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食いしん坊エルフ  作者: なっとうごはん
第一章 珍獣と聖女と仲間達
17/800

17食目 プロ根性

城の『テレポーター』の門の前に勇者一行はいた。


勇者タカアキ。剣士フウタ。魔法使いアルフォンス。治癒師エレノアといった面々だ。まんまRPGのガチパーティー構成である。強い(確信)

勇者の見送りは意外にも少人数であった。王様を含め、重鎮が数名に

俺という面々。殆どの戦力は戦争に投入しているそうだ。

王様も戦いに参加すると言ったが、家臣達が全力で止めたらしい。

無茶言うなよな王様。


「見送りが少なくてすまないな」


と、王様が申し訳なさそうに言った。


「とんでもない、見送りがあるとは思っていませんでした。

 ありがたいことです陛下」


と、返すタカアキ。マジイケメン、不細工だけどイケメン。

略してブサメン。これでいこう。


「生きて帰って来い、友よ」


俺はタカアキに声をかける。彼はにっこり笑って俺に返事をする。


「もちろんだとも、小さき友よ」


「そうだな、死んだら……つまらんからなぁ?」


とアルのおっさん。そして、息の合ったように吐かれる台詞。


「「「全てはおっぱいのために!!」」」


俺たち三人は、拳を合わせ友情を確認し合った。

エレノアさんに、小言を言われたのはいうまでもない。


「ユウギ男爵、勇者殿を頼む」


「お任せを陛下。あの男にはくれぐれも……」


となにやら向こうも、混みいった話を終えたようだ。

そして勇者一行は、門を抜けて戦場に向かった。後に残された俺達は

その場で解散となり、それぞれの帰路に就く。


がんばれよ……皆。


◆◆◆


治療所についた俺は、早速ケガ人共の世話を診る。

午前中、見送りに行ってたから随分と溜まってるな!?

勇者達が向こうでがんばっているんだ、俺も泣き言を言うわけにもいくめぇ!

てやんでぃ! とか江戸っ子みたいなことを思いつつ治療していく俺。


治療を終えて食堂でミランダさんと、たわいもない話で盛り上がっていた

ところに、イケメンが近付いて来てギルドマスターの部屋に来て欲しいと話してきた。面倒だが行くことにする。何事だろうか?


「……どうやら、他の国も勇者召喚に成功したらしい」


と、デルケット爺さんの重々しい台詞。

良い事なんじゃないのか? と聞くとそうでもないらしい。

そもそも、勇者召喚はラングステン王国の専売特許でその方法は長い間、

秘術中の秘術とされてきた。何故なら悪用されたら大変だからだ。

しかし他国で召喚されてしまった。原因は情報の流出らしく、

召喚の技術を横流ししたヤツがいるらしい。困ったものだ。


「現在、勇者同士の睨み合いが続いております」


勇者を召喚したのは、ラングステン王国を含め三ヶ国。


中央大陸のラングステン王国。 

西の大陸のドロバンス帝国。

南の大陸のミリタナス神聖国。


「これにより同盟は事実上破棄に近く、協力などとても……」


何をやってるんだか……これはデルケット爺さんも頭を抱える。

なんともまぁ、王様も大変なことになったな。と同情しておく。

でも、こういうことの処理は王様の仕事だ。俺には何もできん。


「そこで、お願いごとなのですが……」


爺さんが何か言いたげだが……良いのよ? 言っても? 話してみ?

とデルケット爺さんを促す。


「実は同盟は破棄に近いのですが、希にこちらの『テレポーター』にも

 他国の兵が入って治療を受けに来ています。どうか彼らの治療を引き続き

 お願いしたいのです。勇者召喚による関係の悪化は、国同士に因るものですが 戦場に立っている者達は義によって立ち上がった冒険者や、

 愛する家族を守るために戦う兵士なのです」


と、一気に言ったデルケット爺さん。無理すんな。

ぜえぜえ、言ってるじゃないか。水飲め、水。


水を飲んで一息吐いた爺さんは「どうか、どうか……」と俺に頼み込む。


「私からもお願いします」


とイケメンも頭を下げてきた。まったくもう。

そんなにお願いされたら、断れないじゃないか。

もっとも、断る気などさらさらないがなっ! ふっきゅん!


「俺は、ただケガ人を治すだけだ。そいつらの事情は知らんし関係ない。

 何でもいいから、片っ端から連れてこい。全部、俺達が治してくれるわっ!」


と言って腕を組み仁王立ちした! ふっきゅんきゅんきゅん……!!

なにやら、俺もプロ根性みたいな物が備わってきているらしい。


二人は、顔を合わせ「ありがとうございます、聖女様」と言って喜んでいた。


◆◆◆


勇者が三人か。


自室に戻った俺は、いつものトレーニングを終え桃先生を食べていた。

当分の間、自由な時間はなさそうだ。


俺はベッドに横になり召喚された勇者たちのことを考えていた。

あ、こら。にゃんこ共っ! 一斉に俺のお顔を、ペロペロするんじゃない。

集中させてくれっ。ふきゅん!


んもうっ、気を取り直してっと……。


強すぎる力同士は、反発しか…しないのだろうか?

そんなことなないだろう、転生チートフウタとラングステンの勇者タカアキは

仲が良い。たった数日で数年来の親友みたいに接している。

フウタはおっぱい同盟にこそ入ってないが。


あいつは自宅に戻ったら、マイおっぱいが沢山いるもんな!

不便はしてないってか!? おのれ! 呪われろっ! ハァハァ……。

あ、いかん。考えが変な方向に。修正修正。


「ようやく、屋台に行けると思ってたのに、どうしてこうなった?」


お金は貯まるが肝心の買い食いができない。くそぅ。

いくらお金だけあっても、使えないんじゃあ意味がない。

俺の食に対する欲求は、深まる一方である。


「露店に行きてぇなぁ」


と思ってる内に微睡み、眠りに就いていったのだった。

ぐうぐう、ふきゅきゅ……。

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