ぷぴっ! ぷぴっ!
魂痛から四日目の朝……
「ふっかつ! ふっかつ!」
俺はベッドから起き、両足で立っていた!
やっとこれで、魂痛から解放されたのだ!
「ふっかつ! エルティナふっか痛っ!?」
調子に乗って、飛び跳ねたら痛かった。
……まだ完全ではないようだ。
しかし、この程度なら我慢できるので問題ない。
「よし、朝飯食ってリハビリがてら散歩だ!」
俺は慎重に歩き始めた。
ゆっくり歩けば痛みはない。……いける!
「ふひひ……歩けるって、すぅんばらしぃ!」
よし……着替えよう。
グランドゴーレムマスターズで着れなかった
豚の着ぐるみセットを着ていこう。
がさ、がさ、がさ……じ~~~~~~~~……
そこには……ピンクの子豚が誕生していた!
ちゃんと、くるくるの尻尾も再現されている。
もちろん靴も、豚の足を模して作られている。
完成度たけ~な! おい!?
最後に……椅子に座って靴を履けば完成だ!
「これでよし! ユクゾッ!」
ぷぴっ! ぷぴっ!
「これもか……いや、たぶんそうじゃないかな~?
とは思っていたが」
取り敢えず……食堂に向かおう。そうしよう。
朝ごはんが俺を待っているぅ!!
ぷぴっ! ぷぴっ! ぷぴっ!
◆◆◆
食堂なう。ぷぴっ! ぷぴっ!
「おや? もう歩けるんですか?」
「飛び跳ねるとまだ痛むけど、歩く分には問題ない」
食堂で居合わせた、ヒュースさんと軽く会話する。
他のヒーラー達も寄ってきて、俺を心配してくれた。
まぁ、普段くっそ元気なやつが、動けなくなったら心配するか。
「心配かけたな。俺はもう、大丈夫だぁ~」
俺はガッツポーズをとってアピールした。
その様子に安心したのかヒーラー達に笑みが生まれた。
その様子に俺も安心する。
そして、安心したら急激に腹が減ってきた。
さぁ、朝ごはんを食べるぞ~! ぷぴっ! ぷぴっ!
「さてさて、今日の朝ごはんは……?」
献立は、焼き立てのトースト、目玉焼き、カリカリベーコン、サラダに牛乳。
そしてオレンジ……
「何時もどおりだな!」
安心と信頼の献立だった。
「いただきます!」
俺はまず、トーストを四つに分けた。
これには理由がある。
「献立が変わらないのなら……食べ方を工夫すればいい!」
というのが、俺の結論だった。
まず、初めに牛乳を一口。
「ぷはっ! いいぞ~牛乳! 俺をビッグなやつにするのだ!!」
最初の一切れは目玉焼きと合わせる。
俺の目玉焼きは、黄身が半熟になるように頼んでいる。
その黄身を突いて破る。
トロリとした黄色い液体が溢れてきた。
そこに醤油を少し垂らすのだ。
「こいつを一口……うん、美味い!」
やっぱり、目玉焼きには醤油だな。
シンプルに、塩でもいいが……俺は醤油派だ。
ケチャップや、ウスターソース、タバスコで食べる猛者もいる。
まぁ、自分の好みに合ったタレで食べるのが一番だ。
続いて、その目玉焼きを半分にして
四つに分けたトーストの一つに乗せて……ぱくっ!
トーストのサクサク感に、目玉焼きの滑らかさがマッチする。
醤油で引き締まった、黄身の甘味が堪らない。
ここでまた、牛乳を飲む。
今度は半分になるまで飲むのだ。……ぷはっ。
「次はお前だ! カリカリベーコン!」
こいつも、先程と同様に一口味わってトーストに乗せ……ぱくっ!
サクサクなトーストに、カリカリのベーコン!
猛烈な歯応え! この食感が楽しい!
そして口に残る、ベーコンのジューシーさ! おいちぃ!
「サラダで口をさっぱりさせて……次は全部乗せだ!」
三つめのトーストに、オレンジを残し……全てドッキングさせる。
この献立の最終形態だ。
……だれだ!? 牛乳が入ってないって言ったやつは!?
ケツにタバスコぶち込むぞ!?
ざくっ、しゃくっ! かり、かり……もきゅもきゅ……ごくん!
「うめぇ……! 食感のオーケストラやぁ……!」
様々な歯応え、音、味で俺を満たしてくれる。
合間に牛乳を飲み干す。ぐびぐび……か~! たまんねぇな、こいつ!
そして、全部乗せを腹に納めた後……
オレンジを食べ、口をさっぱりさせて、朝ごはんを終えるのだ!
おぉう! ぱーふぇくとっ!
「ごちそうさまでした!」
俺は食べ終わった食器を下げて食堂を後にした。
ぷぴっ! ぷぴっ! ぷぴっ! ぷぴっ……
◆◆◆
ぷぴっ! ぷぴっ! ぷぴっ! ぷぴっ!
「桃先生、ご無沙汰してました」
俺は桃の聖域にて、久しぶりに桃先生の芽に会っていた。
桃先生の芽の周りには、相変わらずいもいも坊や達が、いもいもしている。
「いもいも坊や達も元気そうだな?」
俺の言葉に、短い足をふりふりさせて答える、いもいも坊や達。
そこにイシヅカがやってきた。
「イシヅカおまっ」
イシヅカは……麦わら帽子にオーバーオールを着ていた。
更に籠を背負い、手にはスコップやクワを持っている。
「完全に庭師のおっさんじゃないか……」
イシヅカはオーバーオールから如雨露を取り出して
桃先生の芽に水をあげていた。
オーバーオールの腹の部分にポケットが付いているので
そこを『フリースペース』としているのだろう。
見たまんま『よじ〇んぽけっと』である。
赤褌から取り出すより、はるかに良くなった。うんうん。
そして相変わらず、丸くなっているのはツツオウである。
頭のタンポポが、風に揺られて気持ち良さげにしていた。
「にゃ~ん」
俺に気付いたツツオウが挨拶をしてきた。
「おう、おはようツツオウ。元気にしてたか?」
「お? エル、もう動けるのか?」
そこに、ライオットとプルルがやってきた。
「やぁ、食いしん坊。体の方は……いや、魂か。
魂痛は、もういいのかい?」
「まだ、少し痛むけど……無理しなければ大丈夫さ」
その言葉にプルルは……
「無理しなければ……ねぇ? しない自信は?」
と、聞いてきたので、俺は……
「ない!」
と、即答した!(ドヤ顔)
「ダメじゃないか」
と、すかさずツッコミを入れてくれる相方のライオット。
すっかりツッコミ役がさまになってきたな。
「お? エルティナ君おはよう! もう良いのかい!?」
俺の後ろから、やたら元気なあいさつが飛んできた。
「ややっ!? その声は!?」
俺は振り向いた。ぷぴっ!
ムセルを抱えた、ゴーレムファイターこと……フォウロ・キョウダがいた。
「おはよう! ゴーレムファイター! ムセルも、おはよう!」
エスザクの腕を上げて、挨拶の代わりとするムセル。
うんうん。だいぶ馴染んできたな。
「ムセルはほぼ、修理……いや、治療は終わったよ。
いや、大変だったよ! 特に左手がボロボロでね?」
「う……やっぱり『裂破桃撃拳』の威力に、腕が耐えられなかったのか……」
本来、俺がムセルに『ヒール』を施せば、よかったのだが……
残念ながら俺は魂痛で、まともに動くこともできないでいた。
ましてや「魔法なんてとんでもない!」と、皆に止められていたのだ。
自室に戻ってから、じっくりと丁寧に治してやろうと思ったのが仇となった。
いきなり魂痛になるとは、だれが予想できたであろうか!
……絶対いねぇっ!(確信)
そのままにしとくのは、かわいそうなので
見舞いに来たプルル達に頼んで、ムセル達の治療を頼んだのだが……
「でも、まさかゴーレムファイターが、治してくれたとは」
「なに……これくらい、お安い御用さ」
やだ……ゴーレムファイターすてき! ほれてまうやろがっ!
「そうだ、会えたついでに『ゼンバネンス帝国』のことについて教えておくよ」
「よろしく、ゴーレムファイター。俺も気になっていたんだ」
ゴーレムファイターは「わかった」と言って
『ゼンバネンス帝国』のその後について語り始めた……