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食いしん坊エルフ  作者: なっとうごはん
第三章 聖女とミリタナス神聖国
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おまえに、桃先輩を奢ってやろう

「ひゃぁぁぁぁっははぁっ! まさかぁ? そのガラクタ共と

 おまえだけで、この俺とぉ……戦おうとぉ?」


 自分の勝利を確信して疑わないマジェクト。

 確かに、相手の方が実力的に格上だろう。

 おまけに、こちらは主力のルドルフさんと、ザインに、

 とんぺー達までもが、戦闘不能だ。


 だからといって、諦めるかといえば、話は別になる。


 自慢じゃないが……

 俺は往生際が悪く、執念深く、意地でも諦めないからだ!

 しかも俺は、おまえに勝つつもりでいるっ!!


「そのとおりだっ!

 おまえに……『元祖モモガーディアンズ』の力を見せてやるっ!!」


 俺の台詞が終わると同時に、ムセルがヘビィマシガンを乱射しながら

 マジェクトに突っ込んだ!

 同時にイシヅカが『フリースペース』から

 大量の土や木端をぶちまける!

 そして……ツツオウが咆えた!


「にゃ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~んっ!!」


 すまん! やっぱり『鳴いた』だった!(迫力不足)


 ツツオウから、溢れる桃力!

 大量の土と木端を取り込み、猫は獅子へと『進化』した!!

 再び、桃の獅子が戦場に戻ってきたのだ!!


 俺の脳内に「ぐぇ!?」と、カエルの潰れたような声がした。

 ……なんぞ?


『桃先輩……今、カエルの潰れたような声が……』


『行くぞ! 戦闘に集中しろっ!!』


 うん、今は……それどころじゃなかった!

 憶えていたら、後で聞いてみよう。


「いくぞっ! 輝夜っ! 俺に力を貸してくれっ!!」


 俺の右手にいる、輝夜がほんのり桃色に輝き……俺に答えた。

 俺にはまだ……こんなにも、頼もしい仲間が残っている!

 桃先輩だって、こんな俺を見捨てないで、支えてくれている!


「負けられないんだよぉぉぉぉぉっ!!」


 俺は輝夜を振りまくった! ぶんぶん!

 その理由は『戒めの蔓』用の種を、辺り一面にばら撒くためである。


 ここが土のある場所なら『落し穴』で、はめ殺してやるところだが……

 残念ながら、ここは『氷の迷宮』のため、全てが氷で構成されている。

 よって、相手の動きを封じるには『戒めの蔓』しかない。

 

 俺には……マジェクトを倒す策があった。


 でもそれは、ムセルの『裂破桃撃拳』ではない。

 現在のムセルでは、二発目の『裂破桃撃拳』を放つと

 致命的な反動ダメージを貰ってしまう。(致命的な致命傷)


 俺が、マジェクトに使おうとしている攻撃方法とは……


「効かねぇんだよっ! カスがっ!! 『フレイムシャワー』!!」


 うおっ!? 普通の魔法を使ってきやがった!! ……ネタ切れか?


 灼熱の炎は『氷の迷宮』の壁や地面を溶かして……

 こいつ!? 氷の精霊を殺して食ってやがる!!

 そのために、わざと火の魔法を使ったのか!!


『あつい~、あつい~、たすけて~、いたいよ~』


 氷の精霊達の、悲鳴、助けを求める声が……俺には聞こえた。


 この世界の、あらゆる物には精霊が宿っている。

 精霊達は、あらゆる物を作り出し……そこに宿る。

 宿っているものが、壊れたり食べられたりすると

 また時間を掛けて、せっせと作り直して、再び宿る。

 それの繰り返しだそうだ。


 今、この『氷の迷宮』の壁や地面だって

 精霊達が宿って役割を果たしている。


 氷の精霊だから、冷たい氷となって、この世に存在している。

 ただそれだけ、でも……それがないと、この世は何もない世界になる。

 

 火の精霊は、暖かい火を作り出す

 水の精霊は、命を潤す水を作り出す……


 上げれば、きりがない……それほどまでに、尊い存在である精霊を

 こいつ等……鬼は直接、貪り食っているのだ!!


 普通の生き物が、精霊の宿っているものを、食べたり飲んだりしても

 精霊達はぴょこっと、生き物の体から出ていき

 また時間を掛けて、自分の宿るものを作り出す。

 よって、数が減ることはない。


 しかし……鬼が直接、精霊を食べてしまったら、当然……数が減っていく。

 精霊は中々、数が増えないそうだ。

 時間を掛けて、ゆっくりと増えるものらしい。 

 初代の知識と、学校の教科書の知識しかないので

 この程度の知識しかないが……これだけは言える。

 

 精霊を喰らうのは、世界を食い荒らしているのと同意だっ!!

 自然破壊だっ! このままでは、世界は鬼に食い尽されちまうっ!


 よって、悪い鬼は『退治』だっ!!(結論)


「うけろ……新魔法技!! 『バブルスプラッシュ』!!」


 これは、俺の魔法障壁『シャボン玉』に『色々なもの』を

 組み合わせたものだ。

 要は、『シャボン玉』の中に『色々なもの』を入れ、標的に飛ばすものだ。

 

 因みに速度は遅く、ふわふわ飛ぶため……余裕で回避できる。

 しかも、シャボン玉自体は、殺傷力皆無だったりする。(白目)

 今回は攻撃用に、出したわけじゃないからっ!

 違う目的だからっ!


 俺の『バブルスプラッシュ』が、壁に当たり弾けた。

 そして、大量の水が泡から飛び散る!


 俺がシャボン玉に入れたのは水だ。

 料理にもよく使うので『フリースペース』に、大量に保管してある。

 タダで、しかも……簡単に手に入るので一番使いやすい。


『みずだ~、みずだ~、いきかえるわ~』


 溢れ出た水は氷に触れ、しばらくすると固まり氷になった。

 氷の精霊に対する『ヒール』といったところだ。

 勿論、それだけじゃない。

 

 ちゃんと、嫌がらせ用も放っている。

 ただ……到着するまでに、時間が掛かるのが難点だっ!

 ほらほらっ! もっと急いでっ!! ぱたぱた。(うちわ)


 ムセルと交戦中のマジェクトに『バブルスプラッシュ』が到着した。

 丁度、マジェクトの顔辺りを漂っている。


「ちっ! なんだこれは!? 鬱陶しいっ!」


 マジェクトが、シャボン玉を鬱陶しそうに手で払った。

 当然、シャボン玉は割れる。


 ぱちんっ! ぱちぱちんっ!!


「な……!? べっくしょん! ぶえっくしょん!!」


 あほぅがっ!! 掛かりおったわ!!

 ぐへへ……胡椒入りのシャボン玉は効くだろう?

 ちょっと、コストが高いのが難点の、胡椒シャボン玉だ!!

 ……胡椒、もうちょっと、安く手に入らないかしらん?


 この隙を見逃す、ムセル達ではない。

 ムセルは装備している火器を、全てマジェクトに撃ち込んだ!

 弾の全てが、マジェクトに着弾したのを確認して

 ツツオウ達が突撃する!


 ツツオウの背には、巨大な大剣を一本ずつ手に持った

 イシヅカが乗っている。

 決勝で見せた、あの戦法を使うつもりだ!


「ちょ……調子に乗るな……!! ぶえっくしょん!!」


 マジェクトはムセルの攻撃と、胡椒シャボン玉で怯んでいる!

 マジェクトに、ツツオウ達の必殺の、連携攻撃が炸裂したっ!!


「が……!? おのれぇ!! ガラクタごときがっ!!」


 まともに決まったのに、マジェクトは倒れなかった。

 少し……ふら付いているようだが、倒すには至らなかったようだ。

 でも、これはチャンスだ! この好機を逃す手はない!


「輝夜っ!! 『戒めの蔓』!!」


 俺は輝夜に『戒めの蔓』を発動させた!

 無数の丈夫な蔓が、マジェクトを捕らえ拘束する!


「っ!! ふざけるなぁ!!『死苦離霧存』!! くたばれぇ!!」


 マジェクトが、再び防御不能の、反則攻撃を仕掛けてきた!!

 反則だめ! 絶対! 『桃結界陣』発動!!


 俺は一応『桃結界陣』を張るが……やはり貫通してきた!

 なんなんだよ!? これはっ!! ずるいぞっ!!


 俺達は『死苦離霧存』に耐えれず、片膝を付いてしまう。

 意識を……魂を持って行かれないように、歯を食いしばって耐える。

 くそっ! 動きを封じても出せるのか!!


「きひひ……残念だったなぁ? 最後のチャンスだったのによぉ?

 んっん~? 片手が束縛から逃れてしまったぞぉ?

 これは『魔鬼怨束槍』を、使えってことだなぁ?

 しょうがないなぁ、それじゃぁ……使っちゃおうかなぁ?」


 ゲラゲラと笑い『魔鬼怨束槍』を作り出すマジェクト。

 俺達は『死苦離霧存』に耐えるので精一杯だ。


「きひひっ! じゃあな? エルティナちゃん!

 アランには、事故死だって言っておくよぉぉぉぉ!!」


 マジェクトの『魔鬼怨束槍』が放たれた!

 ゆっくりと、近付く死の槍……!!

 なんとかしようと、抵抗するが……状況は変わらない!!

 ちっくしょう! ここまでか!?


 もう眼前まで迫ってきた死の槍! 俺は思わず目を閉じてしまった!


 …………あれ? 衝撃がこない? どういうこと?


 俺は、恐る恐る目を開けた。

 そこには、目を見開き……

 驚愕の表情を、顔に張り付かせたマジェクトの姿があった。


「な………なんなんだ!? おまえは!? 俺の『魔鬼怨束槍』が……!!」


 どういうわけか『魔鬼怨束槍』は、綺麗さっぱり消えていた。

 俺が目を閉じている間に、何かあったようだ。

 気にはなるが……この隙を、逃すわけにはいかないっ!

 動揺して『死苦離霧存』が解けている今しかっ!!


『……桃先輩!

 桃スペシャル「スクリューピーチクラッシャー」を、使おうと思う!』


『以前にも言ったが……桃先生を使った

 桃スペシャル『スクリューピーチクラッシャー』は、桃レベルが……』


 知っている! 今の俺では無理だろう!

 でも……『桃先生』以外ならどうか? たぶんできる。

 いや……できるはずだ、俺と……『桃先輩』なら!!


『桃先輩を使って「スクリューピーチクラッシャー」を放つ!!

 力を貸してくれ! 桃先輩! あいつを……退治してぇ!!』


『エルティナ……』


 桃先輩は少し考えて……意を決したように言った。


『わかった……おまえの桃スペシャルを「解禁」する。

 解禁する以上、これからは厳しい修業が課せられる。

 覚悟は……いいな?」


『応! ばっちこい! ……だぜっ!』


 決意の返事を、桃先輩に返す。

 そして、俺の頭に『スクリューピーチクラッシャー』の知識が流れてきた。


 桃スペシャル其の一『スクリューピーチクラッシャー』


 全ての桃スペシャルの基本。

 桃の依代に、桃力を込め邪悪なる者にぶつける。

 使用者と、桃の依代の主との力で威力は決まる。

 互いの絆が深ければ、深いほど威力は高まる。

 使用には、承認が一人必要。


『桃大佐! 「スクリューピーチクラッシャー」の使用許可を!』


 桃先輩が桃大佐に、使用要請を送った!!

 脳内に桃大佐の、渋い声が聞こえてきた。


『うむ……「スクリューピーチクラッシャー」発動、承認っ!!」


 ……きたっ! 承認きたっ!! これで勝つるっ!!


『オートアクション・サポートシステム起動!

 いくぞ! エルティナ! 「身魂分離しんこんぶんり」!!』


「おいでませっ! 桃先輩っ!!」


 俺の手の中に光が集まり……未熟な桃が姿を現した!

 その桃を天に掲げ、ありったけの桃力を注ぎ込む!!

 桃色のまばゆい光を纏い、力強いオーラを放つ桃先輩!


「な……なんだ!? その桃は!?」


 マジェクトが、圧倒的な『陽の力』を放つ桃先輩を見て

 竦み、怯え、震える声で言った。


「マジェクト、この桃はおまえを、輪廻の輪に帰す桃だ。

 おまえの行った悪行……決して許されるものではないぞっ!!

 桃は熟したっ! 今こそ桃スペシャル其の一!

『スクリューピーチクラッシャー』を放つときだっ!!」


「応っ!! いっけぇぇぇぇぇぇぇぇっ!!

 スクリュゥゥピィィィチィィィ……クラッシャァァァァァァッ!!」


 俺の右足が天高く上がり、地面に向けて振り下ろされる!

 そして桃先輩を、その勢いのままに、マジェクトに投げつけた!

 桃先輩は真っ直ぐにマジェクトに向かっていく!


 これは、桃先輩が作動させたオートアクション・サポートシステムの

 お陰である。

 自力じゃ、桃先輩がどこに飛んでいくか、わかったものじゃない。


「ひっ!? く……くるなぁぁぁぁ!!」


 怯えるマジェクト。

 鬼にとって、桃は恐怖の対象であり、唯一……自分達を滅ぼす存在。

 一撃必殺の威力を秘めた桃先輩が、自分に向かってきているのだ。

 そりゃぁ、おっかないだろうなぁ? でも、自業自得だ諦めろ。


 もがいて逃れようとするが『戒めの蔓』からは逃れられない!

 いいぞ! がんばれ輝夜っ!

 よしっ! ここで決め台詞だっ!!


「マジェクト、おまえに……桃先輩を奢ってやろう」


 俺の台詞が言い終わると同時に、桃先輩がマジェクトの顔面に炸裂した!!

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