕方がないので空いた時間を利用して踊りの基礎練習をおこなうことにした。マディ師匠から教わった動きを忠実に再現し、この身体に覚えさせるのだ。
個人スキル〈再現〉。確かに便利な私のスキルではあるが、色々と制約もある。己の肉体レベルを遥かに超えるような力技は再現不可能だし、魔法が使えない私では魔法も再現失敗に終わる。
再現するスキルを見極め、己に再現できるか否かを瞬時に判断する判断力が必要になると共に、自分の限界を正確に把握していないと痛い目を見ることになるのだ。
そして再現可能なスキルをストックして置ける数は三つまで。だから可能であれば反復練習を重ねてスキルに頼らずに発動できるようにしておく必要がある。新しいスキルをストックすると、古いスキルは再現できなくなるからである。
選択して忘れることができれば使い勝手がいいのがだが、残念なことにストックの古い順から消滅してゆくことが分かっていた。
「……はっ、ふっ、はぁ、はぁ」
リズミカルに手足を動かしつつ、優雅にしなやかにその動作を魅せる。頭では分かっていても、これが相当に難しい。ただ動かしているだけでは誰も感動なんてしてくれない、そこに物語を感じるように動かし、尚且つ、これくらいできて当然である、という自信を醸し出さなくてはならない。その自信は見てくれる者に安心感を与えるからだ。
そして、努力などは当然の事であり、それをアピールしてはならない。マディ師匠の教えであるが、これが中々に難しい。人は努力を認めてほしいからだ。
私の場合は、エルティナに披露して褒めてもらうことによって、なんとか抑制している。大勢の人の前ではあまり踊らないのだが、これからは踊るべきかどうか悩んでいた。
実は私には二人の師匠がおり、共に尊敬するべき人であった。
一人はこれから赴く先で勤務しているレンジャー隊員のグレー師匠。弓の名手であり、森や山でのサバイバル技術、そして弓術を一から仕込んでくれた恩人だ。
もう一人はマディ師匠。月の踊り手とも呼ばれる稀代の踊り子である。ひょんなことで彼女と出会い、そして彼女の踊りを再現したことが切っ掛けで彼女に見初められ、半ば強引に弟子にされたのだが……これが中々どうしてか楽しいと感じてしまったのだ。
もともとは冒険者としてお金を稼ぎ、いっぱしの生活を送るのが将来の計画であったのだが、この踊りを覚えてくるにつれて冒険者としての将来像が揺らいできた。
冒険者は危険なクエストをこなして賃金を得るハイリスク・ハイリターンな職業であるが、踊り子はローリスクで腕前次第ではハイリターンであるからだ。
確かに今は鬼の脅威に晒されており力が必要だが、脅威が去った後では強過ぎる力は厄介なだけのものになってしまう。
だとしたら私が選ぶべき道は……いや、それだと急に襲い来る理不尽から逃れる術がない。いったい、私はどちらを選択すればいいのだろうか?
「ふっきゅんきゅんきゅん……踊りに迷いが見えるぞぉ」
「……エル」
「あぁ、おはよう、ヒーちゃん」
「……おはよう、エル」
思い悩み、踊りに乱れが生じていることをエルティナに指摘された。彼女には、いつも踊りを披露しているので少しのミスでも全て指摘されてしまうのだ。
しかし、いつの間に来たのであろうか? 踊りに夢中……いや、考え事に夢中になってしまい気が付かなかった。
「……いつの間にきたの? 全然、気が付かなかったわ」
「結構、前にいたんだぞぉ? だいたい三節目辺りから」
それならば、かなり最初の方から居たということだ。彼女も人が悪い、一言声を掛けてくれればいいのに。
「何か悩み事か、ヒーちゃん。動きに切れがなかったんだぜ」
「……エルは私の踊りをいつも見ているものね。えぇ、私は悩んでいる。自分の将来に」
エルティナはこういってはなんだが将来は既に決まっているようなものだ。
彼女はこの国の聖女であり、将来的にはエドワード殿下と結ばれるのだと皆が噂している。もっとも、いまだに彼女を狙っている男子たちは後を絶っておらず、殿下の牽制は激化を辿る一方であった。
それに比べて私は二つに分かれている道を前にして立ち止まり悩んでいる。二人の師匠は、まだ時間はあると言ってくれたが、本当にその道に進むのであれば、そろそろ決めないと一人前になるのが遅れてしまう。
どうせ、その道に進むのであるならば極めてみたい、と考えているのだ。
「……エルなら、二つある分かれ道のどちらかを選ぶとき、すぐに決められるかしら? 私の場合は冒険者と踊り子という道。選ぶからには、その道を究めたいと思っている。でも……」
「ふきゅん、グレー兄貴とマディさんか。どちらも良い人だから困るよな。その上で答えよう」
私の問い掛けに、エルティナは胸を張って堂々と答えた。
「俺なら両方選ぶ、つまり第三の道を強引に作り出す。どちらかを選ぶんじゃない、全て選んでしまうのが主人公タイポの宿命。彼らからの期待を全て背負い、迷わず進むのが俺の選ぶべき道。そう、誰かに言われたんじゃない、自分の意思で選ぶ道なんだぜ」
「……無茶苦茶ね、でも、エルらしい答えだわ。私にはできそうにないけどね」
眩しいくらいに迷いのない親友の答えに、私は強張っていた肩の力が抜けた。もし、エルティナが私の立場に置かれているとしたら、間違いなくその第三の道を進むだろう。
彼女の示す第三の道に興味がないわけではない。でも、それは想像を絶する苦難の道であることを容易に理解することができた。
エルティナは確かに体の能力が低く魔法もまともに使えない。だが、それと引き換えに膨大な魔力と、毒や病気に対して恐るべき抵抗力を持っている。それらが彼女を支える要因になっている、かといえばそうではない。
彼女は生まれもって強い心の持ち主なのだ。その強い心こそ、彼女の最大の武器であり、揺るぎない自信を作り出す要因になっているのだと推測している。
でなければ……友達の魂を取り込んで前に進めるわけがないのだ。そんな罪の重さに耐えられるわけがない。心の悲鳴を抑えられるわけがない。
心の弱い私なら、狂気に蝕まれておかしくなってしまうだろう。
「そんなことはない、ヒーちゃんもできるよ。だって、ヒーちゃんは強い心の持ち主なんだから」
あぁ、そんな笑顔を見せられたら信じてしまいそうになる。でも私は……。
「……煽て過ぎよ」
「ふきゅん、そうかなぁ」
といったところで、ぞろぞろとクラスの皆が集まり始めた。丁度良いタイミングであると判断し、この話を終わらせることにする。
集まった面子の点呼を取り、不在者がいないことを確認した後に出発と相成った。
「……じゃ、皆、健闘を祈るわ」
私の素っ気ない激励であったが、皆は気合いを入れてそれぞれの目的地へと向かっていった。そんな彼らを見送るのはエルティナと、プルル、ダナンとララァ、そしてエドワード殿下である。
何故かダナンはダバダバと涙を流して私達を見送っていた。どうしたのだろうか?
「……行ってくるわ」
「あぁ、幸運を祈るんだぜ! ぐっど・らっこ!」
「……ラックね」
そんなやり取りを交わして私達の問題児が集結したパーティーは〈テレポーター〉に入った。
これからどのような冒険になるかはわからないが、無事に済まないであろうことは確かだ。取り敢えずは全員フィリミシアに帰還できるように尽力しようと思う。
光に包まれ、それが晴れた後……私達はエルタニア領へと到着していた。