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食いしん坊エルフ  作者: なっとうごはん
第一章 珍獣と聖女と仲間達
27/800

27食目 爆弾少女

「次~エルティナ」


アル先生(慣れない)の号令と共に俺は

火属性攻撃魔法『ファイアーボール』を発動。

手に、炎の玉が形成され……爆発した。

俺を巻き込んで。


「きゃあぁぁぁぁぁ!?」と悲鳴が上がる。

「食いしん坊! 返事をしろっ!?」と男子の声。


黒い煙が晴れ、原型を留めないくらい地面が抉れている。

だが爆発の中心にいた俺は無傷である。

理由は……魔法抵抗力がクッソ高いからと分析した。多分そう。

ソウイウコトニシトコウ(震え声)。


でだ……実はこの結果が待っていることは知っていたのだ。

何故ならば、魔法が使えるようになってすぐ試したから。

そんなわけで、ご覧の有様だよ!!

実に一年振りに『ファイアーボール』を発動したが結果は同じだった。

しょんぼり。


「いけると思ったんだがなぁ……」


唖然とするクラスメイト。


「なんで無傷なんだよ!?」とクラスの皆からツッコミの声が飛ぶ。

そんなこと言われてもなぁ……ここは、何か言っておくべきかな?


「俺は全属性に見捨てられたが、ただ一つ見捨てなかったヤツがいた!

 それは属性無き反逆者『魔法抵抗』! 全てに……反逆だっ!!」


ドン!! という効果音と共に胸を張る。

その俺の姿に、ポカーンとするクラスメイト達。


「だれにでも、一つくらいは優秀なところがございますわね……」


何やら呆れたように言ったのは、銀ドリル様ことクリューテルだ。

仕方ないじゃないか……こちとら、唯一の特技を披露できないんじゃい。

治癒魔法はもちろん封印中である。

必要な事態になれば迷わず使うがな。


◆◆◆


それから一ヶ月、俺は……爆発したり、変な状態になったりし続けた。 

水属性攻撃魔法『ウォーターボール』を発動すれば水爆弾と化し。

風属性攻撃魔法『ウィンドボール』を発動すれば小さな台風と化し。

雷属性攻撃魔法『ライトニングボール』を発動すれば

イルミネーションみたいに光り。

土属性攻撃魔法『アースボール』を発動すれば小さな山になった。

闇属性妨害魔法『ダークボール』を発動したら……俺から離れず、

俺は黒い塊になった。

光属性攻撃魔法シャイニングボールは……俺自身が光った。まぶちぃ……!


後に俺は『爆弾少女』と呼ばれるようになるのだが、

この時はそのことに、まだ気が付かないのであった。


「すげぇな、エルは」


ライオットが、光り続ける俺に言った。


「傷一つないぜ……? もうその状態で、体当たりすればいいんじゃないか?」


ふきゅん! それだっ!


「ぶるぅあぁぁぁぁぁぁぁっ!!」


俺は『シャイニングボール』を身に纏ったまま、練習用の的に体当りした。

的は魔法用であり、物理的な衝撃には滅法強く、魔法攻撃以外は破壊が難しい。

『シャイニングボール』は対アンデッド用の魔法なので

本来はアンデッド以外には効果がないのだが

バキッ! という音と共に的は壊れたのであった。

魔法であればなんでもいいらしい。

……解せぬ。


「うお!? マジに壊れた!!?」


「すげぇ!?」


「いや……意外と強力な魔法と物理攻撃……考慮の余地と発展が……」


何か色々言われてるが、俺のオリジナル魔法が完成した!

最早、魔法でもなんでもない気がしないことがない。


「ん~まぁ、いいか~エルティナ合格っと」


お情けでアルのおっさん先生に合格を貰った俺は、

この日の魔法の授業を無事に終えた。


ふぃ~、ちかれたび~……


◆◆◆


昼食後……俺たちは教室で、雑談に花を咲かせていた。

一ヶ月経ち、クラスメイトとも、だいぶ打ち解けてきている。


「しっかし、白エルフがこうも魔法が苦手なんて聞いたことがないよ?」


「言うなよダナン、俺が一番知ってる」


「悪い」と言って気まずそうに謝罪するダナン。


こいつは、偏見を持ってるが話せばわかるヤツだ。

割り切りもいいので、ちゃんと説明すれば理解もするし反省も和解もできる。

現にヒュリティアとの和解も済ませてある。

流石、商人の息子。


「私も魔法は使えないが……身体能力は高いから不便はしてない……

 でも、エルは……」


と言って、俺を抱きしめる。


「可哀想……白エルフから攻撃魔法を取ったら……辛い人生が待っている」


ヒュリティアの体が、プルプル震えてるのがわかる。

黒エルフは、奴隷として扱われた種族だからなぁ……辛さがわかるんだろう。

だがしかし! 俺は攻撃魔法が使えないくらいでは挫けんのだよ!!


偉い人が言っていた!

レベルを上げて物理で殴ればいいって!!


「白エルフは……身体能力の限界が低すぎるから」


「なん……だと……!?」


今度は俺がプルプルし始めた。

抱き合う二人はプルキュア!!(白黒)


「まぁ確かに……あのスピードじゃあ、動かない的にしか当たらんわな」


とライオットが言った。

やめて! 俺のガラスのプライドが粉々になっちゃう!!

ビクン、ビクン!


「しかし、威力は充分と見ました。

 ならば相手を動けなくし、確実に当てれる環境を作ればあるいは……」


冷静に分析し、有用性を伝えてくれるメガネのフォクベルト君、

マジイケメン!! そこに痺れる! 憧れるっ!!


「でも、エルちゃんが体当りしても頑丈な人なら耐えて、

 お持ち帰りされちゃうよ? エルちゃん可愛いし……」


リンダさん、夢を壊さないでおくれ。


だが、彼女の言うことも一理ある。

この戦法は、ほぼ捨て身の技だ。

まさに……やるか、やられるかになる。


しかし、お持ち帰りは勘弁願いたいなぁ。

綺麗なお姉様なら悪くもないかもだが。


「せめてよぉ、武器の素質がありゃなぁ?」


ガンズロックが口ひげを弄りながら、俺の細い腕を見つめている。

立派な髭が生えているが、彼は俺と同じ六歳である。

皆、覚えておくように! テストに出るぞ!(未定)


「素質がなくても使える武器を作っておくれよぅ……」


「作れるがよぉ、材料費だけで大金貨二百五十枚は必要になるぞぉ!?」


俺は思わず、飲んでいた紅茶を吹き出した。


「高過ぎんだろぉ!?」


「ばぁろぉ、エルが使えるとなりゃあ特殊な鉱石が必要になるんだぁ!」


「ははぁ……レアメタルですか。

 それなら、納得の金額ですね」


フォクベルトが、眼鏡の汚れを布巾で拭きながら、ガンズロックに答えた。

どうやら、吹き出した紅茶が彼に直撃してしまったようだ。

ごめんよぉ……。


「まぁ……エルにゃあ、まだ早い代物だぁ。

 まずぁ体を鍛えることから始めるこったぁ!」


「ふきゅん……結局はそこからか」


俺も必死である。

世界食べ歩きの旅に必要な、自衛のための力がないのだから。

これでは、初代との約束も果たせない。

あの腐れ外道共に、制裁を与えることもできないのだ。

今尚、のうのうと生きているあの連中に!


「何か思うところがありそうですが……我々は、まだ幼き身です。

 思い詰めるのはよしましょうエルティナさん。ぷるぷる」


どうやら、俺は思い詰めた表情をしていたらしい。

そんな俺を心配したゲルロイドが、俺を優しく諭してくれた。

とても六歳の子供が言うようなセリフではないが……彼は王族だ。

俺達、一般市民と同じ思考などしてはいないだろう。


「エルは戦わなくてもいいよ! 僕が守ってあげるから!!」


俺に抱きつくエドワード。

おごごご……同じ王族でも、ここまで違うものなのか!?

少しエドワードは、ゲルロイドを見習うべき! そうするべき!


「エルは本当、柔らかくて良いなぁ……」


「ふきゅーん、ふきゅーん!」


エドワードは華奢な外観をしてても意外と力が強い。

俺がなさ過ぎるということもあるが、

抱き付かれたら自力での脱出は実質不可能である。

よって、俺に残された手段は「ふきゅん」と鳴くだけである。


そして、その光景は最早おなじみになってしまっており、

だれも助けてくれなくなっているのだ(深い悲しみ)。


「えるちゃんが、また、だきつかれてるよぉ」


「エドワード様は、珍獣がお気に入りでいらっしゃいますね」


むしろ、微笑ましく見守る者の方が多い。

大勢のギャラリーがいるところで抱き付かれるのは、

やはり恥ずかしいのである。


「あら……また、エルティナさんは、エドワード様の玩具にされてるんですの?」


教室に戻ってきたクリューテル。

彼女はこの教室内での、数少ない常識人である。

頭の後ろに装備されている、六つの銀のドリルが頼もしく感じる!


「クー様、へるぷ、み~」


クリューテルはツカツカと俺の下に歩み寄り、

そのままエドワードの反対に立ち俺に抱き付いてきた。

まさかのサンドイッチ攻撃である。


銀ドリル様の裏切り行為に、

俺は『致命的な致命傷』を受け、白目になってしまった!


「ふぅ……流石エルティナさんですわね、一度この感触を味わってしまっては」


俺のほっぺに自分のほっぺをくっつけて、スリスリしてくる銀ドリル様。

当然、なすすべがない俺は「ふきゅん」と鳴くしかない。


これもいつもの光景なので、だ~れも助けてはくれない。


「大人気じゃないかエルティナ」


俺を救い出したのは、担任であるアルのおっさん先生だった。

どうやら、昼休みが終わりを迎えるようだ。


「さ~昼休みも終わるぞ!

 そろそろ、授業の支度をするようにな!」


「は~い」とクラスメイト達が各々の席へと戻っていく。

エドワードと銀ドリル様も、名残惜しそうに俺から離れていった。


ようやく解放された俺であったが、

今そこにあった温もりを感じなくなった途端、

急に寂しくなってきたのを自覚し、もう一度「ふきゅん」と鳴いてしまった。


いかんな……この状況に慣れてきてしまっている。

こんな状態で俺はヤツらと戦えるのか……?


自問自答したところで答えなど出るはずがない。

結局、授業中はずっとモヤモヤして集中できなかったのだった。


◆◆◆


放課後、いつもどおりヒーラー協会で仕事をし終え、

患者のカルテを書き終える。


その後、少し遅い夕食をヒーラー協会の食堂で摂り、

食後にミランダさんと雑談に花を咲かせた。


……ミランダさん、まだ前の亭主のことを引きずってるようだ。

そのせいで、彼女は流産したのだとエレノアさんに聞いた。

ミランダさんの子供が生まれていれば……俺と同じ年だったそうだ。


自室に戻った俺はベッドに飛び乗った。

先にベッドで丸くなっていた野良にゃんこが、ぼよんと飛び跳ねる。


「にゃ~」


「おおぅ、ごめんよぅ」


俺の腹に乗って抗議するにゃんこだったが、

眠気の方が勝ったのか、そのまま腹の上で丸くなってしまった。


話し相手も寝てしまったので、俺は一人思いにふけった。

真っ先に頭に浮かんだのは、さみしそうに笑うミランダさんの顔だった。

なんとかしてやりたいが……俺では無理であろう。

その場しのぎの幸せしか、与えることができないのはわかっていた。


「もっとアピールしろよな……アルのおっさん」


かなり奥手なアルのおっさんに愚痴る。

まずは、一歩踏み込むところから始めないといけないのに、

いまだにそれができていないのだ。


「ここは一つ……肌を脱ぐとするか」


そんなことを考えながら俺は目を閉じる。


色々変化し始めた日常生活。

俺が世界に飛び出す日は、まだまだ先になることだろう。

というか……飛び出せるのか?(呆れ)


なんて不安になってる間に睡魔に襲われた俺であった。ぐうぐう……。

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