22食目 戦争が終わった日
んん~~~~っ!! エネルギーまぁぁぁぁぁぁっくす!!
今、俺の魔力は限界を超えて回復した!! ……気がする。
食堂にて桃先生を食べ、十五分程ミランダさんの胸に抱かれ(重要)
睡眠を取った。
今の俺の肌はきっと、ピカピカに輝いてるであろう。
しかし、ビビッドがあんなことを言うとは思わなんだ。
思わず兄ちゃんと言ってしまったじゃないか!
……兄貴元気かなぁ?
デジャブ。以前も言った気がした。
まあそれはいい。
それにしても皆の成長が著しいな。
成長してないのは俺くらいなものだ、がはは……
とと、ノンビリしてる場合じゃない!
「ありがとう、ミランダさん! 元気になった!」
俺は満面の笑みで感謝の言葉を彼女に告げる。
そして、元気よく立ち上がり「行ってきます!」と言い
皆の待つ治療所へと駆け出したのだった。
◆◆◆
長い……長い戦いだった。
いつ終わるかわからない、そんな気の遠くなるような戦い。
その戦いが遂に終わったのだ。
時間は、次の日の午前五時四十八分。
最後と思われる重傷患者を治療し、長蛇の列はようやく姿を消した。
「お、終わったのか……?」
俺の言葉に皆が頷いた。
命に別状がない者の治療は明日も続くが、
重傷者の治療は終わったということだ。
俺は達成感と安堵で知らず知らず涙を流していた。
「やった……やったぞ! 皆の力で沢山の命を救えたぞ!!」
わあっ! と歓喜の声。
最後まで投げ出さず、諦めず、仲間と力を合わせ乗り切った!
こんなに嬉しいことはない!!
俺はビビット兄とティファ姉に抱きしめられた。
最後まで残ったヒーラーは、この二人と俺のみ。
正にギリギリだった。
この結果は、これまでにがんばった復帰組の爺さん婆さん。
未熟ながらも懸命にがんばった若手ヒーラー達。
仕事を放り投げて、駆けつけてくれた近所のおじさん、おばさん。
そして、応急処置をしてくれたスラム街のガキンチョ部隊!
持病を押して参加したギルドマスター。
食堂を休憩所として提供し、疲労したヒーラーを支えてくれたミランダさん。
限界まで魔力を酷使し、今も眠り続けるデイモンド爺さん。
「み……皆のおがげだぁぁぁぁ……!!」
俺は年甲斐にもなく、ワンワンと泣いた。
良いよね? 今、俺……幼女だしっ!!
ティファ姉がキュッと少し強く抱きしめてくれる。
彼女も泣いていた、ビビッド兄も目を赤くしている。
気付けば……朝日が俺達を優しく照らしていた。
ここに、俺たちの戦争は一まずの終わりを迎えたのだった……。
◆◆◆
決戦から三日後。
勇者タカアキの凱旋パレードが行われていた。
民衆の歓喜の声に迎えられる、タカアキ達勇者パーティー。
もちろん、そこには我らがおっぱい……もとい、エレノアさんの元気な姿が!
ついでに、アルのおっさんも無事だった。
転生チートフウタも、無事に帰ってきたようで何よりだ。
俺達は治療所の窓からパレードを眺めていた。
現在、俺達は残った負傷者達を治療中である。
パレードを生で見たかったが、
負傷者を放ったらかしてまで見る気は起きない。
他の皆も同じようで、せっせと治療に勤しんでいる。
とここで見知った顔に出会った。
「へへっ、どうも! 約束通り、生き恥を晒しに来ました!!」
あの、何度も死にかけていた兵士である。
ちゃんと、生きて戻ってきたのだ。
今回は右腕と左足の骨折で済んでいた。
俺はそれを、パパッと治す。
「いつ見ても、見事なもんですね!」
ケガが治った兵士は嬉しそうに、
骨折していた腕や足を動かし具合を確かめた。
「それが仕事だ、アンタのやり遂げたことと同じさ……」
俺は兵士を抱きしめた。
「良く……生きて戻ったな」
「聖女様の……お陰ですよ」
こいつは十回もここに来たのだ。
重傷の状態で。
でも、一度たりとも泣き言など言わなかった。
凄い『漢』だ!!
「名前を聞いてもいいか?」
「ルドルフ・グシュリアン・トールフ」
覚えておこう、彼は愛すべきバカだ。
絶望にもビクともしない、偉大なるバカだ!
それからも見知った顔に出会った。
そして、会えなかったヤツもいた。
勇敢に戦い死んだというヤツ。
味方を庇って死んだヤツ。
不慮の事故で死んだヤツ。
挙げればきりがない程……人が死んだ。
知ってるヤツも、そうでないヤツも。
まったく戦争ってヤツは……!!
前の世界では情報だけの知識。
でも今回は当事者、直接の参加ではないが後方支援として戦争に参加している。
それでも、戦争の悲惨さがわかってしまうのだ。
「なんで魔王は戦争を起こしたんだろうなぁ……?」
俺にはわからない。
わからない……。
昔の俺が平和な時代に、生を受けたからだろうか?
生まれた環境か?
それとも両方だろうか?
わからない。
もし俺にチート級の力があれば、何かが変わっただろうか?
「いずれにしても、俺は治療しか取り柄がないしなぁ」
取り敢えずはケガ人の治療に専念しよう。
今できることをして、それから色々考えよう!
行き当たりばったりなんて、いつものことじゃないか!
「まあ、最後は食べることに結び付くんだがな!」
ふひひ……と、ほくそ笑む。
この治療が一段落すれば、自由に使える時間が増えることだろう。
つまり、俺の露店街デビューが近いということだ。
そのことを夢見て、治療に勤しむ俺であったとさ。