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食いしん坊エルフ  作者: なっとうごはん
第一章 珍獣と聖女と仲間達
24/800

24食目 食いしん坊

初めての露店巡りから、三ヶ月が過ぎた。


「おっ? きたね、食いしん坊ちゃん!」


露店のおっちゃん達とも顔馴染みが増えてきた。

露店に通うこと三ヶ月、俺は色々な食べ物を制覇していった!!

俺のその姿を見て、だれかが言った「食いしん坊エルフ」と。


それ以来、俺の通り名は『食いしん坊エルフ』だ。

聖女様と呼ばれるよりは気にはならないので、むしろありがたいくらいだ。

聖女様って呼ばれるのは、何かこそばゆい気持ちになる。


「今日は……ラーメンだな!」


お目当ては新作の『とんこつラーメン』である。

ようやく納得できる味になった、

と禿げた頭をタオルで巻いた店主のおっちゃんが言ったのだ。


「おまち!」


美味しそうな乳白色のスープに、黄色い麺と豚バラのチャーシュー

刻みネギに紅生姜が添えられた『とんこつラーメン』がテーブルに置かれた。

あの独特な香りがして、とても美味しそうである。


「いただきます!!」


俺は箸で食べる。

保護者として同伴したエレノアさんは、

フォークとスプーンでクルクル巻きながら食べていた。

やはり、箸は非常に扱い辛い食器具のようだ。


「聖女様は器用ですね」


とエレノアさんに褒められた。

えっへん! どやぁ……。


「ずず……ごくん、ずぼぼぼっ、むぐむぐ……」


まずはスープを味わう、こってり濃厚なとんこつスープ。

臭みはない、旨みだけを残して臭みを取り除いたか。

麺も細いストレート麺、好みの細さだ。

こてこての豚骨スープに絡まりすぎないので、

ちょうどいい塩梅になるのだ。

豚バラのチャーシューも、トロットロになっていて口の中でトロける。

ネギや紅生姜もアクセントになっていて完成度は高い。


「んまい!!」


俺は満面の笑みで、おっちゃんに美味いと言った。

その俺の笑顔を見て、おっちゃんは満足げに頷く。


「苦労した甲斐があったってもんだ」


俺の「んまい!!」が引き金となり冒険者達が押し寄せてくる。

ここ最近の露店街の流れであった。


「とんこつラーメン! 大盛り!!」


「こっちもだ! 三人前!!」


おっちゃんは嬉しい悲鳴を上げた。

その日の店の売上は、過去最高だったそうな……。


◆◆◆


さて、今日は丸一日お休みの日である。

時間は午前八時。

どの様に過ごそうか考えてるとドアがノックされた。

「どうぞ~」とこえをかけて、お客を招き入れる。

エレノアさんと、ミランダさん、ティファ姉だった。


「今日は一日お休みでしたね?」


とエレノアさんが言ってきたので、そうだよと伝えると……


「でしたら、聖女様の服を買いに行きましょう! そうしましょう!!」


と、爛々に輝く瞳で俺を見つめてきた。

ヤバイ! 今の彼女は獲物を見つけた肉食獣だ!!


「自由への逃走!!」


俺はドアに駆け出す!

ぼふっ、と眼前に柔らかい乳房があった。

エレノアさんのおっぱいである。


「なん……だと……!?」


ドドドドドドドドドドドドドド……!!

と効果音が鳴ってる気がした。

だぶん、俺の心臓の音だと思うが。


確かドアに駆け出した時……俺の後ろにエレノアさんがいたはず!

なのに気付いた時には、俺の目の前にエレノアさんがいた!

夢とか錯覚とかじゃねぇ!

もっと恐ろしいものの片鱗を味わったぜ……!!


「知らなかったのですか? お買い物からは逃げられません!」


こえぇぇぇぇ! 女こえぇぇぇぇぇぇぇっ!?


「一度、エルティナ様を着飾ってあげたかったんですよねぇ」


満面の笑みを湛えて、ティファ姉が俺をホールドした。

結局、両手をエレノアさんとティファ姉に繋がれ、

フィリミシアの中心部にある商店街へと連行された。


ドナドナド~ナ~ド~ナ~……。


例の歌が頭にエンドレスで流れた。

今、俺は泣いて良い。


◆◆◆


やってきました商店街。

立派な建物がそこかしこに立ち並び、買い物客で賑わっている。

お洒落な喫茶店もチラホラ。

露店街とは違い、客層も上品な方々ばかりである。


「さぁ、着きましたよ~?」


とニコニコしながら、一軒の小さな店の前に立つティファ姉。

『衣服エレガント』という名前の店だった。

嫌な予感しかしない。


俺達は店の中に入っていった。

というか連行されたのだが。

あぁ……これが地獄への入口ってヤツか!?


店内には色取り取りの衣服が展示されていた。

子供向けの服も当然あり、俺達はそのコーナーへと向かう。

俺には、この服達が拷問道具にしか見えない。


どえらい数の子供向けの服達。

店の半分は子供向けだというのだから驚きだ。

ヒラヒラが付いたスカートやでかいリボンやら……待て待て!? 

なんで子供用のバニースーツがあるんだよ!?

おかしいだろ!? 


「では、早速試着していきましょうか」


はあはあ、言いながら手をワキワキさせ躙り寄ってくる女性陣。

俺の知ってる彼女達じゃねぇぇぇぇぇっ!!


それから、俺は取っ替え引っ替え服を着せられた。

黒いゴシックドレスや白いドレスに、何故か存在する和服。

十二単とか狂気の沙汰だろ!? 一人で日常生活できんわっ!!

とどめにバニースーツも着せられた。

着せ替え人形だって、はっきりわかんだね!!(白目痙攣)


俺が釈放されたのは、結局お昼過ぎだった……。


◆◆◆


服選びが終わり、これで終わりだと……いつ錯覚していた!?


今度は、御洒落道具の買い物である。

俺は櫛すら持ってない。

メンドイしいつも手櫛で済ませていたのだが、

それではいけないと、今度は小物が置いてある店に連れてこられた。


魔法で済ませれば良いのでは? 

と言ったが、細かい所ところはやっぱり人の手でなければいけないらしい。


拘るなあ……やはり男と女は別の生き物だなと感じた。

あ、今俺も女だ。

忘れてた、ははは……はぁ、男に戻りたいぉ。


さて、やってきました御洒落道具店『ミルキーラブリー』

店名どうにかならんのかね?

お構いなしに店内に入って行く俺達。


すっげぇ数の櫛が店内に展示されていた。

種類も半端じゃない。

長髪用に癖っ毛用とか獣人用もある。

なんでもあるなと、感心しているとエルフ用と書かれた白い櫛を見つけた。

俺はそれを手に取ってみる。


「こ、これは! 馴染むっ、馴染むぞぉぉぉぉ……!」


何か馴染んだ……理由はわからん。

俺はこれが気に入ったので、購入しようと持って行ったのだが……


「金貨五枚になります」


「たけぇ!?」


ぐぬぬと言って財布と睨めっこする。

小さな金貨五枚が、恥ずかしげに顔を見せた。

白い櫛は、現在の俺の全財産と同じ値段だ。

これは、明らかに服の買い過ぎである。


「我慢するか……ふきゅん」


俺はそっと、櫛を元あった場所に戻した。

いつかお金が貯まったら買いに来よう……そうしよう。


結局、手頃な値段の櫛と手鏡、香水や髪を束ねる髪留め等の小物を購入。

これでも最低限の道具なんだそうな。

女は金かかり過ぎだぜっ!


店を出る頃には既に夕暮れ時。

エレノアさんやミランダさん、ティファ姉はとてもご満悦だった。

普段見れない俺の姿を、たっぷり鑑賞したからだ。


逆に俺は、げっそりしていた。

外見は幼女でも、中身はおっさんやねんぞっ!?

精神的ダメージが大き過ぎるわっ!


まあ、日頃お世話になっている彼女達が楽しかったのであれば

それで良しとするか……とか思って四人で帰路に就く。


夕焼けを背中に背負い、エレノアさんとティファ姉と手を繋ぎ歩く。

傍らには、ミランダさんがニコニコしながら俺達に寄り添って歩いている。

この関係がいつまで続くかわからないが、

今はこれでいいのだろうと思った。


今の俺は幼女である。

エルフとはいえ、成長が遅いわけではない。

現に身長も伸びて着れなくなった初代の服は、

既に『フリースペース』に入れて大切に保管されている。

白エルフの体の成長の速さは人間と同じだそうだ。


……本当か? それにしては少し大きくなるのが遅いような?


そして、成長しきると人間とは違い老化しなくなる。

老化しないだけで死なないわけじゃない。


後、十年もすれば彼女たちの身長にも追付くだろう。

ミランダさんは別として(無理)。


その時には彼女達と、どういう関係になってるのやら……。


まあ、深く考えてもわからん!

その時はその時だ!

 

そう考えながら、今の幸せを噛み締め、

彼女たちとゆっくり歩く俺だった。

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― 新着の感想 ―
[一言]なんかノリのいい作品だな
[気になる点] エレノアさんは魔王だった??
[気になる点] 主人公が力を貸すのは魔王を倒すまでだったはずでは? 結果的にこれからも力を貸すとしても魔王を倒してから最低3ヶ月もなあなあな状態というのはどうかと思う 1行でも「協会にお願いされて今後…
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