表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
食いしん坊エルフ  作者: なっとうごはん
第一章 珍獣と聖女と仲間達
11/800

11食目 治療所の実態

実地訓練なう。


只今、俺は治癒魔法をモリモリ使いながらケガ人を

片っ端から治してるところだ。

いやぁ、治癒魔法スゲー! どんなケガも立ちどころに治っちまう!

元居た世界の外科医も裸足で逃げ出すレベルだぜ。


でも、病気等の治癒魔法は、高位魔法になっているので使える人は少ない。

具体的には素質がA以上のヤツ。


内科に関しては、元居た世界の医者に軍配が上がる。

向こうの技術力すげー。


でだ……現在五十人ほど治したところだが、一向に患者が途切れない。

どうなってんの?


気になったので、エレノアさんに聞いてみたら……


「魔族との戦闘で、負傷した方が『テレポーター』の魔法で

 送り返されているのです」


その方々を治療することが、後方支援である我々の仕事です。と、付け加える。


『テレポーター』上位空間魔法。魔法で空間に『門』を作り繋げる魔法だ。

一度設置すれば繰り返し使える優れものだが、使用者一人に付き

一セットしか設置できない。しかも設置した者が死ぬと消滅する。

中々使いにくいが、効果的に使えればかなり便利である。


「それで治療の終わりが見えないのか……」


続々と来るケガ人達、疲労の濃い新人ヒーラーと復帰組の爺さん婆さん。

これは酷い。デルケット爺さんが俺に頼み込むわけだ。


俺の方は、まだまだ余裕がある。

現時点で五倍ほど、他のヤツ等より治療を施しているにもかかわらずだ。

まあ、エルフだし魔力が高いのだろう。治癒魔法の練習にもなるし一石二鳥だ。


そんなこんなで、今日の治療は夜まで続いた。

途中、若手ヒーラーが数名脱落したが、なんとか乗り切ったようだ。

若手しっかりしろ。プンスコ。


「お疲れ様でした、初日なのに大活躍でしたね?」


「それほどでもない」


俺は謙虚に答えておく、この心構えが大切だと偉大な先人も言ってたし。


「では、食事を摂って今日は休みましょう……明日も忙しいですよ?」


「そのようだなぁ……」


今日一日で、全てのケガ人を治せたわけではなかった。

比較的、ケガの度合いが軽い者は明日の治療に回ってもらったのだ。

せめてもう少し人がいれば……む?

イケメンと同じ考えしてた!? くそぅ……迂闊だったぜっ!


◆◆◆


ぐぬぬ……と、唸りながらテクテクと歩く隣の少女。

エルティナ様は聖女で在らせられます。


白エルフでありながら魔法の素質は全ての属性がD。

武器関連の素質は全てEだそうです。


全ての素質が治癒魔法に持っていかれたと嘆いておりましたが……

妙に納得いくものでした。


特に治癒魔法の習得速度は凄まじく、中級魔法までは三日で無詠唱に

到達いたしました。

残り四日で上級魔法を習得、無詠唱化させています。本当に凄まじいお方です。


でも……眉間にシワを寄せて、小声での高速詠唱は正直怖かったです。

神聖なはずの呪文が、何かの呪いに変わってるような気がしました。


今日も治療所は、大勢の負傷者で溢れ返ってました。

魔族との戦争。その前線で負傷した方々です。


「しっかり!? だいじょうぶですよ!? 必ず治しますからね!!」


ヒーラー達が必死に治癒魔法『ヒール』を負傷者達に施していきます。


練度にも依りますが、切断された手足も繋げることができるほどの

優秀な初級治癒魔法です。

若手ヒーラーが必死に『ヒール』を使って治療する中、

その……五倍くらいでしょうか?

とてつもない速度で、傷を治していく少女の姿がありました。

……そう聖女様です。


「ほい次~」


やる気が無さそうな、気だるそうな言い方ですが『ヒール』を施せば

たちまちに傷が癒えていきます。頼もしいのですが、正直恐ろしくもあります。


魔力の枯渇。

魔力が枯渇すると最悪、死に至るケースがあります。

しかも治癒魔法は魔力消費が高く、連続しての治療であれば

豊富な魔力が要求されるからです。


治療に専念するあまり突然倒れ、息を引き取るヒーラーは珍しくありません。

一時期はその行為が美徳とすらされ、大勢の貴重なヒーラーが亡くなった

時期がありました。


現在は無理をせずに、休むことを義務付けてはいますが……

実際はそうもいきません。ここは敵兵なき戦場です。実際に人が死にます。


治癒魔法の力量が追いつかず死なせてしまう。待ってる間に死んでしまう。

既に心肺停止状態で運び込まれる……


一縷の希望に賭けて運び込まれる者達。

その願いを可能な限り叶えるのが……我々ヒーラーの使命です。

ケガが治って感謝されれば、死なせてしまい恨み言を投げかけられる。

生と死が付きまとう……そういう場所です。


そこに聖女様が降臨した……と、いう噂はあっという間に広がりました。

マイアス教最高司祭であるデルケット・ウン・ズクセヌ様と、

ラングステン王国国王ウォルガング・ラ・ラングステン様により、

ある程度の情報規制はされましたが……それでも一般市民の方が

最後の希望を賭けて訪れています。


病気の治療。

聖女様なら可能でしょう。


しかし、それでは兵士や冒険者達の治療が間に合わずに死なせてしまいます。

我々は市民の皆様が、ここを訪れていることを聖女様に教えていません。


ぶっきらぼうですが、性根が優しい聖女様。

実は細やかなことに、然りげなく手を貸している聖女様。

「嫌々やっている」と言いながら率先して仕事をする聖女様。


お許し下さい。

少数を救うより、大勢を救うために……我々は貴女様に秘密を作ります。

発覚すれば激怒するでしょう。


何故言わなかった!?……と。


言えないのです。無茶をさせて、貴女様を死なせるわけにはいけないのです。

今……貴女様を失うわけにはいけないのです……


故に一般市民の皆様には……生贄になっていただきます。


全ての罪は私達が背負います。聖女様はただ……希望でいて欲しいのです。

そう……数々の絶望的なケガから救い出した兵士の方々の希望に。

そのためなら私は……いえ、私達は……


◆◆◆


「やはりオムライスは至高、はっきりわかんだね」


ミランダさんのオムライスをじっくり味わった後、自室に戻った俺は

エレノアさんのことを考えていた。


何か……おかしい? と、いうか日に日に元気がなくなっていってる。

まさか……あの日か? ふきゅん!?


「……ふふっ、ちょっと下品になってしまいましたね」


とか、言いつつトレーニングに没頭中。

まあ、エレノアさんが元気がないのは間違いない。


付き合いは一週間ほどだが、びっちり一緒にいれば

だいたい察することはできる。そう俺は探偵。


具体的には……体は五歳児、心はおっさん! 幼女探偵! エルティナ!!


……コホン。ちょっと恥ずかしくなったのは秘密な。


「……なんで元気がないんだろ?」


口に出しては見たものの……答えは出ず、考えは堂々巡り。


「まあ、明日聞いてみるか」


考えるのが面倒臭くなったので直接聞くことにした。

トレーニングの締めとして桃先生を体に補給して終了だ。


「毎日続けなさい……それが力になる」と言われた気がした。


「わかりましたっ! 桃先生!!」


そう言って桃先生にかじり付く。

とても優しい味がした。

もう、桃先生なしじゃ生きていけないかも……びくんびくん。


そう思いながら、ふかふかのベッドに潜り込む俺であった。


ぐ~すかぴ~、ふきゅきゅん。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言]  今更だけどお給金は如何程なんだろうか…。
[一言] 付き合いは一週間ほどだがとありますが、時間経過を考えると2~3週間くらいの付き合いでは?
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ