表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
食いしん坊エルフ  作者: なっとうごはん
第二章 身魂融合 命を受け継ぐ者
113/800

身魂融合・英雄の傷跡

『さあ! 遂にグランドゴーレムマスターズ決勝も

 佳境に差し掛かってきました!

 果たして、この戦いに勝利するのは「モモガーディアンズ」か!?

 それとも「ゼンバネンス帝国」か!?』


『ギュンターの魔力光線を、どう攻略するかで勝敗は決まりますね。

 両チームの動きに注目したいです』


もう、実況解説始めてる!? 早い! 早いよ!?

二人は放送席を、直しながら実況していた。


『ザッキー、もうちょっと詰めてくれ』


『暑苦しい、離れろ』


半分になってしまった長椅子に無理やり座っている。

会話聞こえてんぞ?


「ふん……木偶ごときが、何体いようと敵ではないが、念を入れておくか」


ギュンターが両腕を上げる。

すると、今まで少しも動かなかったトラとゴリラのゴーレムが

ビクンと震え、ギュンターの前に出た。


「さあ、いけ! さもなければ……わかっていような?」


その言葉に、二体のゴーレムは残った黒いローブの二人を見た。

そう言うことか! こいつ等も自分の主人を守るために!!


意を決したのか……二体のゴーレムは、ムセル達に襲いかかった!


ムセルがヘビーマシンガンで応戦する!

しかし、二体は避けようともしない! そのまま突っ込んでくる!


「捨て身!? 避けろ! ムセル!!」


こいつ等の目的は、おそらく……ムセル達に取り付いて、動きを封じること!

案の定、ギュンターは魔力光線をチャージしている!


攻撃を食らうことを、覚悟して突っ込んで来るやつに

半端な攻撃は通用しない。

遂にムセルが捕まった!


「くかかか! よくやった! 死ぬがいい!」


ギュンターが魔力光線を放つ! 狙いは……ムセル!

しかも、味方諸共ムセルを破壊するつもりだ!


しかし! そこにイシヅカが割って入った!

その手には……十個もの盾が重なって存在していた! 持ち過ぎぃ!


「イシヅカッ!!」


プルルが悲鳴に近い声でイシヅカの名を呼ぶ。

魔力光線が盾に当たり、盾は次々に融解していく!

ダメだ! 持たない!


だがイシヅカは、あきらめてなかった!

赤褌から、次々と盾を補充して攻撃を防いでいる!


「おのれ! 小賢しい! あきらめろ! 最早、時間の問題だ! 

 貴様等は我の糧となるのだ!!」


魔力光線の出力を上げるギュンター!

融解する速度も上がる! ムセルは動けない!


「にゃーーーーーーーーーーーーんっ!」


二人のピンチに、ツツオウが反応する!

準決勝の時と同じだ!

ツツオウの体から溢れる桃色のオーラ!

しかし、今回はそれが……頭の草に集まる!! いったい何が!?


やがて、ツツオウの体から溢れるオーラは収まり

そして……


ぽんっ! と、つぼみが花開いた!

その花は……タンポポだった!


「………………」


会場が沈黙した。それだけなのか? ツツオウ。


ふぃ~……と、いった感じで地面に座るツツオウ。

何がしたかったんだ!? 花を咲かせるところを見せるために……?


そこで、俺の思考は停止することになった。


「な……!?」


浮いていたのだ。

ツツオウの茶色いたてがみが。

十個の……遠隔操作砲台が!


「にゃ~ん!」


ツツオウの鳴き声を合図に、茶色い砲台がギュンター目がけて乱れ飛ぶ!

そして……放たれる砲撃! 凄まじい轟音と爆発がギュンターを吹き飛ばした!!


「ぐわぁぁぁぁぁっ!?」


砲台はツツオウの元に戻る! ……いや、何故かタンポポの元に戻っている。

ひょっとして……


『あの花……凄まじい桃力の保有量だぞ!? どうなっている?』


『桃先生ぇ……』


どうやら、あの花に桃先生の『やりすぎちゃった』が詰まっていたようだ。

道理でツツオウの能力だけ、とんでもなくなっていたわけだ。

ようやく理解できた。


『おおっとぉ!? またしてもツツオウだっ! たてがみだと思われていたものは

 何と遠隔操作砲台だったぁぁぁっ!!」


『ステートで確認しましたが、ツツオウ本人に能力はありませんでした。

 恐らくは頭の「タンポポ」が操っているのでしょう』


「でも、あの二人で『ツツオウ』なんだな……?」


「あぁ、そうだ! いいぞっ!『シシオウ』!!」


ムセルの動きを封じていたゴーレム達が震えている。


俺はよく見てみた。そして理解した。

恐怖じゃない、悔しくて、悔しくて……泣いているのだ。

涙は流れない。玩具だから。

でも、魂を持ち心を持っている。


ムセルが、ゴリラゴーレムの肩を優しく掴んだ。


『あとは任せろ』と言った気がした。


ゴリラゴーレムとトラゴーレムは、ムセルを離し……力無く座り込んだ。

束縛を解かれたムセルは……かつてないほど、怒りに満ちていた。

ムセルの体から溢れる桃色のオーラ。


「こんなムセル……見たことねぇ」


ギュンターが起き上がりムセルと対峙した。


「っ!? 貴様!? 何だその桃力は!!」


ムセルが飛んだ! ……いや、空中をローラーダッシュしている!?

ギュンターは、苦し紛れにムセルを叩き落とそうと、手を振るが当たらない!

そして、ムセルの……いや、エスザクの腕に付けたパイルバンカーが

アッパーカットの要領で、ギュンターの顎目がけて振るわれる!

しかし! 反応が鈍い!


「遅いわ! 死ねいっ!」


ムセルを叩き落とそうと、手を振り上げるギュンター! 万事休すか!?

いや! 先にパイルバンカーがギュンターに突き刺さった!


「イシヅカ!!」


イシヅカが釣竿で、エスザクの腕を釣り上げて、速度を上げていたのだ!

釣竿万能説! まじっぱねーっす!!


ガウンッ!!


パイルバンカーが放たれた!

ギュンターの顎を突き抜けて、口を使えなくさせることに成功する!


「ぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!?」


あ……喋れはするんだ?


パイルバンカーをパージして地面に着地するムセル。


『ムセルのパイルバンカーが炸裂ぅぅぅぅぅっ!!

 ギュンターの口が塞がれたぞっ!!』


『チャンスですよ! この機会を逃す手はありません!』


そうだ、ムセル達も連戦で疲労が蓄積している!

ここで決めないと、あとがなくなる!!


「くがが……おのれ! おのれぇぇぇぇぇ!!

 我が力よ! 我に帰れ! ……全てだ!!」


ギュンターが、自分の力を掻き集めだした!


ギュンターが憑いていた少女から、黒いローブの二人から

ゴリラとトラのゴーレムから……黒い靄が出てきて、ギュンターに吸い込まれた。

ばたばたと倒れる黒いローブの二人。

どうやら、ギュンターの支配から解放されたようだ。


「これで……我の力は完全となった! 貴様等など……」


そこでギュンターは絶句した。


「ムセル……!」


ムセルの右腕、エスザクの右腕から……淡い緑の光が溢れ出していた。

ムセルはゆっくりと、しかし……力強く天に拳を突き上げた!

そして、左肩に大きな傷が浮かび上がる!


『身魂融合・英雄の傷跡。

 身魂融合の型の中で、最も効果が高く、最も……重く、悲しい型だ』


『ムセルは……背負ったのか? エスザクの力と悲しみを……』


桃先輩がムセルの身魂融合を説明してくれた。


取り込む者は、取り込まれる者の力と悲しみを背負うことになる。

そしてそれは……大きな傷となって刻まれることになる。

決して、忘れることなき……決意の証として。

それが身魂融合・英雄の傷跡。


「な、何故!? 玩具ごときが身魂融合を行えるのだ!? あり得ん!!」


ギュンターは、完全にテンパっていた。

その隙を逃すイシヅカではなかった!


赤褌から、大量の土や草、石やら木端をぶちまけた!


「にゃーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーん!!」


そう! ツツオウが『獅子王』に、なるためのものだ!


全ての材料を取り込み、猫は獅子へと変わる!

再び現れる、桃色の獅子!


「ゴォォォォォォォンッ!!」


そして、その背には……

巨大な幅広く長い剣を両手に携えたイシヅカがいた!

獅子王に翼が生えたようにも見える。


さぁ! 最後の攻撃の準備は整った!

ギュンター! おまえが、今まで撒き散らしてきた、恐怖と絶望は

今……ここで打ち砕かれる!

ムセルと、イシヅカ、獅子王によって!!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ