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食いしん坊エルフ  作者: なっとうごはん
第七章 逆襲のガルンドラゴン~シグルドの挑戦~
327/800

327食目 魔法技禁じ手、解禁

「さぁ、これで邪魔する者はいなくなった」


 俺はシグルドの傷を一瞬にして治療してやった。

 千切れ飛んだ翼や至る所にある負傷も、全て元どおりの姿を取り戻す。


「どういうつもりだ?」


「おまえが負けた時の言い訳を潰したんだよ」


「礼は言わぬ」


「もらうつもりもねぇよ」


 その言葉を最後に俺達は戦闘状態へと移行する。

 シグルドは低く身構え、

 俺は輝夜を構えて、いつでも〈魔法技〉を繰り出せるように準備した。


『エルティナ……ここまできたら、もう言うことはない。

 勝ってフィリミシアに帰るぞ』


『応、当然だぜ。俺には、まだまだやることが残っているからな』


 主に未知の料理を食べるためだ。

 え? 鬼? そんなもん、ついでだぁ!(暴言)


「行くぞ、シグルド! 美味しく調理してやんよぉ!」


「汝を越え、我は再び前へと歩む! 我が血肉となれぃ!」


 戦いは始まった。

 まず俺は魔法障壁で巨大中華包丁を生成するため、

 時間稼ぎ用の〈戒めの蔓〉の種を輝夜にバラ撒かせた。

 これは今は使わない。料理でいうところの〈仕込み〉だ。

 チャンスが来たら、即座に使うが。


 そして背後に〈落とし穴〉を作っておく。俺の得意な〈魔法技〉だ。

 今では、ほぼ気付かれずに巨大な落とし穴を一瞬にして生成できる。

 このコンボであっという間に勝利してくれるわっ!


「いもいも坊や! 月光蝶!」


『いもっ!』


 俺に突撃してきたシグルドを月光蝶でもって空へと退避し、

 かわすことに成功すると、反撃のチャンスがやってきた。


「うらぁ、〈小出刃包丁〉だ! あ、桃先輩よろしく!」


「わかっている、射出!」


 小さな包丁を魔法障壁で幾つも作りだす。

 切れ味抜群の逸品だ。それをシグルドに向けて高速で発射する。

 作るのは俺、狙いを定めて発射するのは桃先輩だ。

 見事なコンビネーションだと感心するが、どこもおかしくはない!


「ブラザー! ただのナイフじゃねぇ!」


「わかっている!」


 シグルドは後方に飛び退いた。

 あほぉうがっ! そこには、地獄行きの落とし穴がスタんばっているんだぁ!

 ふっきゅんきゅんきゅん、早くも試合終了ですねわかります。

 俺……この戦いが終わったら、竜の肉でステーキを食べるんだぁ。


 ズシンと着地音と振動が響くも、シグルドが落とし穴に落ちる気配はない。

 はて? 作った位置は、あそこで間違いないはずだが?


「ひゅ~、可愛い顔して、やることがエゲツねぇなぁ!?

 でも、落とし穴はブラザーと俺っちには通用しないぜ?

 ここら一帯は逐一スキャンで確認しているからな」


「なん……だと……!?」


 シグルドの立っている地面が桃力で覆われていた。

 まさか、あんな薄っぺらい桃力で、

 自分の体重を支えることができているのか!?

 いや、その前に桃力ってそんなことができるのか?


『解析完了、桃力特性〈固〉。なかなかに厄介な特性だ。

 ヤツは、ありとあらゆるものを固める能力を持っている。

 気を付けろ、エルティナ』


『ふきゅん、となると〈落とし穴〉は通用しないと考えた方がいいな』


 これは面倒なことになってきた。

 このコンボで一気に決めようと思っていたのに、

 それができなくなってしまたのだ。


 しかも、シグルドは翼があるので空も飛べる。

 もう、落とし穴は通用しないと考えた方がいいだろう。


 誰だぁ! シグルドの傷を治したヤツはぁ!?(自業自得)


『来るぞ! 回避だ!』


 桃先輩の声で我に返った俺が見たのは、シグルドの大きな口であった。

 まぁ、なんて虫歯のない綺麗なお口なんでしょうか? うふふ。


 ……って、そんなこと考えている場合じゃねぇ!(白目)

 回避、回避ぃぃぃぃぃぃっ!!


『いもいもっ!』


 ぼへら~っと、油断しまくっていた俺であったが、月光蝶モードでは、

 いもいも坊やが華麗に俺の身体を動かしてくれることもあり、

 無事に回避に成功するのであった。


「どうよ? これが俺の実力だぜ!」(震え声)


『戦いに集中せんか。バカ者』


 さーせん。


「そうでなくては困る、マイク!」


「あいよぉ、ブラザー!」


 シグルドも翼を使い空を舞う。

 上等だ! 空中戦なら小回りの利く俺達が断然有利なんだぞ! くるるぁ!?

 しかも、操縦はいもいも坊やだ! 攻撃など当たると思わないことだな!


 ただし、俺が自分で飛び始めるとアホみたいに被弾する。

 鳴けるぜ、ふきゅん!


「いもいも坊や、操縦は任せたぞ! 目にもの見せてくれるわぁ!」


『いもいもっ!』


『いもいも坊や、ヤツの攻撃は少し大げさなくらいで回避してくれ。

 回避中に固められては回避もできないからな』


『ふきゅん!? 回避中に固めるとか反則だろ!

 シグルド汚い、流石シグルド汚い!』


『来るぞ!』


『いもっ!』


 俺は重要なことなので二度言ったが、

 桃先輩といもいも坊やに軽く流されて深い悲しみに包まれてしまった。


 そして俺は気付いた。

 空中戦だと地面に仕込んだ〈戒めの蔓〉の種が

 意味のないものになってしまったことに。


 おのれ、シグルド! 許さんぞ!

 俺をここまでバカにしたのは、おまえが初めてだぁ!


『エルティナ、迎撃だ!』


『わかってる! 俺の深い悲しみは、

 シグルドをズタズタにすることによって癒させてもらう!』


『完全な八つ当たりではないか』


『いもぉ……』


 俺には味方がいないのかぁ!?(白目痙攣)


 更に深い悲しみに包まれた俺は、

 愛と怒りと悲しみを載せた〈ファイアーボール〉を炸裂させる。

 空中で爆発すれば、範囲内の全ての物を粉砕し焼き尽くす凶悪な攻撃魔法だ。

 これが下級魔法というのだから恐ろしい。

 まぁ、俺の魔力だからこそと言えるのだが。


 しかし……これは、ほんの小手調べだ。

 シグルドがどう対処するか見せてもらおう。


「うおぉぉぉぉぉぉぉっ!? なんじゃこりゃあ!!

 下級攻撃魔法ってレベルじゃねぇぞ!!」


「マイク! 桃力を使う!」


 シグルドの口から放たれた桃力が爆炎に触れた瞬間に動きを止めてしまった。

 まるで、そこだけが時間が止まっているように見える。

 なるほど、これが桃力〈固〉の特性なのか。


 そして、時間差で動きの止った爆炎が動き出すも、

 既にそこにはシグルドの姿はなかった。


 これは厄介だぞ。

 流石にいつまでも固めてはいられないようだが、

 一瞬でも固められれば回避することが可能な

 身体能力を持っているシグルドにとって、

 これほど相性のいい効果はないだろう。


 対して俺の桃力の特性は〈食〉。

 なんでも食べる、どうしようもない食いしん坊だ。

 これもう、勝てるかわっかんねぇな?


 だが、そこをなんとかしてしまうのが主人公ってもんよぉ。

 ふっきゅんきゅんきゅん……まぁ、見てなって!


 まず、俺は〈俺式ライトボール〉を使用して眩く輝いた。


「うぬっ!? 視界を潰すつもりか!!」


 残念、その効果もこっそりと期待しているが、本命はその部分じゃない。

 おまえはこれから、俺の魔法技の〈禁じ手〉に恐怖することとなる。

 さぁ、受けるがいい……恐怖の魔法技の数々を!


「くらえぃ! 魔法技禁じ手!〈爆光散弾ばくこうさんだん〉!!」


 俺は〈ライトボール〉の発動中に〈ファイアーボール〉を合わせて発動する。

 すると、どうだ? 光は爆発によって飛び散り、

 全てを貫通し焼き尽くす〈レーザー〉と化したではないか!

 しかも、その数は簡単に回避できるような数ではない!

 まさにレーザーの弾幕よ! ふはは! 怖かろう!?


 尚、この魔法技は無差別攻撃です、ご利用は計画的に(白目)。


「かぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」


 しかし、シグルドは俺の想像を遥かに超えていた。

 口に溜めていた桃力を咆哮に載せ、広範囲のレーザーの弾幕を固めたのである。

 しかもそれだけではなく、

 咆哮の勢いで大量のレーザーが俺に向かってくる始末だ。


 このやろう、俺の見せ場を奪いやがって! この罪は重いぞぉ!


「ブラザー、チャンスだ! 嬢ちゃんはレーザーを回避するはずだぜ!」


「しねぇよ」


「!?」


 シグルド側は俺が跳ね返されたレーザーを回避すると踏んでいたのだろう。

 だが、元はといえば、俺の魔力で作りだした立派な魔法攻撃だ。

 魔法抵抗力が高い俺は、自分が作りだした攻撃魔法ですら効果が薄い。

 仮に俺に魔法でダメージを与えたいなら、

〈俺式ファイアーボール〉百発分を持ってこい!(無茶振り)


 俺は跳ね返されたレーザーを物ともせず、真っ直ぐシグルドの懐に突っ込んだ。

 虚を突かれる形になったヤツは、いとも簡単に懐の侵入を許してしまう。


 さぁ、ショータイムだ! 俺の必殺の魔法技を受けるがいい!

 頼むから当たってくださいお願いします。


 俺は再び〈魔法技禁じ手〉の発動体勢に移るのであった。

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