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食いしん坊エルフ  作者: なっとうごはん
第二章 身魂融合 命を受け継ぐ者
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ぐれーとらいおっと号

「まず、ギュンターに操られていた少女だが……身体的には問題ない」


 そう言って難しい表情になる。


「問題は精神の方だ。

 かなり参ってるようでね……暫くは、ケアが必要だそうだ」


「そうか……心の方は、俺も治せんからなぁ」


 歯痒いな……こんな時に、何もできないとは。


「そんなに、しょげないでくれ……時間は掛かるが、治る当てがある」


「どんな当てなんですか?」


 プルルがゴーレムファイターに聞いてきた。

 俺も気になる。

 ライオットもそのようで、身を乗り出していた。


「みどりちゃん……さ。

 あの子がずっと、主である少女に寄り添っているんだ。

 みどりちゃんが居る間は、精神状態が安定している。

 これも……絆の力かな……?」


 そう言って……空を見上げるゴーレムファイター。

 空は今日も、雲一つ無い青空だった。


「みどりちゃんは……どうなんですか?」


 今度はライオットが、ゴーレムファイターに質問した。


「みどりちゃんは……もうファイトできないし、寿命も近いね」


「そんな……どうにかならないのか? ゴーレムファイター!」


 首を横に振るゴーレムファイター。

 その表情は、とても悲しげだった……


「俺達も手を尽くしてはいるが……寿命を少し伸ばせた程度だ」


「そう……ですか……」


 ゴーレムファイター達も頑張ってくれた。

 でも、これが結果。

 くそぅ、厳しい現実だなぁ……


「大丈夫! あの子とみどりちゃんなら、別れの時が来ても、きっと……

 そんな気がするんだ……!」


 ゴーレムファイターは、そう笑って俺の肩にパシッと手を置いた。


「そうか……そうだといいな!!」


「んふふ……きっと、大丈夫だよ」


 俺の言葉に賛同してくれるプルル。

 うんうんと頷くライオット。……それを真似するツツオウ。


「よし、じゃあ次だ。

 残ったゼンバネンス帝国の、二人の選手も無事だったよ。

 こっちは心身共に異常なしだ」


「そっか~、よかったなぁ」


「不幸中の幸いってやつかねぇ?」


 ライオットとプルルが、それを聞いて安心していた。

 どうやら、心配していたらしい。


「でだ、そのうちの一人が……ギュンターに取り付かれる瞬間の

 記憶が残っていたみたいなんだ」


「なんですとっ!? どんな内容なんですかっ!?」


 これは……ひょっとすると……!?


「なんでも、黒尽くめの大男と金髪の男が

 みどりちゃんに『種』みたいな物を、くっ付けたって」


「それって……まさか!?」


 プルルは、それが何か……察したようで、少し震えていた。


「おそらくは『鬼になる種』なんだろうけど……おかしいんだ。

 何故なら、ホビーゴーレムには『負の感情』が、ほぼ無いはずなんだよ」


「じゃあ、なんで……みどりちゃんは、あそこまで?」


 ライオットの言葉に……

 ふぅ……と、溜め息を一つ吐いて話を続けるゴーレムファイター。


「それが、わからないんだ。可能性としては……

 その種が周りから『負の感情』を吸収していた。

 と言うのが有力かな?」


 たぶん……それが最も説明がつくだろう。

 しかし、俺はとんでもない方法を考えついていた。


「ゴーレムファイター……最初っから芽が出た『種』を、くっ付けたとしたら?」


「……!? それなら、話は別になるんじゃないのかな?

 そもそも、ゴーレムは命令しやすいように、従順な性格に作られている。

 例外はあるけどね?」


 と、言ってツツオウを見る。

 ツツオウは、お腹を見せて寝ていた。


「それなら、すぐにでもゴーレムを、乗っ取ってしまえるだろうね。

 そして、その後……『負の感情』を吸収していった」


「それが、ギュンターのやった方法かもな?」


 今となっては、確認のしようがないが……おそらくこれで合っているだろう。

 しかし……それには『種』が芽吹く量の『負の感情』がいる。

 そして、それを与える存在が……


「面倒なことに、なってきやがったじぇ……」


 俺は、眉間にシワを寄せようとして……失敗した。

 この歳では、まだ……できないようだ。ぐぬぬ。


「そうそう、金髪の男の方は名前がわかったよ。

 『アラン』と言うらしい。まぁ、何処にでもいる名前だね」


「アランか……まさか、な?」


 そいつが、俺の探している『アラン』だったなら……

 絶対に仕留めてやる! 絶対にだ!!


「さて、俺の伝えるべきことは伝えたよ。

 そろそろ、出勤しなくちゃならないんだ。

 じゃ、またゴーレムマスターズで会おう!」


 そう言って……ゴーレムファイターは、桃の聖域を去って行った。


「どうしたんだ……エル? また痛み出したのか……?」


「あ……いや、すまん。少し考えていた」


 俺とアランのことは、まだ内緒にしておこう。

 これは俺と初代の問題だ。

 

 ライオット達を巻き込みたくはない。


「よし! しんみりとした雰囲気は、俺の性には合わねぇっ!

 野郎共っ! 散歩に出っ張るぞぁぁぁぁぁぁっ!!」


 俺の声に、反応した野良ビースト達が、一斉に声を上げる。

 ふふ……今日は天気が良いし、魂痛も良くなってきたから

 フィリミシア中央公園に遠征するとしよう。


 フィリミシアの、本当にど真ん中にある大きな公園。

 それが、フィリミシア中央公園だ。

 

 沢山の緑に囲まれ公園の中央には、えらく立派な噴水がある。

 子供が喜ぶ遊具も沢山設置されており、何と……公衆トイレまであるのだ。

 はい、そうです! フウタ様が、お作りになりました!

 

 だれでも、自由に楽しむことができるので

 フィリミシアの有名スポットの一つである。


 よく、子供連れの家族や、散歩するお年寄り……

 更には、カップルがここに訪れる。

 爆ぜろ! バカップル共っ!


「結構、距離あるな? 大丈夫か?」


「帰りはライに運んでもらう」


「んふふ……がんばってね? ライオット?」


「おまえなぁ……」と、呆れるライオットであるが

 このエルティナ、容赦はせんっ! 背中にくっ付いてくれるわっ!


 そんな、やり取りをしていると、いもいも坊や達が寄ってきた。

 どうやら、一緒に行きたいようだった。


「ふむ……リボン坊やは、何時もの場所でいいとして……」


 ピンクのリボンを付けた、いもいも坊やを肩に乗せ……

 他のいもいも坊や達を、どうするか考えた……結果。


「ぐれーとらいおっと号……完成!」


「完成じゃねぇよっ!?」


 ライオットに、ヒーラー協会にあったリアカーを引かせることにした。

 流石……俺! 帰りは俺も乗るという、隙の無い二段構えっ!!


「のりこめ~!」


「わぁい!」と、言わんばかりの勢いでリアカーに乗る、いもいも坊や達。

 乗りやすいように、板を掛けておいたのだ。(親切)


「で? なんでプルルがリアカーに乗ってるんだ?」


「僕……こう見えても、か弱い女の子なんだよ?」


 プルルの台詞にライオットは……


「エルくらい……か弱かったら乗っていいぞ?」


「あ、それじゃぁダメだねぇ?」


 と言って、リアカーから降りた。

 ライオット……後で泣かす。


 あとは足の遅い、イシヅカが乗り込んで搭乗完了だ。

 ブッチョラビは……お留守番をするみたいだ。

 この、面倒くさがりさんがっ! あとは任せたぞっ!


「よぅしっ! 『モモガーディアンズ』出発だぁぁぁぁっ!!」


 野良ビースト達の雄叫びと共に

 ぐれーとらいおっと号が、ゆっくりと動き始めた。


 俺も、足が痛まない程度の速さで、歩き始めた。ぷぴっ! ぷぴっ!


 久しぶりの散歩に、心踊らせながら……

 俺は皆と、歩いたのだった……ぷぴっ! ぷぴっ! ぷぴっ! ぷぴっ……

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