216食目 アカネ・グランドロン
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騒がしかった夏が過ぎ、あの暑さが嘘だったように思えるほど、
めっきり寒くなってきたさ。
フィリミシアに並ぶ木々は、冬に向けて赤い衣に身を包むんさ。
中には呑気なヤツもいるけど、それも時間の問題さね。
寒さの余波はわちきの教室にも及んでいるさね~。
クリューテルの着こみ具合が半端じゃないんさ。
まるでダルマさ~。
色気も何にもあったもんじゃないんさ。
ミリタナス神聖国出身者は寒さに弱いみたいさね。
寒くなると、わちきの楽しみが減って嫌さね~。
授業中の癒しがなくなって、わちきのテンションも下がりっぱなしさね。
早く夏に戻ってほしいさ~。
……あ、紹介が遅れたさね?
わちきはアカネ・グランドロン。
ネズミ型の獣人。性別は女。
そして好きな物は、女性のむっちりとしたケツ。
え? 自分も女じゃないのか?
いかにも、自分は女さ。
でも、それがどうしたというんさね?
性別がどっちだろうと、このアカネの好きな物は女性のむっちりとしたケツ!
異論は認めないさっ!
あぁ……あの肉に顔を埋めたい。
しかし、獄炎の迷宮で出会った女冒険者は惜しかったさね。
後もう少しで押し倒せたさ。
「いいケツだったさぁ」
「アカネ、何がいいケツだ。
授業中に考えることじゃないだろ~?」
思わず口に出してしまい、アルフォンス先生に怒られたさ。
先生にはケツの良さがわからないのだろうか?
それとも彼はケツよりも、チチの方が好きなのだろうか?
確かにチチもいいが……やはりケツが一番さね。
あの肉が堪らないんさね~!
ふかふかで、ぷよぷよで、いくら触ってっても飽きない。
あれほど安心できる肉はないんさね。
「おいぃ……アカネ。涎が垂れまくってるぞ?」
わちきが涎を垂らしていることを、エルティナが指摘してきた。
この子は数年後が楽しみな逸材さね。
わちきの勘だと、この子のケツはむっちむちになる。
ぐひひ……今から楽しみさね~。
「ふきゅん!? ……更に涎の量がっ!」
それにエルティナの肌の柔らかさは学校でも評判さね。
それがケツに加わったら、どうなってしまうのだろうかね?
「~~~~~~~~~っ!!」
想像したら危険な領域に入ってしまったさ。
暴れる欲望を押さえるために、身悶えてしまうのも仕方がないことさね。
「だめだ……アルのおっさん先生。
アカネが、かかわってはいけない世界に旅立ってしまった。
……そっとしておこう」
「そうもいかんだろ~? ほれ、正気に戻れ」
アルフォンス先生のデコピンで正気に戻ったわちき。
もう少しで、あられもない姿を晒すところだったさ。
手遅れ? なんのことだかわからないさね~。
「うちのクラスのケツランキング?」
「それは今のか? それとも未来のか?」
「みゅ~ん?」
昼食後のテラスにて、いつもの面子であるロフトとスラックと雑談していると、
そのような話題に発展していったさね。
ちなみに飛龍の子供達は首を傾げて、取り敢えず返事をしているだけさ~。
順調に大きくなっているようで一安心さね。
それで……彼らはそれぞれに得意分野があるさ。
ロフトはチチ、スラックはクビレと腹。
けど、他の部分も冷静に評価できる確かな目を持っているさね。
「今のは、わちきでもわかるさね。
ぶっちぎりでユウユウのケツさ~」
ただし、触ったら死ぬ。
わちきはまだ死にたくないので、遠くから眺めるに留めるさ。
あの形の良いケツに、いつの日か飛び込みたいさ~。
「ふ~む、未来のか……だとしたらヒュリティアかな?
将来すっげ~スタイルに育ちそうだぞ」
「あ~わかる! 今だって、もう出るとこ出てるしな」
「なんで、男子のロフト達が知ってるんさ~?」
ロフト達は「俺達の心眼からは逃れられない」とか言ってたけど、
絶対に覗いてたに違いないさね。
「後はプルルも凄いと思うぜ。
あいつ、尻が大きいからな」
「そうそう、いつもブルマから肉が飛び出てるもんな!」
「ぐひひ……流石ロフト、きちんと見てるさね」
プルルは既にチェック済みさね。
腰が華奢だから、ことさらに強調されるのもグッドさ~。
後あの子は全体的にエロいんさね。
天然のエロさってやつ。
「委員長もいい線いくんじゃねぇのかな?」
「あ~そういえば、いい形してるもんな!」
「委員長は、副委員長の監視が厳しいさ~」
メルシェも可愛らしいケツをしているさね。
以前、鷲掴みにしたら怒られたけど、いい感触だったさ~。
「成長してみないとわかんねぇけど、食いしん坊も期待値でかいぜ」
「おっ? 奇遇だな、俺も言おうとしてたんだよなぁ。
あの肌の柔らかさで、むっちむちになったらスゲェことになるぜ!」
「それは、わちきも考えていたことさね。
まぁ、こんなところかね。
成長具合によっては、他の子もランクインするだろうけどさ~」
そんな話をしていると、ロフトがふと気が付いたように言ったさ。
でも、その言葉は大問題だったさね。
「そういやぁ、アカネ……おまえもケツでかかったよな?」
「あ!? そう言えば……こりゃ盲点だった!」
「ちょ!? 何を言ってるんさね!」
男二人が肩を組み合って、ぼそぼそと会話を交わし……わちきを見た。
「こりゃ、将来に期待できるな」
「あぁ……俺達の未来は明るい」
「何を考えてるんさね」
ロフト達がにやにやとわちきを見る。
まったく、わちきも男に生まれたかったさ~。
「はぁ、そろそろ時間さね。そろそろ教室に戻るさ~」
「あ、もうこんな時間か」
「面白くなってきたのになぁ」
……これが、わちきの日常さね。
両親はわちきに女らしくしてほしいみたいだけど、
それができれば苦労はしないさ。
物心ついた時から違和感はあったさ。
本当は自分は女ではなく、男なのではないのかと。
それは日に日に大きくなっていったさね。
こんなこと誰にも言えないし、言ったところで変なヤツ扱いさね。
そんな鬱憤が溜まりに溜まっていた時に出会ったのが、
ロフトとスラックさ~。
二人はスタイルの良い女の人に飛びかかったさね。
「前世から好きでしたっ!」
「貴女はクビレを信じますかっ!」
なんとも自分の欲望にストレートなヤツらだったさ。
結局は、女の人にぶっ飛ばされるんだけどさ~。
わちきには眩しく見えたさね。
二人の自分を偽らないその姿が。
最初は憧れだったのかもしれないさ。
自分も自分に正直に生きてみたい。
そう思って、二人に声をかけたさ。
……その結果がこれなんだけどさぁ! ぐひひっ!
やっぱり、我慢はよくないさね! 自分に素直なのが一番さね!
あぁ! むっちむちのケツに飛び込みたいさ~~~~!
◆アカネ・グランドロン◆
ネズミの獣人の女性。
顔は人間寄りで、灰色の髪に茜色の瞳。中性的な顔。出っ歯が特徴的。
これはネズミの獣人の特徴で、彼等のおよそ八割が出っ歯。
女らしくしてほしいという親心で、尻尾に赤いリボンを付けられている。
女性だが女性好き。竜騎兵を目指す三人組の一人。
パートナーのワイバーンの名前は、アイン。
一人称は「わちき」
エルティナは「食いしん坊」