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食いしん坊エルフ  作者: なっとうごはん
第二章 身魂融合 命を受け継ぐ者
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憎悪の光に消える誇り高き魂

◆◆◆


俺は、試合を止めるべく…乱入する事にした!

こんな事が、有って良いはずが無い!

リングは目前だ! 


「エルティナ…いっきま~すっ!!」


「何処に、行くつもりだ」


と、言って俺の首根っこを掴むライオット。


「ぐべっ!?」と、変な悲鳴が俺の口から発せられた。

…俺を殺す気か!? 

だが、今はそれ所じゃ無ぇっ!!


「この試合に…武力介入するっ!!」


はぁ…と、ため息を吐くライオット。

プルルも、苦笑いだ。


「少し落ち着け、試合は…まだ終わっていない。

 相手もルールに違反してる訳じゃ無い」


「でも…! あんなの、ゴーレムマスターズじゃ…」


俺を抑える、ライオットの手に力が入った。


「…分かっている、けどエスザク達は諦めずに戦っているんだ。

 仲間をやられて…一番悔しいのは、あいつ等だろう?」


「ラ…ライ……」


ライオットは静かに…怒っていた。

こんな怒りかたをするライオットを見るのは、初めてだった。

良く見れば…ツツオウも何時でも飛び出せるように備えていた。

イシヅカも、釣竿を構えている。


「食いしん坊…僕もこんな試合、認める訳にはいかないよ?

 いざとなれば…『モモガーディアンズ』で、乱入も辞さないさ」


「プルル…」


如何やら、皆の気持ちは…俺と同じ様だった。

そうか、俺が早とちりしただけか…


「ムセル…何時でも、行ける様にしとくんだぞ?」


そう言って、ドカリと席に座る。

先ずは…見届ける。

エスザク達の戦いを。


「ライ…ありがとな?

 もう少しで、俺はエスザク達を…侮辱する所だった」


「良いさ、分かったのなら」


そうだ、小さくても…彼らは戦士なのだ。

望まぬ手助け、介入など…侮辱にしかならない。

誇り高き戦士達なのだ。


俺はエスザク達の戦いを、注意深く観戦した。

何時でも、ムセル達に指示出来る様に。


相変わらず、みどりちゃんは『憎悪の光』を、口から放っていた。


「シア! 散発的な攻撃では、埒が明かない!

 一ヶ所に攻撃を集中させる! いけるか!?」


「やってみるさ…!」


シアと、ハマーさん…だったかな?

が、自分達の相棒に指示を出す。


「キュレイ! オールレンジアタック!」


「エスザク! 狙いは口だ!」


エスザクとキュレイが、絶妙なコンビネーションで攻撃を繰り出す。

みどりちゃんの口に、攻撃を集中させている様だ。

成程、口を潰せば…あの厄介な『憎悪の光』が出せなくなるか!


「くかか…子供が考えそうな事だわい。

 だが、悪くは無いぞ? さぁ、もっと攻撃するが良い…そして…」


フードから見える口が、歪に歪んだ。


「絶望しろ」


全ての攻撃が、みどりちゃんの口に命中するが…何と、無傷だった!!

何故だっ!? 全部当たってただろうがっ!?


「ちぃ!? 如何言う事だ…これでは埒が明かない!」


シアが、舌打ちをした。

確かに…攻撃が効かなければ、攻撃しても無意味だ。

何か、ズルでもしてんのか!?


エスザクとキュレイに焦りが生まれていた。

それを…見逃す、みどりちゃんでは無かった。

巨体に見合わない速度で、エスザクを右手で捕まえる!


「何だと!? エスザク! 振りほどけるか!?」


エスザクは、もがくが…まったく振り解けそうに無かった。

みどりちゃんは、ニタリと笑い…大きな口を開ける!


「キュレイ!!」


キュレイが…みどりちゃんの口に、自ら突っ込んで行った!

何て事を!?


「ハマー!?」


「シア! 後は任せた!!

 キュレイ…お前に会えて、良かったよ。

 ゴーレムマスターズに、帰って来て…良かった」


キュレイが、みどりちゃんの口の中で…爆発した!

…自爆したのだ。

エスザクを、救う為に…!!


この光景に、会場は静まり返ってしまった。


「ぐ…!? この意志の力…!!

 忌々しい! …我が肉体に、陽の力をぶつけるか!?」


みどりちゃんが、ダメージを受けている!?

戒めから、解放されたエスザクが持っている武器で反撃を始めた!

俺は、エスザクに緑色の光が纏わり付いているのが見えた。

とても、弱い光だが…それは、とても美しい光だった。


「ぐ…がぁ!? おのれ!

 人形風情が…大人しく、我贄になれい!!」


「貴様には、分かるまい! エスザクを通して伝わる…この力を!!」


俺は、改めてエスザクを見た。

…凄い!


最初に見た時のか細い光は、誰が見ても分かる程

強く、激しく輝いていた!


そして、その光の向こうには…ギ・オンとキュレイの影。

護っているんだ、エスザクを…

死しても、尚…仲間を!!


これが…ホビーゴーレムの可能性!

いや…魂の力か!?


「エスザク…! 皆の! 思いを! 悲しみを…!

 そいつに、分からせてやれ! 皆にエスザクの体を貸すぞ!!」


エスザクの体に、正しき意志が!

悪を、許さぬ魂が!

エスザクを思う、仲間の愛が入って行く!!


エスザクが、腰にマウントしてあった斧を手に取った!

斧は、エスザクに呼応して…光り輝いている!


それを手に…みどりちゃんを、切り裂いていく!

…今度は、攻撃を防がれない!

ズタズタにされて行く、みどりちゃん!


「お…おのれ! アランめ…! 何が美味い飯だ!? 楽な食事だ!!

 桃使いもどきが、居るではないか!!」


…おいぃ!? 今なんつった!?


黒いローブを纏った、ギュンターとか言った奴が

サラリと、トンでも発言をした!


アランに…桃使いだと!?

…てめぇ! 何者だ!?


「お前の様な奴が居るから…悲しみは無くならないんだ!!

 …消えろっ!!」


「ぐぬ…おのれぃ!」


ギュンターが、シアを見て…ニヤリと笑った。


…!!


「ムセルッ!!」


俺が、言い終わる前にムセルは動いていた!


「我、肉体よ…! あの小娘を食らえ!!」


みどりちゃんが、シアに『憎しみの光』を…放った!!

これは、明らかにルール違反!

ホビーゴーレムは、人に危害を加えてはならない!


「…え!?」


シアは動けなかった!

ちぃ!? ゴーレムはSでもシアはCか!!(激烈失礼)


不味い! 間に合わない!!


あの光は、唯の光じゃ無い!

人が食らえば…最悪、死に至る!!


「…え!?」


俺は目を疑った。


エスザクが、自ら光に突っ込んだのだ!


…エスザクは『憎悪の光』の中に消え去った。

体の一部を残して…


尚も、光はシアに迫る!!


だが…ムセルは間に合った!

エスザクが、自らを犠牲にして…『憎悪の光』の速度を落としたのだ。


ムセルはアームパンチでシアを、ぶっ飛ばした!


「きゃっ!?」


吹っ飛ばされて、尻餅をつくシア。

良くやった! ムセル…ムセルッ!!


俺は…目を疑った!


ムセルの…右腕が無くなっていた!

シアをぶっ飛ばした時に…食われてしまったのか!?


「エ…エスザク? あぁ…あぁぁぁぁぁぁっ!?

 いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!?」


シアの悲鳴が、会場に響いた。

会場が、静まり返っている分…シアの悲鳴は良く響いた。


「くかか…美味美味! 美味いのぅ!!

 そっちの娘を食えなかったのは、残念だが…遅かれ早かれ

 食らう事になるがのう!!」


狂った様に、笑うギュンター!


ブチブチブチッ…ボムッ!!


俺の堪忍袋は、切れる所か爆発四散した!!


「てめぇ! ぶっころしてやらぁぁぁぁぁぁっ!!」


俺はギュンターに、突っ込んだ!!

が…ゴーレムファイターに、止められた。


「離せ! ファイター!!

 こいつは、許してはならない奴だ!!」


「…分かっている! 分かっているさ!!

 でも、これはゴーレムマスターズで起こった事だ。

 であれば…ゴーレムマスターズで、ケリを付けるんだ!!」


ゴーレムファイターは、俺を抱きしめる形で俺を止めていた。

ゴーレムファイターは…震えていた。


悲しみ、悔しさ、無念、涙こそ流さないが…泣いていた。

俺は…アルのおっさんを、思い出してしまった。

ヤドカリ君を、その手で殺めなければ、ならなかったおっさんの顔…

その顔に…重なってしまった。


『ウィナァッ! ゼンバネンス帝国っ!!』


ゼンバネンス帝国の勝利を、告げる審判のお姉さん。

その手は…振るえていた。


「ちくしょう! ちっくしょぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!」


俺の、絶叫が会場に響いた…

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