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食いしん坊エルフ  作者: なっとうごはん
第一章 珍獣と聖女と仲間達
22/800

22食目 戦争が終わった日

んん~~~~っ!! エネルギーまぁぁぁぁぁぁっくす!!


今、俺の魔力は限界を超えて回復した!! ……気がする。

食堂にて桃先生を食べ、十五分程ミランダさんの胸に抱かれ(重要)

睡眠を取った。


今の俺の肌はきっと、ピカピカに輝いてるであろう。

しかし、ビビッドがあんなことを言うとは思わなんだ。

思わず兄ちゃんと言ってしまったじゃないか!


……兄貴元気かなぁ?

デジャブ。以前も言った気がした。

まあそれはいい。


それにしても皆の成長が著しいな。

成長してないのは俺くらいなものだ、がはは……

とと、ノンビリしてる場合じゃない!


「ありがとう、ミランダさん! 元気になった!」


俺は満面の笑みで感謝の言葉を彼女に告げる。

そして、元気よく立ち上がり「行ってきます!」と言い

皆の待つ治療所へと駆け出したのだった。


◆◆◆


長い……長い戦いだった。

いつ終わるかわからない、そんな気の遠くなるような戦い。

その戦いが遂に終わったのだ。


時間は、次の日の午前五時四十八分。

最後と思われる重傷患者を治療し、長蛇の列はようやく姿を消した。


「お、終わったのか……?」


俺の言葉に皆が頷いた。

命に別状がない者の治療は明日も続くが、

重傷者の治療は終わったということだ。

俺は達成感と安堵で知らず知らず涙を流していた。


「やった……やったぞ! 皆の力で沢山の命を救えたぞ!!」


わあっ! と歓喜の声。

最後まで投げ出さず、諦めず、仲間と力を合わせ乗り切った!

こんなに嬉しいことはない!!


俺はビビット兄とティファ姉に抱きしめられた。

最後まで残ったヒーラーは、この二人と俺のみ。

正にギリギリだった。


この結果は、これまでにがんばった復帰組の爺さん婆さん。

未熟ながらも懸命にがんばった若手ヒーラー達。

仕事を放り投げて、駆けつけてくれた近所のおじさん、おばさん。

そして、応急処置をしてくれたスラム街のガキンチョ部隊!

持病を押して参加したギルドマスター。

食堂を休憩所として提供し、疲労したヒーラーを支えてくれたミランダさん。

限界まで魔力を酷使し、今も眠り続けるデイモンド爺さん。


「み……皆のおがげだぁぁぁぁ……!!」


俺は年甲斐にもなく、ワンワンと泣いた。

良いよね? 今、俺……幼女だしっ!!


ティファ姉がキュッと少し強く抱きしめてくれる。

彼女も泣いていた、ビビッド兄も目を赤くしている。

気付けば……朝日が俺達を優しく照らしていた。


ここに、俺たちの戦争は一まずの終わりを迎えたのだった……。


◆◆◆


決戦から三日後。


勇者タカアキの凱旋パレードが行われていた。

民衆の歓喜の声に迎えられる、タカアキ達勇者パーティー。

もちろん、そこには我らがおっぱい……もとい、エレノアさんの元気な姿が!

ついでに、アルのおっさんも無事だった。

転生チートフウタも、無事に帰ってきたようで何よりだ。


俺達は治療所の窓からパレードを眺めていた。

現在、俺達は残った負傷者達を治療中である。

パレードを生で見たかったが、

負傷者を放ったらかしてまで見る気は起きない。

他の皆も同じようで、せっせと治療に勤しんでいる。


とここで見知った顔に出会った。


「へへっ、どうも! 約束通り、生き恥を晒しに来ました!!」


あの、何度も死にかけていた兵士である。

ちゃんと、生きて戻ってきたのだ。


今回は右腕と左足の骨折で済んでいた。

俺はそれを、パパッと治す。


「いつ見ても、見事なもんですね!」


ケガが治った兵士は嬉しそうに、

骨折していた腕や足を動かし具合を確かめた。


「それが仕事だ、アンタのやり遂げたことと同じさ……」


俺は兵士を抱きしめた。


「良く……生きて戻ったな」


「聖女様の……お陰ですよ」


こいつは十回もここに来たのだ。

重傷の状態で。

でも、一度たりとも泣き言など言わなかった。

凄い『漢』だ!!


「名前を聞いてもいいか?」


「ルドルフ・グシュリアン・トールフ」


覚えておこう、彼は愛すべきバカだ。

絶望にもビクともしない、偉大なるバカだ!


それからも見知った顔に出会った。

そして、会えなかったヤツもいた。


勇敢に戦い死んだというヤツ。

味方を庇って死んだヤツ。

不慮の事故で死んだヤツ。

挙げればきりがない程……人が死んだ。

知ってるヤツも、そうでないヤツも。


まったく戦争ってヤツは……!!


前の世界では情報だけの知識。

でも今回は当事者、直接の参加ではないが後方支援として戦争に参加している。

それでも、戦争の悲惨さがわかってしまうのだ。


「なんで魔王は戦争を起こしたんだろうなぁ……?」


俺にはわからない。

わからない……。


昔の俺が平和な時代に、生を受けたからだろうか?

生まれた環境か? 

それとも両方だろうか?


わからない。


もし俺にチート級の力があれば、何かが変わっただろうか?


「いずれにしても、俺は治療しか取り柄がないしなぁ」


取り敢えずはケガ人の治療に専念しよう。

今できることをして、それから色々考えよう!

行き当たりばったりなんて、いつものことじゃないか!


「まあ、最後は食べることに結び付くんだがな!」


ふひひ……と、ほくそ笑む。

この治療が一段落すれば、自由に使える時間が増えることだろう。

つまり、俺の露店街デビューが近いということだ。


そのことを夢見て、治療に勤しむ俺であったとさ。


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― 新着の感想 ―
毎回重傷で帰って来るのはチートに見えるが、 でも重傷になるまで戦ってたんだと。
[一言]  若い兵士よく死ななかったな…10回も運び込まれるて…w
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