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食いしん坊エルフ  作者: なっとうごはん
第一章 珍獣と聖女と仲間達
15/800

15食目 勇者

その男は果たして、勇者であろうか?


説明しよう。


天然パーマの黒髪、脂ぎった顔には吹き出物がチラホラと出ており、

分厚い眼鏡の奥にギラギラした目が見える。

大柄な体躯は分厚い脂肪に覆われていた。

その姿は…アキバによく居るバンダナを頭に、リュックを背中にジーパン装備の

自由戦士『オタク』であった。


……マジでコレが勇者なのか?

普通、多少女神様辺りに「姿も格好良くしときましたよ」的な

救済は無かったのか?


「そ……そなたが、勇者殿であるか?」


うわぁ、王様もちょっと引いてる。流石に、コレは今までにないケースか?

周りを見れば皆、オタクを凝視している。言葉もない。


「はっ、私は女神マイアス様に選ばれました勇者。

 タカアキ・ゴトウと申します」


と、ハキハキとした返答をした。


その後も、見た目はアレだが見事な受け答えで皆から感心を受ける。

中身が外見と釣り合わない。ここにいる、全員が思っていることだろう。


「大体の話はわかりました、私にお任せ下さい。

 必ずや魔王を討ち取ってみせましょう!」


ぐっ、と拳を握り決意表明する勇者タカアキ。

見た目で損してる人の、見本みたいなヤツだ。


王様が「やってくれるか」と喜ぶと、勇者タカアキは「その為の勇者です」と

迷いなく答える。その場にいた皆は、彼を勇者として認め始めていた。


そして、主だった者の紹介を勇者にし始めた。

やや暫くして、俺の自己紹介となったのだが……


「ふぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ! リアルエルフ幼女キタコレ!!」


勇者タカアキが俺を見るなり、雄叫びをあげた。

ま……まさか、こいつガチロリコンか!?


身の危険を感じエレノアの後ろに隠れる。

どさくさに紛れて尻を触ったのは内緒な? うへへ、柔らかい。


「っと、失礼。 怖がらせてしまいましたね。

 少々、私の熱き魂に火が付いてしまいました。大丈夫、何もしませんよ?

 Yes! 幼女! ノータッチ! 幼女!! が基本大原則なのです」


彼は、どうやら紳士であるらしい。


「エルティナ……一応、聖女ってことになってる」


エレノアさんの陰から超簡潔に説明した。

タカアキはその僅かな間も、鼻息を荒くして俺を見つめていた。


その後、滞りなく説明が終わり

勇者タカアキは、彼のために用意された部屋に案内された。

勇者召喚の儀は終了したのだ。


「随分と際物が召喚されたな?」


と言いながら近付いて来たのは、転生チートのフウタだ。

今日は白い軍服を着ている。


「ええ、悪い方ではなさそうですが……少しエッチな方なのでしょうか?

 私の体を、ジロジロと見るのはちょっと……」


とエレノアさんが恥ずかしげに言った。


「「それは勘弁してやれ」」


俺とフウタの意見が一致した瞬間だった。


◆◆◆


勇者が召喚された。


そこに立っていたのは、いわゆるオタクと蔑まれる人種だった。

元々そっちの世界で暮らしていた俺にはわかるのだ。


ちょっとステータスでも見てみるか……『ステート』。

小声で日常魔法『ステート』を発動する。


『ステート』とは対象の情報を読み取る魔法だ。

練度が上がれば、対象の能力を数値にして読み取ったり

より詳しく情報を引き出せる。


俺のステータスと比較してみるか……。


◆フウタ・エルタニア・ユウギ◆


人間 男 25歳 Sランク冒険者 エルタニア領主

腕力500 生命力450 俊敏750 魔力380

武器S 魔法S 

女神の加護 剣聖 転生者


対して勇者は……


◆タカアキ・ゴトウ◆


人間 男 25歳 勇者

腕力800 生命力850 俊敏350 魔力950

武器C 魔法A

女神の加護 鋼の心 召喚者 オタク道 Yes幼女 


同い年かよ!? 中年のおっさんの貫禄があったぞ!!?


身体能力は俊敏以外は凄いな。

ただ、素質は残念なことになってる……サポートする者が必要か。

後、変なスキル混ざってるな? なんだこれ?


ちなみに、一般冒険者のステータスはこんな感じである。


◆一般冒険者◆ ランクC


戦士系 腕力100 生命力120 俊敏80 魔力50

魔法系 腕力30  生命力60  俊敏70 魔力150


この辺りで、上下していると言ったところだ。

一般市民は更に低くなる。


そうだ、聖女様も調べようと思ったんだった。

あの時は、うやむやになってしまったが、本当に素質がないのか?

俺は周りに気付かれないように、再び『ステート』を発動する。


◆エルティナ・ランフォーリ・エティル◆


しろえるふ おんな? ごさいくらい せいじょですよ?

ぱわーないよ いのちもりもり すばしっこいかも まりょくはぱわーだぜ

ぶきイー まほうぎりぎりデー

せいじょですがなにか? ももせんせいはせかいいちー けーしょーしゃ


……なんだこれっ!? こんなステータス初めて見たぞ!?

てか、エティルって確か男爵家の?

少し離れた場所にいた、エティル家当主の姿を確認する。


ヤッシュ・ランフォーリ・エティル。四十五歳。彼もまた冒険者でランクはA。

今でこそ現役は引退しているが、若い頃は国王陛下の依頼を完璧にこなし、

見事貴族の地位を手に入れたそうだ。


五年前、末の娘が亡くなったと聞いたが…この子は一体?

けーしょーしゃ……継承者? そうか、この子は継承者か。


しかし珍しいな、名前までも継承するとは。

普通は能力を引き継ぐだけなんだが……余程先代を敬っていたのか? 

でも、この素質ではな……。


素質はエレノアに聞いたとおりだった。白エルフにもかかわらず、

残念な素質だ。治癒魔法を除いてはだが。

この世界、治癒魔法の素質がAであれば、国によっては破格の待遇を得る。

治癒魔法についてはBとAの差が非常に幅がある。

ネズミとライオンくらいの差だ。Sに至っては象もしくは恐竜ほどの差に

なるらしい。比較対象が曖昧だが、昔の資料で読んだものだから

こんなものだろう。


それよりも、ヤッシュ殿はこの事実を知っているのか?

当の聖女様もヤッシュ殿をチラチラ見ているが。

まぁ、この件は当人達の問題だ。俺が口出しする物ではないだろう。


そう考えていると、勇者が自己紹介し始めた……。


◆◆◆


勇者召喚の儀にいた中年のおっさん。

ヤッシュ・ランフォーリ・エティル。初代の親父さんだ。

自分のことを説明するべきか迷っていたが、今はやめておこうという

結論に達した。まぁ、面倒事になるだろう、というのが本音だからだ。


それから三日後……ケガ人共の治療を早めに終え、後を若手ヒーラー達に任せた

俺達は登城していた。なんでも重要な話があるらしい。

面倒事は勘弁なのだがなぁ。ふきゅん。


そうもいかないのがファンタジー世界。登城せよ、という時点で終了なのだ。

何事もなければ良いな、と思いながらエレノアさんに手を引かれ

俺は城の門を潜った。てくてく。

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― 新着の感想 ―
[気になる点] 四十五歳で五年前に末の娘が亡くなったとするとその時は40、初代の発育具合や前から目をつけていたという下種戦士のセリフからして、初代は成人してからしばらくは経っていると思われるので。この…
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