グロリア将軍
「うおぉ……また一段と風が強いんだぜ」
「竜巻が近づいている証拠ですね……
飛ばされないように、しっかりと手を握ってください」
俺達は本陣に設置された『テレポーター』で、前線に転移した。
本陣と比べ物にならないほどの強い風だ。
「大丈夫ですか? 我が友エルティナ」
「なんとかな……タカアキ」
タカアキが心配して来てくれた。
その脇にはフウタもいる。
これって、最強のボディーガードだよな?
うへへ……俺ってVIPな感じだな?
「フウタ様! グロリア将軍がお待ちです! こちらへ……
やや!? タカアキ様に……聖女様まで!
どうぞ! こちらへ!」
やや大げさな兵士に案内されて俺達は
屋根の付いた大きなテントに案内された。
四方に魔法障壁が施されているので
強い風でも、ビクともしないらしい。
「おぅ! やっと来たか! まぁ~座れ!」
テントに入るなり、くっそでかい声で出迎えたのが
噂のグロリア将軍であろう。
耳が痛ぇんじゃ! くるるぁ!
「よく来たなフウタ! ……と?
げげっ!? 勇者様と聖女様までいんのかよ!?
聞いてねぇぞ!?」
「言う前に将軍が飛び出て行ったのでしょう? まったく……」
はぁ……と、ため息を吐くフウタ。
結構、苦労しているのかもしれない。
途端に親近感が湧いてきた。あとで桃先生を奢ってやろう。
「ま~しゃぁねぇやな? これが俺の性格だし! がはは!
初めまして! 俺がラングステンの将軍を任されている
グロリア・フィル・ラングステンだ!」
「タカアキ・ゴトウです。以前に一回お会いしておりますよ?」
「エルティナ・ランフォーリ・エティル。俺は初めてだ」
「こまけーこたぁいいんだよ!」と、言って豪快に笑うグロリア将軍。
恐ろしいほど自由過ぎる。
歳の頃は二十代前半だろうか?
燃えるような赤い髪は、緩やかなウェーブが掛かっており
その長さは腰にまで達している。
細く長い綺麗な眉に二重のまぶた。
ややきつめの目には意志の強そうな、紅の瞳が宿っている。
鼻の形、唇の色っぽさ……共に一級品だ。
だが……しかし。
顔から下が、別の人間なんじゃね?
って、くらい別次元の物体で、できていた。
分かり易いたとえは……美少女アマゾネスだ!
ムッキムキやぞ!? 腹筋割れてんぞ!? 少し俺にくれ!(切実)
にも関わらず、おっぱいやお尻は、ぷりんぷりんだ!
「グロリア将軍! しゃがんで!」
「ん? どうしたい?」
俺の言うとおり、しゃがんでくれたグロリア将軍。
かかったな!? くらえぃ!
ぷにぷに。
「よしっ!」
俺はグロリア将軍のおっぱいを『もみもみ』した!
筋肉じゃない! 本物のおっぱいだった!
一安心だ!
「がはは! なんだ? おっぱいが恋しいのかい?」
「おっぱいは好きだが、恋しいわけではない」
「我が友エルティナは、将軍のおっぱいを吟味しただけです。
お気になさらずに……」
流石、タカアキ! おっぱい同盟の、一員なだけはある! ナイスフォローだ!
「おいおい!? そんなこと言われたら、気になるじゃねぇか!?
……で? いったい何点くらいだった?」
「七十八点」
「ほぅ……中々の高得点ですね?」
タカアキが興味深そうに言った。
「うん。もっちもちの柔らかさの中に、安心する温もり……
はり、大きさも言うことなし。
よって……七十八点を付けた!」
うんうんと、頷くタカアキ。
がはは! と、笑うグロリア将軍。
ドヤ顔を決める俺。
「いや、俺達……竜巻討伐に来てるんですよね?」
フウタのツッコミに、我に帰る俺達!
いかん、いかん! こんなことしてる場合じゃない!
「んもう! もっと早くツッコんでよね!? ぷんぷん!」
「え? あ……はい」
くぁ~! ダメだぁ! フウタはくっそ真面目すぐる! 優等生か!?
「まぁ、冗談はここくらいにして……問題の竜巻だが」
グロリア将軍の雰囲気が変わった。
今度は仕事の顔になっている。
俺も気を引き締める。
「一度、土属性魔法で攻撃してみたんだが……
陛下の言っていたとおり、魔法が吸収されちまった。
なにか、いい方法があるのか?」
「そのための聖女です」
俺はドヤ顔で台詞を決めた!
言ってみたい台詞ベストスリーを言えた! 感動した!!
「聖女様の力は、あの竜巻に有効なダメージを与えるのに、必要不可欠です。
聖女様が魔法隊に祝福を施し、魔法隊は全力で竜巻に魔法を打ち込む。
その繰り返しで、竜巻を無力化するのが今回の作戦になります」
フウタの的確な説明に感心するグロリア将軍。
「おい、フウタ! やっぱり、今からでも俺の婿にならねぇか?」
「勘弁してください。嫁に殺されます」
嫁こえー!? 生きろ……フウタ。(同情)
「リア充爆ぜろ」
タカアキ……おまえも十分リア充だろうが?
エレノアさんという嫁を貰っておいてからに!
「がはは! 冗談だ!
そこの聖女様が、竜巻の嫌なスキルを封じてくれるんだな?」
「おう! 任せとけ! きっちり仕事してやるぜ!」
「なんか……将軍が二人いるみたいだな」
フウタの溜息が聞こえた。
……そんなに似てるかしらん?
「いよぉしっ! なら、早速攻撃おっぱじめんぞ!
魔法隊に通達! 何時でも、ぶっ放せるようにしとけ!」
「ははっ!」
バタバタと、慌ただしくテントから出ていく伝令係。
「うおっしゃぁ! 俺達も……ユクゾッ!」
俺も伝令係に続いてテントを飛び出し……
「ぬわ~~~~~!?」
風に吹っ飛ばされた。
とんぺーに、助けて貰わなければ、延々と転がり続けただろう。
「エルティナ、一人では無理です。私につかまってください」
「ふきゅん……そうする」
結局俺は再びくっ付き虫となり、ルドルフさんにぴったりと付いていった。
◆◆◆
午前八時 攻撃開始。
「ヴォー! すっげー! 魔法の雨あられだ!」
俺が魔法隊に『桃の加護』を施し、攻撃を開始したのが午前八時くらいだ。
攻撃から三十分は経過している。
しかし、竜巻は一向に止まる気配はない。
これ、止めれんのか? ちょっと心配になってきた。
「攻撃は通じているが……やっぱり効率が悪いね?
アルフォンスの方は、準備できてんのかい?」
「はっ! 七割完了したもようです!」
また、上級魔法か……アルのおっさんも引退したのに
未だに引っ張りだこだな。
「このまま……何事もなく終わればいいのですが」
タカアキが、少し不安げに言った。
「タカアキ……なにか、気になることでもあるのか?」
暫しの沈黙の後……タカアキは言った。
「上手くいってる時は、常に警戒するべし。
これ、私が何時も心掛けていることです」
「タカアキって、結構慎重派だったんだな?」
その時……竜巻に変化が表れた。
……悪い方に。
「グロリア将軍! 竜巻が突如……巨大化しました!」
「んだって!? 原因は!? 調べられるか!?」
言った傍からこれだよ。
まったく……神様は無慈悲過ぎるぜ!
「桃先輩……何かわかるか?」
「今調べている……あぁ、これか。
エルティナ、竜巻の移動ルートに……例の洋館があった。
おそらく、そこに溜まっていた『陰の力』を建物ごと取り込んだのだろう」
それって……ヤヴァくないですか?
「あぁ、やられたな。証拠隠滅と竜巻強化を狙ったのではなかろうか?
たまたまの可能性もあるが、竜巻が強化されたのは間違いない」
そう言えば、あの洋館のことは調査中ってことで
王様も、俺達に関わらないようにって言われたんだが……
その後……どうなったか聞きそびれてたな。
今となっては、もう調べることもできないだろうが。
「いずれにしても……なんとしても竜巻を止めることには変わりない。
それとだな……あの竜巻に憑いている『鬼』のことなのだが……」
「……ん? なんだ? あれ!?」
魔法隊が竜巻に攻撃する度に、何かが飛び散っていた。
その一部が……風に乗ってここまで飛んで来た。
それは……黒いヘドロのようなものだった。
それは……やがて盛り上がり……形を作り出した。
その姿は……
「こ……こみどりだとっ!?」