表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
食いしん坊エルフ  作者: なっとうごはん
第二章 身魂融合 命を受け継ぐ者
107/800

桃結界陣

◆◆◆


「いったい、何が起こっているのだ?」


ワシは特別ルームで、決勝戦を見ていたのだが様子がおかしい。

長年グランドゴーレムマスターズを見守ってきたが

これほど異常な試合は見たことがない。

ホビーゴーレムで、相手選手に攻撃させるなどあってはならない。

準決勝では、何故か反則負けにならなかったが、察しは付いている。


「御爺様、この試合は異常です。試合を中止しては?」


孫のエドワードが、当然のことを言ってくるが……残念ながらできない。


「エドよ……この場においてワシに、その権限はない。

 そう言う取り決めなのだ……」


「そ……そうでした。申し訳ありません御爺様」


エドワードは謝るが……別に、そなたが悪いわけではない。

このワシが不甲斐ないから、こうなっただけのこと。

ワシは目を閉じ、眉間にしわを寄せる。そして、ため息を吐く。


まったく、忌々しい男だ。

血が、つながってなければ、すぐにでも処分できるものを。

じゃが……そのうち、尻尾を掴んでくれる。


ワシは再び、リングの上にいるゴーレム達を注意深く観察した。


大小様々なゴーレム達が、リング中央で睨み合っていた。

その中でも、一際大きい黒いゴーレムがいた。

本当に大きい、ホビーゴーレムの規格を超えている。

もう、普通の戦闘用のゴーレムで、通用するのではないか?


「むぅ……? あのゴーレムの雰囲気は……どこかで?」


あの黒い大きなゴーレムは、禍々しい雰囲気を纏っているのだが……

どこかで、感じたことがあるような……?


「……!? まさかっ!? あり得ん!!」


「お……御爺様?」


ワシの記憶に、該当したものが一つだけあった。

ウォルガング・ラ・ラングステンが、最も嫌悪するもの。

忘れたくとも忘れることができぬもの……!


「全てを喰らう者だというのか?」


◆◆◆


『まずは結界を張る! 名を「桃結界陣」と言う。

 使い方は、魔法障壁の展開に桃力を使って行うと考えればいい。

 魔力を桃力に置き換えただけだ。やれるな?』


『まかせろー!』


だったらイケるぜ! シャボン玉を練習した時にコツは掴んだ! はずっ!

まずは、桃力だ! ユクゾッ!(キリッ!)


俺は……心を燃やす。燃料は……勇気。そして、生み出すは……愛!!

そうだ! 桃力は愛の力! 俺の愛の力、見せてくれるわ!!


「いくぞっ!『桃結界陣』発動!」


俺を中心に、桃色の光が広がっていく。

慣れてないせいか、広がる速度は遅いが問題なく発動しているようだ。

ひと安心、ひと安心。……と思ってたら、またナイフが飛んで来た!


だから、ナイフはやめろって……それ一番言われてるから!

物理はやめろ! 物理は!! 俺が死んじゃう!!(震え声)


だが、ナイフは俺に届くことはなかった。日頃の行いが良いからだな!


「助かった、もうダメかと思ったよ」


「食いしん坊は、こういった攻撃が苦手だからな。俺が防いでやるさ」


マフティが、いつの間にか俺の傍に来て、ナイフを弾いてくれたのだ!

流石マフティ、かっくいいっ!


そして、マフティだけでなく……リンダ達も俺の傍に来ていた。

更にはチーム『ホーリー』や『ブラックスターズ』の面々も傍にいた。

皆が俺を守ってくれているのだ。ありがたいのぅ、ありがたいのぅ!


「ぐ……おのれぃ、下等生物どもが!」


「はんっ! その下等生物どもに、軽く防がれる攻撃しかできない

 アンタは、それ以下だね!?」


そのとおりです! ガイナお姉さん! もっと言ってやって!!


「調子に乗るな! 貴様らも食らってくれるわ!!」


「やれるものなら……やってみろ!!」


その場にいた全員の声が重なった。その声にギュンターは怯んだ。

その隙を付いて、ちゃっかり『桃結界陣』を完成させる。ふひひ、やったぜ!


「おっし!『桃結界陣』完成だ! これで観客に被害はでない!」


……よね? 桃先輩? でちゃったら相当恥ずかしいよ!?


『案ずるな。「陰の力」は元より、物理攻撃もある程度は防げる。

 あとは、おまえ次第だエルティナ。桃力を途絶えさせるな?』


わぁお。ずっと桃力を供給し続けないといけないのか。

それって、結構きっついっすよね? ね?


『よし次だ、戦う者に「桃の加護」を施す。「桃結界陣」は、切らすな?

 そのまま施すんだ。おまえにならできる……自分を信じろ』


はぁん! そんなこと言われたら、その気になっちゃうよ!?

よろしい! やってやるぜ! 俺の百万馬力、みせちゃる!!


『どうやって「桃の加護」を施すんだ? 桃先輩』


俺は脳内会話で桃先輩に聞いた。

自分の口でやり取りすると、怪しい人になるからな。

最近、理解した。(手遅れ)


『やり方は……ん? すでに「桃の加護」を施している者がいるな?

 小さい人形達だが……おまえがやったのか?』


『あぁ、ムセル達のことか。うん、桃先生と一緒に祝福したんだが……

 まさか「桃の加護」になってたとは思わなかった』


なるほど、知らず知らずのうちに、重要スキルを発動していたっぽい。

まぁ……半分以上、桃先生の力なんだが。結果オーライだ! 問題ない!


『ふむ、いいだろう。これで「鬼」に対抗できるはずだ。

 ただし、決して桃力を絶やすなよ? おまえの桃力が尽きた時……

 それは、お前を含む全員の死を意味する。肝に銘じておくんだ』


『応っ! 任せてくれっ! 皆の命がかかってるなら、死んでも絶やさん!』


これで、戦闘ができるな。あとはムセル達に任せよう。

あくまで、これはゴーレムマスターズだ。

ゴーレムのことは、ゴーレムで決着をつける! 当然だな!


「よぅし! いいぞっ! ムセル! イシヅカ! ツツオウ!

 みどりちゃんを、やっつけて差し上げろ!!」


『エルティナ!? 相手は「鬼」だぞ!? 玩具で戦えるような相手ではない!』


桃先輩が慌てて、俺に忠告してくる。俺は、その忠告に脳内会話で答えた。


『あぁ、みどりちゃんもホビーゴーレムなんだ。

 だったら、こっちも……ホビーゴーレムで相手しないとな?』


『どうやら本気で言っているようだな。……まったく、おまえというやつは』


桃先輩は呆れているようだが、俺が本気だということに気付いて引き下がってくれた。

すんません、桃先輩。こればっかりは、引けんのですよ。

ゴーレムマスターズで勝たないと、シアやエスザクの仇を、討ったことにならない。


「こ、これは『桃結界陣』か!? おのれぃ……これくらいで勝ったと思うな!?

 貴様さえ殺してしまえば、この結界が消えることは、わかっているのだ!」


「殺せればの話だろ? そんなことさせねぇよ!」


俺の前に、ライオット達が立って守ってくれている。惚れてしまうじゃないか!

でも、これで安心して結界を張り続けることができる。ありがとな皆!


「ふん……我は体を失う以前に、貴様ら『桃使い』と何度も戦ってきたのだ。

 見習い! 貴様程度……我の敵ではないわっ!」


ギュンターがそう言い終わると、みどりちゃんがビクンと震えた。

そして、大量の黒い何かを撒き散らして萎んでいく。いったい何をしているんだ?

やがて、黒い何かは形になっていく。その姿は、小型のみどりちゃんだった。


その数……およそ三百体!? おいおい! 冗談が過ぎるぞ!?

本体のみどりちゃんも、縮んだがそれでも俺と同じ大きさだ。

三百対三。これ勝てるか、わっかんねぇな?

「戦いは数だよ」って言ってる意味が、わかった気がする。


リングを埋め尽す黒い悪意達に、少しばかりビビった俺であった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ