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食いしん坊エルフ  作者: なっとうごはん
第二章 身魂融合 命を受け継ぐ者
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俺達が為すべき事

『間もなくチーム「ゼンバネンス帝国」とチーム「アークジオ」の

 試合が始まろうとしています!

 フィールドは…市街地です! 建物が乱立する障害物が多いフィールドだ!!

 此処はサイズが、小さい方が有利だぞ!!』


『チーム「アークジオ」はこのフィールドで五度戦っていますが…

 その全てに、完勝しています。

 最も得意なフィールドと考えていいでしょう』


リングには、大小様々な建物が設置されていた。

…成程、身を隠すには丁度良い物ばかりだ。

建物に隠れて狙撃するのも有りだろう。


審判のお姉さんが、両チームに最後の確認を取り…


『それでは…ゴーレムファイトォ! レディィィィィ…ゴォォォォッ!!』


『ゼンバネンス帝国』と『アークジオ』の試合が始まった!


エスザクは…何と、正面から突っ込む!

大胆だなぁ…


チームメイトのギ・オンとキュレイは、回り込む様に移動している。

狙いは…みどりちゃんか!


一方…ゼンバネンス帝国は、誰一人として動かない。

一回戦の時もそうだったが、みどりちゃんも隣のゴリラもトラも動かない。

…如何言う事だろう?

余裕なのか、動けないのか?

判断に困る奴等だ。


その時…みどりちゃんが、またしても例の扇風機を回し始めた!


「…ぐっ!? だから…それは止めろって言ってんだるるぉ!!」


おぞましい程の、恨み、憎しみ…殺意が、みどりちゃんに取り込まれて行く!!

そして…それはみどりちゃんの口より、放たれた!!


ガビシュウゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥッ!!


と言う、発射音と共に放たれたそれは…

車線軸にある、全ての物を『食らい』エスザクに向かって行った!


「どんな強力な攻撃だろうと…当たらなければ、如何と言う事は無い!」


死の光線を、余裕でかわすエスザク!

流石だ! それでこそ、ムセルが追い続けるライバルだ!


そうしている内に、ギ・オンとキュレイがみどりちゃんに迫る。


「ふん…取り巻きが邪魔だな、消えろ! かとんぼ!!」


ギ・オンが大型の銃を、ゴリラに狙いを定め…発射する。

放たれた光線は、ゴリラに命中し…倒れた。


…なんだ!? 呆気無さ過ぎる!!


「消えろっ! 俗物がっ!!」


キュレイが腰の辺りから、大量の小さな物体を飛ばしていた。


…ミサイル? いや、違う!?

あれは…ツツオウのたてがみにしちゃった、くっそ高い武器だ!


不規則な動きで、相手を翻弄しながら…攻撃を加える遠隔操作兵器達。

相手のトラは…なす術も無く倒れた。


「おかしいねぇ…無抵抗過ぎるよ?」


「そうだな、避ける素振りも無いぜ?」


…確かに、抵抗すらしなかったな?

如何言う事…だ!?


疑問に思って、倒れたゴーレムを見ていた時の事だ。

倒されたゴーレム達から、赤い光が…みどりちゃんの背中の

扇風機に吸収されて行くのを見てしまった!


「あの野郎…! 倒された仲間の、苦痛を食ってやがる!!」


此処まで来ると、反吐が出る!

何だと思ってんだ! 仲間をっ!!


その時、みどりちゃんのマスターが初めて喋った。


「くくく…ご苦労。

 これで、我…肉体は更なる力を得る事が出来たわい…」


ローブを纏っては居るが、背丈は如何見ても子供。

だが、声から出たのは…老人の声だった。

…何と言うか、声が重なっている。

と、言えばいいのか?


説明しがたい不気味な声だった。


そして…信じられない事が起こる。

みどりちゃんの体が、どんどん大きくなって行ったのだ!

その大きさ、およそ百六十センチメートル程にもなるだろうか?

下手な人間の大人程の大きさになっていた。


『こ…これは!? 何と、みどりちゃんが巨大化したぁぁぁぁぁっ!?

 いったい…これは如何言う事でしょうかっ!?』


『仲間の二体を倒された途端の…巨大化。

 特殊なスキルでしょうか?

 …しかし、あまり手放しで褒められませんね。

 ワザと…仲間を見捨ててましたから』


解説のザッキー・タケヤマも、声こそ冷静だが…

その中に、怒りも含まれている事に気付いた。

やっぱり…怒ってるんだ。

あの二人も…


ゴーレムファイターも、実況はキチンと熟してはいるが…

表情が、険しい。

悲しんでいる様にも見えた。


「大きくなったからって…如何だと言うんだ!!

 ギ・オン! 力の違いを見せてやるんだ!!」


ギ・オンが、みどりちゃんに突っ込む!

手には、緑色に光る剣を携えていた。


二体のゴーレムの距離が縮まる!

そして…光る剣の届く距離に入る!!


「消えろ! かと…ん? ど…如何した! ギ・オン!?」


剣を振りかぶった状態で、ブルブル震えて止まって居るギ・オン。

如何したんだ! いったい!?


「くくく…怖かろう、恐ろしかろう?

 その感情が…我が肉体を、更に高める。

 さあ、我贄となるが良い…!」


そして…みどりちゃんがギ・オンに、噛み付いた!!


「な…何故、動かん!? ギ・オン!?」


痙攣しながら、みどりちゃんに食われて行く…ギ・オン!!


「ぱ…パワーが違い過ぎる!? ギ…ギ・オン!?」


そして、ギ・オンは赤い光を撒き散らしながら…食い尽された。


「こんなの、ゴーレムマスターズじゃないだろう!?」


俺は、堪らずゴーレムファイターの元に駆けだした。

試合を中止してもらう為だ。

審判のお姉さんは、おろおろしていて…ダメっぽかった。


「ゴーレムファイター! 試合を止めてくれ!

 こんなのゴーレムマスターズじゃねぇ!!」


俺の言葉に、ゴーレムファイターは苦い顔をする。


「本当は俺も…止めたいさ! でも、ルール違反じゃ無いんだ!

 チクショウ! 止めたくても…止められないんだ!!」


ガンとテーブルを叩きつける。

拳からは…血が流れていた。

迂闊だった。

ゴーレムマスターズを愛する人が、こんな試合を黙ってみてる筈が無かった。

にも拘らず、止めれないのは…


「権力者が絡んでいるのか?」


俺の言葉に頷く二人。

やっぱりそうか!!

がっでむ! 子供達の遊びに…権力持ち込むんじゃ無ぇ!!


「ルール違反じゃ無いんだ。

 ゴーレムマスターズ始まって以来の暴挙だが…

 取り締まる、規則が無い。…無念だ」


ザッキー・タケヤマが項垂れた。

悔しいんだろうなぁ…でも。


「二人には、立場があるんだな…でも!

 俺には、関係無ぇ! 誰が何と言おうと…!

 俺の大好きな、ゴーレムマスターズを…汚させやしない!!」


俺は、そう言い…リングに駆けだした!

乱入して試合を止めてくれるわ!!


◆◆◆


「聞いたか…? こんなのゴーレムマスターズじゃ無ぇ…てよ?」


「あぁ…俺の大好きなゴーレムマスターズを汚させやしない。

 とも、言っていたな」


あんな…幼い子供ですら、この試合が間違っていると感じている。

にも、関わらず…俺達は動かない。

立場もある。

昔の様に、子供のままではいられない。

生活もある。地位もある。将来もある…

だから…俺は…


ガンッ! と、再びテーブルを叩く。


「だからって何だ!! 俺達が愛した、ゴーレムマスターズを汚されているのに!!

 俺は、黙って見ているだけかっ!! …反吐が出そうだ!!」


「フォウロ…落ち着け。

 お前の気持ちは…俺も同じだ!

 だがな…俺達が出張る時代は終わったんだ。

 今の俺達は…二代目ゴーレムファイターと同じなんだ」


先代…!!


俺達に希望を託して…亡くなった、最も尊敬した人。

人間的にも、ゴーレムマスターとしても素晴らしい人だった。

この人が居なければ…今の俺達は居なかった。


「導かなければ…あの、若き希望の子供達を」


「如何すれば良い!? ギルドの監視もあるんだぞ?」


顎に手を当て、考え込むザッキー。

昔からの癖だった。

だが…こういう時のザッキーは、当てにしても良い。


「リィカ、聞こえるか?」


プライベートの無線で審判をしている、元チームメイトのリィカ・タケヤマを呼んだ。

ザッキーの妻でもある。


「あ…あなた!? どどど…如何しよう!?

 試合が、試合がぁぁぁ…!?」


かなり、動揺している様だった。

プライベートの無線魔道具を、予め渡して置いて正解だった様だ。


「落ち着くんだ、万が一の時に今から言う事を…よく覚えておくんだ。

 君にしか出来ない事だ…頼むよ」


「…うん、分かった。頑張る」


短いやり取りの後…ザッキーは俺にもやるべき事を告げる。


「あぁ…分かった。任せてくれ」


「出来れば…今言った事が、起こら無い事を願うばかりだ」


…ザッキーはそう言ったが、間違い無く起こるだろう。


あの子の眼は…昔の俺にそっくりだった。

無茶をして…仲間に迷惑をかけていた時の俺に。


ならば…俺があの子に教えて上げなければ。

ゴーレムマスターズは…何か? …と言う事を。


今だ続く、有ってはならない試合を実況しながら…俺は願った。


シアとあの子が…決勝で戦えます様に…と。

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