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食いしん坊エルフ  作者: なっとうごはん
第二章 身魂融合 命を受け継ぐ者
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怒りを堪えて

チーム『アークジオ』が敗北し、エスザクも死んでしまった。

結局、俺達は…何も出来なかった。


俺はゴーレムファイターに、抱きかかえられる形で

選手控室に連れて来られた。

部屋の中に入り、ゆっくりと下ろされる。

続いて、傷付いたムセルを抱えた…ライオットとプルルが入って来た。


俺達が揃った事を、確認したゴーレムファイターは


「先ずは…謝らせてくれ。…すまなかった!」


と、頭を下げて謝罪した。

何で、ゴーレムファイターが頭を下げる必要が…?


「頭を下げるのは…ゴーレムファイターじゃねぇ!

 あいつ等だ…! ギュンターとか言う奴だ!」


…そうだ!

あの野郎だ!!


アイツを、ぎゃふんと言わせなければ…収まりがつかねぇ!

後…色々とゲロらせないと、いけない情報を持っているしな。

いったい…何モンだ? あの野郎…


「いや、ゴーレムマスターズを愛する者として…

 先輩に当たる、俺達が何も出来ないで居たのは

 不正に、加担しているのと同じだ…」


「そうだ! アイツ、反則してたんだった!

 何で反則負けにならないんだ!?」


ガチャリとドアが開いた。

誰だろう?


「それについては、私が話そう」


「ザッキー…」


ザッキー・タケヤマが選手控室に入って来た。

続いて、審判のお姉さんも入って来る。


「…皆、そろった様だな? 先ずは…反則についてだ」


俺達は頷いた。


「本来なら、審判の判断で『反則負け』を宣言する所だが…

 そこに横槍が入った。

 入れたのは…ゴーレムギルドのギルドマスター『マウゼン・キュライム』だ」


「そいつが、今回の黒幕か!?

 良し! 今から、ボコりに行こう! そうしよう!」


俺は即座に、行動に移ろうとするが…


「待て待て…話が、終わって無いみたいだぞ?」


と、ライオットが俺を止めた。


「ぽきゅっ!?」


ライオットが、掴んだのは俺の頭。

ぐきっ、と音が鳴ったのを聞いた。

おもえ…殺す気か!?


「話を、続けても良いかな?」


と、ザッキー・タケヤマが聞いて来た。

頷く、皆。

俺は首が痛くて、頷けなかった。…ズキズキ。


「もう、理解している子が居る様だが…マウゼン・キュライムは

 黒幕では無い、その上に居る上級貴族だ。

 …名前は伏せる。

 関わっては…いけない存在だからだ。」


「そんな…ゴーレムギルドマスターより、上の指示だなんて!?」


プルルが、驚きとも…諦めともつかない言い方をする。


「逆らえば…当然、闇に葬られるだろう。

 この大会には国王陛下も、良く…いらっしゃるが

 口出しする、権限が無いんだよ」


ゴーレムファイターが、無念そうな表情で言った。

確かに、王様なら「お前、反則…いく無い」と言えば

まるっ…と、解決するかもしれないが。


権限が無ければ…王様も唯の、マッチョ爺さんだ。

…力技で、如何にか出来るかもしれないが。


「そこで…私はリィカ…君達には

 審判のお姉さん、と呼ぶ方が分かり易いかな?

 に、マウゼンの指示に従う様に言ったんだよ」


「…ごめんなさい。 許される事では無いわ…」


審判のお姉さん、リィカさんが目に涙をためて謝罪した。


「お姉さんは、悪くないぜ? 悪いのは…その上級貴族と…

 ギュンターって奴だっ!!」


ライオットが声を、荒げ始めた。

かなり…苛付き始めている。

本来は、感情に任せて突っ込む性格の奴だが…

その上を行く、俺のお蔭でストッパー役になっていた。

しかし…今回の件は、我慢の限界に近いらしい。


「ライオット君…と言ったね?

 その怒りは…まだ取って置いてくれ。

 この、上級貴族のお蔭で…反則負けには出来ないんだ」


くっそう! チート権力かよ!?

何か、良い方法はないのか!? ザッキーさん!?


「エルティナ君、君の言いたい事は分かる。

 もう少し…話を聞いて欲しい。

 情けない話だが…君達に託すしかないんだ。

 ゴーレムマスターズの未来を…」


深いため息。

情けない自分に対する、葛藤、失望、怒りが見えた。

…何故、そんなのが見えたかは分からないが。

直感で感じ取った…と言えば良いのだろうか?

最近、そう言うのが…良く感じる様になった。


「次は…『ゼンバネンス帝国』についてだ」


「まったく、聞かなかったチームだねぇ…

 予選の時にも、そんなチーム無かった筈だよ?」


プルルが、言うのだから間違い無いだろう。

紙に穴が開くほど、参加チームが書いてあった

チラシを見続けて居たのだから。


「当然だ、調べた所…このチームは予選を受けていない。

 上級貴族の権限で、いきなり本戦に参加している」


「だが…問題は、その能力だな」


ゴーレムファイターが、説明を代わった。


「ステート使って、能力を見たが…一回戦の当時は…ランクSだった。

 だが…準決勝では」


ゴーレムファイターの、眉間にしわが寄る。


「ランクSSSになっていた」


何だそれ? おかしいだろ!?


「そ…それは、おかしいよ!?

 生まれ持ったランクは、変わらない筈…!

 たった、数分の試合で…ランクが変わるはずが…」


「…食ったのか、力を」


俺は、自分の思っている事を言った。

これは、確信に近い物があった。


「そうだ…そうだ、としか言えない。

 本来…ありえないんだ。

 たった、一試合で…あれ程成長するゴーレムが居るなんて!」


ゴーレムファイターの、絞り出すような声。

本来、ゴーレムの成長とは…

マスターとゴーレムが、一緒に…時間をかけて

共に学び、励み、極めていく事。


故に、ゴーレムマスターズ。

と、呼ばれて来たのだそうだ。


「私は、ゼンバネンス帝国のゴーレムを、別の視点で見て見た。

 そして…良く似た話を見つけたよ。

 自分でも、馬鹿バカしい…と、思いたい程の話だ」


「どんな、話だ?」


俺は、ザッキー・タケヤマに聞いてみる。

今は…兎に角、情報が欲しい。


「…全てを喰らう者」


「………!!」


俺を抜かす、全ての者が…絶句した。


「そうだ、おとぎ話として…皆が良く知っている話だ

 ギ・オンが攻撃を出来なくなった時に…この昔話を思い出した」


サーセン、まったく知りません。

教えて、ぷりーず!


「確か…こんな話だったよな?」


ライオットが、全てを喰らう者の話を説明してくれた。


要するに…とある男が「俺、世界をムシャムシャすっから!」と言って

ヤンチャし始めた所…「そんな事、許さないんだからね!?」と言って

女神マイアスの、化身のねーちゃんが喧嘩を吹っかけて…

「ひゃぁ!! たまんねぇ! 女神マイアスだっ!!」

と言いながら、勇者っぽいのが集団で男をボコって

「すいあせんですた」と、男に言わせて…めでたしめでたし。


「…と言う、話でおっけ?」


「何か、酷い話になった」


ライオットが、俺を憐れむ様な目で…見て来た。

…分かり易く、して上げただけじゃないかっ! ぷんぷんっ!!


「まぁ…大雑把だが、そう言う話だ。

 問題は、みどりちゃんが『全てを喰らう者』である可能性が有る。

 と…言う事だ。」


「その『全てを喰らう者』だった場合…如何なるんだ?」


俺は、ザッキー・タケヤマに聞いた。

そんなに、大事にはならんだろう?


「最悪…世界が滅ぶ」


…大事だった。


「全てを喰らう者に対しては、全ての攻撃が効かない…と

 言い伝えられているが…私はそう、思わない。

 何故なら『全てを喰らう者』は、倒されて昔話が終わっているからだ」


「でも、攻撃が効かないって…」


プルルが、不安げに聞き返す。


「そう『全てを喰らう者』には、攻撃が効かないとされている。

 だが…先程の試合を、思い出して欲しい。

 エスザクが、みどりちゃんにダメージを与えていた事を…!

 間違い無く、攻撃を加える手段がある!」


…確かに、エスザクの攻撃は…みどりちゃんに効いていた。

如何してだろうか? 何が原因だろうか?

俺は思いつく限り、文字を脳内に浮かべてみた。


勇気、努力、愛! そして…希望!!


おっふ…これしか思い浮かばん!

これって…桃力の基本なんだよね。


「それが…分かれば、勝てるって訳か」


「とても…難しい事だがね」


そう、これは難しい。

だって、自分でやるんじゃなくて…ゴーレムにやってもらうんだから!

そして、肝心のムセルは…ムセル?


「きゃぁぁぁぁぁぁっ!? ムセルの腕、捥げてたんだったぁ!!」


あばばばばっばばばっ!! 何て事を忘れてたんだ! 俺!!

い…今、治してあげるからね!?


「ヒール!」


俺は、ムセルにヒールを施した!

…が、一向にムセルの腕は、再生しなかった。


「何でだ!? 前は治ったのに!?」


魔法は、ちゃんと作動している。

にも関わらず、腕が再生しない!!


「驚いたな…その若さで、ヒールを使えるとは?」


「前は…治ったんだ! 何で、今回は治んないんだ!?」


俺は、ムセルにヒールを施し続けた…

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