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食いしん坊エルフ  作者: なっとうごはん
第八章 きみがくれたもの
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384食目 ユウユウの憂鬱

◆◆◆ ユウユウ ◆◆◆


はぁ、つまらない、つまらない。


ダーリンとは会えない上に、会いに来るのはこんな雑魚ばかり。

少しは歯応えがあると思ったヤツはてんでダメ。弱過ぎる。

これじゃあ、私の鬱憤を晴らすことなんてできやしない。


「が、ががっ!! ば、化け物め……」


無様に転がるハーイン四天王とかほざいた男が、

私を化け物でも見るかのような眼差しを向けてきた。


「失礼ね、こんな淑女なんて滅多にお目に掛かれないのに。クスクス……」


「がぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!?」


私に対して失礼なことを言ったこいつには罰として足を踏み砕いてあげた。

呆気なく砕け散る右足に少し呆れる。

……とここで私は気が付いた。


「あらやだ、もう砕く部分が頭と胴体しかないわ」


残念、もうこの玩具で遊ぶことはできないようだ。


「ユウユウさん~、遊んでないで~こっちも~片付けてくださ~い」


「そっちはウルジェだけで十分じゃない」


「私だと~お城も~壊しちゃうんですよ~」


そう言いながらも現在進行形で鬼ごと城を破壊し続けててる。

彼女は手加減というものができないのだ。

更にはウルジェの愛用する武器『テンペスト』がそれに拍車を掛けていた。


『テンペスト』……いうなれば超巨大なモーニングスターである。

持ち手の部分こそ通常の物と変わりないが、

それに繋がる鎖と鉄球が通常の五倍近くもある。

そんな鉄球をを難なく持ち上げ振り回しているのだ。


ただ彼女にはテクニックというものがない。

愚直に鉄球を振り回し重さを活かして相手を押し潰す

という戦法しか取れないのである。


その結果……辺り一面を破壊しつくして

『狂戦士』などという不名誉な二つ名を授かることになったのだ。


もっと私のように優雅に暴力を振るわなければならない。

仮にも私の相棒を務めているのだから当然の義務と言えよう。

少し『教育』を施さなければならないようね。


「もう、仕方のない娘ね。

 そういうわけだから貴方に構ってあげれなくなったわ。

 じゃあね、四天王さん? クスクスクス」


「ち、ちくしょぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉあっ!!」


私の足が自称四天王の頭を踏み抜くと真っ赤な花が咲いた。

うふふ、命が尽きる際に咲く花は本当に綺麗ね。


「お、おにぃ!」「おにぃ!」「おにぃ!」「おにぃ!」「おにぃ!」


「クスクスクス……鬼はあなた方じゃない」


「おにぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃっ!?」


私が近寄ると鬼達は一斉に逃げ出した。

本当にこいつらは失礼な連中だ。

一匹残らず『すり潰し』てあげなくては。うふふ。




「皆、桃先輩からの魂会話だ! ……至急玉座の間まで集合!?」


「お兄様、玉座の間にいる鬼がそれほどまでに?」


「どうやらそのようだ。

 彼らほどの戦士が救援を要請するだなんて余程のことだぞ」


ルーフェイからそのような情報がもたらされたのは、

外から感じるダーリンの闘気を感じ取ったのと、

私が退屈しながらも鬼を五十ほどすり潰すのとほぼ同時であった。


「強い鬼ですって? なんでこんな時にっ!」


この鬼を始末したら

すぐにでもダーリンの下に駆け付けようと思っていたのに

それができないとはっ!


私はすぐにでもダーリンに会いに行きたいという願望と、

強者と戦えるかもしれないという欲求に挟まれ葛藤した。

すぐさま苛立ちが募り爆発し掛けた私は理性を取り戻すために

はしたなくも地団太をふんだのである。


「あっ」


「えっ!?」


その結果……床が抜けた。


丁度その頃、私は城の外から感じるダーリンの闘気に気を取られており、

少しばかり周りに配慮が行き届かなくなっていたのだ。


まぁ、誰にでも失敗はあるものよね?




「あいたたた……ユウユウ、少しは加減してくれ」


「ご、ごめんなさい、ルーフェイ。こんなに脆いとは思わなかったのよ」


「た~す~け~て~」


「はいはい……まぁ、酷い恰好ね」


ウルジェは瓦礫に埋まっていた。

彼女の唯一確認できる部分はその大きなお尻だけ、

というなんとも奇妙な埋まり具合だったのだ。


……今日はうさぎさんか。


私は瓦礫に埋まったウルジェを引き抜くために、

唯一瓦礫から飛び出ている彼女のお尻を掴んで引き抜いた。


あら、また大きくなってるわね。


「ぷは~酷いですよ~ユウユウさん。

 お尻は~もっと~優しく~掴んでくださ~い」


「あ、そっちなのね。ごめんなさい」


ウルジェが私に抗議してきたので素直に謝罪をしておいた。

思ったとおり、彼女の身体には傷一つ付いていない。

私とコンビを組んでいるのだから当然ね。

この程度でケガをしているようじゃ、私の攻撃の余波で死んじゃうもの。


「ここはどこかしら? 結構深いけど……地下通路かしらねぇ?

 跳んで戻るにも高過ぎるか……ちょっと、三バカ。辺りを調べてらっしゃい」


「「「イエス! マム!」」」


ロフト達三バカに周囲を調べに行かせる。

最近は真面目に鍛錬を積んでいるのか、なかなかに使えるようになってきた。

瓦礫の山を軽快に飛び越えてゆく彼らに過去の情けなさは確認できない。


まぁ、いまだに己の欲求に忠実であるが。


「何か……嫌な感じがします。ぷるぷる」


「あら、ゲルロイド。何か察知したのかしら?」


ランフェイの頭に乗っかっていたスライム王子が

三バカの向かっていった方角を睨み、気になる言葉を吐いた。

その直後のことだ。


「うひゃぁぁぁぁぁぁっ!? こいつは何さねっ!?」


アカネの悲鳴が聞こえたのだ。


「しょ、触手だ! スラック!! ぬるぬるの、ぬめぬめだぞ!!」


「よっしゃ、任せろ! 光画機だ!!」


「でかした! さぁ、触手さん! やっちゃってください!」


「は、早く助けるさねっ!! ひあぁぁぁぁぁぁっ! くすぐったい!」


……あの三バカは何をやっているのかしら。


「何かはあるようだね。僕らも行こうかランフェイ」


「そうですわね、お兄様」


溜め息を一つ付き苦笑いをする双子の兄妹。

そのタイミングもまったく同じであった。




アカネの悲鳴のあった現場に到着すると、そこには酷い光景が待っていた。

大量のピンク色の触手に弄ばれるアカネとロフト達の姿があったのである。


「ちょっと触手さん。俺達、男なんですわ」


「男に触手プレイはNGだって、それ一番言われてるんで」


「死なば諸共さね! やってしまうさねっ!!

 ……はうん! そこはダメさ~っ!」


「うねうね~!」


大量の触手に絡みつかれた三バカが見苦しい痴話喧嘩を繰り広げていたのである。

それを見た私達は深いため息を吐くハメになった。

私は手に鞭を持つとピシリと地面をひと叩きする。


すると、ビクリと三バカの身体がビクンと震え

触手に絡まったまま姿勢を正し私に向かって敬礼した。


「あなた達はここで何をしているのかしら?」


「イエス、マム! 触手プレイであります!」


「私は周囲を調べてこい、と言ったはずよね?」


「イ、イエス、マム! しかしながら、触手に阻まれまして!」


「ご覧の有様さね!」


「そこに触手があるのであります! 女性が絡まれたのであります!

 であるなら触手プレイでありますでしょう!!」


「こんなシチュエーションを見る機会なんて滅多にないであります!」


「ラングステンに帰ったら見れないかもしれない!」


「であるなら、いつ見るか……」


「「今でしょ!?」」


「ロフト達がブレなさ過ぎて、自分が女であることが恨めしいさね!!」


バチン!!


「「「ほぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!?」」」


聞くのも面倒になったので纏めて鞭で引っ叩いてやった。


「な、なんでわちきまで……がくっ」


アカネはいちいち避けて叩くのが面倒だったので纏めて叩いた。

連帯責任というヤツにしておくことにする。


「う、うねうねぇ……」


私の容赦のない折檻に委縮したのか、

ピンク色の触手共はそそくさと巣と思われるこぶし大の穴へと逃げ帰っていった。


「うぐぐ……俺達のロマンが……ぐふっ」


「う~わ~、アカネさんが~」


白目を剥いて気を失ったロフト達を汚物でも見るかのように一瞥したウルジェは

触手の粘液でべとべとになったアカネの下に駆け付けた。


「……この粘液は使えますね~採取しておきましょう~」


「うぐぐ……なんで、そんなピンポイントな部分から摂るさね!?」


ウルジェ顔をアカネに向けながら怪しく微笑んだ。

彼女が粘液を採取した場所はアカネの『股間』である。


「う~ふ~ふ~、いや~、何か別の粘液でも~混ざってないかな~と~」


「ひぃぃぃぃぃぃぃぃっ?!」


思い出したがウルジェは自称レズビアンだ。

彼女がどういった経緯でそうなったかはわからない。

ま、私にはどうでもいいことなので気にもしないが。


彼女は最近、エッチな本を読んで色々と勉強しているらしい。

アカネもそう言った方面には興味があるのだから、

このままくっ付いてしまえば良いのではないかと思う。

ウルジェもアカネも女好きなんだから相性バッチリでしょ?


「さ~さ~、粘液を回収しますから~服を脱いでくださ~い」


「ぬ、脱がなくても採れるさ~!

 だから、スパッツを脱がすのを止めるさねっ!」


「「いいぞ! そこだっ!!」」


バシンッ!!


「「わばっ!?」」


もう立ち直ったロフト達を再び黙らせる。

本当に立ち直りだけは私を上回るのだから性質が悪い。


「そろそろ行こう。時間がないのは本当なのだから」


「そうですわね、お兄様。

 ウルジェもアカネをからかっていないで急ぎましょう」


「んむ~残念ですが~そういたしましょう~」


「た、助かったさね」


「「ちっ」」


バシンッ!


「「ありがとうございますっ!!」」


この二人、どんどん鞭に対する耐性が付いていっている気がする。

まさかね……?




気を取り戻して進んだ先には酷く古めかしい扉が行く手を阻んでいた。

もう何百年もの間、侵入者を拒んでいるかのような感じがする。

いったい、この先には何があるというのだろうか?


「ん? この扉……取っ手も鍵穴もないぜ?」


ロフト達が先行して扉に取り付き調べ始めるも

彼が言ったように内部に侵入する手段や方法がないようだった。


「あら、本当ね? でも……関係ないわ」


私は拳を握ると扉に近付き軽く殴った。

そして、その行為は私の望む結果となったのである。


「ですよね~」


「さ、これで通れるようになったわ。先に進みましょう」


玉座の間に辿り着くには、地下のどこかにある出口を探して進むしかない。

こういう時にモルティーナがいればいいのだけど、

生憎と彼女はダナン達と行動を共にしている。


私達は出口を求めて明かりひとつない部屋の内部へと侵入したのだった。

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