表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
食いしん坊エルフ  作者: なっとうごはん
第二章 身魂融合 命を受け継ぐ者
130/800

フィリミシアへ急げ!

「こんなもんでいいのか? 桃先輩」


「あぁ、上出来だ。これで、竜巻の足止めが、できるだろう」


 俺は桃先輩の指示どおり、竜巻の足止めをしてくれる魔法使い隊と

 その足となる騎馬隊に再び『桃の加護』を付与する。

 これで、こみどり達の『憎しみの光』に、ある程度耐えれるだろう。


 まったくもって『憎しみの光』は厄介である。

 どんなに、厚い鎧を着こんでも、貫通してしまうのだから。

 まぁ、実際には……物凄い速度で鎧を『食べられている』のだが……


 そこで『桃の加護』を付与すると、あら不思議!?

 鎧が、食べられなくなるではありませんか!

 でも……ガンガン攻撃を受けたら引っぺがされてしまうから

 なるべく攻撃は避けて欲しい。


 鎧を着てたらだいたい十回は耐えれるっぽい。

 服やローブなら三回と言ったところか?

 そうそう! 盾はなんと十五回も耐えてくれる!

 流石、盾は格が違った!(確信)


 何故鎧によって回数が違うのかは謎である。

 桃先輩に聞いたら「いまはそれどころではない」と言われた。

 確かに……今聞くことじゃないな。


「聖女様、これで大丈夫なのかい?

 大丈夫ならすぐにでも足止めに向かうが……」


 グロリア将軍が、早く出撃したいのか確認をとってきた。

 先程の攻撃時は将軍用の豪華な服を着こんでいたが

 今は重鎧をガッチリ着こんでいる。


 ……重鎧なのに、おっぱいやお尻が丸見えなのは、どうだろうか?

 おへそも見えている……エロイ!


「おぅ、これなら作戦終了まで持つらしいぜ! すぐに出発してくれ!」


「そうか! ありがたいねぇ! ……うぉし! おまえ等! 出陣だ!

 気合入れていけっ!!」


「おぉぉぉぉぉっ!」と、勇ましい声を上げて次々に出発する

 魔法使いと騎士のコンビ。

 どうか、がんばってほしい。

 そして……生きて帰ってきて欲しいものだ。

 そのためには、俺達もがんばらねばならんのだが。


「じゃぁ、行ってくる! そっちの作戦が成功することを祈る!」


 そう言い残して、逞しい黒い馬に乗って

 颯爽と戦場に向かうグロリア将軍。


「そっちは任せるぞエルティナ。こっちは俺達がなんとかする」


 スラストさん、ビビッド兄達がそのまま残って攻撃隊を支援するようだ。

 少し不安ではあるが……信じるしかないな!

 特にビビッド兄は、おっちょこちょいだから心配だぁ……

 それに、新人君が一人混じってるし何もないことを祈る。


「わかった! 皆……気を付けてくれ!」


 俺に見送られて、スラストさん達ヒーラー部隊も出発した。

 うぉ!? ビビッド兄……馬乗れたのか!? 意外だった。


 ビビッド兄の、隠れた才能を垣間見た俺であった……


「よし……俺達も急いで本陣に戻ろう!」


 尚、アルのおっさんは竜巻用に完成させた上級攻撃土魔法『アースヘブン』を

 泣く泣く解除し……同じく上級拘束土魔法『ガイアチェイン』を構築中である。

 アルのおっさんは泣いていい。……と、いうか泣いていた。


 俺達は強さを増す風に、一抹の不安を覚えながら本陣へと転移した。


 ◆◆◆


「倒せぬ相手ではない! 相手の動きをよく見て立ち回るのだ!」


 突如現れた不気味な……黒い小さなホビーゴーレム達。

 わしは、こ奴等を知っている。

 グランドゴーレムマスターズ決勝でエルティナ達が戦った

 ホビーゴーレムが生みだした眷属達だ。


「口から放たれる光線には、当たるでないぞっ!?」


 しかし……こ奴等は、本体であった『鬼』と

 共に滅びたのではなかったのか?


「陛下! 御下がりください! ここは我々が!」


「フウタ男爵! わしとて戦士の端くれじゃ! 心配無用!」


 本陣は、攻撃隊に兵を多く廻したせいで、手薄になっていた。

 まさか……このような事態になろうとは!

 わしの『フューチャーアイ』も、年老いて効果を発揮できないでいる。

 せめて、あと十歳若ければ……!


「きゃあっ!?」


「!? いかん! あのヒーラーの娘を守るのだ!」


 新人ヒーラーが、足をもつれさせて転倒してしまった!

 ヒーラーは国の宝……守らねばならぬ!


 鬼の眷属が口を開けた。

 あの光線をヒーラーの娘に撃ち込むつもりだろう。

 ……ぐっ! 遠い! ここからでは誰も届かぬ!


 鬼の眷属の口に溜まったおぞましい光が放たれようとした……

 その瞬間! 光が爆ぜた!


「なんと!? これはっ!!」


『テレポーター』の門から、大量の弾丸が鬼の眷属達に撃ち込まれた!

 弾丸が発射されたと、思わしき場所に立っていたのは……

 ムセルと言うホビーゴーレムだった。


「おぉ……そなたは!」


 わしの言葉が言い終わる前にムセルは飛び出していた。

 ホビーゴーレムとは思えないような速度で地面を滑るように移動し

 鬼の眷属共を討ち果たしていく。


 それに加わるのは、イシヅカとツツオウというホビーゴーレム。

 この三体のホビーゴーレム達が『鬼』を倒した英雄である。


「王様~! 無事か~!?」


 そこに我が国の至宝、聖女エルティナが駆けつけてきた。

 実際には、ルドルフにおぶさっている状態じゃが……

 ルドルフ……うらやましいやつめ!


「うぉん!」「がるるる……」


 エルティナに付いてきた犬二匹も、鬼の眷属相手に戦っておる!

 しかも、我が兵よりも強いではないか……

 いくら新兵達でも、この差はいかんのぉ。


 やはり……『魔族戦争』の痛手は大きかったわい。

 名だたる武将達が、帰らぬ者となったからのぅ。

 グロリア……そなたの父が討ち死にせなんだら

 このようなことを、させずに済んだものを……許せ。


「わしは無事じゃ! フウタ男爵が、早々に駆けつけてくれたお陰じゃ!」


 わしの言葉に、安堵するエルティナ。

 おぅおぅ! そんなにわしのことを心配して……

 場所と事態がこんなものでなければ、抱きしめてスリスリしてやるものを!

 口惜しいわいっ!


「王様っ! フィリミシアにも、こみどり達が出てるんだ!

 俺達はフィリミシアに行くよっ!」


「うむ! 詳細はフウタ男爵に聞き及んでおる!

 ラングステンを救えるのはそなただけじゃ……この国を

 いや、ラングステンに住む民を、どうか救ってくれまいか!」


 わしの頼み……いや、願いにエルティナは「任された!」と

 元気いっぱいに返事をしてくれおった。


 こんな年端もいかぬ少女に、国の未来を背負わせねばならぬとは……

 なんと情けない大人じゃろうか?

 じゃが……それでも、フィリミシアのため……

 ラングステンを守るためには、聖女エルティナの力が必要不可欠じゃ!


「頼んだぞっ! 聖女エルティナ!

 勇者タカアキ! ルドルフ! わかっていような!?」


 わしの言葉に臆することなく、二人は「お任せを」と言ってくれた。

 よき臣下に巡り会ったものだ。

 古き猛者達はこの世を去ったが……新しき勇者達も育ちつつある。

 で……あるならば、この苦境……なんとしても乗り越えねばならぬ!


「皆の者! 聖女エルティナが奇跡を起こすまで決して倒れてはならぬ!

 よいな!? 生きてフィリミシアに帰るのだ!」


 わしの言葉に、恐怖で心が折れかかっていた新兵達が反応する。

 そうじゃ! 皆で帰るのだ! 我等のフィリミシアに!


 風に乗って、鬼の眷属達は次々とやってくる。

 竜巻を倒すしか、鬼の眷属達を止める術はなさそうじゃ。

 ますます強くなる風、体を打ち付ける雨。

 きつい戦いになりそうじゃの……

 わしは鬼の眷属を剣で切り捨て、次の獲物に向かって行った。


 ◆◆◆


「いやいや! 王様が戦ったらダメでしょっ!?」


 強いのはわかるけど、死んだら一番ダメな人が突っ込むのはおかしい。

 いくら『桃の加護』を付与しているとはいえ

 俺がフィリミシアに行ったら、再付与できなくなるんだぞ!?


「親衛隊の皆さん! 王様をヨロシク!

 とんぺー、ぶちまる! 王様を守ってくれ! 頼む!」


「わんっ!」「おんっ!」


 俺は二匹に、王様のガードを頼んだ。

 この二匹なら、こみどり相手でも引けは取らないだろう。

 正直、強くて……びっくらこいた。ただの野良わんこじゃなかった。


「エルティナ様! ここは我々が残ります!

 攻撃隊に残ったスラスト先輩の分までやってみせますよ!」


 流石、ヒュースさん! 頼りになるぅ!

 復帰組や、少し頼りない若手ヒーラーも、やる気満々だ!

 頼んだよっ! みんなっ!


「エルティナ! 『桃の加護』を再付与だ!

 その後『神桃の芽』がある場所に向かうぞ!」


 俺はこの場にいる全員に『桃の加護』を付与する。

 魂痛を経て、俺の桃力は格段に上がっているようだった。

 これだけ『桃の加護』を付与しても、まだまだいけそうだった。


「よし……! これで大丈夫だ! 行こう! タカアキ! ルドルフさん!

 ムセル! イシヅカ! ツツオウ! いくぞ!」


 俺達はフィリミシアに転送される、テレポーターの門に向かった。

 正直……俺は少し焦っていた。……嫌な胸騒ぎがするのだ。

 というか、確信に近いものがあった。

 

 フィリミシアの防衛に当たっている

 パパン達部隊には……『桃の加護』がない。

 よって『憎しみの光』が防げないのだ! あばば……やばい、やばい!!


「今いくぞっ! フィリミシアッ!」


 午前十一時五分 フィリミシアへ転移……


 ◆◆◆


「こ……これは!?」


 フィリミシアに着いた俺達の目に入った光景は……酷いものだった。

 地面に倒れている血まみれの兵士。

 穴だらけになった冒険者。頭がない……市民達。

 

「くそっ! 覚悟してたけど……想像以上の被害だ!」


 遠くで爆発音がした! あそこは確か……フィリミシア中央公園だ!

 誰かが戦っているんだ! 急がなくてはっ!!


「タカアキ! フィリミシア中央公園だ! 頼めるか!?」


「無論だ、我が友エルティナよ! さぁ、行こう!」


 再びタカアキは俺を持ち上げる。

 ……勿論、ルドルフさんごとである。パワー半端ねぇな!?

 ルドルフさん重鎧着こんでるんだが? 

 ……どうなってんだ!? 


「ふふふ……ルドルフ君越しに、幼女のパワーが私に宿る……!」


 ……ナニソレコワイ。


 なんかのスキルか?

 まぁ、今はそんなことは、どうでもいい!

 早く助けに向かわなくては!


「はいよ~! タカアキ号っ! 風のごとく走れ~!」


「ぶっひひ~ん!」


 そう言って、物凄いスピードで走り出すタカアキ!

 ……間に合ってくれ!


 俺達は一路、フィリミシア中央公園を目指す。

 果たして……そこには誰がいるのだろうか?


「パパン……無事でいてくれ……!」


 俺の言葉は、強さを増す風に、かき消されたのだった……

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ