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食いしん坊エルフ  作者: なっとうごはん
第三章 聖女とミリタナス神聖国
171/800

171食目 ミリタナス教皇との謁見 珍獣激闘編

 ◆◆◆


「聖女エルティナ様がいらっしゃいました!」


 衛兵が俺の到着を、教皇ミレニア様に伝える。

 いよいよ、この国のトップとご対面ってヤツだ。


 うおぉ……くっそ緊張してきたっ! 落ち着けっ!

 リハーサルは自室でももとはなを相手に、しっかりとこなしたはずだっ!

 あの二匹の鋭いツッコミに合格したのだっ! いけるっ!!


 俺達の眼前にある、大きく重たそうな扉が音を立てて開いていく。

 ふきゅん! 本番待ったなし! いざ、出陣だぁっ!!


 先に道案内を任された、神官長ノイッシュさんが中に入り、

 脇に移動して道を開ける。よし……リハーサル通りだ!

 銀ドリル様の情報提供に感謝しなくてはっ!

 彼女の情報を基に、モモガーディアンズ総出で、シミュレーションした

 甲斐があったってもんだぁ……。ちなみに教皇様役は、ひろゆきであった。


 謁見の間は物凄く広かった。そして、物凄く凝った装飾が施された石壁や

 石像達がずらりと部屋を彩っていた。大神殿自体もそうだが古代ギリシアの

 建築法が用いられているようで、建物内の装飾や雰囲気は

 荘厳なものになっている。

 

 謁見の間最奥にいる教皇様は階段が付いた玉座に座っており、

 高台から見下ろす感じになっている。偉い人感が半端ない。

 その玉座まで伸びる赤い絨毯。その長さおよそ百メートルほど。……長い。

 その絨毯をはさむ形で、ずら~っと神官達が並んでいる。

 でもって、そのすぐ後ろに衛兵さん達がびっちり控えている。


 手前から白い神官服の少年少女達が並び、奥に行くほど年を取った

 神官になっているようだった。最も歳を取った白い神官から先は

 灰色の神官服の成人した男女が並び、最奥に黒い布地に金の装飾を施された

 豪華な神官服を身に纏った、壮年の爺様と婆様が並んでいた。


 そして、教皇様の隣には金ぴかの神官服を着た、無駄に体格の良い

 爺さんが控えている。ジェームス爺さんと変わらないマッチョ爺さんだ。

 この世界の爺さんは、マッチョが多い気がする……気のせいだといいのだが。


 教皇様は、ここからでは遠いのでよく見えないが、

 なんか肌色面積が多いような気がする。ひょっとして……全裸?

 これはぜひ、確かめねばっ!! あ……でも、全裸お婆ちゃんの可能性が!?

 考えていても仕方がない。そろそろ行かねばっ! それでは……ユクゾッ!


 俺は顔面に力を入れ表情を崩さず、尚且つ、きょろきょろしないように

 注意を払う。これを習得するために、何度吐血したかわからない。


 俺にとって、ジッとすることは呼吸をしないのと同じだ。

 同じく、耳をピコピコ動かすのも禁止されている。これは最早、虐待と言っても

 いいのではないだろうか? 許されざるよっ!! おごごご……。


 俺は意を決して歩き始める! うおぉ……足が震えるっ!

 耐えろっ! 我が足よっ! 耐えた先に栄光が待っているぞっ!!


 俺が室内に入ると、偉そうな神官達が息を飲む声が聞こえた。

 一人や二人ではない、神官全員がそうしたのだ。


 ……しまったっ!


 全身に力を入れ過ぎて、お尻から空気が漏れたのを察しられたかっ!?

 だが、音は大きくなかったはずっ!『ぷぴっ』って鳴っただけだし!

 まさか……臭いで感づいたっ!? いや、考えても仕方がない!

 なかったことにして、素知らぬ顔で通すっ!


 俺は更に知らんぷりをして、悠然と歩き続けた。


 うん! そろそろ、きつくなってきた!

 なんかもう、思いっきり奇声を上げて走り回りたい。

 耳をピコピコ動かしたいっ! でも我慢だっ!


「おぉ、何という従者であろうか。……欲しい」


 俺の大きなお耳は、教皇様の隣で控えていた、偉そうなおじいちゃん

 神官の呟きを逃さなかった!

 くるるぁっ! だれがくれてやるかっ!! 俺は仲間をホイホイやるほど、

 寛大な心を持ってはいねぇぞっ!!……と言いたいのを顔面に

 思いっきり力を籠め、耐え抜いた。偉いぞぉ俺っ!!


 正面の教皇様から、目をそらさずにしつつも、顔を赤らめている

 若い男性の神官達が視界に入ってくる。これは、間違いなくルドルフさんを

 女と間違えているなっ! バカめっ! ルドルフさんは男だっ!


 いや、まぁ……鎧姿じゃわからんよな?

 現在ルドルフさんは新品の鎧を身に着けていた。

 あの日、俺がルドルフさんを、王様達の生贄に捧げた時に

 授かった重鎧だそうだ。色はなんと桃色だ。


 これはルドルフさんが、俺の護衛である証として着色してくれたようで、

 彼のどう見ても女性にしか見えない顔と、同じく女性と見間違えるような

 ほっそりとした体型が相まって……あ、うん。これ完全に女騎士だわ。


 でも、超がつく怪力なんだぜ? ただ、無駄な肉がついてないだけなのだ。

 でなければ、毎日のように重鎧着て走ったりできないよな!(呆れ)


 しかも現在は、俺が初めて会った時のようなくだけた話し方ではなく、

 騎士として恥ずかしくないような礼儀正しい話し方となっている。

 ……困ったことに声も高く、普通の人は彼が男性か女性か判別できないだろう。


『魔族戦争』時は泥と血で、顔なんて全員酷いことになっていたからなぁ……。

 戦争が終わってルドルフさんが治療に来た時、

 まったくだれだかわからなかった。

 声と話し方で、ようやくだれか理解できたくらいだからなぁ。


 これ神官達が真実を知ったら、大騒ぎになるだろうな?(白目)


 そんなことを考えつつ、教皇様目指して歩き続ける。

 だが……まだ半分も行ってないのに、俺の精神は既にボロボロだっ!

 助けて桃先生っ! 俺に癒しをっ!!


 そんな願いも空しく、今度はトラブルが発生した。

 とんぺーが突然、衛兵の一人に向かって威嚇を始めたのだっ!

 いったい何事ですかっ! 俺は今、いっぱいいっぱいなんですがねぇ!?


 とんぺーの本気の威嚇に耐えられず、衛兵は泡を吹いて崩れ落ちた。

 彼が何故、威嚇されたか俺に知る術も……むしろ知りたいとも思わなかった。

 と言うか既にヤヴァイ。俺の顔がピクピクしてきている。限界が近い。

 彼には悪いが、運が悪かったということにしておこう。そうしよう。


「とんぺー、もういいぞ」


 俺はとんぺーの頭を撫で、威嚇を止めるよう頼んだ。

 満足気に「くぅん」と鳴くとんぺー。


「バカな……こんなことがっ! 警備の者は何をやっていたっ!」


「まだ仲間がいるやも知れぬっ! 捜索させるのだっ!」


 案の定、神官達が慌てふためいている。謁見は中止か?


 いや……まだだっ! まだ終わらんよっ! ここまで来て終わったら、

 俺の苦労が水の泡と帰す!! そんなこと許されざるよっ!?

 ここは強行突破だ! このまま押し進めるっ!


 俺は、慌てふためく神官達を無視して、再び歩き始めた。

 こちとら、こんなに緊張する謁見なんぞもうしたくないんじゃっ!

 今日ここで、絶対に終わらせてくれるわっ!!


 俺は歩き続け、遂に教皇ミレニア様の姿がはっきりと見えてきた。


 ……うぉいっ!? 王様っ! 若作りってレベルじゃねぇぞっ!?

 どう見ても二十代前半にしか見えねぇぞっ!? 

 本当にこの人、王様とタメかよ!?

 俺はもしかしたらと耳を確認するが、残念ながら普通の人間の耳であった。


 教皇様が白エルフでなかったのは残念だったが、彼女は超美人だった!

 まず目につくのが髪だ。銀色の濡れたような髪は腰にまで届く。

 更に特徴的なのが瞳の色。左目が赤、右目は緑色のオッドアイだ。

 切れ長の細い眉にパッチリとした目、スッととおった鼻筋。

 ふっくらとした唇。文句の付けようがない顔である。

 肌も真っ白だ。日焼けして黒い人達が多いこの国において、この肌の色は

 やたらと目立つ。まぁ、俺もだが……。

 スタイルも抜群だっ! これは、エレノアさんに匹敵するっ!!

 爆乳だ! 爆乳っ!! このおっぱいに飛び込みたい!!


 そして、遠くからではわからなかった教皇様の衣装。

 肌色面積が多い気がしたのは……正しかったっ!! 殆ど布の部分がない!

 この国は神官達が布を使いまくったせいで、教皇様の分の布が

 なくなったのだろうか!? 

 これは、深刻な布不足と言っても過言ではないだろう!


 だって、これじゃストリップダンサーと勘違いされるレベルだぞっ!?

 おっぱいと大事な部分を隠す程度の布地って……いじめか?

 そこ以外は、宝石が付いたネックレスやティアラで誤魔化しているようだが。

 俺は間違ってもこのような服は嫌だ。これなら、むしろ全裸でいい。

 俺には一年間、全裸で過ごした実績があるのだよ!


 おっと、所定の位置までたどり着いた。ここからが本番中の本番だ。

 まずはお辞儀だ。優雅に、流れるようにおこなうのだっ!

 ……Yes! Yes!! いいぞっ、見事に決まった!!

 次はご挨拶だ。いいか? 絶対に台詞かむなよ? かむなよっ!?


 俺は圧倒的なプレッシャーを感じつつも、意を決して何度も練習した

 ご挨拶を始めた。


「本日はお忙しい中、急な申し出にも関わらず、

 このような時間を作って頂き光栄でございます。私はラングステン王国の聖女、

 エルティナ・ランフォーリ・エティルと申します」


 決まったぁぁぁぁぁっ! 俺はやり遂げたっ! かまずに言えたのだっ!!

 ふははは……!! やはり俺は、やればできる子だったのだっ!(確信)


「御見苦しいものをお見せいたしてしまいました。深く謝罪いたします。

 私はミリタナス神聖国教皇ミレニア・リム・ミリタナスです」


 教皇様は玉座を降り立ち、俺の元に来てしゃがみ込んだ。

 その際、豊か過ぎる乳房が俺の視界に飛び込んだ!

 ほぎゃぁぁぁぁぁっ!? これはヤヴァイ! 頭が真っ白になるっ!


 うががが……鎮まれ! 俺の荒ぶる欲望共よっ!!


 しかし俺の欲望達は限界を打ち破ろうとパイルバンカーを持って

 欲望メーターのMAX部分を突っついていやがるっ!! 

 やめてっ、バンカーはらめぇっ! びくんびくん!


 いかんっ! ここで俺が暴走すれば、全てが台無しになっちまうっ!!

 しっ……深呼吸!! 落ち着くのだっ! 白エルフは狼狽えないっ!!


 ひっひっふ~……ひっひっふ~……違うっ! それじゃねぇっ!


 俺がうちなる欲望と戦っていると、教皇様が話しかけてきた。


「遠い国からよく来ましたね。お待ちしていましたよ」


 その顔に似合わない低く落ち着いた声。

 俺は優しく微笑んでくれる教皇様に、ママンの面影を重ねてしまい、

 思わず顔が緩んでしまった。にへらぁ……。


 ところが教皇様は途端に、苦し気な表情をしたではないかっ!

 いかんっ! 何か病気でも患っているのか!?

 であるなら、さっさと俺が治してやらねばっ!!(使命感)


「教皇様? どこか痛いのか……ですか?」


 ぬあっ、あっぶねぇ! 台詞に地が飛び出した! すかさずフォローしたが

 ……ばれてないよな? どきどき。

 どうやらそろそろ、精神的に限界がきているようだ。

 ぶっちゃけ、鬼と戦うよりも辛い。ふきゅん。


「だ……大丈夫ですよ?」


 と言って玉座に、よろよろと戻っていく教皇様を見守った。

 本当に大丈夫か? ……心配だ。


「それでは、謁見の儀を終了いたします。

 最後に何か伝えたいことはございますか?」


 と教皇様の隣に控えていたマッチョ神官が俺に……うん? なんだ?

 頭がしびれてきた? うごごご……これはいったい!?


 極度の緊張と疲労でおかしくなってきたか!?

 終わりが見えて、安心した反動なのか…………?

 うおぉ……視界が白く染まっていく……。


 ◆◆◆


 気が付いたら俺は大きなベッドで寝かされていた。

 部屋には俺以外おらず、とても静かであった。


「ここはだれ? 俺はどこ?」


 ぼ~っとする頭は次第に鮮明になっていく。

 俺はどうしてここにいるのか状況を整理してみた。


 確か……謁見の間で、最後までやり遂げた。

 いや違う! やり遂げてねぇっ! 最後頭が真っ白になって……

 あの後の記憶がまったくない。俺の背中に嫌な汗が流れる。


 ……やっちまったなぁっ!? ひょっとしてぶっ倒れちまったかっ!?

 おごごご……あの苦労はいったいなんだったのだっ! 泣けるぜ。


 俺が「およよよ……」と泣いていると、ルドルフさんとザイン達が

 部屋に入って来た。


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― 新着の感想 ―
最初に目覚めた森では、エルティナはすべての状態異常に対する耐性を得たのではありませんか?それなら、なぜこれは彼女に影響を与えたのですか?
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