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食いしん坊エルフ  作者: なっとうごはん
第三章 聖女とミリタナス神聖国
156/800

156食目 価値

 ◆◆◆


「恋はバーニングなんだぜ……」


 フォクベルトにお姫様抱っこされて、一足早く帰宅した

 アマンダを見送った俺達。


「アマンダが、まさかねぇ~? フォクベルト君も隅には置けないよね?」


 リンダがニヤニヤしながら、俺に話しかけてきた。

 どうやら、リンダはフォクベルトに

 そういう感情は、持っていないようだった。

 どんな男が好みなのだろうか?


「フォクは、前からモテてるからなぁ……女子の間じゃ

 有名な話じゃなかったか?」


「まだ、様子見してるんじゃないのかな? 格好いいけど

 ちょっと、神経質っぽいし……」


 あー……そういう、ところがあるなぁ……フォクベルトは。

 こだわるというか、気に入らないことは絶対にしないとか

 自分の決めたことを、やり遂げようとするとか……

 うん、結構……難しい性格のやつだな!


 と、いうことは、リンダは性格重視か……エレノアさんと同じか。

 良い旦那さんを、見つけるタイプだな。


「せめて……繊細と、いってやろうぜ……」


 一応、フォクベルトのフォローを入れておいた。

 入れとかないと、どんどんエスカレートしそうで怖い。

 女性はそういう話に、容赦ないからなぁ……


 っと、そろそろ、本来の目的を果たさなくては!

 タカアキの話で、スラム街の問題も杞憂で済んだ。

 王様ならきっと……上手くやってくれることだろう。

 今の俺にできることは、今までどおり……傷を負った人達を癒すことだ!


 さぁ! フィリミシアの労働者達の、渇きを潤しにいこう!


 ……その前に。


「なぁ、タカアキ。この子の飼い主って知らないかな?

 知らない内に『ぐれーとらいおっと号』に、乗っかっていたんだ。

 人に凄く懐いているから、ペットだと思うんだが……」


 俺はタカアキに、俺の首に巻き付き、まったりしている白へび君を見せた。

 タカアキに、気が付いた白へび君が「ちろちろ」と、愛想を振りまく。

 本当に人が好きな子だな……


「ふむぅ……珍しい蛇ですね? 残念ながら、私は見たことがありませんね。

 ひょっとしたら、我等が友フウタなら、知っているかもしれません。

 彼は今、フィリミシア中央公園の修繕を指揮しているので

 尋ねてみてはどうでしょうか?」


 残念ながら、タカアキも白へび君を、見たことがないようだった。

 君はいったい、どこからきたんだい?


 俺は首にいる白へび君に、手を差し伸べると

 嬉しそうに顔を、すりすりしてきた。

 本当に、人が好きなんだなぁ……


 ふむ……タカアキは、フウタが知っているかも知れないと言ったが……

 フウタか……そういえば、フィリミシア中央公園は

 以前、フウタが関わって作られたって聞いたな。

 直接指揮を執っているってことは、相当思い入れが強いんだろうなぁ……


 よし、白へび君のことを聞くついでに、アスラムの実を差し入れしてくるか!

 がんばっている青年には、ご褒美を上げたくなっちゃうのだよ!


「そっか……ありがとな! タカアキッ!

 俺はフウタのところに、いってみるよ。 お墓のことは任せるなっ!」


「えぇ、お任せください。フウタに、よろしくお伝えください」


 俺達を、手を振って見送るタカアキ。

 さぁ、フィリミシア中央公園に急ごう!


 ◆◆◆


 途中で、のんびり歩いていた、ガンズロックとブルトンに合流する。

 どうやら、草花を鑑賞しながら、歩いていたらしい。

 男なのに乙女チック!

 でも……わからんでもない。


 この世界の草花は、本当に綺麗だ。

 なんと言えばいいのだろうか? そうだな……魅力が爆発している?

 

 違うなぁ……う~ん。

 ふむ、命が輝いてる! ……と、いうことにしておく。

 それくらい、生き生きと咲き誇っているのだ。


 こいつ等を眺めながら、一杯やりたいなぁ……

 風情があって、美味しいお酒が楽しめそうだぁ……


「おぅ、目的は果たせたみてぇだな?」


 ガンズロックが、俺に話しかけてきた……ビール瓶を手に持って。

 おいぃぃ……するいぞ! ガンズロック! 俺も飲みたいっ!

 俺も、ドワーフに生まれたかったっ!!


  まぁ、ひがんでも始まらないので、努めて笑顔で返事をする。

 あと……数年の我慢、我慢……


「あぁ! ばっちりだぜっ! 今度の目的地はフィリミシア中央公園だ」


 ブルトンは、どこで買ったのか、わからないが……

 見事な串団子を食べていた。


 大きなお団子が三個ほど、串にささっているものである。

 じっくり焼いた、お団子が香ばしそうで、食欲をそそる。

 どうやら彼は、みたらし団子派のようだ。

 甘じょっぱいタレが、淡白な味のお団子に良く合う。


 ちなみに、俺は餡子派である。

 意外に清酒に合って美味しいのよ?


 あま~い、餡子と一緒に、淡白な味のお団子を咀嚼。

 んぐんぐ……と、かみしめ堪能したら、辛口の清酒で口をさっぱりさせる。

 ぷは~と、一息ついたら、花々を見てうっとりする。

 ……それの繰り返しだ。


 気を付けるのは……時間を忘れて繰り返すことだ。


 時間の変化によって、花々は美しさを変えていく。

 朝は清々しい美しさ、昼は命に満ち溢れた美しさ

 夕暮れ時は何やら儚げな美しさ

 夜は月に照らされて幻想的な美しさになる。


 俺の好みは夜だ。

 月の光に照らされた、花の美しさは神秘的だ。

 思わず「ほぅ……」と、言ってしまうほどに美しい。


 じっと、動かず……ただ、ただ、咲き誇る名もわからない花達。

 その健気な花達を、眺めながら飲む酒は時間を忘れさせる。


 そして……俺の隣には……隣には……?


 ……記憶がない。

 そうか、こっから先は、記憶が欠けた部分か。

 残念ではあるが、なんだか懐かしいような、悲しいような気分になった。

 ……悪い気分ではない。もどかしくはあるが……


 俺は合流した二人に、フォクベルトとアマンダが、先に戻ったことを告げる。

 

「……そうか、上手いことやったな」


 ブルトンが意味深なことを言ったが……これは計画的な犯行だった!?

 アマンダ! 恐ろしい子!!


「まぁ、フォクの野郎も、後でくるだろぉさ……

 それよりも、とっとと、いこぉぜ? 日が暮れちまわぁ」


「そうだな、これで全員そろったしな……あ」


 そう言いかけて……俺は思い出した。

 ダナンを置き去りにしてしまっていたことを!


「ダナンを忘れてたっ!」


 俺の言葉にお墓に行っていたメンバーが

「あっ!?」と、声をそろえて言った。


「ほっとけぇ! どうせ、ろくでもねぇことして、一発貰ったんだろぉ?

 放っといても、あいつならぁ、嗅ぎつけて合流するだろぉさ!」


 ガンズロックの発言に、全員「あ~」と、同意する。

 ダナン……日頃の行いの結果だよ?(自業自得)


 ◆◆◆


「おいぃぃぃっ! 復興作業中の労働者共~! 俺が来たぞ~!」


「うおぉぉぉぉぉぉん! 聖女様だぁぁぁぁぁ!」


「俺だぁぁぁぁっ! 結婚してくれぇぇぇぇぇっ!」


 フィリミシア中央公園に到着した俺達。


 早速、大量のアスラムの実を『ぐれーとらいおっと号』に、搭載して

 汗だくの作業員達に配りだす。


「おまえ等に、アスラムの実を奢ってやろう!」


 透明の綺麗な果実、アスラムの実は大好評だった。

 特に体温を下げる効果が、好評のようで残暑が厳しい今日は

 特に有効的だったようだ。


「うおぉぉぉ!? このむっちり感!

 あとから来る……しゅわしゅわ感! たまんねぇ!!」


 予想どおり、大好評だった!

 苦労した甲斐があったってもんだぁ……


「これは、これは……ご機嫌麗しゅうございます……聖女様」


 フウタが、優美に堅苦しい挨拶をしてきた。

 俺は、こういう挨拶は、好きじゃない。


「おいぃ……堅苦し過ぎんぞ? フウタ。

 あと、俺のことはエルティナって、呼べって言ってるだろ?」


「そうは言いたいのですが……人の目もありますので」


 タカアキと違って、フウタはどこか余所余所しい。

 理由はわかっているので、無理強いはしない。

 領主ともなれば、色々ある……と、言っていたからだ。


 でも……できるなら、名前で呼んで欲しくて

 繰り返し言っているのだ。


「まぁ……それはいいや。

 そんなことより、これを奢ってやろう!」


 俺は『ぐれーとらいおっと号』に、積んであったアスラムの実を

 フウタに、どっさり奢ってやった。


「こ……こんなには」


「おバカ~! フウタには一個だ!

 フウタには、いっぱい嫁さんと、子供がいるだろうがっ!

 ……それ持って、顔見せにいってやれよ」


 俺の言葉に、滅多に表情を崩さないフウタが

 満面の笑みで、大喜びした。


「ありがとうございます!」


「うんうん、仕事ばっかりして……

 子供に、さみしい思いをさせてはいけないと……じっちゃんが言ってた」


 ……何故か、じっちゃんばかりだ。

 !! ……思い出した。


 前世の俺には……父親がいなかったんだ。

 俺には……母ちゃんしか、いなかった……


 だから、じっちゃんが……俺の父親代わりだったんだ。


「はい、肝に銘じておきます」


「まぁ、フウタなら、上手いことするだろうから、心配はしてない」


「ははは!」と、作業員達の笑い声。

 どうやら、作業員達の関係は円満のようだった。


「はは……聖女様には敵わないですね」


 そう言って、アスラムの実を、ひとかじりするフウタ。

 もむもむ……と、味わい飲み込む。


「……!? こっ、これは!?」


 驚くフウタ! こんなフウタは見たことがない!

 いったい……どうしたというんだ!?


「凄い! 味もさることながら……耐熱効果、解熱作用……

 精神安定、生命力回復効果『強』に……水属性の強化作用……!?

 わずかながら魔力の回復も確認……

 肌の細胞も再生させる効果が……!?」


「なんだか、よくわからんが……凄い果物だってことが、わかったぜ……」


 ひとかじりで、アスラムの実が、丸裸にされてしまったようだ。

 流石、チート様は格が違った!


「いったい……こんな果物を、どうやって……」


「ルリさんに貰った」


 もう皆、知ってるからいいだろう?

 俺は素直にフウタに伝えた。


「ルリさん? どなたですか?」


「ルリティティスさん。ルドルフさんのお嫁さん」


 バッ! と、一斉にルドルフさんを凝視する皆。

 バッ! と、顔を隠すルドルフさん。


「な……なるほど、フェンリルの守る『果宝』では、ありませんか。

 どうりで、物凄い効力があるわけです」


 なるほど、凄い果物だということがわかった!

 でも、そんなの関係ねぇ!


「でも、食おうぜっ! 果物は食べてこその価値なんだぜ!」


 俺はライオット達に、もっとアスラムの実を、配ることを指示した。

 ライオット達は、嫌な顔せず、せっせと配ってくれた。

 ありがたや、ありがたや……持つべきは友だぜ!


 その光景に、キョトンとするフウタ。……どうした?


「僭越ながら……その実一つで、大金貨二十枚の価値があると思われますよ?」


 フウタは、物の価値を見極めるのが速いようだ。

 そうだな……俺もそう思う。

 フウタは俺のことを想って、言ってくれているのだろう。

 けどな? フウタは、ちょっと見逃しているところがある。


「ここの作業員は……それ以上の価値がある! ……ということさ。

 勿論、フウタもな?」


 と……おれは、悪戯っぽく笑った。


 俺の表情を見た、フウタと作業員は皆、息を飲んだ。

 その……つぎの瞬間……!


「うおぉぉぉぉっ! 一生付いていきますっ! 聖女様ぁぁぁぁぁっ!!」


 フィリミシア中央公園に、野郎共の雄叫びが響いたのだった。

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[気になる点] 重複:帰る フォクベルトにお姫様抱っこされて、一足早く自宅に帰宅したアマンダを見送った俺達。 重複:問題もor事も タカアキの話で、スラム街の憂いも杞憂で済んだ。
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