招待状
2200年11月25日、ここは日本のとある住居。
2階建てで壁は白く、小さなビルのように四角い。
玄関はスライド式のドアで「星流」という表札が映像で映し出されている。
窓などの余分なものが全く無く、一見、大きな箱にしか見えない。
だからといってこの家が特別変わっているわけでなく、周りに立ち並ぶ家も色や大きさの違いはあるが箱のような形であることに変わりはない。
日本では科学が発展し、一般住居はこの形が主流となっていた。
星流家には、両親が海外に主張中な為、9歳の少女、星流晴日が家事アンドロイドのRと共に1人で暮らしている。
朝7:00、晴日は郵便物を取りに玄関へ行き、扉の横のタッチパネルを操作した。
電子郵便物はリビングに送り、紙の郵便物は玄関へ取り寄せた。
瞬時にゴトッと音がした。
郵便物が、タッチパネルの下にあるポストに転送されたのだ。
晴日はポストから2つの郵便物を取り出した。
1つは両親からの小包。
もう1つは、科学の発展した日本にはかなり時代遅れの、丸められた羊皮紙を上質な青いリボンで結ばれたものだった。
羊皮紙の端にはイギリスにある有名な超エリート学園、「聖シェル学園」の文字が記されていた。
晴日は急いで荷物を持ってリビングへ行った。
ソファに腰かけると、羊皮紙のリボンをほどき、テーブルの上に広げた。
~招待状~
星流晴日様
本校の生徒に値する能力が確認されましたので、本校への入学を招待させていただきました。
5日後の11月30日、晴日様の誕生日にそちらにお伺いします。良いお返事を期待しております。尚、ご両親にも同じものをお送りしています。
11月25日
~聖シェル学園理事長~
--カルロス・ファイン--
読み終わると同時に家の電話が鳴った。
晴日はテーブルに置かれている小さなリモコンを操作し、正面の巨体スクリーン電源を入れた。
電話の相手は両親、テレビ電話だったが、晴日はすでに身支度を済ませていたのでスクリーンをonにして即座に応答した。
「お久し振りです、お母様、お父様」
晴日のいる日本では朝だが、両親のいる海外とでは時差があるので、朝の挨拶は避ける。
スクリーンの中では美男美女の両親が仲良くソファに腰かけていた。
「元気にしていたか、晴日」
「ええ、おかげさまで。このタイミングで連絡してきたということは、お父様方のところにも羊皮紙が届きましたか」
「ええ、届いたわ。晴日はどうしたいのかしら。この学園に行ってみたい?」
「はいっ!私、お母様方の母校でもあるこの学園に行きたいです」
「そう、分かったわ。晴日が行きたいのならば私達は止めないわ」
晴日は少女らしい無邪気な笑顔を輝かせた。
両親の少し切な気な笑顔に、晴日は気づかなかった。
「では、5日後に海外から一旦そちらに戻るとしよう。晴日の誕生日も祝わないとな」
「ええ、楽しみに待っています。それではまた5日後に」
晴日はスクリーンを切り替え、ニュースにし、朝食の準備を始めた。