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食いしん坊エルフ  作者: なっとうごはん
序章 森の中の全裸幼女
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4食目 適応してみました

 おおう……酷い目にあった。


 地面とキスしたまま翌日を迎えた俺は現在、浅い川にて身体を洗っている最中である。

 幸い痺れは、朝方にはなくなっており後遺症もなさそうであった。


「あれは駄目か? いや、しかし……」


 昨日食べた謎の草を見つつ身体を丁寧に洗ってゆく。


 まあ、洗うといっても手で撫でるだけなんだがな! 

 ふひひ、スベスベボディだぜ! 出っ張りもなんにもねぇ! 

 本当につまらねぇ体だぜ!


 洗い終わったので川から上がり、ぽかぽかのお日様に当たる。

 体を拭く物なんてないから自然乾燥を待つしかないのである。


 でも、そんなのんびりとした時間も悪くはないと思っていた。


 鬱蒼と茂る森にあって日が当たる貴重な場所があった。

 そこは俺のお気に入りの場所で、簡単ながら椅子っぽい物を木の枝や葉っぱでこしらえている。

 見た目は最悪だが、座り心地は試行錯誤の末に納得のできる物に仕上がったので満足だ。


「ふぅ、太陽がいっぱいだゼ……」


 ぽかぽかした日差しが水浴びで冷えた体を温めてくれる。

 ここで俺は桃を創り出し、一口噛じる。

 

 しゃくっ、じゅくじゅく……ごくん。


「おいちぃ」


 まさに至福の一時である。

 

 ふと横を見やると昨日の草がはえていた。

 あの山椒風味の草である。


 こいよ! かかって来いよ! ……怖いのか? ニヤリ。


 とその草に言われた気がした。


「野郎っ! ぶっころしてやらぁ!!」


 その挑発に怒り狂った俺は、その草を容赦なく引っこ抜き口に運んだ。


 もしゃもしゃ……。


「ぬふう!?」 


 どしゃぁっ!


 まあ……結果は、昨日と同じだったんだがな? 


 ただ、昨日より痺れが治る速度が、早くなってる気がする。

 これがいわゆる、適応とかいうやつかも知れない。


 ならば、何度も食べれば、この草も克服できるかも……?


「ふふふ……我、勝機掴んだり!」


 ヤツを打ち負かしたのはそれから一週間後のことだった。






 まあ、それからというもの、色々食べるようになった。


 木に生えてたキノコを食べては腹を下し、ちなみにキノコはアボカドっぽい味がした。

 木の皮を食べては酔っ払った。味はウィスキー。やったね!


 まともな食材なんてありゃしない。

 だが食べると、意外な味が待ってたりするのが面白かった。


 ただ……副作用が半端ないがな!


 この前も、土食ったら石化したよ!?

 農家の人も食ってたからいける、と思ったら逝きかけたよ!


 あ、ちなみに味はカレースパイス風味だったぜ。 


「絶対に克服してやるゼ……」


 俺は修行そっちのけで、食べることに全力を尽くしたのであった。






 その一年後……俺は森の全てを制覇した。


「ふははっ! もう俺に食えない物はない!」


 俺の足元には、およそ食材に見えない物が山と積まれていた。


 だが、俺には食える。


 長く辛い戦いであった。

 森の奥に入り迷子になったり、木に登ったはいいが降りられなくなったり、と中々の冒険だった。


 ……ん? あれ、おかしい? 


 俺は確か、修行という名の体力作りをしてたはずなのに。


 ドウシテコウナッタ?


 うごごご……食欲とはいったい!?


 そんな、こんなしている内に一年も過ぎていたりする。

 まあ、だいたい一年、ということにしてるが……正直適当。


 あとこの森、季節が変わらないのだ。


 気温も、初めて自分がエルフだと認識し森にいることに気付いた時のままだ。

 常初夏地帯である、といってしまえばそれまでなのだが。


 なので日数が麻痺してくる。

 ぶっちゃけ……もう、どうでもいいのだけどな。


 まあ、食材探して歩いてたから、体力は付いたかも?


 取り敢えずはご飯だ。腹が減ったからな!


 今日は料理をしてみようと思う。

 と……言っても、材料を組み合わせるだけの簡単な物である。


 材料は……芋っぽいの。

 これは俺のお気に入りで、そのまんま芋だ。

 ちなみに副作用は、エッチな気分になる、である。


 幼女じゃ意味ないな!


 次は土、カレースパイス風味。


 最後に白い花。

 なんとこいつは塩味! 


 これを見つけた時、思わずガッツポーズをした。


 そして、何も見えなくなった。

 副作用は視力低下だったようだ。


 流石に焦ったがコレもなんとか克服。


 遂に料理というレベルに辿り着いたわけだ。

 出来上がるのは、芋のカレー風味といったところか?


 さあ作ろう! 


 芋を手で割り、白い花を上に散らし、最後に土を豪快にまぶす。


「おおう、でけた!」


 見た目は最悪といってもいい、というか最悪だ。

 でも、現状そんなことは問題じゃない……味だ!


「では、いただきます!」


 もしゃ……もぐもぐ……ごくん!


「ふひひ……できてる……カレー味の芋!!」


 うおお! と、雄叫びを上げ、歓喜の舞を踊る俺。


 生きていけるこの森で! 俺はやっていけるのだ!! もう何も怖くない!!


 ……いや駄目だろ。

 なんで、ずっとここで、生活しようとしてるんだよ俺?


 手に持ってる、土だらけの芋を、まじまじと見つめ溜息一つ。


「感覚が麻痺してきてるなぁ……」


 翌日、俺は遂に森を出る決意をした。


 きちんと人間らしく……いや、エルフとして、冒険するために、俺はこの森を出る!


 そして、森の出口を求め、俺は歩き出すのであった。

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― 新着の感想 ―
[一言]  危険な物多すぎでしょww治らなかったらヤバイのがいくつかw
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