よみがえる伝説の戦い
「こいつ等を相手にしても、疲弊するばかりだよっ!
本体を倒さないと!」
と、ガイナお姉さんが叫ぶ。
言われてみればそうだ。いくらでも増えるのであれば
いちいち構ってられん。
本体のみどりちゃんを、やっつけてしまわないと!
「みどりちゃんへの道を……こじ開けるんだ!
ムセルを中心にして突撃陣形をとれっ!」
ゴーレムファイターがそう指示する。
指示を理解したパーフェクトGが先頭に立つ。
その脇を、パーフェクトGGとFAGが固めた。
その後ろに『ブラックスターズ』と『ホーリー』が並び
続いてムセル達が……それを囲うように他のゴーレム達が守りに付く。
「突撃だ! ムセル達を必ず、決戦の場に送り届けるんだ!!」
ゴーレムファイターの号令!
それに合わせて、ムセル達がみどりちゃんに目掛けて突撃する!
「ええい! おまえ等! 何を手こずっている!?
さっさと始末してしまえ!」
ギュンターが、小みどり達に激を飛ばすが、ムセル達の勢いは止まらない!
更に赤いゴーレム……確かナインだっけな? が、空中から攻撃を加えている!
ていうか……変形してる!? カッケェェェェェェェェェェェッ!!
変形ゴーレムなんてあるのか!
俺はチラリとムセルを見て……
「ムセルも変形してもいいのよ?」と言った。
俺を見たムセルは、困った顔をしているように見えた。
正直すまんかった。(猛省)
そして、ファンタデュの上に乗っている白いゴーレムが
狙撃銃で、上空から小みどりを狙い撃ちしている!
「コーター! 試合で活躍できなかった分、ここで目立つのよっ!」
主のカスミお姉さんにそう言われて、必死に狙撃銃を連射するコーター。
俺は密かに、コーターに同情しておいた。……がんばれ、コーター。
「ちょっと! ちゃんと当てなさいよね!?
今回仕方なく、ファンタデュに乗せてあげてるんだから!!」
スティちゃんは、既に役作りをやめて素に戻っていた。
うん、そっちの方がスティちゃんらしくて良いと思う。(確信)
「先頭の白い奴に攻撃を集中させろ! 撃てっ! 撃てぃっ!!」
小みどり達から放たれる『憎しみの光』!
それは、全てパーフェクトGに集中していた!!
「パーフェクトG! ガードだ!!」
いやいや! ガードじゃ間に合わんでしょう!?
あの量の『憎しみの光』じゃ『桃の加護』が持たない!
「すまん! パーフェクトG! いま陣形を崩すわけにはいかない!」
なんてこった! ムセル達のためにそこまで……!
何とかできないか!? あー!? 考えてる暇もない!
『憎しみの光』はパーフェクトGに迫っている!
しかしその時! 何者かが、パーフェクトGの前に躍り出た!
「ダイブルトン!?」
ダイブルトンであった。
ダイブルトンは仁王立ちし、全ての『憎しみの光』を受け止めた!
ダイブルトンの象徴とも言える鎧は、ことごとく砕け散り無残な姿となった。
しかし……ダイブルトンは生きていた!
「ダイブルトン、よくやった。……あとは任せた」
片膝を付いて動けなくなったダイブルトン。
「テスタロッサ! ダイブルトンを守れ!
黒いやつ等を、近付けさせるんじゃねぇ!」
「わらら! ……兄弟を死なすんじゃねぇぞ!!」
てっちゃと、わららが、ダイブルトンを守る。
「ありがとう! ダイブルトン! 決して君の行為は無駄にしない!
行けっ! パーフェクトG! もう一息だ!!
全砲門……開け! 撃てぇぇぇぇぇっ!!」
「パーフェクトGG! 全砲門開け! ……発射だ!!」
「FAGも続いて! 火力を集中よ!」
伝説の三戦士が火力を集中する!
うひぃ!? すんげぇ威力だ!
みどりちゃんを、守っていた小みどり達が、一斉に消滅していく!
「な、何だと!? バカな!?」
そこには『道』ができていた。
……みどりちゃんに至る道だ! 皆で切り開いた道だ!!
「今だ! リック! ドゥ! ムゥ!『シューティングストリーム』!
『道』を守るんだ!」
「アーク! 彼等に続くんだ! 聖光弾で弾幕を!!」
『道』を守るためにリック達やアーク達が雪崩れ込んだ!
「我々も! ……ハッ!」「遅れるな! ……フッ!」「守るのだ! ……フシッ!」
そこにマッスルブラザーズの、ムキムキゴーレム達も加わる!
そしてムキムキゴーレム達は、一斉にポージングをとり……
「必殺! マッスルフラッシュッ!」
むっちゃ、暑苦しい笑顔で、目もくらむような光を放った!
「うをっ! まぶしっ!?」
光が収まったあと、何故か……悶絶して倒れている小みどり達の姿があった。
いったい、何があったんだ?
「ぐ……何だ!? それは!?」
ギュンターも、ビックリしていた。……安心しろ、俺もビックリしたから。
でもこれで『道』は、確保されたようだ。
「行くんだ! ムセル! イシヅカ! ツツオウ!
皆が作ってくれた『道』を進んで!!」
俺の言葉に反応して、勢いよく飛び出すムセル達。
目前には、みどりちゃん率いる『ゼンバネンス帝国』がいる。
さあ! 決戦だ! 本当のゴーレムマスターズを見せてやる!
◆◆◆
「これは……何という光景だ」
グランドゴーレムマスターズ始まって以来の異常事態。
しかも、相手は……『全てを喰らう者』。
「じゃが……いくらホビーゴーレムであっても、その力は脅威。
これ以上、野放しにはできぬが……」
特別ルームから見下ろすリングでは現在
『全てを喰らう者』と『ゴーレムマスター』達による戦いが繰り広げられていた。
エルティナには悪いが、介入した方が良いのやもしれぬな。
今、あの子を、失うわけにはいかぬ。
この国を背負って立つ者の一人なのだから。
「御爺様。あれを……」
孫のエドワードが、エルティナを指差して言った。
「あれは……いったい?」
エルティナから、淡いピンク色のオーラのようなものが溢れ
会場を包んでいく。
それは、何と『全てを喰らう者』の攻撃を防いだのだ!
「な、なんと!?『全てを喰らう者』の攻撃を防ぎおった!?」
信じられぬ!
あの幼き体の、どこに……このような力を秘めているのか!?
じゃが……いくら攻撃を防げても、攻撃できなければ勝てぬぞ!?
『全てを喰らう者』がその身を削り、約三百体もの分身を作りだした。
呆れる。このようなことも、やってのけるとは!
このようなものが、世に放たれれば世界は滅ぶだろう。
「しかし……あるいはあの子なら……?」
ワシは不安と焦りを無理やり心の奥にしまい、注意深く戦いを見守る。
やがて、エルティナのゴーレム達に加勢する、かつてのライバル達。
「なんと……攻撃まで通じるのかっ!?」
『全てを喰らう者』が生み出した分身体を、ホビーゴーレムが滅ぼしているのだ!
衝撃的な光景だった!
ワシが、手も足も出ずに散々打ちのめされた者を、滅ぼしている!
「これも、エルティナの……聖女の力なのじゃろうか?」
「はい、御爺様。きっと、そうでしょう。」
ワシは再び、エルティナをみる。
エルティナは、震えていた。正確には、足がガクガクしている。
相当、無理をしているのだろうと容易に理解できた。
「いかんな……あのままでは」
その時、会場の至るところから、淡い緑色の優しい光が溢れ
エルティナを囲っていった。
その光の発生源は……何と食べ物だった。
「こ……これは!?」
「身魂融合です……御爺様。食べ物達がエルに応えたのでしょう」
何という優しい光じゃ……何という美しさじゃ……
これが、アルフォンスが言っておったエルティナの身魂融合か。
『全てを喰らう者』の身魂融合とは全く違う。
そして……
「あやつ等め……我慢の限界がきておったか。
まぁ、仕方がないかのぅ。
ユウギ男爵も、上手くやってくれたようじゃし……いいじゃろう」
そこには、かつて最強と言わしめられた
チーム『PG』が再集結していた。
一丸となって『全てを喰らう者』達に戦いを挑むホビーゴーレム達。
ワシはそこで気付いた。
「こ、これは……マイアスの化身と全てを喰らう者との戦いの、再現ではないか!?」
かつて起こった戦い。おとぎ話に残る伝説の戦争。
それが規模こそ小さいが……今、この場で起こっているのだ!
よもや……あの子は、エルティナは女神マイアスの化身なのか!?
であれば、この戦いの行く末を見届けなくてはならぬ。
ワシは再び、戦いを見守ることにした。
あの子ならきっと、この戦いに勝利する気がした。
何故なら、多くの勇者達が集い、共に戦ってくれているからだ。
かつての伝説どおりに……