428食目 フィリミシアへの帰還
吉幸の山から数日かけて尾張国の城下町へと帰還した。到着した頃にはとっぷりと日は暮れ、町は民家から洩れる僅かな明かりでほのかにその存在を示していた。もっとも、空に浮かぶ月の輝きの方が明るいので人為的な明かりなどないに等しい。
人影も殆どなく、誰も夜の町を出歩いていない様子が窺える。フィリミシアの町とは大違いだと感じた。あの町は夜の方が人が多くなり活気付くのである。それは日中、畑で仕事をしていた農家の方々が癒しを求めて町の酒場や露店街の立ち飲み屋などに赴き、優雅なアフタータイムを満喫するからである。
ジュウジュウと音を立てる塩コショウを振り掛けただけのブッチョラビのバラ串を片手に持ち、もう片方には大ジョッキに並々と注がれた黄金の液体を持つ。戦闘準備を整えた農家の方々が大ジョッキ同士をぶつけ合い時の声を上げる。まずは問答無用で黄金の液体を喉に流し込む。最初の一口目でビールを飲み干してしまう者も多い。
続いてバラ串をがぶりとやる。口に収まりきらない肉汁が顎を伝いぽたりぽたりと地面に落ちゆく。誰も気には止めない。そこは露店街、地面は剥き出しの大地である。そこに居合わせる者は誰しもが大地へのお裾分けだと笑い飛ばす。
バラ肉を頬張る者は何度も咀嚼せずにすぐさま飲み込み、再びビールを口にし口の中に残る過剰な油を飲み流し、満足した後にげふぅと喜びに満ちたゲップを決めるのだ。
彼らは和気あいあいと、その日の農作業の内容を語り合い夜を更けさせてゆく。そして、次の日の朝早く、彼らはまた畑という名の戦場に出かけてゆくのである。
あぁ、俺も早く酒が飲みてぇなぁ。お茶の炭酸割りなんてちっとも美味しくない。
「ふきゅん、フィリミシアとは大違いだぁ」
「イズルヒでは夜は内職して寝る、という習慣がござりますゆえ仕方ございませぬ。しかしながら、夜に開く酒場も僅かばかり存在しているでござる。拙者らには縁無き場所ではござりますが」
「そっか~、まぁ、俺達がどうのこうの言っても仕方がないしな。城に急ごう」
既に日は暮れ、光り輝くお月様が空の上でまったりとしているが、時刻は午後七時半を回ったところだ。流石に信長さんも寝てはいないだろう。〈テレパス〉で連絡も入れておいたし、今頃は俺の報告を待ちわびているのかもしれない。
城門に到着すると門番がお辞儀をして巨大な門を開けてくれた。今度は顔を覚えていてくれたのか、すぐさま門を開ける行動に移ってくれたのである。
「エルティナ様、ご帰還! 吉幸衆討伐、おめでとうございます!」
門をくぐった先には、なんと城の人々が列をなして俺達を出迎えてくれていたのである。なんという憎い演出であろうか、こんなことをされたら思わず「ふきゅん」と鳴いてしまうではないか。
その列の最奥には信長さんと咲爛が並び立ち、その傍らに景虎が控えている。俺は下馬し信長さんの下へ向かい討伐の完了を報告する。すると、信長さんは満面の笑みで討伐隊を褒め称えた。
「こたびの吉幸衆討伐、見事である。少数精鋭とはいえ吉幸衆はその方たちの倍以上は潜伏していたであろう。それをことごとく討伐せしめた功績は計り知れぬ、この働きに報いる報酬を与えることを織田家の威信にかけて約束する。ささやかな宴の席を用意してある、勇敢なる者達よ、ゆるりとくつろぐがいい」
信長さんはどうやら討伐に参加した者全員を宴に招くようだ。それだけで既に褒美を頂戴したようなものである。思ったとおり、兵士達は一瞬キョトンとした表情を見せた後に大歓喜したのは言うまでもない。その様子を見て面白おかしそうに笑っていた信長さん。彼はきっとお茶目な人に違いなかった。
「さて、エルティナよ……討伐の完了をもって、そなたの地位と権限を返還してもらう。吉幸衆討伐の任、大儀であった。流石は世界にその名を轟かす者よ」
「ふきゅん、それほどでもありません」
実際にそれほどのことはしていない。吉幸衆を討伐したのはエドワード率いる討伐隊だからだ。俺は彼らからはぐれて、不思議な体験をしただけなのである。もちろん、このことは余すことなく信長さんに報告するつもりだ。きっと、彼も醤油の滝の顛末を知りたがっているだろうから。
◆◆◆
城内にある格式高い大広間に通された俺達が目にしたのは豪華絢爛な料理の数々だった。普段は名だたる武将を招いて酒宴の場とされるこの大広間も、今だけは討伐隊に参加した無名の兵士を労う憩いの場だ。
「はいはい、じゃんじゃんバリバリ食べてくださいね? まだ沢山ございますから」
「ぬっぽる!」
「うひゃあ!? その子を近付けないでください!」
この料理たちを作ったのはもちろん美津秀さんだ。彼女は腕にぬっぽるを抱えてメルシェ委員長に近付いた。何かを企んでいることは明白である。メルシェ委員長もそのことに気が付いているように見えるが、どちらかというと、ぬっぽるの接近を防ぐことに夢中になっているようだ。やはり、あの白濁の液体はトラウマになっているのだろう。
「そうであったか……醤油の滝は消え失せ、その瓶へと転じたというわけだな?」
「そうなんだぜ、ふたを開けて確認したら見事な醤油が入っていたんだ。味見をしてみてほしい」
俺は信長さんに対し取り繕うことを止めていた。いつまでも慣れない喋り方だとどうせボロが出るし、咲爛がニヤニヤしながら俺を観察しているからである。もう討伐の任も果たしたし丁度良いと開き直ったのだ。は~、窮屈だったぜ。
小皿に吉幸の醤油を注ぎ信長さんに味を見てもらう……が、その前に毒味と称して美津秀さんが先に小皿の醤油を味見してしまった。すると、急に彼女が苦しみだしたではないか!? まさかこの醤油は邪悪な者に対しては毒であったのか!?
「う、うううううう~うんまいっ! 美味いよ、この醤油! 流石はお醤油のお姉さん!!」
「たわけ、驚かすではないわ」
「いやぁん、私を心配してくれたのですね、信長様!」
くねくねとしな垂れてくる美津秀さんを物ともせずに醤油の味を確認する信長さんは目を見開き、すぐさま大皿のマグロと思われる切り身を箸で摘まみ、吉幸の醤油に付けて口に運んだ。咀嚼すること数回、ごくりと刺身を飲み込んだ彼の目には涙が浮かんでいた。
「間違いない、あの醤油の滝の味に相違ない。この芳ばしい香りに導かれなければ、余たちはこの世におらなんだ……感謝してもしきれぬ。よもや、再びこの味を味わえるとは思わなかったわ」
「醤油の滝は吉幸マンという超人……いや、『吉幸将癒』という神様の流した涙から生まれたものだったんだ。これから俺が話すことはとても不思議なことで信じられないかもしれないが……本当にあったことなんだ。それは彼らが遺したこの升と瓶が証明してくれる。今、聞かせよう、愛と勇気と信念に生きた漢たちの話を……キララ九十七世の戦いの記憶を」
俺は吉幸の山で偶然に出会ったキララさんのことを、この場に集まった人々に語った。崖から落ちた俺を救ってくれたこと、彼が敵討ちではなく悲しみを止めるために戦いに赴いていたこと、牛マンと吉幸マンとの因縁、悪魔御曹司との決戦、そしてキララさんとの別れ、大鍋仙人との出会いを隠すことなく語り尽した。
ある者はその不思議な話についてこれず酒に走り、またある者は涙を流しやはり酒を口に運んだ。話が熱き男達の戦いの場面になると、場に居た全ての者が興奮を隠すことなく話の内容にのめり込んだ。俺の口から語られる超人だからこそできる奇想天外な必殺技の数々に彼らは身を乗り出して聞き入ったのである。
そしてキララさんとの別れの場面になると皆一斉に小さな杯に入った酒を口に運び押し黙った。皆、目に涙を浮かべ肩を震わせていたのである。顔すら合わせたこともないキララさんのために、彼らは熱い別れの涙を流してくれたのだ。それはきっと、吉幸の山の中で戦った者同士の奇妙な友情なのかもしれない。
「惜しい漢を亡くしたな」
「確かにキララさんは逝ってしまった、この世にはもういない。でも、彼は俺に……俺達に愛と勇気と信念をこの心に確かに刻み込んだ。それに、彼らは俺にこの升と瓶を託していってくれた。この二つはきっと人を救う神聖なる『物』に違いないんだ。俺はこの二つが神級食材であると確信している」
「そうであったな、そなたは友人のために命懸けで神級食材を集めていると」
「あぁ……きっと、今もがんばってる。俺達の友達が」
俺は今も耐えているであろうプルルを想い、ぬっぽるのスープをグイッと飲み干した。
◆◆◆
次の日の朝、俺達は信長さんに別れの挨拶を済ませた後に城下町へと繰り出した。うちの困った王様への貢物を購入するためだ。それにしても天気が良い、この国に滞在して曇り空を見たことがないのは僥倖といえよう。心晴れやかにこの国を後にできるというものだ。
咲爛と景虎も同行している。当然といえば当然だ。彼女たちはラングステン王国に留学中の身であるため、俺達が帰国するのであれば同行しなくてはならないのだ。現在は特別待遇で授業が免除されているだけなので、このままイズルヒに残ったら出席日数が足りなくなって留年してしまう。それは恥ずかしいので避けてもらわなくてはならない。
「えるてぃな、ここの餅屋が良い草餅を売っておるぞ」
「あぁ、この店も変わりませんねぇ。ややっ、ずんだ餅が置いてあるではないですか!」
「おおう、このみたらし団子の色艶! 流石は伊達屋の餅は天下一品でござるな!」
伊達屋と書かれた看板店に入ると甘い香りが鼻腔に入り込んできた。カウンターに所狭しと並ぶ餅や団子の数々、それはみたらし団子や大福餅といったメジャーな物から枝豆をすり潰した餡を餅に塗したずんだ餅という地方特産の餅までも網羅していた。
この店はそれほど広くない店舗であるがお客でごった返しており、かなり繁盛していることが窺える。今もひっきりなしにカウンターの団子や餅を補充しているようで、奥ののれんから忙しそうに人が出入りしている。
「御屋形様、この出来たてがまた美味いでござるよ」
「ほう……折角だからお土産ついでに食べてゆくか」
「わっ、賛成です。どれもこれも美味しそうで目移りしますね」
ザインのこの一言で俺達は急遽団子の試食会へと雪崩込んだ。美味しかった物を王様への貢物にしようというわけだ。
早速、店の全種類の商品を一品ずつ購入する。結構いい金額になってしまったが、そこは気にすることはない。軍資金として王様から金一封を渡されているからだ。だが、これは決して賄賂ではないことを伝えておく。俺は皆に真実を伝えたかった。
「ふわぁ……この大福、とても甘くて美味しいです! それでいてしつこくないのが更に凄い!」
「うんうん、この粒餡とブルーベリーを混ぜ合わせた大福も意外に……口の中の甘い餡が舌を喜ばせた後に、ブルーベリーの果汁が口の中に広がり新しい味を作り出すね。酸味が良いアクセントになっていて僕は好きかな。お爺様は嫌がるかもしれないけど。あの人、超甘党だから」
「うまひ……やはり団子はみたらしに限るでござる」
「この大福……チーズが入っている。意外に美味い」
選考は難航した。あまりに種類が多く、それらがまた美味いからだ。俺としてはずんだ餅を推したいのだが甘党の王様には受けが悪い事は分かっているので自分用に購入するに留めることとする。現時点では普通の大福、みたらし団子、ぼた餅、そして……おはぎに練乳をかけるという暴挙をおこなった『練乳おはぎ』が候補に挙がっている。練乳おはぎを推挙したのはメルシェ委員長である。彼女もまた甘い物には目がない人物であった。またお尻が大きくなっても知らないゾ?
結局は一品に絞ることができなく、それならば全部購入してしまえと言うことで恐怖の練乳おはぎを含む四種類を軍資金が許す限り購入することにした。かなりの量になり店員たちは驚いていたが、せっせと商品を包んで渡してくれたので、受け取った品物を手あたり次第〈フリースペース〉の中へと放り込んでゆく。これでお団子たちが痛む心配はない。〈フリースペース〉さまさまである。
お団子ミッションを達成させた俺達は〈テレポーター〉が設置されている南良国を目指し、再び籠に乗ることになった。その際に偶然にも最初に乗った籠の男達と再び遭遇したので、今回も彼らの籠に乗ることにしたのである。
「うっほ、うっほ」という勇ましい掛け声に合わせて籠が揺れる。遠ざかる尾張国を俺はぼんやりと眺めていた。
滞在期間は一週間程度であったが濃い内容の旅であったことを否定する余地もない。俺の心に刻まれた漢たちの戦いの記憶、それは俺に友情の大切さを再認識させた。俺も彼らのように友情に厚い友人達に恵まれている。だから、俺は彼らに報いることができるよう強くなりたいと想いを新たにしたのだった。
◆◆◆
フィリミシアに到着したのは日が傾いてきた頃であった。少しゆっくりとし過ぎたかもしれない。途中の永久の梅で花見をしてしまったのが原因だろうが、あそこで美味い団子を食べながら花見をするという誘惑には勝てなかったのである。
これは俺が悪いのではなく、梅の花が幻想的だったからなのだ! お願い許して!
「なるほど、話は分かった。エルティナはやはり数奇な星の下に生まれたのだのう」
「あまり嬉しくはないんだぜ。それよりも、これ……モンちゃん達がいない内に早く」
「おおう、すまんのう。あまり甘い物を食べるなとうるさくての。じゃが、食べるなと言われれば食べたくなるのが人の性というもの……ふぉっふぉっふぉ、これは大切に食べさせてもらうとしよう」
帰還した俺達は王様に報告をすると同時に、あのお土産を手渡したのである。幸いにもモンちゃんことモンティスト財務大臣とホウディック防衛大臣は不在であったため容易に事が運び俺は胸を撫で下ろした。
彼らにこのことがバレたら俺も共謀罪として彼らにお仕置きされてしまう。以前のようにゴテゴテふりふりのドレスを着せられて城内を練り歩くのは勘弁したい。それを喜ぶのは彼らだけで、俺にとっては拷問以外の何ものでもないのだから。
「それで、その升に入った米と瓶に入った醤油が神級食材というわけじゃな?」
「うん、桃師匠に判別してもらうまではなんとも言えないけど、俺はこれらがそうであると信じている」
「うむ、ならば早急に見てもらわなければな。さて、エドワード、そなたはここに残れ。吉幸衆討伐の詳しい内容を報告してもらわねばならぬ」
「ええ、もちろんです、お爺様」
俺達はエドワードを残しヒーラー協会へと急いだ。この一週間、プルルは肉、肉、肉! 時々、桃先生という肉食系女子となっているのだ、早くホカホカの白米を食べさせてやりたい。逸る気持ちを抑えつつ俺達は急ぎ足から小走りへと、そして遂には全力疾走へと変化しヒーラー協会へ到着したのだった。
全然、逸る気持ちが抑えられていないのは内緒だ!!
「うむ、帰ってきたか。首尾はどうだ?」
「ただいま、桃師匠。今回はこれだけの食材をゲットしてきたんだぜ」
俺はイズルヒで獲得してきた食材を桃師匠に見せた。テーブルの上にキララさんのお米、吉幸マンの醤油、そして永久の梅園で拾ってきた梅を載せる。梅の方は特に期待してはいない、俺に喧嘩を売ったちょこざいな梅であるため、後でじっくりと調理してやるのだ。
ふはは、竦め、怯えろ! じっくりとクッキングされるがいい!
「ほう……これは驚いた。全て神級食材ではないか」
「マジで!?」
これには俺達も驚きを隠せなかった。米と醤油はともかく、梅までもが神級食材であったのだ。たまたま通りすがった梅園で拾った誰も食べることができない梅が、まさか神級食材だと誰が想像できただろうか? まったくもって、棚から牡丹餅、瓢箪から駒である。
「それよりも注目すべきはこの升と瓶よ。エルティナ、おまえはこの升と瓶をどうやって手にいれたのだ?この二つは紛れもなく神器、人が手にするには恐れ多い物よ」
「あぁ、それについて説明するよ。桃師匠にも知っていてもらいたいんだ。その升と瓶の持ち主の生き様を、そして信念を」
俺は桃師匠に語った、升の持ち主、キララ九十七世、そして瓶の持ち主である吉幸マンの物語を。彼は神妙な面持ちで俺の話に耳を傾け、そして大鍋仙人の話になると驚いた表情を見せた。
「なんと、その方がこの世界に? 余程、暇を玩ばれておるのか……であるなら協力をしてくれてもよかろうに。まったく、たいこうぼ……っと、いかんいかん、この話はしてはならんかった」
「超気になるんだぜ」
「忘れろ、関わるとろくな目に合わんぞ。それよりも話は分かった。この升と瓶の能力について教える。この升と瓶は持ち主の『神気』に反応しそれぞれに対応した物を生み出す能力が備わっておる。つまり、おまえが神気を操れれば無限に食材を生み出せるというわけだ」
「ふきゅん!? スゲェな。まるでフレイベクスの無限お肉みたいだ」
桃師匠から驚きの事実がもたらされた。これならばプルルに美味しいご飯を毎日提供することも可能ではない。だが……問題は『神気』なるものである。魔力でもオーラでもないその神気なるものとは、いったいどういったものであるのだろうか?
「神気って、いったいどういったものなんだぜ?」
「うむ、神気とはその名のとおり神が扱う力のことよ。だが、この神気は桃力と似て異なる。即ち桃使いが扱えるとは限らないのだ。どうやって扱うのかは説明するには少々難しい」
なんということであろうか? 一つ問題が解決したと喜ぶのも束の間、今度は神気なるものが使えないとこの升と瓶は真価を発揮しないというのである。
魔力や気であれば問題なく扱えるが神気なるものは今まで見たことも聞いたこともない。桃力でさえ、とんでもエネルギーだというのに、今度は神様の力を扱えというのだから大変だ。さて、いかがしたものか……あ、そうだ!
俺はここで桃力の特性を思い出した。桃力はありとあらゆるエネルギー及び物体に変ずるチートエネルギーである。であるなら桃力を神気に変じればいいではないか。なんだ、簡単だな!
「桃師匠、桃力で……」
「それはできぬ、おまえは神気がどのようなものであるか知らぬだろう? ゆえに桃力を神気へと変ずることは適わぬ。それに知っていたとしても桃力では再現できぬのだ。神気とは個々に眠る真なる力、それを発現させた者こそ『神』と名乗れるのだ」
「なんてこったい、せめてヒントでもあれば……」
これはかなりハードルが高いミッションだ。何も知らない状態から神気を発現させろというのだから。しかし、今まで無茶なことは散々おこなってきたし、それを乗り越えてきた。だから俺達は知っている。最後まで希望を捨てなければ必ず奇跡は舞い降りてくることを。最後まで諦めない者にこそ奇跡を起こす権利があることを。
やってやろうじゃないか、神気とやらを発現させてやる!
「答えはおまえの魂にあるのやもしれぬぞ? エルティナ」
「えっ?」
桃師匠の言葉に俺は戸惑った。俺の魂の中に答えはある……いったいどういうことだろうか? 桃師匠の謎かけに俺は戸惑い「ふきゅん」と鳴くのであった。