3食目 エルフ幼女の修行風景
どうも幼女エルフです。もちろん名前はありません。
わたくし、この一ケ月間ほど桃だけを齧りながらモリモリと修行しておりました。
さて、実際漫画のような修行といっても色々あるわけで……。
「こぉぉぉぉぉぉぉぉぉ……ふひっ」
息を吸い込むこと十分! 吐くこと十分っ!
「できるかぁぁぁぁぁぁぁっ!!」
とある漫画に登場する吸血鬼に、めっちゃ効くエネルギーを生み出す呼吸法の修行を再現してみたが……ウン、無理!
メジャーなものは、無理くさそうだと認識したわけでして……。
他に技の型とか霊力云々、気を開放やら暴力はいいぞぉ!? な世紀末技を得ようと頑張ってはみたが徒労に終わっている。
しょうがないので現在、素直に体力作り中だったりするのだ。
ぶっちゃけ、走り回って疲れたら桃食って寝るを繰り返している。正直な話、体力が付いてるか分からない。
そもそもだ、現在の俺はエルフの幼女である。
年の頃は三歳くらいといったところだ。
修行したって、このくらいの子供が急に強くなるはずがない。
冷静に考えたら分かることじゃないか。ぷんすこ。
見ろ、この水溜りに映った金髪碧眼の幼女の姿を。これが俺だぞ。
顔の輪郭は、幼児らしくプクプクほっぺの丸顔、そこから生えるのは大きく長い耳。
耳が垂れているのは、俺だけなのだろうか?
他のエルフを、見たことがないからわからない。でも俺はわりとこれが好きだ。
髪はストレートのプラチナブロンド。
伸びるのが早いのか、現在は肩まで伸びている。
そして、肌は透き通るように白い。
黒いほうが好みだが、あっちは高確率でムフフ展開が待っているので危険だ。
「死亡フラグ一つ回避だな」
実際に、それを見るのと体験するとでは大違いなのである。
といっても白い方も結局は同じ運命を辿っていることに気が付き、俺は幼い身をぷるぷると震わせた。
後はもう一つの目標である服なのだが……。
「もちろん全裸だよっ!!」
ひゃっほぅっ! 全裸、最高ぉぉぉぉぉぉっ!!
服がな……作れないんだよ。材料すらない。
一時期、葉っぱを股間に当てたんだが、水溜りで見た自分の姿が情けなくて止めた。
今は、まだいい……幼女だから。
いずれ成長するにつれて、おっぱいとか、尻とかが成長すると、あっと言う間に痴女の完成である。
それまでに、なんとかしなくてはならないだろう。
それとだ。
「エルフなのに、魔法が使えないとは……」
桃は出せるのだが魔法とは違う気がするし、そもそも同じにしてはいけない気がする。
あれから、地味に魔法が使えないか、足掻いてはみたが駄目だった。
火も出ないし風も起こせない、水は……桃があるからいいや。
まあ、とにかく、うんともすんとも出ない。
「どうするかなぁ」
いっそ魔法は諦めるべきか?
あと二ヶ月くらい経った時に、何も変わらなければ考えよう。
今は色々試す。
なんでもいいから、とにかく実行して、それから考えよう。
実際問題、何かおかしいのだ。俺がいるこの森は。
生き物がいない、特に虫ですらいないのは異常だ。
それに気付いたのは、幼女になってから三日後のこと。
なんとか落ち着いて周りが見えるようになってからだ。
普通全裸でいたら、蚊やら何やらに刺されてもおかしくないのだが全くそれがない。
生き物の鳴き声も、匂いも、気配すらない。
ゆえに、クソザコナメクジな俺が生き残っているのだが……。
「やっぱり、何かが変だ」
なるべくなら、何かが起こる前に森から立ち去りたい。
それには身を守る力が必要だ。
桃の超パワーだけでも、なんとかなるかもしれないが、それはあくまで最後の手段にしたい。
「やっぱり……自分で、身に付けた力が一番でしょ?」
そうだ。
このファンタジーな種族……エルフ幼女になったからには、この世界を渡り歩き自由に冒険してみたかったのである。
「待っていろよ……異世界のごはん達よっ!!」
桃だけでは、もう限界である。
嫌いじゃないよっ? 桃、美味しいし……なんか知らないけど栄養満点みたいで、栄養失調にならないんだよ。桃マジパネぇ!
……でも、同じ味ばかりだと辛い。
でだ、現在手にしてるのは、そこら辺に生えてる草である。
俺は、これを食べようと思う。
牛やら何やらが食べてるのだから、人間の俺が食えないわけがないっ!
あ、今エルフか。
まあ気にしない。では、実食!!
「いざ! もしゃ、もしゃ」
むぅ! この刺激的な辛味は正しく山椒!
この舌が痺れる感じは、間違いない! あの、うな丼に、よくかかっている物に相違ない!
大発見だ! これで勝る! ここここここれででででで!?
「ぶへぇ!?」
俺は顔面から地面に熱い接吻をおこなうハメになった。
どうしたことか、身体がいうことを聞かない。
体中に電流が走るがごとく痺れて命令を受け付けないのである。
痺れる……ん? これってひょっとして。
「ま……麻痺った? やっちまったんだぜっ!」
結局、俺は地面に接吻したままの状態で、次の日を迎えたのであった。