応援
選手控室なう。
激闘を終えた俺達『モモガーディアンズ』と『ブラックスターズ』は
選手控室で、暫しの休憩を取っていた。
「いやぁ…それにしても、この子にあんな力が隠されていたなんてね」
ツツオウの喉を指でコチョコチョしているガイナお姉さん。
ゴロゴロと喉を鳴らし、気持ち良さげにしているツツオウ。
やっぱり君、猫だわ。
「俺達も、知らなかったよ。
ツツオウに、あれ程の力があったなんてな…」
ライオットも、ツツオウが巨大な獅子になった時は驚いてたな。
でも、直ぐ納得したかの様に、落ち着きを取り戻していたが…
でもあれ…明らかに桃先生が、やり過ぎた結果なんだよな。(呆れ)
で…なければ、ツツオウにあんな出鱈目な力なんて、ある訳が無い。
チラリと、ツツオウをみる。
ツツオウはお腹を丸出しにして、気持ち良さそうに寝ていた。
警戒心…皆無である。
「ふふ…君の本当の姿は、どっちなんだい?」
ナッシュお姉さんが、ツツオウを見て笑っていた。
「間違い無く、こっちだな」
「えー?」と、ライオットが不服申し立てをしたが却下した。
ツツオウの真の姿はこれだ! 異論は認めない!
俺がドヤ顔で、ライオットを見上げていた時…
選手控室のドアがノックされた。
「はいってます」
「違うだろ」
俺のボケに、すかさずライオットがツッコミを入れる。
成長したなライオット…
俺が感動していると、ドアが開き…リンダ達が雪崩れ込んで来た。
「エルちゃーん! 決勝進出おめでとう!!」
台詞を言い終える前に、俺に抱き付くリンダ。
「げふっ!?」
結構な勢いで、抱き付いて来たのでダメージを受ける俺。
くるるぅあっ!? 俺は『でりけぇと』なんだから
もっと扱いは、エレガントかつゴージャスにしてくれろ?
…いかん、ダメージが大きくて思考がやばい。
「リンダ、エルが結構危険だ」
「ふぇ?」
ライオットがリンダに注意しなければ
今頃、俺は天に召されていただろう。
おぉ…怖い怖い。
「まさか、身内に暗殺者が居るとは思わなかったぜ」
「ごめんねぇ…」
しゅん…と項垂れるリンダ。
反省してる様なので許してあげよう。
「許す」
「もう、許された!!」
ぱっと、笑顔になるリンダ。
「早過ぎだな」
飽きれるガンズロック。
「謙虚だなぁ、憧れちゃうなぁ」
と、ダナンがニヤニヤしながら言う。
静かだった選手控室が、途端に賑やかになった。
リンダ達は勿論の事、野良ビースト達もツツオウの元に集まり
各々、ツツオウを称えていた。
…何を言ってるのか良く分からんが
「お見事」「流石ツツオウ兄者」「ツツオウさんになら抱かれても良い」
みたいな事を言っているっぽい。
…あれ? 俺、会話の内容分かってる?
これは…俺もビーストの端くれって事か?(珍獣)
あちらでは、ガイナさんとリックが話し合っていた。
如何やら、自分と同じ名のホビーゴーレムが
素晴らしい戦いを、見せてくれたので感動した!
的な会話をしている。
「俺も…彼の様な男に、なりたいと思ってます!」
「有難いねぇ、この子も喜んでいるよ」
大きいリックと小さいリック。
その二人は、互いに握手をしていた。
うむ、わかるぞぉ…あの戦いは、胸が熱くなる戦いだったからな!
「エル…決勝進出おめでとう」
「ありがとな! ヒーちゃん!!」
ヒュリティアも、俺達を祝福してくれた。
フォクベルトもプリエナも同じく祝福してくれた。
「へへ…俺達に勝ったんだ。 これ位は当然だな!」
「…そうそう、じゃねぇと俺達のゴーレムが
強かったって証明出来ねぇからよ?」
「…決勝も勝て」
我クラスの、悪たれ三人組もやって来た。
そうだな、必ず優勝して…証明してみせるさ!
てっちゃ達が凄い強敵だった…って事をな!
「任せろ! 必ず優勝してやるぜ!
ムセル達にかかれば、チョロいもんよ!!」
そのムセルは…何かソワソワしていた。
如何した?
「ムセル如何した? おしっこか?」
「ゴーレムが、おしっこする訳無いだろ?」
と、ダナンが言って来た。
「「えっ?」」
と、驚く俺とマフティ。
「普通に、ツツオウしてたぞ?」
「テスタロッサも、トイレに行くぞ?」
「…え?」
選手控室に、一瞬の静寂が訪れた。
そして…「えぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!?」と
俺とマフティ以外の声が、重なった。
「何だそれ!? 本当にゴーレムか!?」
「いや、まさか小便するとは思わなかったな…
確かに…水やら土やら、食べ飲みしていたけど」
ライオットが、気付かない理由は分かる。
家で一緒に居れないからな。
逆に…自室で預かっている俺は、良く見る光景だ。
因みに、おっきい方もするぞ? ツツオウは。
てっちゃは…もうゴーレムって言って良いのか
わっかんねーな!?
肌はぷにぷに、ふかふかで温かい。
普通に呼吸してるし、ご飯も食べているらしい。
心臓がゴーレムコア…と言う事以外、生物と変わらないんじゃね?
専門家じゃないから、何とも言えんが…
「テスタロッサは特別なんだよ。
おかげで…登録も消さないと、ならなかったからな」
「あぁ…それが良いね。ギルドの馬鹿共はゴーレムの事を
実験材料としか見て無いからね」
オルテナお姉さんが、すこし怒った表情で言った。
ゴーレムギルドの連中、信用無さ過ぎぃぃぃぃぃぃぃっ!!
「ムセル如何したんだ?
お前がソワソワするなんて、今まで無かったのに…」
「んふふ…きっと、エスザクの試合を見たいんだよ?」
プルルが、自信有りげに言った。
「そうなのか? ムセル」
頷くムセル。
頷くと言っても、首が無いので体を少し前に倒した程度だが…
「ふむ…そ~なのか~?」
だが「俺は決勝で会おう」と約束したので
今行くとなぁ…でも、ムセルが行きたがっているしなぁ…
俺がうんうん、唸っていると
オルテナお姉さんが俺に「行っておいで」と言った。
「でも…」
「きっとシアもエスザクも、見て貰いたいさ」
と、笑って言ってくれた。
そうか…そうなのかな?
俺はムセルを見た。
ムセルも俺を見ている。
「良し…見に行くかムセル!」
ムセルは、凄い速さで頷きまくった!
そんなに見たかったのか…(苦笑)
「と…なれば、そろそろ行かないとねぇ?
試合が始まっちゃうよ?」
プルルも、試合が見たいのか俺達を急かした。
うし…じゃ、いくか!
「試合会場に、乗り込め~」
「わぁい!」
バタバタと、選手控室から出て行く俺達。
「おやおや」と笑いながら見送ってくれた『ブラックスターズ』のお姉さん達。
無論、野良ビースト達も付いて来た。
ふはは! どけどけぃ! 珍獣連合のお通りだぁぁぁぁぁっ!!
最早、得体の知れない…何かの群れであった。
通路に居た人達は、皆端に避けた。
うん…もし、こんなのが来たら俺も同じく避ける。
けれども、試合には間に合った模様。
良かった良かった。
俺達『モモガーディアンズ』は、特別席で観戦する。
他の皆は、観客席で観戦だ。
…居た! シアとエスザクだ!
「シア! エスザク! 決勝に行ったぞ!
おもえ達も、早く決勝に来てどうぞ!!」
「そうか、ならば我々もこの試合…勝たねばな!」
シアとエスザクに、闘志が漲る。
本来、ライバルを応援するのは如何かと思うが…
俺達の場合は違った。
俺とムセルの目的は、シアとエスザクとの再戦だからだ。
優勝はついで…である。
そして…相手が、あの黒い恐竜だからだ。
丁度、奴が出て来た…!?
「ふぁっ!? あんなに、デカかったか…アイツ!?」
俺は驚いた。
何故なら…みどりちゃんの大きさが
一回戦の時よりも、ありえない程大きくなっていたからだ!
二倍なんて物じゃない! 俺と同じくらいの大きさになっている!
因みに、俺の身長は…80cm程度。
もっと、大きくなりたいです…
会場に、ざわめきが起こった。
まぁ…当然だろう。
いきなり、こんなにデカくなれば…
「大きければ良い、と言う物では無い。
それを、試合で証明してやろう」
シアが何時も通り、自身満々で言った。
そして、ざわめきが収まらぬ内に…試合が始まった!