表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
食いしん坊エルフ  作者: なっとうごはん
第三章 聖女とミリタナス神聖国
151/800

ちろちろ

 ◆◆◆


「……で、あるからして……」


 眠い! 猛烈に眠いっ!

 この単調な喋り方っ! 盛り上がりのない授業内容っ!!

 どうして、こうまで眠くなる授業ができるのだっ!?


 俺は今、三時限目の授業『歴史』の授業を受けていた。

 俺は『歴史』の勉強は好きだ。


 しかし……初代は、あまり好きではなかったらしく

 所々、知識が抜け落ちていた。

 それは、基本的な部分でさえ、忘れているという、徹底したものだった。

 せめて……今の王様が何代目かくらいは、覚えていていて頂戴っ!


 そんなわけで、俺は『歴史』の授業を

 積極的に勉強しているわけなのだが……この有様だよっ!


 気を抜くと、うとうとしだすは、涎は垂れてるはで

 いらんことに労力を、使うはめになっている。


 歴史の授業を担当している、お爺ちゃん先生こと

 ゴドウィン・サーキス先生に、悪気はないのだろうが

 授業自体が既に催眠術状態だ。

 教室内に、起きて授業を受けている生徒は、いったい何人いることやら……


 彼は、くたびれた茶色いスーツを身に纏い、曲がった腰を

 時折トントンと叩きながら、お経のように喋る

 白髪のバーコードハゲの人間男性である。


 温和で優しいため、寝ていても怒らないのが、余計に居眠りする生徒を

 増やす結果になっているようだ。

 優し過ぎるのも問題だなぁ……


 俺は周りを観察してみる。

 リンダ、ガンズロック、ダナン……死亡確認!

 ……と、いうか起きてるやつを、探した方が早いか。


 最早、寝てるやつの方が多い。

 んんと~?


 委員長と、副委員長は流石に起きてるな……

 フォクベルトも生存を確認っ! やるなっ!?

 ヒュリティアも起きてるなぁ……意外!(失礼)

 うおっ!? ユウユウも起きてらっしゃる! 意外と真面目だなぁ……


 そして、俺の目は……エドワードで止まった。


 エドワードは姿勢を正し、ペンを右手に持ちジッ……と、黒板を見つめていた。

 だが、ペンを持った手は全く動いてはいなかった。


 信じられるか? こいつ……寝てるんだぜ?


 そう、エドワードは、目を開けたまま寝てるのだっ!

 これは最早、特殊能力扱いでも、いいのではないのかなっ!?


 ざっと数えたところ……四十人中、起きていたのは俺含め……

 たった八名だった。皆、寝すぎぃっ!!


 俺が心の中で、エキサイティング・ツッコミを、したところで

 授業終了を知らせる鐘が鳴った。

 その音をきっかけに、寝ていた生徒達は『ばちっ』と

 一斉に目を覚ました。約一名、イビキかいて寝たままだが……


「はい、それでは、ここまでとします」


 こうして、歴史の授業が終わる。歴史の授業は何時もこんなものだ。

 テストの時も、丸暗記でなんとかなるからなぁ……


「お~き~ろ~!」


 起こさなければ、ずっと寝続けるライオットを、揺さぶって起こす。

 が、反応しない……耳と尻尾が時折、ぴくぴく動いているところを見ると

 寝ぼけている可能性が高い。耳に息吹きかけるぞ? このやろう。


「昼飯、食いにいくぞ~!!」


 俺の『飯』の言葉に反応して、勢い良く飛び起きるライオット。

 食い意地張り過ぎぃ!!


「うおっ!? もう、そんな時間かっ!? 急げっ!」


 バタバタと、食堂に走っていくライオット。

 その姿を、やれやれ……と、見送る俺達。

 最早、このクラスの名物風景である。


「エルは、寝なかったのね?」


 ヒュリティアが、俺の隣にきて食堂に行こうと誘ってきた。


「俺は誘惑には強いんだ……食べ物以外はな?」


 そう言って、二人並んで食堂に向かう。

 そのすぐ後に、リンダ、フォクベルト、ガンズロックの

 何時もの面々が合流する。

 そして、今ではそこに、ザインも加わりとても賑やかだ。

 大勢で食べるご飯は、とても美味しいものだ。

 さぁて……今日は何を食べようかなぁ?


 ◆◆◆


 放課後なう。


「どうでぇ? 中々の力作に仕上がったぜぇ?」


「ほぅ……これは、良い物だぁ……」(うっとり)


 俺達はガンズロックに案内され、グランドの隅に置いてあった

 ぐれーとらいおっと号を、受け取りにきていた。


 以前は、ただのくたびれたリアカーだった物が、見違えるような

 立派な物へと生まれ変わっていて、俺は見惚れてしまった。


 木の板を張っただけの車体は、黒く塗られ金色の装飾に彩られていた。


「装飾はゴードンに依頼した。こいつぁ……てぇした腕前だなっ!

 将来はコンビ組んで、最高の武器を作ってみてぇもんだ!」


「……よせよ、照れるじゃねぇか」


 ぽりぽりと頬を掻くゴードン。どうやら、相当嬉しいようだ。

 こんなゴードンを、見るのは初めてのことだ。

 彼は、普段は褒められても、態度を崩すことはないからな。


 は~しっかし……大したものだぁ! 素人目でも、凄い仕事だとわかるぞ!

 うおっ!? ちゃんと『ぐれーとらいおっと号』って彫ってある!

 ゴードンさん、マジパねぇっす!


「んふふ……僕も手伝ったんだよ? ほら、ここを見てごらん!」


 プルルが、車輪部分を注目しろと、言ってきたので見てみると……

 こっこれはっ!? サスペンション!?


「以前乗った時、衝撃が直にお尻にきたからねぇ……

 キャタピノン……いや、いもいも坊や達も転がってたしね?

 少し工夫を加えてみたよ! これは、ゴーレムの技術を応用したものさ! 

 これで、衝撃を和らげることが、できるはずだよっ!」


 満面の笑みで、自信たっぷりに言ったプルル。


 これは、中々凄いことになっているな……

 我クラスの、技術スタッフ三人による、合作とは恐れ入った!


「よし、早速メインエンジン接続せよ~」


「おうっ」


 ライオットがリアカーとドッキングする。

『ブッピガンッ!』……と、聞こえた気がした!


「おぉ……すっげ~軽いなっ!? 素材も変えたのか?」


 リアカーを、軽く引いたライオットが、驚きの声を上げた。

 ライオットが驚くくらいなのだから、相当軽くなったのだろう。


「あぁ、うちに魔石の欠片が余ってたから『軽量化ライトグラビィティ』の魔法を仕込んで

 装飾に埋め込んでみたのさ。上手くいったようだな?」


 ドヤ顔のゴードン。

 やっぱり、上手くいった時って、こういう顔になるよなぁ?


「よしっ! 乗り心地も確かめねばっ!」


 俺はリアカーに試乗すべく、よじよじと……よじ登る。

 しかし……そこには、先客がいた!


「ちろちろ」


「あっどーも」


 とぐろを巻いた、小さな白い蛇が舌を『ちろちろ』させて

 凄く気持ち良さげに、日向ぼっこしていた。

 車体が黒いから、日光を吸収して暖かいのだろう。

 でも、ずっとそこにいたら、白い身体が焦げちゃうぞっ!?


「ガンちゃん! 先客がいるぞっ!?」


 俺の声に皆が、リアカーにいる、白い小さな蛇を見た。


「ん~? この子は……なんなんだろうねぇ?

 サンドスネークじゃなさそうだし」


 プルルが首を捻る。


「ポイズンスネークでもねぇわなぁ?

 あいつらぁ、見た瞬間に襲ってきやがるからなぁ……」


 ガンズロックも首を捻る。


「……しっかし、大人しいやつだな? ペット用の蛇……?

 もしかして……キューピットスネイクか?

 ……でも、あいつ等はピンク色の鱗だしなぁ?」


 ゴードンも首を捻る。

 結局、何もわからない、変な蛇だった。


「あれ? 蛇はどこにいった?」


 ライオットの声に皆が、白い蛇が何時の間にか、いなくなったことに気付く。

 皆、慌てて探し始めるが……


「ここにいるぞ?」


 その白い蛇は、俺の膝の上で、うとうとしていた。

 より、温もりを求めて移動してきたのだ。


「人懐っこ過ぎ……蛇って、ここまで懐いたかしら?」


 ヒュリティアが、興味深そうに蛇を覗きこむ。

 それに気付いた蛇が、ヒュリティアの鼻をペロッと舐めた。

 挨拶のつもりなのだろうか?


 そして、そのまま首を下ろして、寝てしまった。

 ……無防備過ぎるぅ!


「う~ん……だれかに、飼われていた可能性が高いねぇ?

 じゃないと、ここまで人を怖がらない理由がわからないよ」


 プルルはこの蛇が、だれかに飼われていたと断定したもよう。

 確かに……この蛇には、野生の匂いが感じられない。

 更にはハングリーな感じもしない。

 非常に、穏やかな感じしかしないのだ。


「このまま、放っておくと……食べられちゃいそうだな?

 一応……保護しとくか? これも何かの縁だし」


 俺の提案に、皆が賛成してくれた。

 最悪、飼い主が見つからないのであれば、うちで面倒見ればいい。

 うちの連中なら、きちんと面倒見てくれるだろう。

 とくに、ぶちまるは、世話焼きだからなっ! 安心だっ!


 ひとまず、この件は保留にして、復興に携わる労働者達に

 アスラムの実を、奢りに行く作業を、開始しないとな!


「よしっ! では、フィリミシアの町に乗り込め~」


「お~い! まって~~!!」


 さぁ、行きましょう……と、いうところで『待った』が掛かった。

 いったい、だれなんですかねぇ……?

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ