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食いしん坊エルフ  作者: なっとうごはん
第八章 きみがくれたもの
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377食目 精鋭チーム

◆◆◆ エルティナ ◆◆◆


「ふきゅんっ!?」


その時、俺の額辺りに電流が流れある者のイメージが浮かび上がった。

それは黄金の輝きを纏うあんにゃろうの姿だ。


俺達と入れ替わる形で

大量の鬼共がティアリ城から出ていったのを感じ取った俺は、

チゲに頼んで城から出ていった鬼を退治しに向かおうと思っていた。

そんな時のことだ……一際、強烈な桃力の波動を感知したのは。


城の外からビンビンと感じる桃力は

間違いなく俺の宿敵シグルドのもので相違ない。

数ヶ月程度で忘れることなど、どうしてできようか。


どうやらヤツは桃使いとしての責務を果たさんとしているようであり、

そのことは俺達にとって非常に都合が良いことであった。


ふっきゅんきゅんきゅん……!

なんでまたシグルドがこんなところにいるのかはわからんが、

鬼共を退治してくれるのであれば、とことんこき使って差し上げよう!

ゆっくり鬼退治していってね!


俺は外に出ていった鬼をガルンドラゴンのシグルドに丸投げし、

城内の親玉を叩くことにする。

この間、僅か二秒の決断であった。


「なんだ貴様らは!?」


「こ、子供だとっ!?」


ド派手に城内に不法侵入を果たした俺達の前に、

当然ながら衛兵達がわらわらと駆け付けてくる。

どうやら、彼らは鬼の魔の手に掛かってはいないようだ。

であるなら、説得をして城から退避していただこう。


「邪魔よ」


ぱぁぁぁぁぁんっ!!


「あわびゅっ!?」


「ぶべらっ!?」


「たすまにあっ!?」


あーっ!? 説得する前にユウユウ閣下の鞭の餌食にっ!!


哀れにも駆け付けた衛兵達はユウユウの鞭にしばかれて、

冷たい床でビクンビクンと痙攣するハメになってしまったのだ!

この光景に俺も白目痙攣を以って哀悼を捧げる他はない!


ユウユウに出会った不幸を呪うがいい!!(遠い目)


「クスクス、便利ねぇ……これ」


誰だぁ!? ユウユウにこんな禁断の兵器を与えたヤツはぁっ!?

のーっ!! また被害者が増えたっ!!

これでは、どちらが悪者かわかったもんじゃねぇぞっ!!


「っ! 来たぞ! 鬼の連中だ!!」


先頭を行く、獅子の獣人ライオットがいち早く鬼の姿を確認し、

後続の俺達に注意を促す。

と同時に発砲したのは、赤いGDを身に着けたレイヴィ先輩であった。


カァオッ!


彼はGDに標準装備されている魔導ライフルとは別物の特注品を手にしており、

その外見は彼の相棒であるホビーゴーレム『ナイン』の得物『カナザワ』に

酷く酷似していた。


「ぎっ!?」


放たれた桃色の光線はまるで餓鬼のような姿をした鬼に命中し……。


チュドォォォォォォォォォォォォンッ!!


大爆発を起こし辺り一帯を容赦なく粉々に吹き飛ばした。

その威力、俺の〈ファイアーボール〉の約五倍弱。

十体ほどいた鬼共は跡形もなく消滅していた。


「む……威力が強過ぎたか」


「強過ぎたか、じゃありませんよっ!!

 危うく生き埋めになるところでしたよっ!?」


メルシェ委員長がレイヴィ先輩に抗議をおこなった。

事実、爆発によって天井やら何やらが崩れ俺達に降り注いできたのである。

ライオットやブルトンが瓦礫を砕いてくれなかったら、

ダナン辺りはペシャンコになっていたことだろう。


「あーっ! しーまちゃんが、がれきのしたじきになっちゃったよう!?」


「あぁ、それなら大丈夫だ」


たぬ子が瓦礫の下敷きになったシーマを心配するも、

マフティの大丈夫だと言われ、少しばかり困った顔をした後……

「ふぁ、そうなんだぁ」と頷き納得したのであった。


シーマぇ。


まぁ、皆の予想どおり、瓦礫の下からピンピンした彼女が出てきて

「元上級貴族に、このような瓦礫など通用しない!」とドヤ顔したので

特に問題はないだろう。流石は不死身の女である。


「レイヴィ先輩、先ほどの鬼相手であるなら

 試作型魔導ライフル『Mカナザワ』でなくともよさそうです」


「そのようだな、先手を取るために放ったが……

 ドクターめ、威力を一段階あげたな?」


プルルにそう諭されたレイヴィ先輩が

『Mカナザワ』の四角い銃口を恨めしそうに睨み付けていた。

その銃口はあれほどの威力を秘めた光線を放ったにも関わらず、

一切の摩耗を見せてはいなかったのである。


「あれなら私達の『Mマシンガン』で十分ですよ」


「わかった、頼む」


プルルとGDを身に纏った十名の騎士達は、

手にした鈍い輝きを放つ黒い銃を掲げ不敵に笑った。

アレこそはドクター・モモが趣味で作り上げた、

桃力を雨あられと放つマシンガンの完成品である。


俺が赤ちゃんになる前は試作品が完成したと聞かされていたが、

今彼らが手にしているのはその完成品であろう。


一発一発の威力は魔導ライフルに劣るが

連射性能はマシンガンの方が遥かに高い。

相手によってはこっちの方が効率が良い場合もあるだろう。

何より弾を多くバラ撒くので命中する弾も多くなる。


欠点としては射程が短いことと、

弾薬がすぐ底を尽く点であろうか?

弾薬についてはカードリッジ方式にするみたいなことを言ってはいたが、

この完成品はどうなのだろうか? 気になる。


尚、魔導ライフルは総弾数が十五発。

魔導マシンガンが三百発だそうだ。


まぁ、これは以前のデータなので、今はどうなっているかはわからんが。


「新手が来たぞっ! 数は……いっぱい!」


「おうっ、オフォール! もっと正確に伝えやがれぇ!」


「あはは! そううなのかお! そそそうかお!! あははは!」


「て~け~り~・り~!!」


この騒ぎを嗅ぎつけて新たな鬼がやってくるも、

たまたますぐ傍にいたアルアに一瞬にして駆逐されてしまった。

正確にはアルアの頭に載っている未確認生命体ショゴスによってであるが。


あぁ、きちんと退治してやらないといけないのに、

謎パワーで葬ったらダメだろうが。

こいつらはまた蘇って苦しむことになるんだぞ?


打ち漏らしはガンズロックがツーハンドアックスで処理してくれた。

彼が使っている斧は以前俺が祝福を施した店の武器だ。

こんなところで役に立つとは彼も予想できなかっただろう。

俺には是非とも感謝してほしいところだ。ふっきゅんきゅんきゅん……!


尚、ヒュリティア達の武器も祝福しまくっている。

この戦いくらいであれば桃の加護も持つだろう。


俺が赤ちゃんの身でなければ、

直接『桃光付武』で対鬼用の武器にしてやれるのだが、

それ以外だと桃先生の大樹内にある樹液が溜まっている場所に、

二~三日ほど浸さないといけなくなる。

その場所も広くはないので一度に五~六本が限度だ。


「固まって移動していては打ち漏らしが出る可能性がある!

 少しばかり危険ですがチームに分かれて鬼を退治していきましょう!」


フォクベルトが皆にそう指示した。

現在エドワードは本隊にて自分の部隊を指揮しているので、

モモガーディアンズは彼の指揮で動いている。


「そうだな、弱い鬼だといっても普通の者じゃ手も足も出ない。

 一匹の撃ち漏らしもあってはならないんだ……そうする他にないか」


クラークは巨大な二枚の盾をそれぞれの手に持って、

フォクベルトの意見に賛成の意を示す。

他のクラスメイトも騎士達も頷き、それぞれ十名程度のチームを五つ編成した。


俺が所属するチームは

鬼の親玉を仕留めるのが任務であるため精鋭で固められていた。


ルドルフさん、ザイン、ライオット、プルル、キュウトちゃん、

ガイリンクード、ブランナ、ヒュリティア、そしてフォリティアさんである。


「よろしくね~。

 うふふ、お姉さん、がんばっちゃうから~」


全身武器黒エルフと化したフォリティアさんがそう言ってガッツポーズを取る。

でも彼女の場合は防御力が皆無なので、気を付けてあげないといけないのだが……

そこはルドルフさんがいるから大丈夫かな?


「それではエルティナをよろしくお願いします。

 これだけの戦力であるなら遅れは取らないでしょう。

 他のチームは散開して鬼を退治していってください。

 これは時間との戦いにもなります、

 無限に体力があるわけでもないですからね。

 では……各自、健闘を祈ります!」


各チームが思い思いの方角に向かって走り出した。

俺達は真っ直ぐに親玉がいると思われる王座へと向かう。


さぁ、鬼の親玉よ! 部屋の隅でガタガタ震える準備は良いかっ!?

凶悪なメンバーがおまえの下に向かっているぞ!


俺は勝利を確信しつつ、

心の中でふっきゅんきゅんきゅん……! と笑うのであった。

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