ソウルリンク
『リンク接続……オールグリーン……リンクスタート!
こちら桃先輩だ! モモガーディアンズのメンバー諸君と
ソウルリンクを行った! これより作戦指示は
魂会話にて行う!』
『了解しました、桃先輩。
指示を、よろしくお願いします』
『こ……これは「てれぱす」とは、違うでござるか?』
ルドルフさんは、もう慣れたって感じだ。
竜巻の一件で長時間、桃先輩と一緒に、こみどり達と戦ったからだろう。
ザインの方は、少し戸惑っている様子だ。
こればっかりは、仕方がない……慣れておくれ。
俺と桃先輩と、付き合っていくなら、こういう急展開は日常茶飯事だ。
図太い神経じゃないと、やってけんぞぉ!?
『ところで桃先輩「ソウルリンク」って
俺と桃先輩の「身魂融合」と効果が違うのか?』
『違うな、俺とおまえが『一心同体』になるのが身魂融合……
ソウル・フュージョン・リンクシステムだ。
本当の「身魂融合」とは少々違うが……これは追々、説明していく』
そうなのか~、なんか難しいシステムが使われていてビックリだ。
こう、もっと古めかしい儀式や、秘術っぽいものかと思っていたが
結構ハイテクなんだな?
『「ソウルリンク」は、おまえが親機となり
子機である「モモガーディアンズ」のメンバーの魂と
繋がることができるシステムだ。
主な能力はメンバーとの魂会話「ソウルリンクトーク」
子機メンバーの生命力、魔力、能力を数値化して見ることができる
魂数値「ソウルステータス」だ』
ふむふむ、要はリアルオンラインゲームみたいな状態か?
ボイスチャットで、チームプレイとか……そんな感じの。
いや、親機ってことは室内電話か? わからん!
『そして……最大の特徴が、おまえとリンクすることによって
子機メンバーが、常時「桃の加護」を付加された状態になるということだ。
おまえは常に、自分を含めたメンバーの魂数値と
桃力の残量を把握しながら行動する必要がある。
メンバーの指示は俺が執る、管理はエルティナに任せたぞ!』
『任された! ばっちり管理するぞ~!!』
……と、いうことは、俺の魂数値……即ちステータスが見れるっぽい!?
うへへ、見てみるかっ! 今まで見れなかった秘密のステータスをよぅ!
俺は自分の魂数値を呼び出す。
脳内映像とでも言えようか? 半透明の四角い画面が浮かび上がった。
そこに書かれた情報とは……
◆えるちん◆
いもいもいも。いも? いも、いもいも……
いも~? いももっ! いもいも!
……まさかの、いもいも文字であった。
まったく読めねぇぞっ!?
『桃先輩、何かコメントを』
『ふむ「月の子」を取り込んでシステムに、エラーが出ているようだな?
他のメンバーはどうだ?』
えっと、取り敢えずルドルフさんのを……
◆ルドルフ◆ レベル23 魂 90
生命力2500 魔力80 攻撃値 75 防御値 120
状態 桃の加護
『……なんで俺だけ?』
『わからん、おまえの身魂融合が、かなり特殊な部類だから
システムに、なんらかの影響が出ているのかもしれん。
まぁ、気にするな……何時ものことじゃないか?』
そう言って、愉快そうに笑う桃先輩。
ようやく、わかるかと思ったのに……しょんぼり。
そう、こうしてる内に、親フェンリルが立ち上がった。
俺達に、敵意をむき出しにした目を、投げかけている!
『まずは、フェンリルを弱らせる。殺さないように注意してくれ。
アタッカーは、ムセル、とんぺー、ぶちまる……そしてザイン、君だ』
『し、承知でござる!』
ザイン……少し力が、入り過ぎだけど大丈夫かな?
『ルドルフとイシヅカは、エルティナを守ってやってくれ!
残りのメンバーは遊撃を! ……来るぞっ! 戦闘開始だっ!!』
低い唸り声を上げていたフェンリルが、俺目がけて飛びかかってきた!
俺とフェンリルの間に、ルドルフさんが割って入る!
「ヘビーガード!」
ルドルフさんは、重騎士の割に小柄だ。
鎧を含めても、三メートルは超えるフェンリルの突撃に、耐えれる
重量はないように思える。
しかし、彼は耐えた。フェンリルの突撃を盾で防いだのだ。
かなりの衝撃だったが、防いだ位置から一歩も後ろに
下がることはなかった。
これが、ルドルフさんが使った『ヘビーガード』の効果なのだろう。
流石、我等の盾役! 惚れ惚れしてしまう!
しかし、衝撃によるダメージは受けているようで
生命力が……半分減ってる!? マジかよっ!?
「うおぉぉ!? 『ヒール』!!」
ルドルフさんの生命力が全快した。
衝撃だけであれだと、直撃したら……うわぁ、想像したくねぇ!
『隙ができたぞ! 攻撃っ!!』
桃先輩の指示が飛ぶ!
ムセルがヘビィマシガンを乱れ撃ち、とんぺー、ぶちまるが
フェンリルの前足と後ろ足にかみ付く!
「いぇあぁぁぁぁぁぁっ!!」
ザインが抜刀し、フェンリルの肩に目がけて、上段から振り下ろした!
……が、その刀はむなしく空を切った結果に終わった。
とんぺーと、ぶちまるに足を抑えられた状態で
フェンリルはザインの攻撃を、余裕で回避したのだ。
『早い……! 動きを封じなければ、まともに攻撃が当たらんぞ!?』
桃先輩も驚く速度!
余りの速度に足を抑えていた、とんぺーと、ぶちまるも
ふっ飛ばされている。
このままじゃ、じり貧の上に時間がなくなる!
俺に、できることはないか!?
「にゃーん!」
ん? ツツオウ、どうした……? 何? もっと桃力をくれって?
んもぅ、君は贅沢だなぁ?
俺はツツオウに桃力を、がっつりと注ぎ込んだ。
ぷるぷる震え出すツツオウ。
「にゃーーーーーーーーーーーーーーん!!」
頭のタンポポが、ピンと立ち……ツツオウの十個のたてがみが
縦横無尽に宙を飛び回る! ツツオウの遠隔操作砲台だ!
軌道が全く読めない砲台から、桃色の光線が放たれる!
その攻撃にたじろぐフェンリル!
あれ? ツツオウって玩具のゴーレムだから
そこまで威力は、なかったんじゃないっけ?
『ふむ、中々いい威力だ。
安心しろ……威力調整は、桃魅少尉が管理している。
彼女はイシヅカと、ツツオウの桃先輩だ。
彼等も、竜巻の一件で「桃の守護者」に昇格したのだ』
何時の間にか出世していた! 侮れねぇな!? このコンビ!
更に、ムセルのヘビィマシガンと、六連ミサイルポッドが火を噴く!
いけいけ! 蜂の巣にして差し上げろ!!(暗黒微笑)
フェンリルの動きが止まっている! チャンスだ!
「畳みかけるでござる! いざっ! いざ、いざ、いざぁっ!!」
再び、フェンリルに切りかかるザイン。
そして……その刀は、遂にフェンリルを捕らえた!
肩から飛び散る鮮血! フェンリルは、悲鳴を上げて倒れ込んだ!
『今だっ! エルティナ! 輝夜を構えろっ!』
「え? お、応っ!!」
俺は桃先輩に、言われたとおりに輝夜を構えた。しゃきーん!
『輝夜の、技の知識を転送する! それをフェンリルに!』
俺の脳内に、輝夜の技の知識が転送されてきた!
なるほど! これは、フェンリルに、こうかばつぐんだ!
「いくぞっ! 輝夜!」
俺はフェンリル目がけて、輝夜を振った。
振られた輝夜から、何か粒みたいな物が飛び出て
フェンリルと地面にくっ付いた。
よし、これで準備完了だ。
「まだ、動くでござるかっ!?」
ゆっくりと、立ち上がろうとしているフェンリル!
おいおい! まだ、ゆっくりしていけよっ!
「そうはさせん! 『戒めの蔓』!!
ゆ~っくりしていってねっ!」
俺は桃力を、輝夜に注ぎ込み、技を発動させた!
輝夜から放たれた粒は『種』だ。
これは『戒めの蔓』用の種で、輝夜の意思で自由に操ることができる。
『戒めの蔓』は、ちょっとやそっとでは、傷付かないし千切れない。
しかも、燃えにくいらしい。パネぇ。
尚且つ、石だろうと氷だろうと根を生やして成長する有り様。
生命力高過ぎぃ!!
『戒めの蔓』に絡め取られたフェンリル。
今がチャンスだ! と、思った矢先……
フェンリルがこちらを向き、思いっきり息を吸い込んだ。
まさかっ!? 輝く息か!!
……しまった!? ルドルフさんと距離があいている! 動き過ぎた!
これは、援護防御が期待できない、どうする……!?
「エルティナ!」
ルドルフさんが、急いでこっちに向かってくるが……
無情にも、フェンリルの輝く息は放たれた!
……真上に!
「イシヅカ!?」
イシヅカが釣竿で、フェンリルの鼻の穴を
釣って上を向かせたのだ。(痛そう)
ナイス、ファインプレイ!!
特別にその「どやぁ……?」は、許してやろう!(尊大)
『強力な一撃を! できれば属性を考慮し雷属性がいい!』
『拙者に、お任せあれっ!』
桃先輩の指示に応えたザインは、何故か刀を鞘に納め……
そして、今度は鞘ごと、刀を上段に構えた。
その鞘は……鞘というよりは刃であった。
むしろ、刀を収納している状態が、本来の姿ではないかと錯覚するほどに。
雷を連想させるその形に、今度は本物の雷が纏わり付いてきた。
やがて、白く輝きバチバチと、音さえするようになる。
「奥義! 『雷光斬』! ちぇすとぉぉぉぉぉぉっ!!」
雷を纏った一撃が、フェンリルに直撃する!
フェンリルはビクンビクンと震え
体のあちこちから焦げた臭いを放っている。
丈夫な『戒めの蔓』をバラバラにしてしまうほどの
強烈な一撃だった。
しかし、代償も大きいようだ。
ぜえぜえと、肩で息をしているザイン。
魂数値の生命力と魔力が、全快時の三分の一になってしまっている。
まさに諸刃の刃だ。ムチャシヤガッテ……
『真桃沙大尉! ソウル・パイルバンカーは!?』
『必要桃力のチャージ終了。何時でもどうぞ』
頭に低く落ち着いた女性の声。
きっとクールビューティーなお姉様に違いない!
『イシヅカ! ソウル・パイルバンカー! 用意!』
イシヅカがフリースペース、赤褌から太くて長いものを……
映像的にアウトだろ! これ!? いやん! えっち!!
それは、巨大なパイルバンカーだった。ホビーゴーレム基準だが……
ムセルに、合わせているのだろう、基本色は緑色だ。
特徴的なのが……突起部分が『桃力』によって、精製された物だった。
よって、突起部分の色は淡い桃色だ。
これで『鬼の種』を、ぶっ壊そうってわけかっ!
『ムセル! ソウル・パイルバンカー、ドッキング!
桃夜少佐の権限において、使用承認!
「鬼の種」は、フェンリルの額部分だっ!』
『了解、ムセル、ドッキング完了。
ソウル・パイルバンカーエネルギー充填完了。
ムセル……何時でもどうぞ』
ソウル・パイルバンカーを、右腕に装備したムセルが宙を駆ける!
狙いは……フェンリルの額だっ!
ムセルは、ソウル・パイルバンカーを、フェンリルの額に押し付け……
『ターゲットロック、ファイア』
真桃沙大尉のクールボイスと共に
撃ち込まれたソウル・パイルバンカーは
フェンリルの額にある『鬼の種』を貫いたのだった!