BBQ
「ヴォォォォォォォッ! やっぱり、ここの噴水はスゲェなっ!」
この公園の中央にある、大きな噴水からは大量の水が噴き出していた。
フィリミシアの水が豊かである証拠だ。
「興奮しすぎだエル。凄いのはわかるが」
「あ!? 一匹噴水に飛び込んだよ?」
野良ビーストの一匹が噴水に飛びこんだようだ。
犯人はすぐにわかる。
前科三犯、野良わんこ『ぶちまる』だ。
「ぶちまるぇ……」
何ですか? と、言ったふうに首をかしげる……ぶちまる。
君はどうして何時も、ここに飛び込むのかね!?
前世はダイバーか、お魚だったのか!?
「まぁ……いいか。よそ様に迷惑が掛からない程度に遊んでてくれ」
「わんわんぉぉうっ! わんっわんっ!!」
ぶちまるが「ゆるされたっ!」と言った気がした。
それに合わせて、野良ビースト達が思い思いの場所でくつろぎ始める。
「よし、俺達は昼飯の準備だ」
「おう、任せろっ!」
噴水広場には、家族で楽しめるバーベキュー専用の広場があるのだが……
準備や道具はもちろん、自分達で用意する。
「お~い! 係員さん! これからバーベキューするぞ~」
俺は、この広場担当の係員に、火を使うことを告げる。
こうしとけば、子供でもバーベキューができる。
俺は『フリースペース』から超特大のバーベキューコンロを取り出した。
こいつは特注で作ってもらった逸品だ。
「でかいな!? 学校の黒板くらいあるじゃないか!?」
「これくらい、でかくないと豪快に焼けないじゃないか」
俺は『ゼログラビティ』をコンロに付与して持ち上げる。
おぉ、軽い軽い。
「ここら辺でいいかな? 次は炭をおこすぞ!」
「よしきた! 任せろっ!」
俺はコンロに、炭が入った箱を豪快にぶちまけた。
そして、箱に火をつける。
「ライ! いいぞぉ! 存分にやってくれ!」
「うおぉぉぉぉぉっ!!」
ライオットがでっかい団扇で炭を扇ぎ始めた。
よしよし! 肉体労働は男の仕事だ! がんばれ!
……と、いうことは、俺も含まれるのかな?
ふむぅ……でも、俺の場合は中身が男だし……なぁ?
「ま、いっか。次は鉄板と網だ」
コンロに合わせて俺は、鉄板と網が半々に設置できるように注文したのだ!
これで片方で焼肉、片方で焼きそば、といったことができるようになる!
まぁ、網の上にフライパン乗せればいいのでは?
と、言うツッコミは無しで!
こういうのは、雰囲気が大切なんだよ!(確信)
「ん~! いい感じに炭がおきてきたな! 次は食材の用意だ!」
俺は買ってきた食材を、長~い鉄串に刺していく。
俺とプルルが食べる分はキチンと食べやすくカットする。
ライオットのは……問答無用で塊ごと、ブスリだ!
肉、野菜、肉、野菜の順番で鉄串に刺していく。
「いやぁ~僕、バーベキューが好きでねぇ! ワクワクしてきたよ!」
「くうぃぃぃぃひっひっひっひ!」と、笑うプルル。
テンションが上がってきているな!
あとは調味料と食器類、飲み物と……こんなものかな?
足りなければ『フリースペース』からまた出せばいいや。
「うんうん、鉄板もいい感じに温まったな! よし! 焼くぞ!!」
俺は鉄串を、鉄板と網に乗せて焼き始めた。
網の隅で、野良達用のやっすいスジ肉を炙る。
もちろん味付けは一切無しだ。
ジュワァァァァァァァァァァァァァッ!!
鉄板に乗せた鉄串からは、美味しそうな音が豪快に!
ジュ、ジュジュ……シュ~……!
網に乗せた鉄串からは、美味しそうな音が静かに鳴っていた!
「ぴぎゃぁぁぁぁぁぁぁっ!!」
興奮し過ぎだ! 二人共!
その声に、野良ビースト達も集まってきた。
一部は匂いがした時点で戻ってきていたが……
「うんうん、いいぞ~! 串をひっくり返して……あちち!」
流石に火力が半端無いぜ!
しばらく焼けるのをじっと待つ。
……そろそろ、いいかな?
「よぅし! これでも……くらいっ! やがれぇっ!」
俺は鉄板の方に、赤ワインを振りかけた!
ゴウンッ! と炎が立ち上がった!
くくく! 何時見ても、この炎はいいものだぁ!
最後に特製ソースで味付けと香り付けだ!
ジュワァァァァァァァァァッ!!
ソースが焦げて良い匂いを放つ。鉄板だからできる方法だ!
網の方もいい感じに焼き上がったので、塩で味付けだ! 胡椒は好みで!
「っしゃ! できたぞ~!」
「ヴォォォォォォォォォォォォォッ!!」
……何かが暴走した時の声が混じってたような気がするが……気のせいだよな?
「ライオットのは……このくっそデカい肉の方な?」
「うほっ! 美味そう!」
ライオット……涎でベロベロじゃないか。(呆れ)
「俺とプルルは、こっちの食べ易くしてある肉の方な?」
「んふふ……ありがとう!」
プルル……おまえもか!(呆れ)
二人は「いただきます!」と言ってガツガツ、ムシャムシャと食べ始めた。
「ふぁぁぁぁん! おいひぃ!
お肉も柔らかいし……焦げたソースの風味が堪らない!」
「がふっ! がふっ! うががが! ごふっ! ごっふ! ガツガツ……!」
約一名、完全に肉食獣に、なっているやつがいるが好評のもよう。
俺は軽く炙ったスジ肉を包丁でスライスして、野良ビースト達にお裾分けした。
それを美味そうに食べる、野良ビースト達。
「俺も串を食べるか……!?」
「おかわり!」
おまえ等なぁ……結構多めに焼いたんだぞ!?
特に、ライオットのは食べ切るまでに、相当時間が掛かる硬い肉だぞ?
どういう顎の力してんだよ……?
仕方ないので、俺は再び串を作る。ちまちまちま……
それとは別に、俺は肉を鉄板に放り投げた。
牛のモモ肉である。
網の方は厚くスライスしたサーロインを焼く。
「あとは、トウモロコシに……マヨネーズを塗る。ぺとぺと」
マヨネーズには、醤油とマスタードを混ぜてある。
焼けたマヨネーズが、甘いトウモロコシに合うのだ。
「また何か作り始めたねぇ?」
「ふひひ、折角だから色々試すのさ」
お次はランプの部分を薄くスライスして鉄板に。
その上にスライスしたトマトと、ブルーチーズを乗せる。
チーズが溶けてきたら完成。チーズの塩分があるから調味料はいらん。
「いただきます。はむっ! むぐむぐ……ふむ……まぁまぁかな?」
「もぐもぐ……シンプルで美味しいよ?」
ブルーチーズの塩っ気と独特の風味。トマトの爽やかさ。
牛肉のボリューム感。ふ~む、何かが足りない。
やっぱり……何かソースを作って、かけた方がいいかな?
「うがが! 肉だ! 肉を寄越せ!」
そろそろ、我慢できなくなると思ってたぜ!
これでも食らいな!
俺は鉄板で焼いていた牛モモ肉に
オレンジソースをかけてライオットに渡した。
「うぉぉぉんっ! がふっ! がつっ! がふがふっ……!!」
完全に野獣じゃないか……(白目)
そうこうしてる間に、串の第二弾が完成した!
「よし、今度こそ食べるぞ!」
「くくく! 残念ながら、この肉は俺がいただいた!」
そこには、焼き立ての串を手にした男が!
「げぇっ!? ダナン!!」
「ふははは! いただきます! はむっ!」
「う……うめぇ……!」と言って、天を仰ぎ大袈裟に涙を流すダナン。
おまえは将来、役者か何かになるつもりか?
「おぅ、エル。もう体はいいのか?」
「やぁ、ガンちゃん。だいぶ良くなってきたからリハビリに
バーベキューをしているところだ」
しかし、珍しい組み合わせだな?
何でまた、二人でここに?
不思議そうな表情でもしていたのか、俺の顔を見てガンズロックが察してくれた。
「ダナンとは、偶々ここで会ったんだよ。深い意味はねぇ」
「ですよね~」
偶々、公園に散歩に来た時に出会ったんだそうな。
ガンズロック達を交えて、バーベキューは更なる盛り上がりを見せた!
「ほぅ……この牛モモは、酒のつまみにいいなぁ!
かめば、かむだけ……良い味がでらぁ」
「ようは、ビーフジャーキーの元だからな」
ガンズロックは、塩辛く味付けした牛モモが、お気に入りのもよう。
ビール片手に、肉を一口、ビールを一口……と、交互に楽しんでいる。
「うん! やけたな! あとはレモンバターを乗せて……
サーロインステーキの完成だ!」
どどん! と、ビッグなステーキが完成した!
焼き加減はもちろんレアだ!
「包丁で切った方が早いな……うん、いい色だぁ……」(うっとり)
他にも、お肉の油をたっぷりと吸った
長ネギやジャガイモも焼いたりした。
「うむ、いもいも坊や達も、美味しそうに葉っぱを食べているな?」
イシヅカのポケットから出した桃先生の葉っぱを
美味しそうに食べているいもいも坊や達。
リボン坊やも、一緒に食べている。
調理中は危ないので、肩からは下りて貰っている。
やきいも坊や……に、なってしまったら大変だから。
「ふぅ、いいもんだなぁ……皆と食べる飯は」
青空の元、家族や友達と食べる飯はとても美味い!
いつまでも、こんな日々が続けばいいなと思う俺であった……
訂正 俺は軽く炙った筋肉 を
俺は軽く炙ったスジ肉 に直しました。漢字が同じだったとは(汗)




