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食いしん坊エルフ  作者: なっとうごはん
第一章 珍獣と聖女と仲間達
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12食目 エレノア・キュリデの過去

貨幣について貴重なご指摘がありましたので訂正させてもらいました。

ご指摘ありがとうございました。


お金の設定って難しい!

結局、既存のお金設定に頼ることに…(焼き土下座)

今日も元気に治療三昧だ!


いやあ、ケガ人多過ぎ。ワロタ。

現在、既に二百人近くのケガ人を治療し終えたが……一向に減る様子がない。

前線どうなってるの? ってレベルだ。


「ほれ、次~さっさと座れっ」


こっちも、スピーディに処置しないと後がつかえてしまう。

しかも、他のヒーラーは昼前だと言うのに……既にへばっている。

今日はまた、随分多いな。


「……前線が維持できなくなり、防衛ラインを後方に下げたそうです」


と……エレノアさんが、ちょっと難しい顔で言った。

それでケガ人が多いのか……


「でも……勇者召喚の魔力がようやく満ちたそうです。

 これで……この戦いも終局へと向かうことでしょう」


だ、そうだ。こちらとしてもありがたいことだ。

気軽に受けたはいいが……正直舐めてた。

俺には無駄に魔力があるらしく魔力の枯渇現象はまだ経験していない。

だが、その分というか体力がなくてかなり疲れが溜まってきている。

寝たら元気になるんだがな。


あと怪我人多くて自分の時間が作れてない。

自由に使える時間も、寝る前のわずかな時間だけだしな。

よって、給料貰っても使えない状態だ。


因みに、俺の日給は小金貨四枚と大銀貨一枚。

貧弱一般市民の平均月給が、大金貨十五枚だそうだ。


お金は銅貨に三種類、銀貨に三種類、金貨に三種類、がある。

銅貨で例を挙げると小銅貨、銅貨、大銅貨と呼ばれている。

あとは銀と金と続き合計で九種類のお金が一般的に扱われている。

そして、この貨幣は万国共通で扱われているらしい。便利っ!


お金の価値は日本円に例えると説明しやすい。


銅貨がサイズ別に小さいのが一円、中くらいのが五円、

大きいのが十円の価値がある。

サイズ別にデザインも違っていて凝った作りである。


同じく銀貨が五十円、百円、五百円と続き……

金貨が千円、五千円、一万円の価値と続くらしい。

もっと上になると、特別な紙幣があるらしいが……

たぶん、一生関わることがなさそうなので省略する。


よって、小金貨四枚と大銀貨一枚の俺は一日、

四千五百円相当の給料ってわけだ。

子供でこれだけって結構凄いよ!


でも……お金は小さく作られていてなくしてしまいそうだ。気を付けよう。


この世界……結構、元居た世界と共通部分が多い。

四季があるし、一年は365日で月は大体30日。

距離などもmmから始まってkmまで、重さもgからtで表記している。

ここまで、似通ってるとは……便利だからいいんだけど。


現在、治療終えたら飯食って寝るってのが三ヶ月続いている。

若手ヒーラーも、随分と手慣れてきてはいるが……

肝心の魔力が追いついていない。昼頃には皆ダウンだ。

俺一人じゃ時間がかかってしょうがない。ふっきゅん!


「やっとか、これで楽ができるなっ」


腕を損傷した冒険者の欠損部位を再生し終え

「さっさと部屋帰って寝ろ」とケツを叩く。


「こっちは時間がねぇんだ! 治ったらとっとと席空けろっ!」


って何度も言ってるんだが、妙に長い感謝のセリフを言うヤツがいて困る。

気持ちはありがたいが、聞いている間に三人は治せるんだよ。


「……聖女様は勇者様が魔王を倒すまでは、ここにいるともうされましたが……」


「ん?」


片足がもげていた兵士の治療をしていた時、エレノアさんは唐突に聞いてきた。


「その後は、どうするおつもりですか?」


真剣な顔だった。

ふむぅ、心配してくれてるんだろうが……差し障りのない答えをいっておくか。


「この世界を見て回ろうと思ってるんだ」


せっかく寿命の長い種族に生まれたからな。と、付け加える。

「そ……そうですか」と思い悩む様子の彼女。

う~ん、やっぱり様子がおかしいな?


前聞いた時は、何でもありませんよ? 

と言っていたし……ふきゅん……杞憂ならいいのだが。


◆◆◆


聖女様の最初の実地訓練から早……三ヶ月。


最早、聖女様のお力なくしては潤滑な治療が行き届かず……残念ながら、

死者が続出する有様。聖女様は休む日もなく仕事をこなしておりました。


ずっと働きずくめの聖女様でしたが文句一つ言うでもなく、黙々と治療を続けています。まだ幼いと言うのに、大人より働く聖女様。

我々、大人が不甲斐ないばかりに……


私は前線が維持出来なくなったことと、勇者召喚の事を聖女様に伝えました。


聖女様は、勇者召喚を喜んでいましたが……勇者にも当たり外れがあるのです。

そのことは聖女様には伝えてませんが……


私が聞いた言い伝えによると、魔王討伐の代わりに国中の女性を、

自分の好きに出来るようにしろ。と、言った勇者がいたそうです。


見事……魔王を倒した勇者は、約束だと言って国中の女性を蹂躙したそうです。

流石にやりすぎだと、軍隊が動く事態になりましたが勇者の力は圧倒的で

わずか半日で一万五千の軍は壊滅したそうです。


それほどまでに、勇者の力は圧倒的だったのだそうです。


その後……勇者が老衰で死ぬまで、女性は苦難の道を歩むはめになったそうです。


しかし、勇者を召喚しなければ……魔王には勝てないのも事実。

話によると魔王もまた、異世界からの召喚者だからだそうです。


召喚された者は恐るべき身体能力と魔力、

そして……神の如き特殊能力を備えています。

我々、普通の能力しか持たない者では到底太刀打ちできません。


目には目を、歯に歯を……召喚者には召喚者を。と、いうわけです。

三日後には勇者が召喚されます。願わくば、善なる勇者でありますように。


◆◆◆


夕方になり、今日の治療も終えたころ。私達は、懐かしい方に再会しました。


「やあ、エレノア。久しぶりだね元気だった?」


「五年振りですね……フウタ様」


フウタ・エルタニア・ユウギ男爵。

彼に出会ったのは今から十年前……

私が駆け出しのヒーラーであった時のことです。


彼に出会ったのは、冒険者ギルドのハンティングベアー討伐の

臨時パーティーの時です。

新人ヒーラーであった私は、とにかく経験を積もうと無茶をしていました。


ハンティングベアーは体長二メートル前後の獰猛な熊で、

よく人里に下りてくるので定期的に討伐隊が組まれています。

駈け出しの冒険者には登竜門的な扱いで、討伐出来たら一人前として

認められます。


しばらくは、目的地に和やかなムードで向かいました。

やがて目的地に着き、一匹のハンティングベアーを見つけました。

そして、ハンティングベアーと対峙した時、それは起こったのです。


臨時パーティーは彼と私を含め、八人の大所帯。

中々見ることのない、大所帯の臨時パーティーで討伐に向かいましたが……

パーティは一瞬で崩壊。

ハンティングベアーは、討伐アベレージがDランクのモンスターで、

当時……パーティーは私のEランクを除き全員Dランクでした。


八人もいれば……間違いなく勝てると信じていたのです。


ですが実際は、ハンティングベアーに出会った途端、

何故か前衛の戦士三人が脱兎の如く逃げ出してしまいました。


取り残された私達は咄嗟のことに呆然としてしまい、

ハンティングベアーの攻撃を受けた魔法使いの方が

頭を食いちぎられて死んでしまいました。


これでは真面に戦えない、と撤退しようとした矢先……

もう一体のハンティングベアーが道を塞ぎました。

しかも、最初のハンティングベアーよりもさらに巨大です。

一匹でも無理なのに……二匹目です、私達に絶望が襲いかかりました。


「ひぃ……」


下着が濡れるのを感じました。

恐怖のあまり失禁してしまったのです。恥ずかしいことでした。


でも彼は取り残された私達に、身を守る事を優先してと伝えると単身、

二匹のハンティングベアーに斬りかかって行きました。

今でも……その勇姿は忘れられません。


彼の素早い動きに、ハンティングベアーは対応できず、

彼の得物『カタナ』という片刃の少し反り返った珍しい剣で

切り伏せられていきました。あっという間の出来事でした。


二匹を倒し終えた彼は、腰が抜けて座り込んでいた私を抱き上げ

「帰ろうか」と笑いかけてくれました。ちなみにお姫様抱っこというものです。

失禁したことを伝え「汚れてしまいます」と言いましたが、

逆に「腰が抜けて歩けないんじゃないの?」と言われ、なすがままの私でした。


逃げた三人の戦士は後に……死体として発見されたそうです。

口封じに殺害されたとのことでした。

後に聞いた話によると、フウタ様を陥れようと

何者かが暗躍していたらしいのです。


それから私は彼とパーティを組み、冒険に出かけるようになりました。


次第に仲間も増えていきました。……何故か女性ばっかり増えましたが。

それからというもの……採取困難な薬草に始まり、魔物の討伐等を経て

遂には……ドラゴンをも倒してしまいました。


彼はドラゴン討伐を隠そうとしましたが、色々あって明るみに出てしまい、

国王様から男爵の位とエルタニアという土地を授与され今に至ります。


当然、土地を授与された男爵になれば世継は必須でした。

当時一緒にパーティを組んでいた女性陣は皆、

こぞって彼の正室や側室に収まりました。正室争いは壮絶だったそうです。


その頃から私は、彼との間に距離をおいてました。

マイアス教司祭への試験もありましたが……私は自信がなかったのでしょう。

……彼との結婚に。


私はこう見えても独占欲が強いです。


他の女性と遊んでいたり……その……夜の営みをしてると思うと……

ですので「一緒に暮らそう」と、言われた時もお断りしました。

その夜、声を押し殺して泣きはらしましたが……


その後、無事に司祭になり忙しい日々を送っていたところに、

この幼く可愛らしい聖女様に出会ったのです。


未練はありますが、私の選択は間違いではなかったと思ってます。

私は聖女様に出会うために司祭になったのだと……


「相変わらず美人だな……デートのお誘いも、

 より取り見取りなんじゃないのかい?」


と、おどける彼。こういうところは変わりませんね。


「生憎と聖女様のお世話で、それどころではありませんよ?」


と、返しておきました。本当に……変わらない。

そんな貴方が大好きでした……


◆◆◆


おいぃ……誰だ? 俺のエレノアさんに、馴れ馴れしくトークしてるこの男は?

俺は今、エレノアさんと親しく会話している男を観察した。


黒髪の長髪を紐で無造作にまとめた……

おいこら、男がポニーテールしてんじゃねぇ!

おんにゃの子がしてこそ輝くんじゃ、ぼけっ!!

ヴァー、もうどうでもいいや。

男なんて見ても面白くもない! それ以外はふつーだ! ふつー!!

中肉中背の優男だ! 以上説明終わり!


「へえ、君が噂の聖女様か?」


「よろしく」と手を差し出してきたので、思いっきり握りつぶす気で

握ってやった。


「ふきゅん!」


しかしダメージは無かった模様。ちくせう……


じとーと、睨んでやったが相変わらずの笑顔である。

こいつのハートは、鉄でコーティングされているのではないのだろうか?

なんて考えていたが、すぐに興味を失った。ふきゅん。


そんな事よりも飯だ!

二人は会話を続けているが、そんな事は知った事では無い。

食らうが良い! 俺の音波攻撃を!!


ぐぅ~~~~~~~~~~~~!


俺のポンポンから発せられた音波は、二人の会話を中断する事に成功した。

効果は抜群だっ!(暗黒微笑)


「あらあら、聖女様はお腹がお空きになられているようですね?」


「すみませんが……」と頭を下げその場を切り上げる俺達。

「構わないさ」と、男もその場を後にする。


すれ違いざまに何か言っているようだが、どうでもいいっ!

今はとにかく飯だ! 治療に明け暮れて腹が減ってるんじゃい!


ミランダさんのおっぱぉ……じゃなくてオムライスが俺を待ってるぜ!


興奮した俺は、食堂に向けて駆けだしていたのでありましたとさ。

あ、途中で転んだのは内緒です。ふきゅん!

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― 新着の感想 ―
[一言] 衣食住に身の安全の分を引くと手取りはたったそれだけか。 やってることからすると最低でも日給8万以上で上は天井知らずだと思うのだが(医者基準 これがやりがい搾取ってやつね!
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