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食いしん坊エルフ  作者: なっとうごはん
第一章 珍獣と聖女と仲間達
28/800

28食目 武具と俺

ぼんじゅ~る、ラングステンの『もちもちんじゅう』白エルフのエルティナだ。


今日の授業はグラウンドにて武器を使った戦闘訓練だ。

各自、得意な武器を持って、的に向かい攻撃するのである。

的と言っても、太い丸太を突き立てているだけの簡素なものだ。


尚、武器は刃の部分を潰したり丸くしているので比較的安全だ。

とはいえ、十分に気を付けて扱わないといけないのは変わりない。


訓練用に用意された武器は様々な物があった。

中には明らかに武器じゃないものまであったりしたのだが……。


「俺は折角だから、この武器を選ぶぜ!」


そんな中、俺が選んだのは斧! しかも両手用の巨大な物だ。

こいつは男のロマンだぜぇ……!(確信)


「エルじゃあ、持てねぇだろぉが……」


ガンズロックが心配そうな顔で俺を見ている。

へへ、まぁ見てな!? 見晒せ! 俺のフルパワー!!


「うぎぎぎぎ……ふきゅーん、ふきゅーん! ……あふん」


残念ながら、俺はロマンを持ち上げることができなかった!

なんということだ、俺はロマンに拒絶されてしまったのだ!!


「まぁ、斧を選ぶってぇのは理解できるがよぉ……持てなきゃなぁ?」


両手斧を『片手』で持ち上げるガンズロック。

とても六歳児の筋力とは思えない。

いったい、どういうことなんですかねぇ?


「ドワーフはよぉ、俺の歳でもよぉ、人間の大人より筋力があるのさぁ」


ニカリと笑って斧を肩に担ぐガンズロック。

そのさまは、かつて俺がやっていたテレビゲームのキャラクターに、

そっくりであった。


いい絵柄が見れたとほっこりした半面、

斧が持てなかった悔しさも、俺の心の中で阿波踊りをして、

必要以上に心を掻き乱した。


「くやしいのう、くやしいのう……」


俺は激しく阿波踊りをする悔しさを制圧し、次の武器を物色することにした。

すると、気になった武器が隅っこの方にポツンと残されていたではないか。

選ばれなくて、さみしそうにしていた武器を取り上げて、

試しに使ってみることにした。


「鞭だー! ビシバシいくぜ!!」


俺が手に取った武器は鞭である。

某ヴァンパイアハンターが使っていることで有名な武器だ。

これなら軽いし、ひょっとしたら使えるかもしれない!


……そう、思っていた時期がありました。


俺は鞭を振り回すと、鞭は俺から離れたくなかったのか、

体に巻き付いてしまい、あっという間に『芋虫状態』になってしまった。

随分と、さみしん坊な鞭であったようだ……ふきゅん。


「エルちゃん……鞭は難しいよ?」


リンダが絡まった鞭を外してくれながら説明してくれた。

特殊武器の素質がCからでないと、まともに使えない特殊武器だそうだ。


「ごめんな……鞭。

 俺じゃ、おまえを扱ってやれそうにないんだぜ」


俺は鞭に謝り、そっと箱の中に戻した。

やはり、この世界は素質の世界なのだろうか?


俺の武器の素質はオールEだ。

これでは、殆ど武器をまともに使えないことになってしまう。


いや待て……ふむ! ならばいっそ、使わないって手もあるな!


「俺は拳を極めるぜ……」


「お? じゃあ、俺と勝負すっか!?」


と獅子の獣人であるライオットが、物凄いスピードで突きや蹴りを放っていた。

流石、獣人だけあって子供でも規格外の身体能力だ。

はっきり言って、何をしているのか殆ど見えない。


俺は即座に引退を決意した。

おまえに勝てるわけないだろ! いい加減にしろ!!


俺は練習を一端中止して、

クラスの皆がどのような武器を使っているか見学することにした。

それからでも武器を選ぶのは遅くないはずだ。

そんな中、珍しい武器を使っているヤツを発見した。


ダナンが吹き矢を使用して的に攻撃していたのだ。

なんという予想外の武器を……。


「俺は商人志望だからな、戦うより生存率を上げる方に特化する予定さ」


更に「吹き矢は、各種の毒も使えるしな」と付け加える。


成程、そういう方法もありか。

俺も試しに吹き矢を使ってみよう。


「ユクゾッ……ふひっ!」


ポトリ……と矢が俺の足下にコロコロと転がった。

肺活量が足りなくて、矢がまともに撃てなかったのである。

本来の役目を果たせなかった矢は、悲し気に俺を見つめていた。


やめてっ! そんな目で俺を見ないでっ!(悲しみ)


「おまっ、酷いな……うはっ、ぷよぷよじゃないか。

 こりゃ、吹き矢は無理だぜ」


ダナンにお腹を触られた上にダメ出しを受けた。

取り敢えず俺式『ウィンドボール』でダナンをぶっ飛ばしておく。

セクハラだめ、絶対!


ヒュリティアはツーハンドソードと言われる、巨大な両手剣を選んだようだ。

褐色の肌に煌く白銀の刀身が眩しい。

ビューリフォー! おお……ビューリフォー!!


「どれどれ、試しに俺も……」


試しに俺も使おうと思ったが、やはり持てなかった。

隣ではクラス委員長が両手剣に挑戦していたが……

持ち上がっているのは自分のお尻だけで、剣は一ミリも動いてない様子だった。


気を取り直し見学を再開することにする。

エドワードは当然、貴族の嗜みであるレイピアを使用……していなかった。


「ふしっ……はぁっ! シャオッ!!」


とか言いながら、鉤爪付きの手甲を使い、

目にも止らぬ速度で的をバラバラに引き裂くエドワード。

その洗練された動きは、まるでダンスを踊っているようでもあった。


「エドワードのセンス良いぜ。

 へへ……なんだか、ワクワクしてきやがった!

 手合わせしてくれねぇかなぁ?」


獲物を見つけた野獣の表情を見せるライオット。

二人は良いライバルになりそうである。


俺も試したが、的に爪が食い込んで抜けなくなったので小手を外して放置した。

おまえなんか嫌いだ! ふんっ!!


銀ドリル様はレイピアを使って訓練をしていた。

恐らく実家で習わされていたのだろう。

一つ一つの動きが機敏であり、かつ優雅ですらあったのだ。


エドワードが肉食獣の荒々しさを秘めたものであるならば、

クリューテルは草食獣のしなやかさを秘めていると感じた。


「見事なレイピアだと感心するが、どこもおかしくはない」


「あら、エルティナさん……見学ですかしら?」


俺は銀ドリル様に事情を説明する。

納得してくれた彼女は俺にレイピアを進めてきた。

理由は軽さと、ピンポイントで急所を狙うことができるその鋭さだ。


「なるほど……試しに使ってみるか」


先ほどの銀ドリル様の動きを真似てレイピアを扱ってみた。

持てることは持てるが、やはり俺には重たかった。

それでも、へっぴり腰ではあったが、なんとか使うことができるようだ。


「もう少し筋肉が付けば、扱えるようにはなりますわね」


「うん、そうだな。

 候補に入れておくよ、ありがとなクー様」


ようやく候補を一つ見つけた俺は、再び見学をすることにした。

まだ、俺に適合する武器がないか調べるためだ。


フォクベルトは……なんだあれ? 見たことのない武器だな。

何か棒のような物を握っている。


「ああ……これは、こう使うんですよ」


シュイィィィィン! と音を立て光り輝く刀身が現れる。

モシカシナクテモ『ライト〇ーバー』であった。

おまえぇ、ジェ〇イの騎士かよ!?


ヴゥン、ヴゥゥン! と音を立て、フォクベルトは丸太を易々と切り裂いた。

彼の持つ光の剣は、まるで重さがないように感じられる。


待てよ? これなら俺も……。


「フォクベルトッ、俺にもそれを使わせておくれ!」


「申し訳ありませんが、これは超特殊武器です。

 代々、僕の一族しか使えませんので……」


う~ん、残念!

でも、可能性がないわけではない。

だったら、新しく作ればいいのだ!

よし、これも候補に入れておこうっと(メモ)。


さてさて、他の子は何を使っているのかな?

お? あそこにリンダがいるぞ、行ってみよう。


「リンダは何を使ってるんだ?」


俺はリンダにそう聞いたが、彼女は恥ずかしいのか俺の大きな耳もとで、

コッソリと教えてくれた。


リンダの武器の素質で一番高いのは鈍器。

なんと素質Sである!

彼女は小さめのクラブを手に持っていたのだ。


「魔法より素質が高いなら、そっちで行けば良いんじゃないのか?」


「だって……はずかしいもん」


ああ……確かに、女の子が鈍器持って「ひゃっはぁぁぁぁっ!!」って……

一部の方々は狂喜乱舞しそうだが。


いいなぁ……皆、武器に恵まれて。

それに比べて俺ときたら……いや待て、まだ諦めるには早い!

可能性を捨てては何も始まらない!

そう、俺は可能性の珍獣。

見せてやろう、俺の真の姿を!


俺は手当たり次第に武器を試すことにした。

結果は……ありとあらゆる武器達にコケにされた。


「うえ~ん、武器達が苛めるよう……」


俺はガクリと崩れ落ちた。

見ろぉぉぉぉ! これが俺の真の姿だぁ!!(滝涙)


「これは、もう武器で戦うのは逆効果だな……

 取り敢えずエルティナは、武器訓練の間はグランドを走って体力付けとけ」


とアルのおっさん先生はおっしゃいましたとさ。


解せぬ……ふきゅん!


◆◆◆


「めしだー!!」


運動の後は腹が減る。

グランドを何周したかも、わからなくなるくらい走り込んだ俺は、

学校の食堂にクラスメイトと共に来ていた。


ここの食堂は、ミランダさんの料理に比べれば一歩ゆずるが

メニューが豊富で、尚且つ出てくるのが早いのが売りだ。


「何を食べようか……? うむむ、良し!」


俺は、ナポリタンを食べることにした。

これも、転生者か召喚者が伝えたものだろう。

庶民の食べ物が豊かになるのは良いことだ。


食堂のおばちゃんが、俺にナポリタンを渡してくれる。


「あら~相変わらず、ちっこいわね!?

 ちゃんと食べないとダメよ?」


とか言いながら、山盛りのナポリタンを俺に渡してきた。

俺の顔が隠れるほどの山である……って、こんなに食えねえよ!?(呆れ)


まあ……余ったら、ライオットやガンズロックが食べてくれるんだけどな。


食堂はかなりスペースがあるので、席の奪い合いにはならない。

丁度いい場所が空いてたので皆でそこに座った。


「じゃ、食べようよっ!」


リンダの合図で一斉に食事を楽しむ。


リンダはサンドイッチ。

ヒュリティアはホットドッグ。

ダナンは焼きそばパン。

フォクベルトはシュークリーム。

いつも思うのだが、そんなので腹膨れるのか?

ガンズロックは焼き鳥に……ビール(大ジョッキ)だ。


「ガンちゃん、一口飲ませて」


「ばぁろぉ、この歳での飲酒はなぁ、ドワーフ以外にゃ認められてねぇんだ。

 アルの先生にもよぉ、絶対にエルにゃあ飲ませんなっ、て言われてんのよぉ」


そう言い切ってビールをグイッと飲み干す。

いい飲みっぷりだぁ……しょぼん。


いいなぁ、俺も早く飲みたいんだぜ!


「うめぇのか? その飲み物、俺はこっちの方でいいや」


ライオットは……でたぁぁぁぁぁぁっ! 骨付き肉っ!!!

まさに、肉食獣そのものっ!!


てか……一緒に食事するようになって結構経つが、

それ以外の料理を食べてる姿を、一度も見たことがないのだが。


まぁ、いいか……俺も、そろそろ昼食を頂くことにしよう。


ホカホカと湯気が立ち上るナポリタン。

出来たてのパスタは格別な美味さを誇るのだ。

ケチャップをまとった麺は朱く染め上げられ

玉ねぎと、ピーマン、人参、厚切りベーコンが脇を固める。


俺はそれらをよくかき混ぜ、フォークをクルクル回し、

麺を団子状にし……あむっとほう張った。


ケチャップの酸味、玉ねぎの辛味、ピーマンの苦味

そして、人参の甘味!(重要)人参が甘いのだ、果物みたいに!

更にベーコンの塩気と、ジューシーな肉汁が渾然となり舌を喜ばせる。


出来立てで、熱いというのも重要な要素だ。

冷えてるとまったくの別物になってしまう、といっても過言ではない。

冷えたナポリタンは、どこか野暮ったくなってしまう。


「んまい!」


俺は冷えないうちに、むしゃむしゃとナポリタンを腹に収めていく。

しかし、おばちゃんが渡してくれたナポリタンは多過ぎた。

半分以上も残す結果になり無念に思う。


「……のこった~」


「よこしなぁ、酒のつまみにでもするからよぉ」


ガンズロックが余ったナポリタンを受け取り、ガツガツと食べ始めた。

大抵の場合、余った料理は彼の腹に収まる。

残してしまったら、もったいないので非常にありがたいことだ。

俺もがんばって、もっと食べれるようになろう……。


ちなみに、貴族連中は別に食堂があり、そこで食事取ることになっている。

色々と過去に問題があったからだそうだ。


俺との食事を楽しみにしていたエドワードは残念がっていた。

まぁ、俺がそちらに赴くという手もあるが、

今は身分を隠しているから当分の間は無理だろうな。


◆◆◆


「ふぅ……ミランダさんの料理は至福、はっきりわかんだね」


夕食をヒーラー協会の食堂で済ませた俺は、

しばらくミランダさんと雑談し自室に戻った。


俺の指導もあり、アルのおっさんも彼女に一歩踏み込みだしたが……

やはり、前の旦那のことを引きずってるみたいだ。

流産のことも、気にしているみたいだしな。


「こればっかりは……なぁ」


ベッドに入り、ミランダさんのことを考えていたが、

次第に眠気が強くなりウトウトとしだした。


エレノアさんも……求婚されたって言ってたっけ。

相手はだれか、聞きそびれたが……。

変なヤツだったら『ファイアーボール』(自爆)で葬り去ってくれるわ!


グランドを走り回ったせいか、満腹になったせいかはわからないが

俺は知らない内に、深い眠りについていた。


たぶん……両方なのだろう……ぐーすかぴー。

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― 新着の感想 ―
[気になる点] はっ これは死亡フラグ!?
2021/07/28 20:19 思いつかない!(八つ当たり気味)
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