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食いしん坊エルフ  作者: なっとうごはん
第二章 身魂融合 命を受け継ぐ者
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食らう者

「エル!? どうした!? しっかりしろ!!」


ライオットの声で我に返る。だが……それだけだ。

状況は、変わらないどころか、悪化の一途をたどっている。


「ラ、ライ……」


俺は情けない声を出してしまった。

恐らく……俺は、泣きそうな表情になっているだろう。


「また、桃先輩に怒られたのか?

 大丈夫、エルならやれるさ? 俺達が付いている」


「んふふ……僕も及ばずながら応援してるよ?」


二人が笑顔で、俺を励ましてくれている。

知らないのだ……今、俺が決断を迫られていることを。

でも、少し力が湧いてきた。


小を切り捨てて、大を取る? ……違う。

小のために、大を捨てる? ……それも違う!


小も、大も、全てが大切な命と魂だ!

でも……俺には、全てを守る力は!! あきらめるしか……ないのか!?


『あきらめたら……そこで終わりだよ?』


……!!


何時か聞いた言葉。

心が折れそうになった時に聞かされた言葉!


あきらめるな! 未熟でも見習いでも! 困難ってやつは気軽にやってくる!!

考えろ! どうすれば、この困難を打破できるか!

俺の力で……! 俺の……!?


………………


……そうか、俺はこんな簡単なことに、気が付かなかったのか。

そうだ、俺は一人じゃなかった。頼れる仲間達がいたんだ。


ありがとう、ライオット、プルル!

俺はやってみるよ! 今! この場所、この時間で!

皆の力を借りて! 限界を超える!!


「皆の力を貸してくれ! 俺は今! 自分の限界を超える!!」


俺は声を張り上げて頼んだ!

この会場に残っている……全ての命と魂に!


「エル……何かが、起こってるのはわかった。

 どうすればいい? 教えてくれ」


「あの黒いオーラに関係してることだね?

 僕も協力するから、教えてくれないかぃ?」


ライオットとプルルが、真っ先に力を貸してくれると言ってくれた。


「無論……私達も、お力添えさせていただきます」


ミカエル達も、ガイナお姉さん達も……皆、皆力を貸してくれると言ってくれた!

こんなに嬉しいことはない!!

で、あれば! あとは実行あるのみ!


「祈ってくれ! 自分の大切な人のため! 願いでもいい!

 大切な人と、何時までも居たいとか! 幸せなきおくでもいい!!」


「食いしん坊!? そんなことでいいのかぃ?」


俺はうなずく。

これは賭けだ。ヒントはみどりちゃんにあった。

できるはずだ……『陽と陰の力』は表裏一体。


皆が祈り始める。一心に祈る。……祈る。


「ふん、何をするかと思えば……神頼みか!? くだらんな!」


ギュンターが何か言ったが……今はそれどころじゃない。

俺は精神を集中させる。鋭く、鋭く、繊細に。

そして……俺は掴んだ。 力を!!


「身・魂・融・合!!」


祈る皆から放たれる、淡く輝く緑色の光!

観客から、ライオットやプルル、クラスの皆。

更に、野良ビースト達が! そして……俺の肩にいる、いもいも坊やまでも!!


ありがとう! ありがとう! みんな!!


「んん? 貴様、遂に乱心したか? 自分の仲間を食らうとは?」


わかっていないようだな? ギュンター!

今、俺が食っているのは……『祈り』だ!

皆の、優しさ、勇気、愛。祈りは力! 祈りは……『陽の力』そのものだ!


会場を埋め尽くす……淡い緑色の光!

尽きることがない……無限の力が俺に入ってくる!


「こ……これは!? バカな!? こんなことを、するやつがいるとは!?」


「そのバカが……俺だ!」


この世で、一番恐ろしいのはバカだって……知らなかったのか?

今頃、ビビっても遅い!


『その力を……魂に取り込み、廻すのです』


いつか聞いた声。これは、桃先生の声!!


『廻しなさい勇気の力で、その力を愛で包み、希望を生み出すのです』


「うおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!」


俺は桃先生に従い、実行する! 皆のくれた力を、魂に取り込み……!

今……俺は限界を超える!!


「俺は見習いをやめるぞぉぉぉぉぉっ!! 桃先輩ぃぃぃぃぃぃっ!!」


俺の何かが、弾けた! たぶん『限界』ってやつだろう。


『それが、おまえの選んだ答えか。

 我々の想像を超える答えだ。……見事!』


桃先輩はそう言うと『桃源光』の知識を俺に流してきた。

桃先輩……俺が最初っから『どちらも選ばない』って読んでたな?

全然、驚いてなかったし。ちょっとくらい驚いてもいいのに。……ねぇ?


小さな俺の体に、溢れんばかりの桃力が渦巻いている!

それは体から溢れ……桃色のオーラを発生させていた!

巻き上がる俺の長い髪は……桃色に変わっている!?

染めた覚えは、なぃんですがねぇ?


俺はギュンターを見た。……驚きで顔が歪んでいる。

よぅし! ここで一発、ビシッと言ってやるか!


「ギュンター! おまえが、憎しみや恐怖を食って、絶望を生み出すなら!

 俺は……愛と勇気を食って、希望を生み出してやる!」


たじろぎ、後ずさるギュンター!

さぁ! そのチート能力を引っぺがしてやる!!

ユクゾッ!


「とぉぉぉぉぉぉ! げんっ! こぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!」


俺の全身から放たれる、桃色のオーラが

みどりちゃんの『黄泉の光』を打ち消した!


「み、見習いごときが……何故使える!?」


「見習いではない。エルティナは、もう一人前の『桃使い』だ」


俺の口から発せられる低く落ち着いた声。


「その声は……貴様! 『無音の桃夜』か!?

 何故、貴様ほどの者が……こんな小娘に憑いているのだ!!」


……桃先輩って、そんなカッコいい名前あったんだ。知らんかった。


「ギュンター! 最早、おまえに打つ手はない!

 潔く、勝負の二文字で決着をつけろっ!!」


「ぐ……小賢しい! いいだろう! 小細工なしで殺してくれる!」


全ての『陰の力』を破られたギュンターは、遂に正攻法で戦うようだった。


「俺が……できるのはここまでだ。

 ムセル! イシヅカ! ツツオウ! 頼んだぞ!」


ようやく、ムセル達は反撃に移った!


今までの鬱憤を晴らすが如く、猛攻に打って出る『モモガーディアンズ』!

最早、みどりちゃんを守る『陰の力』はない!

次々と命中していく攻撃!


「ちっ!? こうなれば……」


と、言った次の瞬間。

ギュンターが床に崩れ落ちた!


「少々、早いが……我が肉体の力! 思い知るがいい!!」


そうか! ギュンターめ! 完全に、みどりちゃんの方に乗り移ったのか!?


小みどり達が次々とみどりちゃん……

いや、ギュンターに向かって行き……食われていった。

再吸収しているんだ! どんどん、大きくなっていくギュンター!


「くかかか! これで最早、貴様等に勝ち目はない!

 消えろ! ゴミ虫共が!!」


ギュンターが口に『憎しみの光』? を溜めだした!

それって、効かないんですがねぇ?(呆れ)


「! 避けるんだよ! それは『憎しみの光』じゃないよ!!」


プルルの咄嗟の指示で、間一髪回避に成功するムセル達!

うおっ!? リングが抉れている!!


「どういうことだ!? プルル、あれは『憎しみの光』じゃないのか?」


ライオットがプルルに聞く。


「うん。あれは、ただの魔力光線だね。

 ただし、威力がおかしい。当たれば……人も殺せるだろうねぇ」


それで『陰の力』の反応が無かったのか。


「それに、背中に付いているファンが逆回転……

 つまり、正しい使い方に戻ってたから気付いたのさ」


「よく見てるなプルル。俺、全然気が付かなかったぜ?」


はい、俺もです! サーセン!!


しかし……正攻法になっても強いな!

体格差もあるが、口から放たれる光線が厄介だぞ!?


「ここが正念場……だな」


「ゴーレムファイター!」


ゴーレムファイターだけではない。

共に戦ってくれた皆が、最後の戦いを見届けるために

俺の元にやってきた。


「あの口の魔力光線を、どう攻略するかが勝負の分かれ目だろう」


「ザッキー・タケヤマさん」


二人は、俺達に向かって笑って言った。


「さて! そろそろ俺達も、実況解説に戻るとするか!」


「そうだな。ようやくグランドゴーレムマスターズの決勝だ。

 少々、始まるまで長かったがな?」


そう言って、自分たちの席に走って行った。

本当に、ゴーレムマスターズを愛している人達だなぁ。


ともあれ、これで条件は五分! こっからはお前達の力次第だ!


ムセル! おまえも俺も一人じゃない!

忘れるな! 友を……兄弟を! 力を合わせて……戦うんだ!

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