16食目 勇者パーティー結成
城の一室に案内された俺達を待っていたのは、勇者タカアキとフウタ、
アルのおっさんと……豪華なご馳走だった!
うひょうっ! ご馳走だぁぁぁぁぁっ!!
ミランダさんの料理も良いが、こういう豪華絢爛なご馳走を俺は
待ち侘びていたのだ。現在『世界食べ歩き計画』ができない現状
これはありがたい。は~ん、涎出るわぁ……(うっとり)。
「ようこそ! 聖女様、エレノアさん!」
勇者タカアキが挨拶し俺達をエスコートする。流石に今日は俺を見て
興奮することは控えているようだ。彼の服装は勇者らしい格好に
着替えられていた。無理やり感半端ない。
「さて、今日は重大な報告がある」
と、フウタが重々しく口を開く。
「お話とは聖女様でしょうか? それとも……」
「あぁ、君だエレノア。勇者のパーティーに俺、アルさん、
そして君が選ばれた」
なんだってー!? どういうことだそれはっ!?
「それは国王陛下の?」
フウタは重々しく頷き口を開く。彼はとても難しい顔をしていた。
「あぁ、この三日間タカアキの指導をしてたんだが、条件次第で
魔王を討伐できると踏んだ。そして陛下にそのことを伝えたんだ」
その条件とは、ランクS冒険者でパーティーを組み、勇者をサポートして
魔王に挑むというもの。更に全戦力をもって、戦闘中の勇者達に邪魔が
入らぬよう、他の魔族達を押さえ込むというものだった。
要はごり押しで敵の頭を叩き潰すってヤツだ。
「命がけの仕事になる」
難しい顔で言うフウタ。転生チートの彼が命がけって、どれだけ危険な
ことしようとしてるのだろうか? 怖い。
「何を今更……難しい依頼の時は、いつもこのような感じでしたでしょう?」
と微笑み返すエレノアさん。とても綺麗な笑顔だった。
「じゃ、これでパーティー結成だな」
と魔法使いの装備を決め込んだアルのおっさん。
おっさん魔法使いだったんか。何時もみすぼらしい革鎧付けてたから
戦士だと思ってたのに……。
そのことを聞くと「あれは世を忍ぶ仮に姿さ」との話。本当か?
「さて……勇者タカアキ。ご覧のとおり俺、アルさん、エレノアが君に同行する。
魔王討伐は困難を極めるだろうが、どうか俺達を信用して欲しい」
勇者タカアキは頷き「願ってもない! こちらこそ宜しく!!」と
清々しい笑顔で答えた。あぁ、これでルックスさえ……と残念がる女中さん達。
意外に好意を持たれているらしい。
それからパーティー結成の宴に突入した。
やっと飯が食える! だが慎重に食べる物を選ばなければ!
今の俺は幼女! 食べられる量も限られるのだ!!
俺にとっては魔王討伐よりも、困難なミッションかもしれない!?
と思ったらエレノアさんが小皿に食べ物を載せて持って来てくれた。
ん? ……唐揚げばっかりじゃねぇか!?
アルのおっさんを見るとグッと、親指を立ていた。
野郎……余計な真似を。
結局、断るわけにも行かず、唐揚げで腹いっぱいになってしまった。ちくせう。
宴も酒が入り、だいぶ経った頃。
突如、勇者タカアキが立ち上がり腕を上下に振り「おっぱい! おっぱい!」
と連呼しだした。おっぱいコールである。
キョトンとした表情でそれを見るエレノアさんと俺。
俺は男三人が、エレノアさんのおっぱいの話に花を咲かせていたのを
聞いていた。おっきな耳便利。ピコピコ。
続けて、おっぱいコールにアルのおっさんが加わった。
この流れ……乗るしかねぇ! 俺も近くに駆け寄り、おっぱいコールに参加した。尚、フウタは辞退したもよう。
◆◆◆
宴も終わり、現在俺達は正座させられ、エレノアさんにお説教を受けていた。
だが、俺達の友情は固いものになったと、自信が持てる。
エレノアさんのお説教が終わり、俺達はガッチリと握手した。
「友よ、私は今日という日を、生涯忘れないだろう」と勇者タカアキ。
「あぁ、がんばろうぜ! 魔王討伐!!」と魔法使いアルフォンス。
「俺は一緒に行けないが、成功を祈っている」と聖女の俺。
そして、声を合わせ言った。
「「「全てはおっぱいのためにっ!!」」」
おっぱい同盟結成の瞬間だった。おっぱいおっぱい!
◆◆◆
宴の後、テクテクとイケメンと城を出た俺。
すっかり日が暮れて、空にはまん丸の月が輝いている。
エレノアさんが勇者と魔王討伐に出発するので、イケメンが城で
待機してたらしい。暫くは別の人が俺の付き添いになると言っていたが……
三ヶ月以上、濃密な付き合いがあったエレノアさんがいなくなるのは
正直不安だ。ふきゅん……。
「心配ですか?」
イケメンが俯いて歩く俺に気を遣って話しかけてきた。
「少し」
「きっと大丈夫ですよ。上手くいきます」
ありきたりな励ましであったが、今の俺にはそんな言葉でも効果があった。
チート転生者であるフウタが付いているのだ。色々と反則まがいのことを
しでかして、なんとかしてしまうに違いない。
「そうだな、きっとだいじょうぶだろう。きっと……」
俺達は立ち止まり、空で輝く月に祈りを捧げた。
どうか無事に大切な人達が帰ってこれますようにと……。
◆◆◆
次の日、新しい付き添いにネーシャ・ネネルという女性が付いた。
四十代のおばちゃんだ。治癒魔法はあまり得意でないそうだが世話焼きで、
面倒見がいいとのこと。実際、良く気が利く優しいおばちゃんだった。
若い時は美人だったのだろう。そのことが容易に想像できる
清楚な女性であった。
向こうのお母ちゃんを思い出した。今頃、どうしてるのかな……?
ネーシャさんほど、清楚じゃなかった気がするが。うん。まぁいっか。
そんなこんなで五日後。いよいよ、勇者達一行が出発する日が来た。