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食いしん坊エルフ  作者: なっとうごはん
第二章 身魂融合 命を受け継ぐ者
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小さな家族達

「ライ~、先に露店街によってく」


「ん? 何か買うのか?」


 俺達はまず、露店街に向かった。食べるのが目的ではない。

 せっかくフィリミシア中央公園に、遊びに行くのだから

 公園で昼食を食べようと思ったのだ。


 なので、露店に買い物に来たわけだ。

 ここは量の割に値段が安い。

 よってライオットがいる時点で、商店街のちょっとお高い食材は断念した。

 

 あの獣人ポリバケツに掛かれば、俺のお小遣いなど、光の速さで消滅しかねん。


 ライオット達を露店街の入り口で待たせ

 俺は顔見知りの八百屋に向かう。ぷぴっ! ぷぴっ!


 ◆◆◆


「いらっしゃい! ……あらぁ! あらあらあら!

 もう、体の方は良いの!? 食いしん坊ちゃん?」


「おかげさまで、取り敢えずは動けるんだぜ」


『アカネ屋』の店主、パウラ・アカネさんが、俺の元に近寄り……

 俺のほっぺを、ふにふにしだす。


「ふぅ……どうやら、大丈夫のようね? 安心したわぁ」


「なんで、ほっぺで確認したし?」


 あきらかに、触りたかっただけの気がする。

 しかし俺は大人なので怒りはしない。感謝するのだっ!


「さてさて、今日は何をお探しですか? 食いしん……うふふ! 子豚ちゃん?」


 ……と、言って笑顔になるパウラさん。


 綺麗な緑色の長い髪がまぶちぃ。

 露店の店主にしとくのが勿体ないくらいの美人だ。スタイルも抜群!

 でも、残念ながら結婚してる。がっでむ。


 旦那のアルベさんは、専ら畑で作物を作っている。

 露店街でも評判の仲良し若夫婦だ。


「んと~、玉ねぎ、ピーマン、赤ピーマン、黄ピーマン、長ネギに……」


 は~ん! 目移りするわぁ……! キラキラ輝く美味しそうな野菜達!

 この世界、とにかく野菜が美味い!

 適当に、そこら辺に自生している野菜ですら、美味いのに

 ここの野菜は、更に手間暇を掛けた逸品である。

 俺は、さまざまな野菜達を購入していった。


「はい! 毎度あり! またきてねぇ~」


「またくる~」


 そう言って、俺は次の店に向かう。ぷぴっ! ぷぴっ!


 ◆◆◆


「んん~? なんだぁ? おい、かーちゃん! 子豚が脱走してるぞ!?」


「おいぃぃぃぃ!? 俺は商品じゃねぇぞぉ!?」


「あっははは! 随分と可愛らしい子豚だねぇ? 家で飼っちゃおうか?」


 次に来たのは『アマナイ屋』だ。

 ここは肉屋で、俺が肉の捌き方を習った店でもある。

 初代の知識だけでは、上手く肉を処理できなかったのだ。


 店に並ぶ、色々な種類の肉。

 牛、豚、鶏、羊、馬、ブッチョラビの肉は勿論、極稀に竜の肉まで売られている。

 部位も豊富で、ロース、肩ロース、バラ、ウデ、モモ、ヒレに始まり

 内臓類や、骨、スープの出汁取りに使われる鳥の足……『もみじ』まであるのだ!


 しかも……ここの肉は、良質な物を揃えているうえに安い!

 ものすっごく、助かるのだ。


「がはは! 冗談だよ? いらっしゃい! エルティナ。

 もう、体は良いのか?」


「うん、だいぶ良くなったから、フィリミシア中央公園に散歩がてら

 昼飯をそこで食べようと思って」


「そうか、そうか!」と……言って、軽々と俺を持ち上げる

 店主のトスムー・アマナイ。


 スキンヘッドの体格の良い大男で2m近く身長がある。

 厳つい顔だが、気は優しく大らかなおっちゃんだ。


「あんた……そんなに乱暴にしたら、エルが痛がるよ?」


 ……と、トスムーさんに注意してくれるのが、ミシェル・アマナイ。

 トスムーさんの嫁さんで、彼女は狼の獣人だ。

 背丈もトスムーさん並にある。腕力も相当なもので、牛一頭片手で持ち上げていた。

 青い毛並みが綺麗な人で、トスムーさんと同じく大らかな性格だ。


 ……残念ながら二人の間には、子供ができなかったらしく

 俺が肉の捌き方を習いに来た時は、本当の子のように接してくれた。

 ありがたいことだ。


「おお!? 悪い、悪い! 痛くなかったか?」


 と、言ってそっと下ろしてくれるトスムーさん。ぷぴっ!


「大丈夫、見た目よりも俺は頑丈だぜ!」


 俺はガッツポーズをとって、トスムーさんを安心させる。

 本当は痛かったなんて、口が裂けても言わない。(涙目)


「あはは、ごめんね? エル。相変わらず……ガサツな人で?」


「るせぇっ! 俺だってわかってらぁ!」


 相変わらずで安心した。

 さぁ! 買い物だ! 美味しい肉を購入するぞ~!


「んとぉ……牛の、サーロイン、ランプ、イチボ、ヒレ……これは俺達。

 ライはあご強いから、ほほ肉、外モモ、肩肉でいいな!」


 俺はお目当ての物が買えてご満悦だ。

 ライオットの肉は、少々硬いがその分……値段が安いので多めに買った。

 その方が喜ぶだろう(確信)


「毎度あり! ははっ! 今日も良い天気で暑いから

 水分はちゃんと取れよっ!?」


「わかった~! ありがと~!」


「またおいでっ! いってらっしゃい!」


 見送ってくれたアマナイ夫婦に

 元気良く手を振って、ライオット達の元に戻った。ぷぴっ! ぷぴっ!


 ◆◆◆


「おかえり。お目当ての物は買えたかぃ?」


「おかえり! その顔だと、良い物が買えたみたいだな?」


 プルルとライオットが俺におかえりと言ってくれた。

 なら、俺が言うべきことは……


「ただいま! おぅ! ばっちりだぜ!」


 と、満面の笑みで言った。

 さぁ! フィリミシア中央公園に行こう!


「んじゃ、フィリミシア中央公園にいくかっ!」


「お~!」


 こうして、ようやく俺達はフィリミシア中央公園に出発した!

 野良ビースト達やいもいも坊や達。

 そして、ぐれーとらいおっと号の勇姿もあって

 なかなかに俺達は目立っていた! ぷぴっ! ぷぴっ!


「ふふふ……俺達は今! 最高に目立っている!」ぷぴっ! ぷぴっ!


「だいたい、半分くらいはエルだな?」


「んふふ……そうだねぇ? 見る人全員、顔が優しくなってるねぇ」


 なんですとっ!?

 どう見ても、ぐれーとらいおっと号の方が目立つじゃないか!?


 しかし、よく観察すると……確かに皆、俺を見てニコニコしていた。


 「……解せぬ」ぷぴっ! ぷぴっ! 


 俺の考え込む姿を見て、大笑いするライオットとプルル。

 ぐぬぬ……おまえ等、あとで憶えていろよ?

 あまり、俺を怒らせない方がいい! ぷん! ぷん! ぷぴっ! ぷぴっ!


 ……吹き抜ける風が気持ち良い。

 天気も良く気温も高いはずだが、今日は風があるのでそこまで熱くない。

 外でごはんを食べるには絶好の日だ。


「いもいも坊や達も、ご機嫌のようだな?」ぷぴっ! ぷぴっ!


 いもいも坊や達は、普段……桃の聖域からは出ない。

 今日が初めて外に出る……と、いう子も居ることだろう。

 

 ゴトゴトと揺れるリアカーから見る

 初めての景色を、興味深く眺めるいもいも坊や達。


 短い足をパタパタさせて、大喜びしている子。

 リアカーに揺られて、うとうとしている子。

 丸くなって寝てしまったため、リアカーの中でコロコロ転がってる子。

 ……危ない、危ない! 落ちる、落ちる~!!


「こいつ等も、大人しくついてくるなぁ? 何か躾けてるのか?」


 俺の後を、おりこうさんに付いてくる、野良ビースト達を見て

 ライオットが聞いてきた。


「いや? 俺はこいつ等の主人じゃない」ぷぴっ! ぷぴっ!


 と答えた。

 

 ……そう、主人じゃない。俺と野良ビースト達に、上下関係はないんだ。

 何時の間にか……俺達は一緒に居て、一緒に生活をしていた。


 何時も朝起きれば、傍に野良にゃんこが居たし

 窓では「起きろ」と、もっちゅ達が合唱していた。

 自室の床では、どうやって入って来たのか

 野良わんこがダイナミックな格好で寝ていた。


 俺が初めて、フィリミシアに来て……聖女として活動した時から

 こんな感じだったような気がする。


 現在も、俺の部屋には、見知らぬ野良ビースト達がやってきて

 俺と寝たり、ただ一緒に居たり、笑ったり、泣いたりしている。

 勿論、出入りは自由だ。


 現在では、桃の聖域ができて……更に増加傾向にある。

 そこで、たむろしている野良達も、俺の部屋に来てまったりしていく。

 ……これが俺の日常になっている。

 

 なので、今では……


「こいつ等は……俺の家族さ」ぷぴっ! ぷぴっ!


 と……自信をもって言える。


「そっか。エルらしいな?」


「んふふ……そうだねぇ」


 ライオットとプルルが、優しく笑った。

 

 俺の頭にもっちゅが乗り「チュチュ」とさえずる。

 俺の後に続く、にゃんことわんこ達。

 

 今日は、とてもいい日になる予感がしていた……ぷぴっ! ぷぴっ!

誤字 今日も良い天気で熱いから

訂正 今日も良い天気で暑いから

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