伝説のホビーゴーレム
「突っ込めぇぇぇぇぇぇっ!!」
俺の号令を合図に、ムセル達十五体のゴーレムが
黒いゴーレム達三百体に突撃する!
ムセルを先頭に『モモガーディアンズ』が先陣をきった!
それに続くのは『ブラックスターズ』と『ホーリー』だ。
「小賢しいわ! たかが数体増えたところで何になる!?
全て食らい尽くしてくれるわ!!」
ギュンターの台詞が終わると同時に、小さいみどりちゃん達……
よし『小みどり』と命名しよう。
が、一斉に『憎しみの光』を放ってきた!
しかしそれは全てムセル達に当たる前に霧散していく。
『桃の加護』の力である。
『エルティナ「桃の加護」を再び施すんだ。
「陰の力」を防ぐ度にその力は弱まる』
『マジで!?』
桃先輩が脳内会話で再び『桃の加護』をムセル達に施し直せと言われた。
「無茶をさせる」とは、このことだったのか……
正直きっついです! 桃先輩!
「ムセル! 受け取れ!」
俺はムセル達に『桃の加護』を施した。それに伴い抜けていく桃力。
強烈な脱力感と倦怠感。
うがががっ!? これはたまらん! がんばれ! 俺! 負けるな! 俺!
ガクガクと足が震える。冷汗が止まらない。
でも、こんなところで倒れるわけにはいかねぇ!
でも……このままじゃ、俺の桃力が尽きちまうのは時間の問題だ。
何か方法はないか?
俺が考えている間にも戦いは続いている。
流石に一気に突破は難しいようだ。
二百九十九体の小みどり達に阻まれ、本体のみどりちゃんには
ちっとも近づけていなかった。
「ちっ! リック! ドゥ! ムゥ! 『シューティングストリーム』だ!」
「アーク! 聖光弾! 道を切り開くんだ!」
皆も、がんばってくれているが状況は思わしくない。
やはり無謀だったのか? いや弱気になるな!
実際に戦っているムセル達は一切……弱気になっていないぞ!
親の俺がそんな弱気でどうするんだっ!
俺は気合を入れなおすために、ほっぺを両手で叩いた。ぺちっ!
「地味に痛かった」
「何やってるんだ? エル」
ライオットが心配そうに聞いてきたので「気合を入れなおした」と説明する。
「そうか」と言ってライオットも同じことをした。
「実は俺も……少し弱気になっていた。効くなこれ」
ライオットも弱気になっていたのか。
気持ちはわかる。
なんといってもこの戦力差だ。弱気にならないのがおかしい。
「効くだろう? 感謝してもいいのよ?」(ドヤ顔)
苦笑して「調子に乗るな」と言うライオット。
どうやら調子が戻ってきたようだ。よかった、よかった。
再び戦場を見れば、ムセル達の『桃の加護』が弱くなっていた。
俺は再び『桃の加護』を施し直す。
「ぎぎぎ……耐えろっ! 俺! ふんばれっ! 俺!」
ぷぅ!
いやん! でちゃった!
お尻から桃力が出てしまったようだ。
「食いしん坊……女の子が人前でしちゃいけないよ?」
「今のは桃力なんだ。……ホントウダヨ?」
「何で最後、片言になったんだよ?」
んもう! オナラの一つや二つで騒がないの!
今はそれどころじゃないんだから!
『エルティナ! 桃力が残り少ない! 手に持っている桃先生で補給するんだ!』
桃先輩がそう指示を出してくるが……俺は断った。
『桃先生は、今食べたらいけない気がするんだ。
だから他の方法を考えている。』
『それは……おまえの「勘」か?』
と、聞いてくる桃先輩。それに「勘」と答える俺。
『そうか、ならばそれに従えエルティナ。
おまえの「勘」は、おそらく正しい。
もう一つの方法を使う。おまえが嫌がった身魂融合だ』
『う……あれか。すっかり忘れていたのに』
身魂融合は、相手の肉体と魂を食らって、共に歩んでいく秘術だ。
その効果は、傷ついた魂と、肉体を修復し増強する。(できていない)
よって、今の俺が使えば桃力を回復することができる。
今使う、身魂融合の対象は、動物ではない。
……会場にある、お弁当やお菓子達である。
「会場のごはん達よ! 俺に力をわけてくれ! 身・魂・融・合!!」
すると……会場にいる観客が持っている食べ物達が、俺の願いを聞き入れ
淡い緑色の光になって、俺の元に集まりだした。
俺を包み込むように、ゆっくりと回転しながら、俺に入ってくる光達。
そう、今俺は……食べているのだ。全身を使って。
料理に魂や命はない、そう思っている人は多いと思う。
または、考えたこともない。と、いうひとが大多数だろう。
でも違うのだ。料理ですら魂や命を持っている。
それは作った人の想い。
美味しく食べて貰おうとする……優しさや愛情が料理の魂だ。
そして料理の元になった食材達が命だ。
俺が、この身魂融合を嫌っている理由は……ただ一つ!
味がわからない!
……に、尽きる。
だってそうでしょうがっ!?
せっかく美味しく作ってもらった料理達の味がわからないなんて
料理に対する侮辱ですよっ!? 申し訳ないったらありゃしないっ!!
でも、今回に限り我慢して身魂融合する。
ごめんね。美味しそうな料理達よ。
おまえ達の魂と命……無駄にはしないよっ!
俺の体に満たされていく優しさや愛情。
それが俺の桃力を増大させていく!
「ふおぉぉぉぉぉぉっ! み・な・ぎっ・て・きたぁぁぁぁぁっ!!」
俺から桃力が溢れて、会場の隅々までいきわたる!
それは……新たな桃の戦士達を生み出すことになった!
「すまない! おそくなった! ……ハッ!」
「我々も! ……フッ!」
「加勢するぞっ ……フシッ!」
「マッスルブラザーズ! 来てくれたのか!」
それだけではない、予選で戦ったチームの皆もきてくれている!
かつてのライバル達が集まってくれているのだ!
こんなに……うれしいことはない!!
「やってやる……やってやるぞ!」
「お、俺だって!」
「銃身が焼け付くまで撃ち続けろっ!」
次々と参戦していく、かつてのライバル達。
それでも、まだ戦力差を覆すには至らない。
次第に疲弊していくムセル達。
「がぁぁぁぁぁ!? パワーが違い過ぎる!?」
「わ、わぁぁぁぁぁぁぁっ!?」
「守ったら負ける! 攻めろっ!」
予選のライバル達も、がんばってくれているが……弱かった(呆れ)
これじゃ勝負になんないよ~!
カァオッ!
その時、一筋の閃光が小みどりを撃ち貫いた!
一撃で仕留めるとか、どんだけの威力なんだよ!?
戦場に舞い降りる赤い天使。いや……あれは死神だ!!
「その力……大き過ぎる。修正が必要だ」
「レイヴィ! アンタ……!?」
ガイナお姉さんが驚いている。
「何を驚いている? 仮にも俺達に勝ったチームが」
「助太刀にきたよ?」
「俺は面倒が嫌いなんだ……だから」
「消えろ! イレギュラー!!」と三人の声が重なった!
ここにきて、前回優勝チームが助っ人にきてくれたのはデカい!
徐々に、こちら側が押し返してきている!
「ふん……それで、どうにかなると思っているのか?
兵隊など幾らでも用意できるのだぞ?」
ギュンターが何か言った。サラッとトンでも発言をした!
言葉どおり、みどりちゃんが小みどりを吸い寄せて……食べだした!
食った分だけ大きくなっていくみどりちゃん。
そして、また分裂していく。それは、また小みどりとして再生する!
「切がない……」と、誰かが言った。
これはマズイ! せっかくの良い流れが途絶えてしまう!
「諦めるな! 諦めれば……そこで全てが終わるぞ!!」
この台詞は! かつて桃先生に送って貰った言葉!
その声の主は……ゴーレムファイター!?
「例え、絶望の淵にいても……希望は捨てるな」
ザッキー・タケヤマまで!
「信じることができる仲間がいるなら……ね?」
リィカさん!
彼等の手には、ホビーゴーレムが抱えられていた。
「あ、あれは!? まさか伝説の!?」
プルルがその三体のホビーゴーレムに反応して興奮しだした。
女の子が「ハァハァ」しちゃイケない!
「俺達がいながら、こんな暴挙を許しちまったからな。
せめて……この戦いで償わせてくれ!
いけっ! パーフェクトG!!」
トリコロールカラーのアーマーに包まれたゴーレムが戦場に降臨した!
右肩に大砲、右腕に二連銃、左手に大きなシールドを持ったゴーレムだ!
……カッケェェェェェェェェッ!
そして強ぇ!! 一撃で小みどりが爆発四散していく!
「そういうことだ、さぁ、暴れてこい! パーフェクトGG!」
「もう、権力になんかに屈しないわ! FAG! いって!」
続いて灰色の巨大なゴーレムと
ダークグリーンのゴーレムが、戦場にあらわれる。
パーフェクトGGの巨大な指は全て大砲だった!
放たれる光線に、小みどり達は抗えず破壊されていく!
更には口や腰辺りからも光線が放たれる! 火力半端ない!
FAGは武装はパーフェクトGと
ほとんど変わらないが盾を持っていなかった。
その分装甲が厚く、小みどり達の物理攻撃を全く受け付けていない。
「すっげー! これなら勝てるぞ!!」
伝説の三戦士の参戦に、俺達は希望を持って
再びギュンターに立ち向かった!
誤字 「感」
訂正 「勘」