表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
食いしん坊エルフ  作者: なっとうごはん
第三章 聖女とミリタナス神聖国
149/800

愛を形に

 ◆◆◆


「じゃぁ、名残惜しいけど……そろそろフィリミシアに戻ろうか」


 戦いの疲れを、毛玉改め雪希で癒した俺。

 ルリティティスさんと、いちゃつくことで癒したルドルフさん。

 ザインはビースト隊と、もふもふしていた。

 さぞかし暖かかっただろう。(経験済み)


「ええ、名残惜しいですが……」


「私に構うな、あなたの使命を優先して欲しい」


 見つめ合い、濃厚な『くちづけ』を交わす

 ルドルフさんと、ルリティティスさん。

 うん……もの~すっごく、帰り辛くなった。


 う~む……フェンリルって、ここでしか生きられないのかな?

 フィリミシアに住めば、何時でもルドルフさんと会えるのになぁ?

 

 俺は、じ~っと、ルリティティスさんを眺めていた。

 それに、気が付いたルリティティスさんが、優しく笑う。

 クール系の美女だが笑うと、途端に少女のような表情になる。


「君はやはり、優しい心の持ち主だな……

 確かに……私達はここを離れて、暮らすことは可能だ。

 しかし、私がここを出ていくと、ヒュウ達が困るそうだ。

 私はこの『氷の迷宮』の主……と、いうことになっているらしいからな」


『あるじさま、いなくなると、さみしい』


『いなくなっちゃ、いやだ、さみしい』


 ルリティティスさんに、まとわり甘えるヒュウ達。

 氷の精霊にとって、ルリティティスさんは、母親みたいなものなのだろう。

 彼女は、甘えてくる氷の精霊を、優しく受け入れていた。

 そして、ルドルフさんの顔を、真っ直ぐ見て告げた。


「すまないな……私は、ここを離れられない」


 こうなる結果は、わかっていたはずなんだよな……ルリティティスさん。

 それでも、ルドルフさんと一緒になったのか……

 恋のブレーキは、故障中だったもよう! 暴走ってレベルじゃなかった!!


「あぁ……わかっている。

 君は、君の使命を、私は私の使命を全うしよう」


 ルドルフさんの言葉を聞き、満足したように頷くルリティティスさん。

 そして……無造作に、美しく長い自分の髪を

 根元からバッサリと切ってしまった! な……なんてことをっ!?


 そして、切った自分の髪を手に持ち、魔力を込め始めた。

 すると……切られた髪の毛が、魔力に反応して姿を変えていった。

 反応が終わり、ルリティティスさんの長い髪は

 キラキラと輝く、水色のマフラーへと姿を変えていた。


「フェンリルの加護と……私の愛を込めたマフラーだ。

 これを私だと思って……連れていって欲しい」


 顔を赤らめて、そっとルドルフさんに、手渡すルリティティスさん。

 少し瞳が潤んでいる……なんという乙女っ!

 

 ルドルフさんは、何も言わず……

 ガバッと、ルリティティスさんを強く抱きしめた。

 そして、彼女の切った部分の髪を、優しく撫で続けている……


 俺は思わず、口から大量の砂糖を噴き出した!(映像はイメージです)


 よしっ! 帰るぞっ! ピンク空間に対抗する、塩が不足しているっ!

 このままでは、激甘空間にやられてしまうっ!

 

「ふきゅん、ふきゅんきゅんきゅん……ふっきゅんきゅーんきゅんきゅん?

 (雪希、俺達はフィリミシアに戻る……お母さんのいうことを聞いて

  良い子でいるんだぞ?)」


「あん、あんあん! わうわう!(うん、わかったよ! お姉ちゃん!)」


 俺は、雪希と約束を交わし、ここにまた来ることを誓う。

 ルドルフさんじゃないが……俺もここに来る理由ができたからだ。


「じゃあ! またなっ!!」


「また来ます……絶対に」


しからば御免!」


 俺達『モモガーディアンズ』は、ここにまた来る誓いを立て

『氷の迷宮』を後にした……


 またなっ! ルリティティスさん、ヒュウに……雪希!!


 ◆◆◆


「ふっきゅん! きゅんきゅん! ふきゅんきゅんきゅん!

 (グレオノーム様! これお土産です! ゲンゴロウさんもありがとう!)」


 フィリミシアに帰る前に、森の主グレオノーム様に挨拶をしていく。

 ゲンゴロウさんにも、とてもお世話になった。

 道中……俺の足の遅さを、解消できたのは大きい。

 しかも、戦いにも参加して、俺を守ってくれていたしな。


「がう……がうぅ、がうがう。がうぅ……がうがうがう?

 (おぉ……これは、アスラムの実か。

  どうやら……ことは上手くいったようだな?)」


 グレオノーム様と、ゲンゴロウさんの分として

 山盛りに積み上げた、アスラムの実をお土産として渡す。

 これでも、まだまだほんの一部だ。

 全然……なくなる気配がない。多過ぎぃ!


「がう、がうがう。(また、来るがいい)」


 と、言ってくれたグレオノーム様に別れを告げ

 俺達は、フィリミシアに向かった。

 真夜中に出発したはずなのに、お日さまは既に高い位置にあった。

 かなり長い時間『氷の迷宮』で過ごしていたようだ。

 ……そういえば、全然寒くなかったな? どうしてだろう?


 そのことを、ルドルフさんに聞いてみた。

 ルドルフさんは首に巻いた『フェンリルのマフラー』に手を当て言った。


「おそらく……氷の精霊達が、がんばって寒さを、和らげてくれたのでしょう。

 耐寒魔法で寒さを、和らげるにしても……一時間程度が限界ですしね」


 そうか……そうだよな~、ルドルフさんあそこで、ルリティティスさんと

『にゃんにゃん』しちゃったもんな! 全裸で!!

 しかしまぁ……そういう、カラクリがあったのか……納得、納得!


「さて……そろそろ俺も、戻るとしよう。

 新種の鬼の『陰技』の対策を講じなければならんしな……

 それでは、ルドルフ君……エルティナを頼む」


 俺の口から、桃先輩の低く落ち着いた声が発せられた。

 普通の人が見たら、さぞかし驚くだろうなぁ……


「呼び捨てで構いませんよ? 桃先輩」


「一人前になった男を、呼び捨てにはできんよ!」


 愉快そうに笑って、桃先輩は俺の中からいなくなった……

 俺も一人前になったら、呼び捨てにされなくなるのかな?


 そんなことを考えながら、フィリミシアを目指し歩き続けた……


 ◆◆◆


「ふぅ……作戦終了」


 ヘッドギアを外し、一息つく。やはり、大量の汗が流れ落ちた。

 今回の敵は連戦、しかも相手は『新種の鬼』だった。


 エルティナには、筋力が足りない……と、言ったが

『スクリューピーチクラッシャー』が命中して

 消滅せずに、存在できる鬼がいるわけがないのだ……


 あれは、桃で鬼を砕く技ではなく『陽の力』を、鬼に撃ち込む技だからだ。

 勿論、使い手と桃によっては、砕くことも可能だ。

 当たれば、桃から『陽の力』が、回転しながら……ねじ込まれていく。

 そして、鬼を浄化し輪廻の輪に帰す。従来の鬼なら一撃必殺の技だ。


 しかし……これが、新種の鬼なら話は別だ。

 マジェクトには、明らかに『陽の力』の耐性が備わっていた。

 ……あり得ないことだ。

 この特性が……今、存在している鬼に備われば大事になる。

 早急に対策を協議しなくては……!


「うぎぎぎ……! た、たしけて……」


 床から声が聞こえてきた、この声は……


「桃魅少尉、そんなところで、何をしているんだ?」


 声の主は桃魅少尉だった。

 顔から床に突っ伏しており、大きくて形のいい尻から下着が

 丸見えになっていた。

 女性隊員の制服は、何故かミニスカートになっているためだ。


「ツツちゃんと、イシちゃん……桃力持っていき過ぎぃ……げふっ」


「普段から、鍛えてないからそうなるんだ。まったく……ほらっ」


 自力で、起き上がることのできない、桃魅少尉を起こしてやる。

 極度に桃力を失うと、このような状態になるのだ。


 桃の守護者の場合、自力で桃力を生産できないので

 パートナーである『桃先輩』が、桃力を供給することとなる。

 よって、桃の守護者の場合は『桃先輩』の最大桃力が物を言うのだ。

 そのため、我々『桃先輩』は、常に訓練を欠かせない。


「あ……ありがとうございます少佐。……あの、見ました?」


「うん? あぁ……下着のことか、見たぞ?」


 顔を赤くして、俯くがすぐに顔を上げて、悪戯っぽく俺に言った。


「えへへ……むらむら、しちゃいました?」


 ……どうやら、自分の評価をして欲しいようだ。

 ふむ、そうだな……


「くまのイラストパンツでなければ、そういう状態になったかもな?

 それでは……エルティナと、たいして変わらん」


「が~ん!?」


 再び、顔から突っ伏す桃魅少尉。……もう起こさんぞ?


「あら、かわいい下着ね?」


 と、言って……つま先で、桃魅少尉の尻をぐりぐりする真桃沙大尉。


 ムセルとのリンクを終えたようだ。

 かなりの量の桃力を、消費したにも関わらず、疲労の色が見えない。

 ……流石だな。


「ひぎぃ!? ら、らめぇ! くまさんに穴があいちゃうっ!」


「たるんでるからよ? でかケツ。

 あとで訓練室で、その尻を小さくしてあげるわ」


 それを聞いた桃魅少尉は「ぬふぅ」と、断末魔の声を上げ力尽きた。

 まったく、世話の掛かるやつだ。


「お疲れさま、シャワーを浴びてくるわ」


「あぁ、ごゆっくり」


 真桃沙大尉が部屋を出ていった後

 俺は桃魅少尉を、仮眠室のベッドに寝かしつけ

 桃大佐の待つ『桃アカデミー総合戦闘指令室』に向かった……

 今後の対策を協議するためである。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ