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食いしん坊エルフ  作者: なっとうごはん
第一章 珍獣と聖女と仲間達
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13食目 転生者

俺はフウタ・エルタニア・ユウギ。


俺には……他の人間が持っていない前世の記憶がある。

いわゆる転生者というヤツだ。


俺はこの世界とは違う世界から、女神の導きによってやってきた。

女神の名はマイアス。


乳白色の美しい髪に、見事としか言いようのない顔のパーツ達。

極上のボディ、そして見る者を安心させる優しい笑顔。


マイアスによると、俺は二十年の短い人生を事故で終えたそうだ。

死因は頭上に花瓶が落ちてきた……とのこと。


呆気無いな、とは思ったが死んだのだから仕方がない。

と、あっけらかんと言ったが女神は困り顔で笑っていた。


「貴方には二つの道が残されています」


一つはこのまま輪廻の輪に帰ること。もう一つは……


「異世界に転生?」


「そうです」とマイアスは言った。


「現在、この世界の人間の数が異常に増えすぎており、

 世界がパンク寸前なのは知っていると思います」


確かに、人口の増加による環境汚染、森林伐採によるオゾン層の破壊等。

人間によって引き起こっている悪影響は計り知れない。


「そこで……この世界の人間を異世界に移住させてしまおう、と言う意見が

 神様会議で提案されまして、現在積極的に移住させてると言うわけです」


勿論、死後ですがと付け加える。

「現在、日本の人口が減っているのはその為か?」と、聞くと

「その通りです」と言われた。

なんでも日本人は、他の国に比べると異世界移住率が高いらしい。

皆、ライトノベルとか見てる人が増えたしな……

そういうのが好きなヤツらが多そうだ。


「どうでしょう? 貴方はどちらを選びますか?」


俺は迷わず移住を選んだ。こんな面白そうな事逃す手はない。

気になることもあるが、短すぎる人生をもう一度やり直せるのだ。


「気になることがありそうですね? 

 これから、大まかなことを説明するので覚えてくださいね?」


まぁ……直接頭に入れちゃいますが。と続けた。

俺の頭に優しく手を置くと、凄い量の知識が俺の頭に入ってきた。


「こ……これはっ!?」


「これから行く世界、カーンテヒルの情報です。因みに管理者は私です」


と、にっこり告げた。


「尚、ささやかなプレゼントとして素質をオールSにしておきました。

 向こうで無双してもいいですし、静かに生きてもらっても構いません」


いきなりの爆弾発言である。


「それってまずいんじゃ?」と言ったが

「とっても騒がしい世界なので丁度いいくらいです」

とか言われた。いいのかよっ!?


尚、記憶も残しておきますので知識を上手に使いなさい。とのこと。


「では、そろそろカーンテヒルに送ります。良い人生を……」


と、言う声を最後に俺は意識を手放した。


◆◆◆


次に目を覚ました時、俺は赤ん坊だった。両親は道具屋を営む普通の夫婦。

それなりに裕福だった家のお陰で、俺はスクスクと成長していった。


十歳になる頃、俺は一歳から始めていた魔法訓練と

体力作りの中で編み出した剣術で、同年代のヤツ等には

俺に敵う者がいなくなっていた。そこで俺は冒険者になることにした。

強いヤツ等や、モンスターと戦いどこまでやれるか確かめたかったのだ。


両親に冒険者になると伝えた。

両親は「お前の好きなようにしなさい」と言い、俺を抱きしめてくれた。

目頭が熱くなった。


そして十五歳の誕生日を迎えた朝。

俺は生まれ育った村を出て王都フィリミシアに向かった。

冒険者ギルドに登録するためである。

十五歳になれば成人として扱われ晴れて登録できるようになる。


無事に王都に着きギルドに登録した俺は、早速依頼を受けていった。

やがてランクがDに、ランクアップしたころ。

依頼の掲示板にハンティングベアー討伐が貼り出された。


そのころの俺は、非公式ではあったが既にランクAの扱いで、

高難度依頼を何件か片付けていた。

このハンティングベアー討伐を完遂すれば、ランクCに上がるのは

確定だろうと踏んだ。


その臨時パーティーで、エレノアに出会った。

当時、彼女は美しい金髪を短くしており後ろ髪などは刈り上げていた。

ベリーショートカットである。


今でこそ、見る目が困るほどのナイスバディだが、

当時はほっそりとした体躯だった。

どうしてあそこまで育ったのかは……いまだに不明である。


紆余曲折あったが、無事に依頼を終えランクもCに上がる。

その後からか……エレノアと組むようになったのは。


やがて依頼をこなしてる内に、ランクもBに上がり仲間も増えていった。


戦士のエミル・リーンド。人間。

彼女はピンク色の髪を団子状にし頭に纏めている。

発達した筋肉を持っており腹筋も割れている。

しかし、女性らしい部分はとても豊かであり正に女戦士という出で立ちだ。

因みに童顔である。


盗賊のウィッタ・ミミル。獣人。

彼女は狼の獣人で銀色の体毛に肩で切りそろえた髪。

前髪も綺麗に切り揃えられている、要はおかっぱだ。

体型は残念な…もとい、余計な肉が無い靭やかな体である。

女性らしく可愛い物に眼がないらしく身に着けている物も

性能よりも可愛らしさを重視しているようだ。


最後に魔法使いのロリエッテ・スミス。人間。

彼女は没落貴族の娘で物心着くころには、既に家が没落していたらしい。

それ相応に礼儀作法は学ばされたが、全く使わないので

錆び付いているとか。

紫色のロングストレートの綺麗な髪に、大きなリボンがトレードマーク。

体型は可も無く不可も無く、バランスの取れた理想的なスタイルだ。

器量も良く、没落さえしてなければ引く手あまたであっただろう。


以上が増えた仲間だ。

パーティーに加わるまでは色々あったがその分結束は固く

困難な依頼も抜群のチームワークで解決していった。


それから三年も経った時、ギルドのクエストにドラゴン退治の依頼が上がった。


怒竜。ガルンドラゴンという竜の二つ名。

体長八メートルの巨体に恐るべき筋力とスピードを兼ね備えた

陸の覇者とも言われる竜である。


ブレスなどの特殊な攻撃はしないが咆哮一つで

近距離の人間をショック死させるほどの威力を持つらしい。

それが餌を求め、王都付近まで山から降りてきたそうだ。


最近俺達は活躍しすぎたのか、碌でもない貴族に眼を付けられていた。

あまり目立つと面倒なことになるので、極力高難易度のクエストは

控えていたのだが流石に拠点である王都を、守らないわけには行かないので

仕方なく討伐に参加した。


総勢百五十人にも及ぶ、大部隊になった。流石ドラゴン討伐の依頼だ。

勿論、軍隊も討伐失敗を懸念して後方に控えている。


俺達は討伐に出発した。

結果は竜は倒したものの……生き残ったのは俺達パーティーを含め

たったの十五人だけだった。よく倒せたものである。


竜が吠えれば、その声の衝撃だけで二十人は死んだ。

近くにいた者など体が爆ぜて死んだほどの威力だ。


尻尾を薙ぎ払えば、十人は叩き殺された。

びっちり敷き詰められた、鋭利な歯で噛まれれば勿論即死する。


黄金に輝く鱗は並の武器では傷ひとつ付かない。

その圧倒的な身体能力は八メートルはあるその巨体を俊敏に動かした。


圧倒的……! 本当に圧倒的だった! 生まれて初めて俺は死の恐怖を感じた。


その結果……たった一匹のために百三十五人死んだ。

皆、Aランク以上の冒険者だったにもかかわらず。


俺達は残りの冒険者に手柄を譲り、その場を立ち去ろうとしたが

思わぬ所で横槍が入った。俺達を目の敵にしている貴族達だ。

結果、俺は男爵に封じられ自由に行動できなくなった。


その後は……かなりゴタゴタした。

名前だけの男爵なら今までどおり、のんびりと冒険者として活動できた。

しかし、国王陛下は貴族達の進言どおり、俺を土地付きの男爵に封じた。


エルタニアは首都フィリミシアの南西に位置する広大な山岳地帯で、

何人もの貴族達が開拓を試み挫折した土地であった。

俺はそこの領主にさせられたのだ。

明らかにあの貴族の嫌がらせであることは明白だった。


そこで俺は、エルタニアを意地でも開拓して

ヤツの鼻を明かしてやると決めたのだ。


開拓には大勢の友人達が力を貸してくれた。

その結果……エルタニアは俺達の力で無事に開拓された。

後日、開拓の成功を国王陛下に報告し、褒美に辺境伯の位を

与えられそうになったが、俺は慌てて保留にしてくれと願い出た。

これ以上の厄介ごとはごめんだったからだ。


その結果、国王陛下に「そなたの優秀な能力は残さねばな」と仰い、

俺は後継を作らなければならなくなり、そのことを仲間に伝えると……

自分こそが正室と競い合う彼女達で凄いことになった。


そんな中……エレノアは司祭の資格を取る、と言って俺の傍から離れていった。

俺は思い切ってプロポーズしたのだが、丁重にお断りされたのだ。

かなりショックだった。


こんなことにならなければ……二十歳になった暁にはプロポーズして、

故郷の両親に紹介しようと思っていた矢先の出来事だった。


やがて争奪戦は、ロリエッテが制し正妻の座を勝ち取った。

そして一年後……俺は父親になった。


それからしばらくの間……穏やかな日々が続いたが、

突如『魔王降臨』の報が届く。世は混沌とし始めた。


それからしばらくして、遂に魔族との全面戦争に発展した。


……しかし、何故か俺は待機の命令を出された。

あの連中の仕業だと察したが……これだから貴族は面倒臭い。


やがて戦争は膠着状態になり負傷者が続出した。

そんな折、王都に聖女が降臨したとの情報が入った。


それから三ヶ月後……遂に勇者召喚の儀が整った。

ついては、各諸侯は召喚の儀に参加するべし……とのことだ。

俺は久しぶりに王都に足を運んだ。


早めに王都に着いたので、噂の聖女様に挨拶でもしようと

治療施設に向かうことにする。


そこで、偶然にもエレノアに再会した。


彼女は相変わらず綺麗だった。別れた時と……それ以上に魅力的になっていた。

聞けば彼女は聖女様の指導員になっているらしい。

肝心の聖女様と言えば…エレノアのスカートの端を、ギュッと握って

俺を睨んでいる。その「ふきゅん」は口癖なのだろうか?


聖女様はなんと、白エルフの子供であった。

俺もこの世界に転生して二十年以上生きているが初めて見る。


とても美しいプラチナブロンドに透き通るような白い肌。

大きく長い耳は少し垂れていている。可愛らしい顔は非常に整っている。

歳の頃はうちの子供達と同じくらいだろうか? とても小さいな。

ふむ、とても将来が楽しみな少女だ。


しばらくエレノアと会話していたのだが、

突然ぐぅ~~~~~~と、腹の虫が鳴く音がした。

聖女様の腹の虫だ。なるほど、それで機嫌が悪かったのか。


その音でその場は解散となり、すれ違いざまにエレノアの耳元で

「例の貴族には気をつけろ」と注意をしてその場を後にした。


明日は勇者召喚の儀だ。

何が起こるかわからない、最悪……勇者と戦うはめにもなりかねない。

十分に気を付けていこう。

俺は愛刀を握りしめ、今晩世話になるエティル男爵の屋敷に向かった。

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― 新着の感想 ―
[気になる点] 物語には全く関係のないことですが、以下の部分について。 --確かに、人口の増加による環境汚染、森林伐採によるオゾン層の破壊等。-- 森林伐採とオゾン層の破壊には因果関係はないかと。…
[一言]  ふきゅん、可愛いと思いますよ?中身おっさんですがw
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