「つづく。」
「へぇー、ここがバイト先か。」
フーリストさんの染め物工房に着いたとき、アレグムは感心したように呟いた。
それもそうだろう。町の端の方に位置するあまり賑やかでもないこの場所で、やっていけているのがすごいのだから。
「おばさん、おはよー。」
俺は軽く挨拶をしながら扉を開けると、中からおばさんが出てきた。
「あらラグ、おはよう。もう一人の、若い兄ちゃんはどなた様?」
それを聞いて、アレグムはピシッと敬礼の姿勢をとる。
「サリマーダ王国護衛団団員、アレグムといいます!…ラグの兄です!」
真面目だ!意外と真面目だ!!
「あらあら、頼もしいお兄さんだねえ。マイトは今日は休み?」
「代わりに兄さんがビシバシ働くから。多分効率的にも変わらないよ。」
初心者のアレグムと、不器用なマイト。
うん、大した差が無い!
「それじゃあ早速だけど、今日は機織りの手伝いをしてもらおうかね。織っているときに、糸が絡まらないように解していってくれね。」
「「「はーい。」」」
それからしばらくは、いつもと同じようにおしゃべりをしながら作業を黙々と作業をしていくのだった。
──────────────
帰り道。
俺はアレグムと二人で城への帰路を歩いていた。まだあまり暗くもなかったが、早めに仕事が終わったのでこの時間。
俺はふと、隣を歩くアレグムに話しかけた。
「ねえ、アレグム。」
「何ですか王子?」
前を向いていたアレグムが、俺の方に顔を向けた。
あまり人がいないので、俺に“ラグ”と呼ぶのをを止め、アレグムは“兄”を止めた。
「俺が、王になったら…この国の伝統を守っていける法を、創りたいなと思う。フーリスト家みたいに継承者がいないのは嫌だから。」
俺はただ前を見て、考えていた案を告げた。
アレグムの顔が見れない。
なんか、イヤな目で見られそうだから。
アレグムは何も話さない。
「はぁ…。俺が自分勝手な王になったら、アレグムが“下克上”でもしてくれよ。」
するとやっと、アレグムが口を開いた。
「いいんじゃないですか、その案。俺も、今日はすごく楽しかったです。ああいうのが無くなっていくのは、俺も同じ気持ちですよ。」
思わず、アレグムの方に顔をバッと向けてしまった。
優しげに笑う、アレグムの顔が見えた。
「ちゃんと国のこと、考えてるじゃないですか。というか、“げこくじょー”って何ですか?」
「え?意味分かって話してたんじゃあ…。」
「流れからして、何となく?」
しまった。また無駄に生きてる分の知識が…。
「“下克上”は、下の者が上の者を倒して、上の者の地位を横取りする事だよ。」
たしか、昨日の『餅々屋』と同じ国の言葉だったな。普通の人が知るわけもない。
「博識ですね王子。」
「そんなことはないよ。」
話がだんだんと入り込むなか、二人はいつの間にか城へと帰りついているのであった。




