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食いしん坊エルフ  作者: なっとうごはん
第五章 青き竜使いと黄金の竜
258/800

258食目 お節介焼きの冒険者

 ◆◆◆ シグルド ◆◆◆


「よう、カーター。久しぶりだな」


「おう、シグルド! 生きてやがったか!

 カサレイムの獄炎の迷宮でくたばった、って聞いていたんだぞ?」


 ……誰だ、そんな噂を流しやがったのは。

 後でとっちめてやる。


 俺はゼグラクトの門を護る熊の獣人のカーターに大銅貨五枚を渡し、

 町の中に入ろうとしたが、突然カーターの表情が強張った。

 いったいどうしたのだろう、と思った瞬間……。


「が、がががが! ガルンドラゴンだぁぁぁぁぁぁぁっ!!」


 俺の後ろにいる相棒を見て、悲鳴を上げてしまったのだ。

 うっかり説明するのを忘れていた。

 というか、さっきから後ろに居たのに気が付かなかったのかよ?


「シグルド、この国の人達は、我を見ても驚かないのではなかったのか?」


「きぃえあぁぁぁぁぁぁっ!? 喋ったぁぁぁぁぁぁぁっ!?」


「あーもう……カーター、驚き過ぎだ。

 そんなんじゃあ、衛兵は務まらねぇだろうが」


 口をパクパクさせて餌をねだる魚のような顔をしているカーターをなだめ、

 俺は事情を説明した。


「おい、おい……ビックリさせるなよ。二重の意味でよ。

 スゲェじゃねぇか、ガルンドラゴンが相棒だなんて。

 きっと町中の噂になるぜ?」


 立ち直りが早い。

 流石、衛兵と言いたいが、

 何を見てもビビらない度胸の方を身に付けてほしい。


「そりゃあ楽しみだ。それじゃあ、通るぜ」


「あぁ、ゆっくりしていきな!」


 俺と相棒は、カーターに見送られてゼグラクトの町に入っていった。

 このゼグラクトの町は元々はラングステン王国への侵攻拠点だったそうで、

 強固な防壁に包まれた城塞都市だ。

 今でも何十隻もの軍艦が寄港している。

 ここを陥落させるのは至難の業と言ってもいい。

 よって、町の住民達も肝が据わった連中が多いのが特徴だ。


「ぎゃぁぁぁぁぁぁぁっ!? ガルンドラゴンだぁぁぁぁぁぁぁっ!?」


「もうダメだっ! お終いだぁぁぁぁぁっ!!」


「ままー、ぴかぴかのとかげさんだよ!」


「見ちゃいけません!」


 ……思ったよりも肝が据わってなかった。

 町が大パニックになっている。


「シグルド、大騒ぎになっているのだが?」


「あー……なんていうか、その~……すまん相棒」


 そして相棒が人の言葉を話した瞬間、カーターと同じ現象が起こったのだ。

 俺はこの現象を『カーター現象』と名付けることにした。


 結局、軍隊が出動する事態になったが、

 相棒が大人しくしていたのと、

 俺の必死の説明で事なきを得ることに成功する。


「まったく、驚かせないでくれ。

 今は人が出払っていて戦力が足りないんだ。

 ガルンドラゴンと聞いて、死ぬ覚悟をして出動したんだぞ?」


「いや~、すんません。ブリギッド隊長」


 俺は顔見知りであるブリギッド・ウルディンに頭を下げた。

 彼女は俺と同い年の二十四歳の金髪美人で、

 顔良し、スタイル良し、気立て良しの素晴らしい女性だ。

 惜しむらくは背丈が高過ぎることだろうか?


 なんと身長が三メートル以上もある。

 まぁ、彼女は巨人族だから仕方がないのだが。


 それにしても惜しい。

 せめて、あと一メートルは低ければ、なんとか俺と釣り合うのに。

 背丈の問題さえなければなぁ……。


「それよりもだ……例の件は考えてくれたか?」


「あ~入隊の件っスか? 今はまだできませんね」


 俺の言葉を受けてシュンと落ち込む彼女。

 大きな体に小動物のような心を持っているのだ。

 そんな彼女に好意を持つ者は意外と多い。


「その代り、盗賊の討伐に参加しに来ました。

 ……相棒と共にね」


「相棒って……まさか!?」


 ブリギッド隊長は慌てて相棒を見た。

 うずくまって大人しくしている黄金の竜には、

 沢山の子供達が纏わりついていた。


「シグルド、なんとかしてくれ」


「あはは、ぴかぴかとかげさん!」


「おっきいなっ、おっきいな!」


 そこには威厳もへったくれもない、困り果てた一匹の竜がいるだけだった。

 その様子にポカーンとした表情を浮かべる彼女。

 無理もなかった。

 竜がこのように大人しいはずがないからだ。


「しっ、シグルド! ガルンドラゴンが喋った!」


「そっちかい!」


 俺の鋭いツッコミが炸裂した瞬間であった。




 盗賊の討伐参加を申し入れた俺達は、今晩の宿の確保に向かった。

 とは言ったものの、俺は馴染みの宿があるので問題ない。

 問題は相棒の寝場所である。


 八メートル近くもある相棒の体では、馬小屋にすら入ることができないのだ。

 軍の連中の世話にはなりたくはない。

 借りを作ってしまったら、なし崩しに軍に入隊させられかねん。

 まだ、エリスンの目が治っていないのに、

 行動の自由を奪われたら堪ったものではないからな。


「シグルド、我は別に路上でも構わないのだが?」


「何言ってんだよ。

 むしろ通行人がビビって困るハメになるだろ?

 それに、宿に近寄れなくなる小心者の客も出かねん。

 何か良い手は……っと、あそこがあったか」

 

 俺は港の傍の、くたびれたドックに向かった。

 そのドックはトタンで作られた船のドックで、

 潮風に晒されあちこち錆び付いている。

 今では、かつては鮮やかな空色であったであろう痕跡を残すのみだ。


 その大きさだが、船の整備をしていただけあって非常に大きな建物だ。

 この大きさなら相棒が入っても窮屈ではないだろう。

 ……問題は、ここを使わせてもらえるかどうかだ。


 ドックの重いドアを開く。

 ギシギシと音がして、相も変わらず開けにくいドアだ。

 薄暗い建物内に入り込み、俺はここの管理者の名を叫んだ。

 ドックが広いので、大声で叫ばないと声が伝わらないのだ。


「お~い! マーベット婆さん! 生きてっか~!?」


「でけぇ声、出すんじゃないよ! 聞こえてるわっ!!」


 うへぇ……相変わらずおっかねぇ婆さんだ。

 しかも、まだまだくたばる様子はない。

 どんだけ、元気なんだよ?


 背筋のピンとした白髪の老婆が、

 紺色の作業服に身を包んで、ずかずかと大股で歩いてきた。

 彼女こそ、このドックの管理人にして所有者である、

 マーベット・タラスクである。御年七十六歳。


 はっきり言って、同じ人間とは思えない頑強な肉体を誇っている。

 ……本当に人間なのだろうか? 片手で鉄骨を担いでいたのだ。

 重さにして、百五十キログラムはあるだろう。


「なんだい、シグ坊じゃないか。

 どうしたってんだい、こんなところにさ」


「久しぶり、マーベット婆さん。

 今日はちょっと頼みごとをしにきたんだよ」


 マーベット婆さんは、「ふん」と鼻息を鳴らして、

 胸ポケットにしまってあった『タバコ』を取り出して火を点けた。

 ゆらゆらと立ち上る煙。

 吸った煙を満足げに吐き出す彼女はヘビースモーカーだ。


「あんたが頼み事なんてねぇ……今日は槍でも降ってきそうだよ」


「そんなわけないだろう?

 で頼み事なんだけどさ、相棒にここを貸してやってほしいんだ。

 少しばかり体が大きくて宿に泊まれないんだよ」


「少しって……巨人族の相棒でも見つけたのかい?」


「巨人よりもでかいのさ。

 ドックのゲートを開けてくれよ」


 マーベット婆さんがドック正面のゲートを開けるレバーを引くと、

 巨大なゲートがギシギシと悲鳴を上げながらゆっくりと開いてゆく。

 そして見えてくる黄金に輝く鱗。


「あんたねぇ……お節介を焼くにも、ほどってもんがあるよ」


 ポロリと口からタバコを落して呆れる彼女。

 どんな時でも、口からタバコを落したことがなかったにもかかわらず、

 彼女はタバコを落してしまったのだ。


 開いたゲートからは、太陽の光に照らされて力強く輝く相棒の姿。

 敵であるなら恐怖の輝き、味方であるなら希望の輝きだ。


「……世話になる」


 相棒はマーベット婆さんの顔を真摯に見つめ礼を言った。

 その黄金の竜の姿に呆気にとられるマーベット婆さんだが、

 そこは年の功、経験豊かな老人だ。

 豪快に笑い飛ばした後、相棒の前まで歩いてゆき顔を突き出して言った。


「礼儀ができている良い子じゃないか。気に入ったよ。

 好きなだけ使うといい。どうせ回ってくる仕事は部品の組み立てさ。

 もう、船を作ることはないだろうからね」


 そう言うとマーベット婆さんは作業服を脱ぎ捨て、

 休憩室に向かい酒を飲み始めた。

 今はまだ昼前だ。仕事はどうしたのだろうか?


「おいおい、マーベット婆さん。

 仕事はどうしたんだい? まだ昼前だぜ」


「はんっ! 仕事なんてもう終わったさ!

 造船以外の仕事なんざぁ、

 クソ孫のケツの毛を引っこ抜くよりも簡単さね!」


 ……また、喧嘩したのか。

 相も変わらずな祖母と孫だな。




 相棒をマーベット婆さんに預け、俺は冒険者ギルドへと向かう。

 盗賊討伐のクエストを受注するためだ。


「よう! シグルド! 久しぶりだな!

 最近はどこで稼いでいたんだ?」


「やぁ、ヘウリッド! 生きていたか! 最近は獄炎で稼いでいたのさ。

 でも、ここが盗賊で困っているって言うじゃないか。

 生まれ故郷の危機を放って置けるほど、非情な男じゃないぜ?」


 俺は一年振りに幼馴染と再開し熱いハグを交わした。

 ヘウリッドとの付き合いはもう二十年にも及ぶ。

 彼はミノタウロスと呼ばれる種族で、牛の獣人とは違う。

 彼の種族は女性がいない。

 常に男性のみの恐ろしく変わった種族だ。


 ミノタウロスと結婚し子をなした場合、

 ミノタウロスしか産まれないという特徴がある。

 牛の獣人は、その限りではない。


 ただ、ミノタウロスと牛の獣人の女性が子を成すと、

 稀に牛が産まれてくるらしい。

 しかも、知能が高く高度な言語を操る。


「あぁ、酷い物さ。

 何人もの子供や女が攫われちまった。

 きっと助けを求めて泣いているだろうさ。

 俺達がなんとかしてやんねぇとな……そのための冒険者だろ?」


「そのとおりさ、ヘウリッド。命を懸けて救い出そうぜ!」


 俺達のやり取りに、顔馴染みの冒険者達が加わってきた。

 どいつもこいつも、命知らずで、無鉄砲な愛すべき仲間達だ。


 俺達は仲間であるが商売敵でもある。

 でも、こういった窮地に陥った場合は決して争わない掟がある。

 それを破ってしまっては、いずれ自分が窮地に陥った場合、

 容赦なく粛清されてしまうことを理解しているからだ。


「げへへ……シグルド! よくここに来れたなぁ?

 借りを返してやるから覚悟しろよぉ!?」


「あっ! 確かおまえの酒代立て替えてたよな?」


「私は貴方様の下僕でございます……げへへ」


 こんなやり取りが毎度ある。

 敵であり味方である。冒険者とは本当に飽きの来ない職業だ。




 盗賊討伐のクエストを受けた俺は、

 酒場にて鶏の炙り焼きをつまみにエールをぐびぐびと喉に流し込んでいた。

 喉に伝わる炭酸の刺激が堪らない。


 鶏の炙り焼きの味付けは塩のみだ。

 新鮮なので香辛料は必要ない。

 変わったタレとして鶏の血で作ったブラッドソースなる物がある。

 だが俺はシンプルな物を好むので塩オンリーだ。


 正直、俺はこの一杯のために冒険者をしている。

 もちろん、エリスンの目を治すことが第一目標であるが。


 それでも、一日の終わりのエールには抗えない魔力があるのだ。

 いずれ大人になれば、皆わかることであろう。


「ぶぇっはぁぁぁぁぁぁっ! 堪んねぇなぁ!!」


 一気にエールを喉に流し込む。

 エールは舌で味わうものではない。喉で味わうのだ。

 そして、急いで熱々の鶏の炙り焼きを口に放り込み咀嚼する。

 口にじゅわぁぁぁっと、広がる鶏の肉汁。

 そのねっとりとした甘みは、舌に歯に纏わり付き至福の快楽を俺に与える。


 だが、俺は冒険者だ。いつまでも甘さに浸ってなどいられない。

 その甘~い油を、エールにて一気に洗い流してしまう。


「んぐ、んぐ、んぐ……ぶはぁぁぁぁぁっ! 堪らんっ!!」


「おぉ! やっているなシグルド!」


 そこにヘウリッド達が参加してきて、

 毎度お馴染みのグダグダな飲み会へと発展していった……。




 次の日の朝……俺はベッドの上で早速、昨日のおこないを後悔していた。


「ぐおぉぉぉぉ……頭いてぇ。二日酔いだ」


 久しぶりに再会した友人達と飲み過ぎてしまった。

 わかっているのに止められない。

 俺の悪い癖だ。


「うぐぐ……こんなもんでヒーラーに治療してもらうのは情けない。

 金も掛かるし我慢するしかねぇな」


 取り敢えずは、二日酔いに効くとされる紅茶を飲むことにする。

 数種類のハーブを調合したものだ。

 即効性はないが、飲まないよりはましである。


「おえっぷ、相棒に顔を見せて今日は寝てるか。

 盗賊の討伐は三日後だし」


 俺は身嗜みを整え、鈍痛のする頭を堪えながらも、

 相棒の居るくたびれたドックへと向かった。


 ドックに着くと相棒が外に出て海を眺めていた。

 朝日に照らされた黄金の鱗が眩しい。


「よぅ、相棒。おはようさん。うっぷ」


「シグルドか。調子が悪いようだな」


 相棒は二日酔いの症状がわからないのか、

 酒臭いであろう俺に言葉短く言うと再び海を眺めた。


 いや、正確にいえば彼が見ているのは海じゃない。

 この海の向こう側にあるラングステン王国。

 そして、かつて相棒が根城にしていた丘なのだろう。


「三日後に盗賊の討伐がある。

 その日まで適当に狩りでもして体を慣らしておこうぜ……おえっぷ」


「シグルド、おまえはそれまでに体調を整えておけ。

 ふらふらしているではないか」


「あ~、大丈夫だ。これは半日もあれば治るからさ。

 取り敢えず今日はゆっくりしてくれ」


 とは言ったものの、ゆっくりしたいのは俺だ。

『フリースペース』から、以前クエストの途中で狩ったヒルボアを取り出し、

 相棒に渡すことにする。

 今日は狩りなんて気分じゃない。

 というか……吐きそう。うっぷっぷ。


「感謝する。

 シグルド、おまえはもう寝ろ」


「そうさせてもらうわ。また明日な?」


 俺は相棒の気遣いに感謝しフラフラと宿屋へと帰る。

 もう、暫らくは酒は飲まないと誓いながら。

 まぁ……誓いが守られたことはないのだが。




 それから三日後、盗賊の討伐の日がやってきた。

 のだが……朝起きると異変が起きていたのだ。

 そりゃ、もう大異変だ。


「グンモーニンっ! 気分はどうだい? 相棒っ!」


「マジかよ……俺は昨日、二日酔いになるまで飲んじゃいねぇぞ?」


 俺には昔から変な個人スキルがあった。

 手の平にピンク色の果物を出すスキルだ。

 はっきり言って、役に立ったことはほぼない。

 何故ならば、自分の意思で出すことができないからだ。


 寝て起きたら、たま~に手の平にピンク色の果実が出来上がっている。

 その度に自分で食べたり、エリスンにあげたりしていた。

 エリスンのヤツは目が見えない代わりに、耳と鼻が良いからな。

 この果物のにおいに、敏感に反応したってわけだ。


「俺は桃先輩のマイクってんだ!

 相棒である、おまえさんの桃レベルが規定に達したんで、

 こうして駆け付けてきたってわけだ。

 足はないけどな! ハハッ!」


「果物が喋ってやがる……俺、疲れてるのかな?」


「おいおい、しっかりしてくれよ? これからいろいろ説明があるんだぜ?

 あーまずは、どこから説明すればいいかな?

 俺っちも桃先輩に赴任したばかりだからさ! 慣れてないのよ!

 お互いに新人ってわけ! HAHAHA!」


 矢継ぎ早に話しかけてくるピンク色の果物。

 この異常な光景に俺は唖然としてしまう。


 だってそうだろう? 

 今までは、ただピンク色の果物が、

 俺の知らない間に転がっていただけなのだから。


 それが今では、やたらテンションが高く、

 甲高い男の声を発しまくっているのだ。

 今日は盗賊の討伐の日だっていうのに、面倒臭いことになっちまった。


「おっと! すまんすまん!

 相棒の名前を聞いてなかったな? 名前、なんての?」


「え? あぁ……シグルド。

 俺の名はシグルド・ファイムだ」


「はっは! 良い名前だな! よろしくっ相棒!」


 俺が彼の相棒であることは、既に確定であるらしい。

 段々と理解の範疇を超えつつある。

 だが、マイクはその理解を完全破壊する発言をしてきたのだ。


「よっし! それじゃあ、身魂融合いってみようか?」


「しん……? なんだそれは?」


「詳しい説明は後でするよ。

 まずは俺っちを食べてくれ、話はそれからさ!」


 顔が引き攣るのがわかる。

 この不気味な果物を食べろ、と言っているのだ。

 自分の身を差し出す謎の果物をだ。


「YOYO! どうしたんだい相棒! 早く食べておくれよ!」


「あ、あぁ……わかった、わかったよ」


 早く食べろ、とうるさい果物を意を決して口にする。

 その果物は、普段出来上がる果物とは違い酸っぱかった。


「すっぱ!?」


『それは青春の味ってヤツさ!

 ソウル・フュージョン・リンクシステム起動!

 シンクロ率……わぁお! 82%! 俺達、相性抜群じゃん!

 システムオールグリーン! バッチリだぜ相棒!』


 マイクと呼ばれた果物の声が頭の中に響く。

 いったいどうなってやがるんだ!?

 ひょっとして、俺って憑りつかれたのか?


『ある意味そうかもな?

 ちょ~っと待っててくれよ、データを転送するからさ。

 え~っと……これだな? ポチっとな』


 その瞬間、膨大な量の情報が俺の頭の中に流れ込んできた。

 そのあまりの量に俺の脳が悲鳴を上げる。


「ぐおっ!? 頭がクラクラする!」


『OH、ソーリー! 悪い悪い! 一気に流し過ぎちまった!

 でもこれで、俺達が何者で相棒が何者なのかも理解できたろう?』


『あぁ……お陰様でな。

 っていうか、俺には選択権があったんじゃねぇか!!』


 俺は頭の中に無理矢理入ってきた情報を利用して魂会話ソウルトークを使用する。


『ん? そうだったっけ? ……あー! あったあった!

 マニュアルの一番上に書いてあったよ! 見逃してた!

 謝るよ、悪かった! ごめん!

 まぁ、新人ということで見逃してくれよな! HAHAHA!』


『おまえなぁ……っと! やべっ! 完全に遅刻じゃねぇか!!』


 この異常なやり取りに気を取られて、盗賊の討伐を忘れていた。

 あ~あ~……完全に遅刻だ。

 でも、相棒に乗って向かえば、まだ間に合うかもしれない。


『俺っちの背中? おいおい、止してくれよ! そんな趣味ないぜ?』


『マイクじゃねぇよ! もう一人の相棒の背中だ!』


 俺は急いで身支度をして宿を飛び出した。

 目指すはもう一人の相棒が待つくたびれたドックだ。




「……シグルド、遅かったな」


「悪い! ちょっと、異変が悪さをしてな」


 相棒はドックの外で待機していた。

 いつでも出れるように待っていてくれたのだろう。


「おいおい、随分とクールなドラゴンじゃねぇか!

 ゴールドドラゴン、イカスねぇ~!」


 なんと、俺の口からマイクの声が飛び出した。

 その甲高い声は俺の容姿にはまったく似合わない。


「シグルド、声変わりか?」


「あーいや、説明は後でする。

 取り敢えず目的地まで向かおう。出遅れちまっているからさ」


 俺は相棒の背に乗り空に舞い上がった。

 ぐんぐんと加速してゆく黄金の竜。

 これなら討伐隊の本体と、すぐに合流できるだろう。


 俺達は渇いた空を切り裂きながら戦いの地へと赴くのであった。

◆ カーター・キュクロン ◆


熊の獣人の男性。25歳。ゼグラクトの衛兵。

熊寄りの顔。体毛は黒。瞳の色は紫。大柄な体をしている。

シグルドの友人。



◆ ブリギッド・ウルディン ◆


巨人の女性。24歳。ゼグラクト方面軍の第16守備部隊隊長。

金髪を頭の上でお団子状に纏めている。瞳の色は緑。

非常に器量が良くスタイルも良い。身長は3メートルほど。

実はシグルドに惚れている。得物は巨大な弓。




◆ マーベット・オリフス ◆


人間の女性。76歳。造船職人。

短い白髪。瞳の色は青。

細身で背が高い。

老齢であるにもかかわらず頑強な肉体を維持している。

孫がいるが仲が悪い。



◆ ヘリウッド・ミウトロン ◆


ミノタウロス。24歳。Aランク冒険者。

シグルドの幼馴染でミリタナス神聖国で活躍している。

そこそこ名の通った冒険者。

得物はメイス。



◆ マイク ◆


桃人の男性。32歳。桃先輩所属。

黒髪のアフロの黒人。瞳の色は茶色。

非常に陽気で軽い性格。桃先輩に配属になる前は戦闘部隊に所属。

鬼との戦闘で右足を失ったため配属を変更させられた。

シグルドは、マイクの桃先輩としての初めての後輩。

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