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食いしん坊エルフ  作者: なっとうごはん
第四章 穏やかなる日々
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219食目 ガイリンクード・エグゼダイト

 ◆◆◆


「ちっ……また『ウィンド』が泣いてやがる」


 俺は『学校スクール』の『屋上てっぺん』で悪態を吐いた。

 ここは俺のお気に入りの『場所エリア』だ。

 放課後『屋上てっぺん』にあるベンチに寝っ転がって、

 この『青空ブルースカイ』を眺めるのが日課になってきている。

 

 しかし、今日は一段と『ウィンド』の機嫌が悪いようだ。

 風に吹かれて俺の長く伸びた黒髪が流される。


「こんなにも『良天気グッドウェザー』だってぇのに、何故おまえは泣くんだ?」


 ここ最近は『ウィンド』が泣かない日がない。

 そのたびに俺の右腕に眠る『右腕ライトアーム悪魔デビル』が外に飛び出そうと暴れやがる。


 悲し気な『ボイス』を立てながら通り過ぎてゆく『ウィンド』達に、

 俺の右腕に宿る『悪魔ライトアームデビル』が騒ぎ始めた。

 ぶちぶちと右手に巻いた『悪魔デビル封印シール』が千切れ始める。


 くそっ……せっかく巻き直した『悪魔デビル封印シール』が『死亡』っちまう!

 バカにならねぇ値段がするんだぞ! クソがっ!!


「……ぐ、鎮まれ! 俺の右腕!!」


「また、ここにいたのかガイ。

 委員長が探していたぞ? 掃除当番またさぼった~って。

 それに、外にいたら右腕の暴れん坊がやんちゃするんだろ?」


 強引に『悪魔ライトアームデビル』を鎮めようとしている俺に話しかけてきたのは、

 この国の『聖女ホーリーレディ』名をエルティナ・ランフォーリ・エティルという。

 彼女は俺の中に潜む『悪魔ライトアームデビル』を見抜いていた。

 にもかかわらず、俺に『友好的フレンドリー』に接してくる稀有な存在だ。


 ありがたい気持ちがある反面、

 俺の中の『悪魔ライトアームデビル』がいつ彼女を傷付けてしまうかと、

 恐れている自分がいるのも確かだ。

 そんな彼女にまずい姿を見せてしまった。

 

「あぁ、でもな……ここが一番『天国ヘブン』を……くっ! 感じることができるのさ」


 俺の『故郷ホーム』ドロバンス帝国では、いくら高い『場所エリア』にいても、

天国ヘブン』を感じることはできなかった。

 感じることができたのは『地獄ヘル』のみだ。

 そう……俺の右手で暴れている『悪魔ライトアームデビル』の『故郷ホーム』さ。


 俺の中の『悪魔ライトアームデビル』達から解き放たれるには、

 どうしても『天国ヘブン』に辿り着かなくてはならない。


 それまでに俺の『肉体ボディ』と『ソウル』がもつかどうか……。


「ヘブン、天国か……カオス教団の目的と同じなんだな。

 そこにガイが求めるものがあるのか?」


「わからない、ただ……『悪魔ライトアームデビル』を『完全封印パーフェクトシール』するには

女神ゴッデス』の能力が必要になる……きっとな」


 俺は再び暴れ出した右腕の『悪魔ライトアームデビル』を押さえつける。

 今日は随分と『興奮エキサイト』してやがる……!

 自分の腕なのに『自由コントロール』が効きやがらねぇ!

 このままじゃあ、『不運ハードラック』なことになっちまう!


「落ち着け」


 エルティナが俺の右腕に小さな手を載せて撫で始めた。

 するとどうだろう、荒れ狂っていた『悪魔ライトアームデビル』が大人しくなっていきやがる。

 これが『聖女ホーリーレディ』の……いや、この能力は『女神ゴッデス』の!?


「……すまん、助かった」


 俺の額から大量の汗が流れる。

 本当に『危険デンジャラス』だったからだ。


 仮にこの右手の『悪魔ライトアームデビル』が解き放たれれば、

 ラングステン王国は『オーガ』が来る前に滅びてしまうだろう。

 それも、たった数時間でだ。


「しかし、困ったものだなガイの悪魔には」


「あぁ、だが……俺が死ねば『悪魔こいつら』は解き放たれちまう。

 俺は死ぬことも許されねぇのさ……」


 俺は再び『青空ブルースカイ』を見上げる。

 俺がこの『永遠ネバー苦痛ペイン』から解き放たれる日は来るのだろうか……?


 今はただ……耐えるしかない。


 ◆◆◆


 再び空を見上げる黒髪の少年。

 彼の名はガイリンクード・エグゼダイト。

 ドロバンス帝国から留学してきたクラスメイトだ。


 黒い髪は肩まで伸びており、鋭い眼には青い水晶のような瞳が輝いている。

 いや、ぎらついていると言った方がいいだろう。

 顔は整っているが、どちらかといえばワイルドな部類に入る。


 身長は人間にしては高い方だ。

 そして運動神経も悪くない。

 彼はショートソードとドロバンス帝国産の特殊武器

『魔導銃』を用いての戦いを得意としている。

 残念ながら魔法は苦手なようだが、

 魔法があまり発達しなかった国の出身者なので仕方がないだろう。


 そもそもがドロバンス帝国は魔法ではなく、

 魔導技術が発達して大きくなった国だ。


 魔法と魔導技術。

 同じく魔力が根源なのだが長い年月が二つに分けた。


 突出した者を生み出す魔法。

 万人が同じ能力を発揮する魔導技術。


 どちらが優れているとかは比べようがない。

 この二つはそれぞれが、比べようのないものを持っているからだ。


 まぁ、ここら辺は今言うことじゃないな。

 それよりもガイのことだ。

 

 彼の戦い振りやセンスは皆から一目置かれている。

 少々、大袈裟な部分はあるが、

 連携攻撃だってきちんとこなす辺り優秀だと思う。


 それに魔法が苦手だと言っても、これから伸びる可能性だってある。

 非常に潜在能力の高い少年なのだ。

 

 しかし、困ったことにガイリンクードの中には悪魔が潜んでいるのだ。

 これは俺でも手が出ない、非常に強力な力を持った悪魔だ。

 主に幼少期に潜伏し、十歳を過ぎた辺りからその凶悪な力を解き放ち、

 宿主に取り返しのつかないトラウマを植え付ける。


 その恐るべき悪魔の名は『中二病』という。


 彼は時間でしか直す方法がない厄介な悪魔に憑り付かれてしまっているのだ。

 しかも、この歳で既に発症してしまっている。

 これは極めて危険な状態だが、口で言っても治らないので意味はない。

 それ故に……こちらは彼に合せて、そっと見守るしかない。


 体中に巻いたおびただしい包帯の量が、彼の症状の重さを物語る。

 この包帯がなくなった時、彼は彼の中の悪魔から解放されるのだろうか。

 俺にできることは、ただ普通に彼と接することのみである。


 こんなの天界に行っても直ったりしねーよ!(呆れ)


 ガイリンクードが早く正気に戻ることを祈りつつ、

 俺も濁り一つない青空を眺めるのであった。


 あぁ……今日も良い天気だなぁ(白目痙攣)。

 ◆ガイリンクード・エグゼダイト◆


 人間の男性。

 ドロバンス帝国から来た留学生。

 黒い髪は肩まで伸びており、鋭い眼には青い水晶のような瞳。

 顔は整っているが、ワイルドな部類。身長は高い方。

 運動神経が高くテクニカルな戦い方を得意とする。


 一人称は「俺」

 エルティナは『聖女ホーリーレディ

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