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食いしん坊エルフ  作者: なっとうごはん
第六章 進化
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283食目 集いし戦士達

 ◆◆◆ エルティナ ◆◆◆


 ようやく、桃大佐からの鬼討伐指令が下された。

 グラシのヤツはフィリミシア城の地下通路に居るらしいが、

 そこはとても入り組んでおり、俺などではすぐに迷子になってしまうそうだ。


『地下通路の構造は既に把握した。 

 しかし、罠や仕掛けなどが施されているエリアがある。

 十分に注意するように』


 しかし、俺には頼れる相棒の桃先輩が憑いているので、まったく問題ない。

 これで鬼退治に集中できるというものだ。


「よし、出陣だ! ユクゾッ!」


 俺が出陣の声を上げると、

 天井付近で待機していたムセルが宙を滑るように降りてきた。


 同じく天井付近に居たらしい子すずめのうずめが、

 帽子がなくて少しさみしかった俺の頭と、

 劇的なドッキングを果たす(ブッピガン!)。


 首に巻き付いていた白蛇のさぬきも、小さな顔を出して戦闘準備完了だ。

 左肩には普段の姿に戻ったいもいも坊やが、

『いもっ!』とやる気を出している。


 んん~! ぱーふぇくとだ!

 今の俺は『ぱーふぇくとエルティナ』といって良いだろう!

 もう、何も怖くない!(死亡フラグ)


「お待ちなさい、エルティナ」


 そんな、やる気満々の俺を引き留めたのはミレニア様であった。

 彼女は今まで見たことがないような、厳しい表情をしている。


 ミレニア様が振り返りミカエル達を見つめると、

 ミカエル達は真剣な面持ちでこくりと頷いた。


「貴女に彼らを就けます。

 戦力は少しでも多い方が良いでしょうから。

 私達のことなら大丈夫です。ブッケンドが就いていてくれますから」


「はい、お任せください。

 エルティナ様、ここは私が死守いたします。どうかご安心ください」


 ミレニア様が俺にミカエル達を就けてくれた。

 ありがたい、これで戦力はますます上昇しその結果、

 グラシは涙目になることだろう。


「エルティナ様、我ら『ホーリー』の能力を存分にお使いください」


 ミカエル達が俺に跪いた。

 それはいつものやり取りであるのだが、

 そのことを気にしなくなっている自分がいて少々驚いた。


 そんな彼らに祝福を施している最中のこと、

 俺と一緒に戦うと申し出てくる者達が表れた。


「エルティナ様、わたしも……いや、『俺』もお供させていただきたい。

 自分と同い年である貴女達が戦いに身を投じるというのに、

 自分だけが安全な場所でぬくぬくしているのは言語道断。

 我が父も、俺の年の頃には魔物相手に剣を振るっていたそうです。

 足手纏いにはなりません、どうか貴女の戦力の一端に加えさせてほしい」


 そう申し出てきたのは、その赤紫色の瞳に熱い闘志を漲らせたフウタの息子、

 クウヤ・エルタニア・ユウギだ。

 彼の闘志からは、『断っても無理矢理ついてゆく』的なものが、

 ぴりぴりと肌に伝わってきた。


 あ、これは断れんヤツだ(確信)。


「命のやり取りになるぞ? 覚悟はできているんだろうな?」


「無論」


 やはり、フウタの息子とは思えないほど武骨で勇猛だ。

 しかしだ……彼の母親はどう思っているのだろうか?


 クウヤはエルタニアの跡継ぎだし、

 彼の出陣には否定的なのではないだろうか、

 と思いチラッと様子を窺ってみた。


「貴方には英雄フウタの血が流れているのです。

 ラングステンを脅かす邪悪を討ち果たすのは私達の宿命。

 貴方の父がそうであったように……

 貴方もまたその宿命を受けて生れてきたのです。

 クウヤ、自分が討ち果たすべき邪悪と感じたのであれば、

 迷わず赴きこれを討ち果たしなさい」


「はい、母上!」


 彼の母親であるロリエッテさんは行かせる気満々であった(白目)。

 なんか『宿命』とか言っている辺り、

 相当な数のトラブルに巻き込まれた口であろう。


 なにせフウタはチート転生者だ。

 当然の権利のごとく、厄介ごとに見舞われる体質を持っているに違いない。

 訊問すれば、呆れる数のトラブルストーリーをゲロすることだろう。

 長くなりそうなので、そのようなことはしないが。


「それでは、私もお供しましょう」


 クウヤに便乗したのはムー王子であった。

 王族……しかも、跡継ぎばかりが志願してくるのはどうかと思うのですがねぇ?


「ムー王子……半端じゃなく危険だぞ?

 国のことを考えれば愚かな行為になる」


「問題ありません。これは国の利益になることですから。

 それに……将来の妻を一人で戦いに行かせるなど、夫として失格でしょう?」


 彼はまったく以ってブレなかった。

 俺の友好ポイントを稼ぐ気満々であったのだ。


 残念なことに、俺はこういうヤツは嫌いではない。

 ムー王子もまた、『漢』であることに間違いはなかったのである。


「ぼ、ぼぼぼぼぼぼぼ、僕もいきましゅ!」


 ラペッタ王子が全身を振るわせながら、なんとか言葉を絞り出した。

 震え過ぎて得体のしれない生命体になっている。


 しかし、こんな状態では連れていくことはできない。

 彼にはお留守番をしてもらうしかないだろう。


 ……なんだか、この情けない姿が腹立ってきた。


「おいぃ! ビビってんじゃねえぜ! 男だるるぉ!?」


 俺の怒気を受けて『ビョクッ!』と身体を震わせたラペッタ王子は、

 驚くほど冷静で強い意志をオッドアイの瞳に宿し始めた。


「ふぅ……落ち着きました。

 やはり、エルティナ様は僕にとって必要な女性です。

 ですから、僕にも貴女を護らせてください」


 しまった……怒りのあまりに思わず叱りつけたら、

 ラペッタ王子がクールになっちまった。

 これは大誤算だ(白目)。


 結局は王族だらけの、ある意味危険なパーティーが出来上がってしまった。

 これは死者を出すことができない。

 まぁ、元々出すつもりもないが。


 こうして、俺達『デンジャラス連合』は鬼退治に向かうのであった。




 桃先輩の指示に従い、生物兵器がうようよいる通路を進む。

 こいつらは、どこから湧いて出てきているのだろうか?

 歩きなれたフィリミシア城の通路が、

 こいつらのせいで異質な空間に見えてしまう。


 帰れ、筋肉ダルマども!(苦情)


「御屋形様は温存を! こやつらは拙者達にお任せあれ!」


 先頭に立って生物兵器を切り捨ててゆくのは頼れる家臣のザインだ。

 その脇を固めるようにミカエル、メルト、サンフォが攻撃魔法でサポートする。


 彼らの傍で浮きながら光弾を放つ、

 ホビーゴーレムのアーク達の活躍も見逃せない。

 大ダメージこそ期待はできないが、

 その光弾は生物兵器の目に命中すると、確実に怯ませることができるからだ。


 その点、ムセルの異常さが浮き彫りになる。

 彼はルドルフさんのヘルムの上に陣取り『固定砲台』として活躍していた。

 新型スナイパーライフル『MOMO・G-S』の威力は凄まじく、

 ピンポイントで眉間を打ち貫き筋肉ダルマ達を抹殺してゆくのだ。

 その射撃の腕前は正確無比であり、撃ち損じはまったくない。


 ドクター・モモは、なんて物をムセルに与えたんだ……(白目)。


「エルティナ、この先の部屋に地下への入り口がある。

 だが、大量の生物兵器が道を塞いでいる状態だ。

 これを撃破して地下に侵入せよ」


 俺の口から桃先輩の声が発せられた。

 これにより、このパーティーメンバー達に情報が行き渡る。

『ソウルリンク』による会話は、リンク中の全メンバーに伝わってしまうので、

 こういったアナログ形式の情報伝達も活用されるのだ。


 地下への入り口は、広い部屋にポツンと空いていた。

 壁が崩れ落ちぽっかりと大きな暗闇が窺える。

 その入り口の前には、三十体ほどの生物兵器が暇そうにうろついていた。


 ここは俺がザマスさんによってダンスの練習をさせられていた部屋で、

 なんとダンスの練習専用の特別な部屋である。


 ワン、ツー、ざます。ワン、ツー、ざます。

 うっ、頭が……(突然の記憶障害)。


 えぇい、もう突っ込むぞ!

 忌まわしき記憶よ、筋肉ダルマ達とともに逝け!(切実)


「突撃だっ! なんでもいいから叩き潰して差し上げろ!」


 地下への入り口周辺でたむろしている、

 大量のむさ苦しい筋肉ダルマ達に俺達は突撃を試みた。


 だが、流石に数が多い。

 筋肉ダルマ達に苦戦をしていると、

 開けっ放しになっていた扉から追加の生物兵器が侵入してきた。


 おかわりなんて頼んでないから! お帰りなさってくださいな!


「こちらは俺に任せてください!」


 クウヤは手にした業物の日本刀で、追加の筋肉ダルマの頸を刎ね飛ばした。

 彼もまた父親と同じく、チート能力を持って生れてきたのだろう。

 俺にかかわる者は、皆チート能力に愛され過ぎている(呆れ)。


「おやおや、一人だけポイントを稼がれては堪ったものではない。

 そろそろ私も暴れさせて頂こうか」


 クウヤに続けと言わんばかりに、

 ムー王子は手にした鎖付きの巨大な鉄球で筋肉ダルマを叩き潰した。

 鉄球は大柄なムー王子の身体の半分ほどもある物だ。

 重量も相当なものになっていることだろう。


 羊獣人とは凶暴な種族だったようだ。

 極力、彼を怒らせないようにしなくては(戒め)。


「ひぃ~来るなぁ! 撃つぞ……『ズビュウ』撃つぞぉ!!」


 言葉を言い終わらない内に目からレーザーを放ち、

 筋肉ダルマを真っ二つに両断するラペッタ王子。

 色々な意味で危険人物だ。キレたら何をやらかすかわからない(警戒)。


 三人とも十分過ぎるほど強い。

 どうやら、追加の生物兵器はこの三人に任せても大丈夫のようだ。

 地下への入り口に密集する筋肉ダルマの排除に専念しよう。


 俺達は地下への侵入を拒む筋肉ダルマ達を駆逐すべく態勢を立て直し、

 再び突撃を敢行したのであった。

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